煤の付いた様な痩けた身体の真っ赤で奇抜な髪型をした男が路肩で上級悪魔を貪っていた。彼は生前の経験を活かし、地獄で最強の罪人になった男で名はアラスターという。ラジオ・デーモンと名乗る通り彼のラジオは流血、暴力、性的堕落に満ち溢れている地獄の住人達にとって高尚なエンターテインメントであり、彼の巧みな話術は人々を魅了し、一流の娯楽として親しまれていた。そんな彼がたった今、上品な身なりを崩しつつも日課の様に行われていた上級悪魔達が彼に喰われて死にゆく際の叫び声を放送する為の現場を目撃している訳だが、それを見たヴォックスは心臓を鷲に掴まれた様にどくどくと血液が全身に巡る感覚を強く覚えた。正直、この感覚は凡庸な罪人との暇潰しの性行為とは比べ物とならない性的興奮を体感した。
ヴォックスは哀れな男だ。彼の初恋はアラスターであり、その事実は生涯付き纏ってくる。ヴォックスはこの地獄で最強の支配者となる為にテレビジョンを通じて自身の地位を確固として築き上げてきた。生前と同じ様に権力を持ち、上位の存在となる行為は達成感があり、ヴォックスは好ましく感じている。そんな彼の野望にアラスターは邪魔をする様に居座っている。ヴォックスは70年前に刺激的なアラスターと手を組んでパートナーとなり共に地獄を支配したいという旨をアラスターに打ち明けたが、アラスターは嘲笑って自分との格の違いを饒舌に語り、笑い過ぎて目尻に涙を滲ませながらヴォックスに畳み掛けた。その日からヴォックスはアラスターの事を敵視しつつも、以前の対等な立場を思い出しながら歪んだ恋心を募らせていた。アラスターは無性愛者であるが、本人にはその様な自覚は無い。この自覚の無さがヴォックスを悩ませる要因だ。彼は思わせぶりに自分をとことん挑発する癖に、彼に近付くと「気持ちが悪い!」と突き放す様な自分勝手で我儘な奴なのだ。その矛盾ともいえるアラスターの性質にヴォックスは疑問も感じている。何故、自分の事を認めてくれないのか、せめてこの愛は受け取ってくれても良いのにとヴォックスは日に日に想いを募らせていた。セフレとのセックスもアラスターと重ねながらマスターベーションの様に行ってきた。だからこそ、目の前の狂気的な殺人鬼であるアラスターのカニバリズムは長年の妄想よりも、アラスターの性的な魅力を嫌にも刺激されてヴォックスは頭がおかしくなりそうだった。そんなアラスターの行為をヴォックスはただ目に焼き付けて童貞の素人アダルトビデオ男優みたいな立ち尽くし方をしていると、時期にアラスターはニヤリとヴォックスと目を合わせ、血塗れな顔面に貼り付けた笑顔で数分前までは上級悪魔であった肉塊を手元から下ろして姿勢を改まった。
「おやおやヴォックス?黙りこくって立ち見とは相変わらず趣味が悪いですねぇ」
立て続けにヴォックスは応えた。
「アラスター久しぶりだな!これが噂の悲鳴の光景という訳か……実に不愉快だ!」
ヴォックスは咄嗟に嘘を付いた。不愉快なんて1ミリも思っておらず、それは顔に出てしまっていた。
そんな様子にアラスターは不気味な笑みをより一層深く浮かべた。
「どうです?たまには一緒に食事でもしましょう!なあに食事の時ぐらいは争いはしませんよ」
意外な提案にヴォックスは拍子抜けした様な表情を浮かべた。目の前のラジオスターはちょいちょいと手招きしている。ヴォックスは表向きには仕方が無いなぁといった体裁を繕うが、内心は悶々としながら無自覚なアラスターの無防備さにエラーを起こしそうであった。アラスターの目の前にヴォックスは座り、一緒に血肉を分け合った。70年前の酒場を思い出しながらヴォックスは感傷に浸り、夢見心地でアラスターを観察した。アラスターの一張羅は返り血で汚れ、髪の毛から顔面まで悪魔の血一色に彩られた。臭いは形容し難い物でかなり不快だが、アラスターは芳しいと喜びの笑みを浮かべて、全身に感動を響かせながら肉片にアラスターが持参したカトラリーを突き刺して喉に生肉を通らせた。日々のラジオ放送で鍛えられた滑舌はこの肉を前にしては呂律が回らなくなる程に魅力的で、アラスターの頬肉に目一杯突き詰めながら豪快に喰らう姿はヴォックスにはアラスターが自分との性行為に励んでいる姿を連想し、重ねた。横に大きく開く口の先を窄めるようにし、自分の魔羅を咥えさせる妄想の解像度が一段とクオリティの高いものになったことに、ヴォックスは感謝しながら自分もアラスターと同じく食らいつきながら光景を眺めていた。アラスターがそろそろ食事は終盤に差し掛かっていた頃にヴォックスは閉ざしていた口を開き、アラスターにたった一言話した。
「アラスター1回でいいから食事が終わった後に話ができないか?」
アラスターはきょとんとしながらも、この約束を了承した。今日のラジオスターは食事を終えて上機嫌である。
ヴォックスはアラスターを自身が運営するバーに連れて行った。アラスターもいくら因縁の相手と言えども元々は目を掛けていた奴である為、素直にお願いされれば、皮肉は言えども了承する程の器を持ち合わせていた。ヴォックスは角席にアラスターを案内しバーテンダーに高くて強い酒をくれと注文した。それを聞いてアラスターはヴォックスに言った。
「必死なんですね貴方。私今日は逃げたりしませんよ。」
ヴォックスは図星であった。今度こそアラスターと直接やり取りする為に自分よりも酒に弱いアラスターをベロンベロンに酔わせて右も左も分からない状態にしてしまえば、自分の元から離れることは少なからずは無いだろうと企んでいたからだ。
「……そうかもしれないな。アラスター今夜は最後まで話を聞いてくれ」
アラスターはヴォックスの方に身体を向けて見つめた。
「今日はビックリするくらいに良い子ですね?70年前の若々しい貴方みたいです」
そう言った後に、くすくすと女の子みたいに笑いだした。
「何がおかしいんだ!?」
ヴォックスはアラスターがまた自分を馬鹿にしているのかと突っ込んだ。
「そういう所は嫌いではないですよ」
口角を上げてニヒルに笑った頃に、バーテンダーが酒をカウンターにコトンと置いた。ヴォックスはかしこまってアラスターの手に自身の掌を重ねながら熱心に涙を溢れんばかりに溜めながら話を始めた。
「アラスター俺はお前の為に何だってやってやるから、俺の恋人になって欲しい。今日の回答がノーだとしても何日、何ヶ月、何年とかかっても良いから可能性があるならイエスと答えて欲しい。俺との未来を考えてくれるか?」
アラスターはヴォックスの真っ直ぐな告白にしばらく固まったが、今回は大口叩いて笑うことはしなかった。
「貴方本気なんですか」
アラスターは口では笑みを浮かべているが、目元は不安気で自分を試しているかの様な目線を向けていた。
「本気に決まってるさ。アラスターこの目を見てくれ!」
ヴォックスはいつも罪人に使う洗脳に利用する目を閉じて真っ直ぐとした視線をアラスターに送った。
「私を選ぶとは大した人ですね。正直ヴォックスが願う様なことには応えられる自身は無いのですが、貴方次第で変わるかもしれませんね」
この最後の一言はヴォックスを燃え上がらせる要因となった。予想外の展開に今にでも鐘を鳴らしたかったが、アラスターに寄り添っていかなければ振り向いて貰えないとようやく気付くことの出来た哀れであったヴォックスは、アラスターにこの酒を飲み干したら、自室で未来の話がしたいと語った。アラスターはすんなりとイエスと言い、強い酒を水のように飲み干してしまった。ヴォックスはアラスターをかつて宿敵として扱っていたが、深く考えてみれば単純に自分が拗れて面倒な関係になっていただけだったなと後に振り返った。アラスターは警戒する様子も無しにヴォックスの自室へ向かった。これがセックスフレンドならば、後の情事を想像しながらお互いに期待値をマックスにしながら部屋へ入るが、そういった様子はアラスターには一切無く、ヴォックスは普段の余裕が飛んでいってしまいそうだった。アラスターは無性愛者という自覚は無いが、そもそもこの自覚の無さは性的な関係に至らなかった事も原因なのかと考えるとより一層ヴォックスはアラスターのことを純粋無垢な少女の様に可愛らしく感じた。何も性的な体験が無いアラスターを騙して自身との無遠慮な性的堕落へと導くことには抵抗はあったものの、好奇心には抗えなかった。アラスターは程よく酔っ払って身体が温かくなり眠気も増していた。そんなアラスターを部屋に連れ込んだヴォックスは正気ではなかった。アラスターの腕を掴んでベッドに振り落とし、その四肢を自身のコードで巻き付けて膝立ちの状態した。アラスターはこういった類の遊びには疎く、変な冗談であろうとケラケラと笑っていたがヴォックスがファスナーを下ろして彼の頬に擦り付けた時にアラスターは血の気が引いて心を一瞬でも許した事に後悔した。アラスターは酔っ払うと魔力のコントロールが上手く効かない。それにここはヴォックスのフィールドであり、ヴォックスしか魔力を使えないように特別な処置を施した所謂プレイ専用の部屋であった。アラスターはいざ自分に性的な欲求を向けられると何も経験が無いこともあり、恐怖を感じた。その怯える様子は狩猟されるバンビさながらであり、ヴォックスの被虐心をくすぐることとなった。アラスターは柄にも無く涙目になりながら、ヴォックスに目を向ける。
「俺のちんぽをしゃぶれアラスター!歯を立てたら殺してしまうぞ!」
嫌な顔をしながらもまだ死にたくないアラスターはヴォックスのペニスをとうとうしゃぶり、口に含んだ。妄想の中のフェラチオは今現実となり、ヴォックスは既に射精をしそうに震えていた。アラスターは歯が立たないようにアイスキャンデーの様にぺろぺろと奉仕を始めた。稚拙な舌使いにヴォックスは抱きしめたい衝動に駆られながらも自分の意思の弱さに心を鬼にして初夜への第一歩を歩むことにした。アラスターの口の中が涎と我慢汁でぐっちょぐちょになった時にヴォックスは喉奥にペニスを突き刺した。アラスターは頭の髪の毛を手で掻き分けられて、探り当てた耳の根元を急に掴まれてヴォックスのぺニスを喉奥に突きつけられて初めて涙の雫がぽろっと頬を通った。ラジオスターの喉は窮屈ながらも、ヴォックスのぺニスを包み込み、呼吸を本来行う為の気道が狭まっていることもあり、ビクビクと喉仏が上下し声帯を収縮しながらの反応を繰り返していた。アラスターはヴォックスの足元を掴んで必死に抵抗し、ようやくぺニスを喉元から抜いて貰えるとゲホゲホと咳き込み、口内を満たしていた体液を自身の胸元に吐き出し、必死に呼吸をしながら涙がまたぽろりぽろりとシーツを濡らした。アラスターは性行為に対して恐怖心を募らせていた。自慢のラジオスターさながらの口答えもアラスターはする余裕を持っていなかった。ヴォックスは口元から抜き去ったぺニスの熱をアラスターの中に溶け込ませたいと必死であった。アラスターは恐らく童貞であり処女であろう。悪魔なのである程度の痛みには耐えられるが、ヴォックスの良心が作用しアナルは入念に拡張してから性行為を行うことにした。
自社の浣腸液やローションをアラスターのアナルに注ぎ込む。冷たいからなのかアラスターはビックリして、いつも隠してある鹿の尻尾をピクピクと揺らしながらプーッと鹿の警戒音を鳴らしている。いつも余裕があり煽ってくるアラスターの姿は何処にもおらず、お互いに限界に近い状態であることをヴォックスは確信した。アナルは洗浄され、ヴォックスの指を半分程咥え込めるようになったアラスター。ヴォックスもアラスターに気持ち良くなって欲しい為にアラスターの前立腺目掛けて指を擦り当てる。アラスターは性的刺激にも滅法弱く、マスターベーションを行ってるとは考えにくい身体でありウブな雌鹿であった。ヴォックスの慣れた手つきと知らない刺激に耐えられるはずも無く、アラスターの息は上がって意識が遠のきそうになっていた。執拗な開発をヴォックスは止めて、ついに自身のぺニスをアラスターに挿入することにした。長年好きな相手をようやく今夜抱けるのだ。ヴォックスはかかり気味ではあったがぺニスをアラスターのアナルに押し付けた。アラスターは今夜初めてを知る。もう挿入一歩手前なのにアラスターは気持ちを吹っ切ることができずに、焦れったくヴォックスにこう問いかけた。
「ヴォックス辞めてください。私身体まで貴方に預けたつもりでは無かったです。」
ギロッと強い視線をヴォックスに向けるが、耳は垂れて怯えていることが見え見えであった。アラスターは最後まで意地を張っているようだ。ヴォックスは相変わらずな様子に笑いが込上がってきた。
「ここからが本番なのにバンビちゃんは怖気付いちゃったのかな?上級悪魔なんだからこれくらいは経験しとかないとだろ?」
アラスターはヴォックスの分かりやすい挑発にも一々反応し、笑みを深く浮かべて
「 これくらいなら犬に噛まれたものですね。貴方の言う通りかもしれません」
震えたノイズをヴォックスに聞かせた。ヴォックスはアラスターのアナルに強く亀頭を擦り付けて刺激していた。アラスターは最初は軽蔑の目線を送っていたが、涙で顔面をべしょべしょにして、ヴォックスの亀頭が自身のアナルへ挿入に差し掛かると目元をギュッと閉めて無自覚にヴォックスのズボンの裾を握り締めていた。呼吸を止めて耐えていたが、ヴォックスのぺニスが中腹までくるとアラスターは声を押し殺しながら次第にヴォックスのぺニスに寄り添うように根元まで咥え込んだ。まだ挿入しただけなのにラジオスターは音を上げそうに身体を真っ赤に火照らせて、汗を流していた。ヴォックスは勢いよくぺニスをピストンし、アラスターはすっかり耳を垂れさせてピーッピーッと身体はすっかり許しているのに、心はヴォックスを根絶し、抗っている。尊厳を踏み躙る性行為はさながら鹿が捕食されるシーンの様だった。アラスターとバーで交わした口約束の純愛を無下に蹂躙し、ヴォックスは結局アラスターを尊重せずに、己の欲望のままに腰を振り付けて傷を付けた。アラスターは知らない快感をこれでもかと覚えさせられた。ハードな初夜はアラスターのメスイキ後の気絶で幕を閉じた。
それからというもの街中でアラスターを見た者は誰一人として居なかった。ヴォックスが彼を逃がすまいと鎖を付けて監禁したからだ。ヴォックステック社の開発した契約で魂を売却せずともプレイで魂を売った様な状態になるSMグッズの開発に尽力していたのはアラスターとのこの瞬間を待ち望んでいた為であった。アラスターは完全に鬱状態になり、夜が来ると涙を零し、ヴォックスに俺の所有物と言わんばかりにダッチワイフの如く雑に扱われる。アラスターは望まない性行為が重なり完全にアナルがヴァギナの様に拡張されていた。勝手にヴォックスが乳首ピアスを開けたりと散々であった。ヴォックスはそんなアラスターを心の底から愛していた。自分のせいでこんなに落魄れるなんてと70年分の片思いが作用しヴォックスは歪な心情をアラスターに対して感じていた。だが、鬱状態になったアラスターをようやく可哀想に感じたのかラジオデーモンの自室を部屋に再現しラジオ放送を録音させた。アラスターは最初乗り気で無かったが、異常な熱量のヴォックスを見て仕方無しに鉄板ネタを冗談交じりに話し始めた。ヴォックスはそれを見て満たされたようで、不気味な笑みを浮かべていた。大衆に向けたものではない自分に向けたラジオ放送。ヴォックスはアラスターを優しく抱き締めて泣いていた。ヴォックスは不安な気持ちで一杯だった。また裏切られるのではないかと、アラスターをこんな状態にまで追いやった自分を許して欲しいとわあんわあんと子供のように泣きじゃくった。アラスターはただ黙ってヴォックスの帽子をずらして、肩をトントンと母親の様に叩いていた。ヴォックスはスヤスヤと寝息を立ててアラスターに抱き着いたまま眠った。アラスターも時期に眠りに着いた。監禁してから初めて性行為を行わない夜であった。ヴォックスが目を覚ましてすぐにアラスターは彼にこういった。
「私には貴方とのボディタッチやセックスよりも貴方とおしゃべりしている方が何百倍も楽しいし、刺激を感じます。」
監禁をして数ヶ月経って、初めて70年前の会ったばかりの頃の優しそうな眼差しでこう言われた。ヴォックスは自分の愚かさと遣る瀬無さを後悔した。アラスターの身体はヴォックスの為に委ねられて、有無を言わさずに拡張されていたが、気持ちは遥か彼方へ置いてかれたままだった。アラスターが初めてヴォックスを求めたのは以前の様な対等な関係性だった。もうそこには戻れないというのに、格差を作ったのは自分だと言うのに。あんまりだなとヴォックスは惨めな気持ちになった。そんな惨めな気持ちを押し潰す為にアラスターの望まない性行為を独りよがりに行った。薬も使った。きっとまだ快感が足りないから自分のプレイを好ましく感じていないのだなとヴォックスは思い込んだ。アラスターは薬に脳を犯されて、我慢していた喘ぎ声を存分にヴォックスの耳元に披露した。ヴォックスは矢張りアラスターは口先で切り抜けて自分との関係を解消したかったのだろうと決めつけてアラスターを今夜も自分の女にした。かつてのラジオスターは一晩中真似事のラジオブースの箱庭の中でCEOに向けた、まやかしの嬌声がラジオ放送を響かせた。
二人は一流のエンターテイナーだった。