貧乳武闘家娘のNTR闘技場 作:自宅の戦闘員
マティアス・レテ・トラニア侯爵。
聖王国の五大貴族、トラニア家の現当主であり、迷宮都市を中心とした一帯を治める領主さま。
大歓楽街を運営する先代領主は、その契約魔術を開発した功績から【契約】のデシデリウムと呼ばれる。
対して、トラニア侯爵は【食道楽】のマティアス。
これは決して蔑称ではない。
領主として、食に関する施策が多いことに由来している。
まず、農業・畜産を奨励し、街道の整備で流通を改善。
他国から災害に強い品種の野菜や穀物を輸入し、農場を設立。新たな栽培法や輪作を研究させ、その成果を領内に広めた。
それだけでなく用水路や貯水池、堤防なんかを整備して、洪水に備えつつ作物のための水を確保もトラニア家がやった。
一番の有名どころは、やはりウォルプ牛だろう。
トラニア侯爵は直轄の牧場を設立し、徹底した飼育管理のもとで、上質な肉牛や乳牛の育成を行った。
でも本当にすごいのは「美味しい牛を育てたこと」じゃない。
侯爵の卓越した手腕は、その牛にブランドという付加価値を与えたこと。
『ビーフといえば、迷宮都市のウォルプ牛』
『マティビーフは、トラニア家が認めた極上の肉』
五大貴族の看板で品質を保証し、評判を意図的に広め、ウォルプ牛そのものを一つの商品ブランドへと育て上げた。
領外へ出荷する牛肉にはブランド価値を上乗せし、高値で販売する。
逆に領内では比較的安価に提供することで、領民だけでなく、ウォルプ牛を目当てに訪れる商人や旅人まで増やしていった。
農業や畜産を単なる食料生産で終わらせず、ブランド、流通、観光にまで結びつけて一つの産業として成立させた。
自分が贅沢するのではなく、“食を以って改革を進めて、娯楽として食を楽しめるレベルまで領地を富ませた領主”。
ゆえに、彼は【食道楽】のマティアスと称えられている。
……そういう人物なので、正直僕も太ったお貴族様を想像していました。ごめんなさい。
※ ※ ※
突如訪ねてきたトラニア侯爵とお話をするために、宿屋の主が一番いい空き部屋を貸してくれた。
急遽椅子と机を搬入して、軽い自己紹介をした後、僕たちは侯爵と向き合う。
……やっぱり、すごい美青年だ。男の僕でもそう思うくらいだ。
「さて、突然の来訪申し訳ないね」
美しい金髪に、少し低めの落ち着いた声。
身長高くて細身なのにちゃんと鍛えているのが分かるカラダ。
しかも貴族で、領主で、若くして功績もある。
そんな人物が僕たちを訪ねてくるなんて想像もしていなかった。
だって、彼は庶民なんて呼びつければいい立場だ。
「あの……今日は、どのような?」
僕が聞くと、穏やかに侯爵は微笑む。
「少し興味がわいて、話してみたかった……というのが本音だよ」
「興味、ですか」
「ラトレ・ゾネマくん、君にね」
あれ、なんで。
ここにきて代筆の仕事していないのに。
「もちろん、リーファ・エルナさんもだけど」
「へ? あたしも?」
自分に視線が向き、リーファちゃんはびっくりしている。
ちょっと頬が赤い。
「華燎宴武最年少の招待選手。ドラゴンを拳で穿つと謳われた拳聖タインの直弟子で、風麗拳の正統後継者。昨日の試合でも、自分よりはるかに大きい相手を一蹴りで吹き飛ばした。その上こんなに華奢で可憐な美少女なんだ、興味を持つなというのが難しい」
そうか、だから前回はいなかったのか。
前回、初日でリーファちゃんはヌロデ選手と戦い「辛勝のすえギリギリで勝利」だったと聞いた。
だけど今回は、苦戦せずに快勝。
そのせいで、マティアス侯爵の興味を引いてしまったんだろう。
……やばいな、これ。僕が時間逆行を使ったら、小さな歪みが周りにも影響して、予想外の事態を引き起こすことにならないか。
「えっ、えっ、びび、美少女ですかっ!?」
「ああ、思わず見惚れるくらい綺麗だったよ」
「や、そ、そんな……へへ」
美青年に正面から褒められて照れ笑い。
僕もミレイネさんの胸に目を奪われたから何も言えないけど、ちょっとだけ嫉妬してしまう。
「あたしも、すごいトラニア侯爵のことを」
「マティアス、でいいよ。ラトレくんもそう呼んでほしい」
「い、いんですか? じゃ、じゃあマティアス侯爵のこと、尊敬してるんです。だって、一代でマティビーフみたいな牛を育てる牧場を作って、他にもいろいろ領民のために美味しい食べ物を作ったり。すごい領主さまだなって」
「嬉しいね。美味しいモノを食べるというのは、身分に関わらず幸せに感じられる瞬間だ。領地を運営するには莫大な資金がいる。どうせ稼ぐなら、美味しいモノを作れば民も私も喜ぶものがいい。実は、私も結構食べるのが好きなんだ」
領主さまなのにすごく気さくな感じだ。
魅力的な人だな、と思ってしまう。悔しいけど。
そこでチラリと彼は僕を見た。
「話を戻すが、もう一つ、面白い話を聞いてね。なんでも、リーファさんが父をやり込めたとか」
……あれ?
契約魔術って、たぶん個室でやるよね? カラダ触ったりのえっちなイタズラ狙いなら余計に。なのに、なんで知ってるの?
ちょっと、侯爵に対する警戒度が上がる。
「父を、法を盾にしてやり込めた。しかしリーファさんはそう言って頭を使った対策を取れそうもない。ということは、ラトレくんの手腕と辺りを付けたんだが」
「あれ、あたしディスられてる? 事実ではあるんですけど……」
「そ、そんなつもりはなかった。だが、気になったようならすまないね」
「い、いえ」
でも、悪い人にも見えない。
少なくとも民に寄り添う領主ではあるのだ。
マティアス侯爵は、改めて僕を見る。
「さて、端的に言おう。私の目的は、青田買いだ。ラトレくん、今代筆の仕事をしているそうだね。トラニア家で働いてみる気はないかな。文字の読み書きができる、頭の回る若者。あと、クソ父にいっぱい食わせたナイスな男の子。文官として育ててみたいと思ったんだ」
今若干の本音紛れませんでした?
お誘いは、嬉しい半分疑い半分。
ただ、どっちにしても頷けない。
「申し訳ありません、侯爵様。僕たちは村から大会期間中だけ滞在していて、終わったら帰るつもりなんです。無礼ながらお断りさせていただければと」
「そうか、残念だ……。ちなみに、リーファさん。私の護衛なるつもりは?」
「ええと、ごめんなさい。あたしも村に戻るから……」
断られて、少し残念そうに侯爵は肩を竦める。
「分かった、無理強いはしない。だが、気が変わったらいつでも当家を訪ねて欲しい、ラトレくん。そうだ、リーファさんはマティビーフに興味があるらしいね。どうだい、食事でも」
「あ、それは辞退します」
意外にも速攻でリーファちゃんは断った。
これには侯爵だけでなく僕も驚いた。
「早いね。最上ランクのビーフを振る舞うよ?」
「あっ、ご、ごめんなさい! 本音言うと、すっっっごい食べてみたいです。でも、あたしがごちそうになったら、ラトレが頼みごとを断りにくくなると思うので。それに、男の人と二人きりというのは……」
マティビーフは食べたいが、僕に負い目を作らせない。
男の誘いにも乗らない、とリーファちゃんは返した。
僕のための判断、それが嬉しい。
「うん、まあ、二人ともを誘ったつもりだったんだけどね」
「え、めちゃくちゃ恥ずかしい勘違いしました、あたし?」
「いや、私も勘違いさせる言い方をした、申し訳なかった」
本当なのか、ただの言い訳なのか、僕には判断がつかない。
とりあえずお互いに苦笑して、場はとりあえず収まった。
「ただ、ラトレくん。考えておいてほしい、私は本気だよ」
ただ、最後にマティアス侯爵は、リーファちゃんじゃなく僕に声を駆けてから帰った。
※ ※ ※
休養日があけて、リーファは闘技場に立つ。
今回は事前に、ミレイネと二人で申請を行った。
結果、本来ならゴダスと戦うはずだったが、急遽対戦カードは変更。
『可憐な美少女リーファ・エルナVS豊満な美女ミレイネ・ジルク』の対戦は、観客も喜びそうという理由でスムーズに認められた。
闘技場の廊下で、リーファはミレイネと顔を合わせる。
「あ、ミレイネさん。今日はよろしくねー」
「こちらこそ。リーファさんとの試合、楽しみにしていたんですよ」
衣装は過激なボンデージだが、おっとりとした笑みの優しそうな女性だ。
そもそも、デシデリウムのセクハラを封じるための情報として、契約魔術の概要を教えてくれたんはミレイネである。この短期間でお世話になってばかりだ。
「契約のことも、色々教えてもらってありがと」
「お役に立てて良かったです。ラトレくん、おもしろい子ですね。年下の子にナンパされたの初めてです」
「ナンパに関してはホントごめんなさい」
なお、挟詩を聞きに行ったラトレの第一声は「へい、カノジョ。お茶しない!」である。
前回の時間軸で彼女が同じ誘い方をしたので、ナンパじみた声掛けが興味を引くだろうという判断。実際効果はあったのだが、リーファからすると「将来の旦那候補がおっぱい美女の魅力にやられた」で終わってしまう。
「いえいえ、あの子、頭いいですよ。ただのお願いではスルーされるから、インパクトを重視した、と言ったところでしょう」
「頭いいのはそうだけど、ミレイネさんを美人に思ってるのもホントだと思う……。胸の戦力差は将来的にも覆せそうにない……」
リーファの音は「ぺたーん……」であり、ミレイネの音は「ドたぷんっ!」である。
「リーファさんは可愛らしいですよ。だから、ラトレくんも必死になったんです」
「それは、分かってるけどね」
ラトレが自分のために骨を折ってくれたのは間違いない。
でも、ミレイネにちょっとだけ嫉妬もしてしまう。
こんな感情を持っていては戦いにならない。リーファはパンッ塗料の掌で自分の頬を叩く。
「よしっ、気合入ったっ。舞台では手加減なしってことで。悪いけど、アタシが勝つからね」
「こちらも負けるつもりはありません」
顔を見合わせ笑い合い、二人は戦いの舞台へ赴く。
今回はヌロデのようなエロいヘンタイではない。
それだけでも落ち着いて戦える。
……この時、リーファは本気でそう思っていた。
※ ※ ※
『さあ、皆さまお待ちかね! この試合を誰もが楽しみにしていたことでしょう! 正直に言いますが! わたくしもその一人ですっ!』
闘技場の石舞台の上、審判が高らかに叫ぶ。
観客もかなり興奮しており、初日より歓声が多い。
『迷宮都市ウォルプタスの闘技場における上位ランカー! 19歳とは思えない豊満なボディと美しさ、なによりその華麗なる戦いで多くの男性を魅了する闘技場の華! ミレイネ・ジルク選手です! 今日はどのような美しき舞踏を見せてくれるのかぁ!?』
「どうもー」
野太い声援を前に手を振り振り。
舞台に立ってものんびりとした雰囲気は変わらない。
『対するは、先日の戦いで鮮烈なデビュー! 蹴りの一発で倍以上の体重があるであろうヌロデ選手を吹き飛ばしたリーファ・エルナ選手だ! ミレイネ選手とは趣違えど、華奢で可憐な人目を惹く美少女! ドレスの裾は短くサービス精神抜群! 薄くて細い肢体に男性ファン急増中だ!』
「別にサービスで着てる訳じゃないわよバカじゃないの!?」
もはや風麗拳の紹介すらなかった。
とはいえ、容姿に偏ってはいるが、拳聖タインの弟子ではなくリーファ個人に焦点があったのは喜ぶべきなのかもしれない。
「さあ、リーファさん。真剣勝負ですよ」
ミレイネは既に構えている。
手にしているのは、持ち手に宝石などがあしらわれたピンク色の鞭だった。
「鞭……そっか、武器おっけーの大会だもんね」
「ええ。私は見ての通り、鞭使いです。この鞭はマジックアイテムですが、卑怯とは言わないでくださいね?」
「当然っ、あたしの武器は蹴りとスピード。鞭を掻い潜れば、こっちのもんよ!」
二人とも挑発的な笑みの応酬。
試合前の高揚に、少しだけカラダが震えた。
『では、ミレイネ・ジルク選手対リーファ・エルナ選手……試合開始ぃ!』
鞭の優位は射程距離と鋭い一撃、巧みな使い手が操れば軌道を読ませない攻防一体の武器と化す。
ゆえに距離を詰めないといけない。
が、ミレイネもそれは読んでいる。
「はっ!」
踏み込んだ瞬間、ひゅっ空気が裂けた。
咄嗟にしゃがむと、頭上を鞭が通過する。
翻り、再度牙をむく。横っ飛びに避けるが、既に鞭は手元に戻っている。
「っ、戻しが早いっ」
「鞭の極意は放つより引き。一発目を放ってから動きに合わせて手元に戻す、その呼吸こそが高速の連打を可能とします」
ミレイネの鞭の操作は絶妙だ。
強烈な一撃で怯ませたかと思えば、手元に戻さず変化させて間を置かない追撃。
まずは蹴りの間合いに持ち込まないとお話にならない。
踏み込む……が、その瞬間わざと地面を叩き侵攻を抑制する。技術もさることながら、駆け引きに長けている。
「よく凌ぎますね」
「簡単に食らってやれないわ、よっ!」
避けられはする。だが、遠い。
距離を詰められない。
風の魔術で遠距離攻撃なんて真似はできないリーファは、それでも前に進まないといけない。
「くっ、多少無茶しても、かぁ」
あんまりやりたい手ではないが、多少のダメージを覚悟で突進。
高速の蹴りで仕留める。
リーファは足に風の塊を作り、その爆発で一気に加速する。
疾風の速攻。
それを阻むミレイネの鞭はまるで網のようだ。逃げ場失く敷き詰められたその攻撃を、リーファはヌロデ戦で学んだ掌に風の塊を作って武器にする方法をとる。
当たりそうな瞬間風を暴発させて防ぐ。鞭は一時的にたわみ、その一瞬を掻い潜る。
「風撃ぃ!」
「んくぅ……っ!」
肩辺りを狙ったが防がれた……が、それも想定のうち。
風撃、からの風凪。
膝を支点に蹴り脚を一度引っ込め、軌道を変更。失った勢いを風で補う可変の蹴り。
狙うはミレイネの頭部。一瞬で決めるつもりだったが、そこまでは許してもらえなかった。
「さすがのスピードですっ」
ミレイネは後ろに引きながら、苦し紛れの鞭を放つ。
今までの技よりも力が乗っていない。逃げるための目くらまし程度だ。
また距離を取られたら、今度は容易には詰められない。ここで叩く。
『で、でも、搦め手ありなら、リーファちゃんを拘束できるかもしれないよ? マジックアイテムとか』
勝気が過ぎたリーファは、ラトレの言葉を忘れていた。
対人戦の経験の浅さだ。闘技場のランカーが、無様に退避しながら苦し紛れの一撃を出す。そこに違和感を持てなかった。
だから、「急所に当たらなければ、耐えて踏み込める」と判断した。
「秘技、エクスタシー・スネーク」
それが間違いだったと、甘い痺れに思い知る。
「あぁんっ!?」
鞭に叩かれた。
なのに、痛みはなかった。むしろ心地良い……これは、デシデリウムに散々秘所を弄られた時と同じ感覚。
つまりは性的快楽だ。
それに驚き、足が止まってしまった。
「しまっ……!」
「今度は遅いです」
暴れ狂う蛇がリーファに襲い掛かる。
どうにか避けようと無理矢理後ろに飛ぶ。それでも、避け切れず数発当たった。
「あっ、ぁっ、ひゃぁんっ!?」
その度に喘ぎが出る。
やはり痛みはない。代わりに叩かれた場所から、耐え難い快感が流れ込む。
リーファは強く前を睨み付ける。鞭を構えながら、ミレイネはゆったりとした振る舞いを崩さない。
「な、なによこれ……!」
「説明しましょう! 私の鞭は“
「嘘でしょ最悪なんだけど!?」
おっとりお姉さんだから油断していた。
ヌロデみたいなエロい攻撃をしてくる男を避けたつもりが、ミレイネの方がよっぽどエロ攻撃特化だった。
「秘技エクスタシー・スネークとは、官能鞭で打ち据えることによって、激しい快感で責めら立てる私の基本技。しかし、リーファさんの風撃のように、基本こそがありとあらゆる状況で応用できる奥義なんです」
「どうしよう……あんまり一緒にしてほしくない……!」
「……エクスタシー・スネークっ!」
あ、ちょっと怒ったみたいだ。
強めの一撃が放たれた。何とか避けたが、それも囮だった。
鞭が空中で翻り、狙われたのは乳首。服の上から、鞭が正確に乳首を叩いたのだ。
「あっ、はぁんっ……!」
あの距離で、こんな小さな一か所を狙いすますなんて。
効果はマジックアイテムでも技術はミレイネのもの。決して侮れない。
そして、たった一発で乳首が勃起してしまった。
「おぉっ、あの幼さで艶やかな声を発する……」
「リーファ選手の痴態、楽しみですなぁ」
観客の盛り上がりの意味が分かった。
彼らは舞台で、衆人環視の中でリーファが快楽に悶え、絶頂するのを楽しみにしていたのだ。