貧乳武闘家娘のNTR闘技場 作:自宅の戦闘員
三度始まる
・残り使用回数:18/21
『前回の影響で、少しだけ世界は歪みます』
『始まりの記憶が少量ですが混入します』
リーファちゃんが死んだ後、僕はすぐ迷宮都市に向かうことが出来なかった。
流行り病で臥せっていた期間は長く、魔術薬で病魔を祓っても動けるようになるまで時間がかかった。
村も老人や子供が多く死に、支えを求める人はいくらでもいる。若い僕が投げ出すわけにはいかなかった。
ようやくリーファちゃんを探しに行けるようになったのは、彼女が旅立ってから二年半過ぎてから。
けれど時間が空き過ぎた。
華燎宴武は三年に一回の催し。目前に迫る大会を前に、既に過去の出場選手であるリーファちゃんを覚えている人は少なくなっていた。
探して、見つからず、村に帰る。
そんなことを繰り返してばかりの日々。
けれど彼女が旅立って三年を過ぎたある日、訃報が届いたのだ。
何故か、リーファちゃんのご両親でなく、拳聖タイン……タイン爺ちゃんに。
「ラトレよ。儂は、行けん。代わりに会いに行ってやってくれ」
流行り病から生き永らえたのは、体力の有無だ。
それでも、以前とは違い痩せ細った手足。長旅に耐えられないと考えたタイン爺ちゃんは、僕に路銀をくれた。
僕はまた迷宮都市を訪ねる。
手紙に記された先にある墓地で、ようやくリーファちゃんと再会する。
あんなに元気だった彼女が、物静かにになってしまった。
涙で視界が滲む。それでも刻まれた文字を何とか読むことが出来た。
──我が妻、リーファ・トラニア、此処に眠る。
そうだ、思い出した。
なんで、いくら探しても彼女を見つけられなかったのか。
わざわざ爺ちゃんに手紙が来たのか。
どっちも理由は同じ、リーファちゃんはトラニア家の妻となっていたから。
平民である僕では屋敷に入ることが出来ず、手紙も縁のある爺ちゃんに送られた。
彼女は田舎の平民から、貴族の妻になるという幸運に恵まれ。
だというのに、自らの拳を頭蓋で砕いて自殺した。
その意味は、たぶん……。
※※ ※
そして僕はまた闘技場の前で目を覚ます。
戻って来られた。ということは、またリーファちゃんに契約魔術が刻まれたのだ。
……また、えっちなことされたのかな。
2周目の世界でゴダスとリーファちゃんのセックスを見たせいか、すごく不安になる。
彼女が死ぬ条件は分かった。
自分で言うのは自惚れがすごいけど、「リーファちゃんは陵辱されても耐える。でもラトレが好きだから、快楽に溺れてラトレを裏切りそうになった時、そんなの嫌だから寝取られる前に自殺する」のだ。
これ、逆に言ったら、あの時死んだのは「あのままゴダスとセックスを続けていたら、きっと彼女は……」の証明でもある。
だからって、リーファちゃんに対する好意に変化はない。
どうにもならないくらい追い詰められたら、都合のいいものにだって縋るよ。
それが僕は【原初の神秘】で、彼女は性の快楽だったというだけ。限界ギリギリの選択を心とか本性とか呼ぶのはなんか違うと思う。
「とりあえず、やることが明確になった」
当初の目的だった、リーファちゃんが死んだ理由は分かった。
解決する方法は、端的に言ったら「寝取られないこと」。どのような状況であれ僕を裏切ったら彼女は自殺する。
つまり、裏切らせないのが第一目標。そのために必要なのは、「武闘大会で負けないこと」。
男なんてリーファちゃんみたいな美少女を絶対服従させられるなら、襲うに決まっているんだ。
……もう一つ、彼女を生き残らせることに特化すれば、手は思い付いてしまった。
リーファちゃんに僕より好きな人が出来て、僕らの感情をキレイに終わらせられたなら、きっと彼女は少しく寂しく思いながらもまっすぐ前を向いて歩いていける。
だから「彼女の中の“僕の優先順位”を下げれば、彼女は自殺まではしなくなる」。
愛する誰か共に歩めば、もう僕の方に余所見はしない。
だって、そういう子じゃなかったら、僕は好きにならなかった。
本当は嫌だけど、いざという時の手段として覚えておこう。
そうしてしばらく待っていると、闘技場からリーファちゃんが出てきた。超高速で。
「らっ、とっ、れぇぇぇぇっ!?」
「ぬわああああ!?」
その勢いのまま僕に抱き着いて来る。
もうほぼ突進です。
「ど、どうしたの?」
「キモい貴族にえっちなことされたぁー」
「……そっか、辛かったね」
思わず抱きしめて、子供にするみたいに背中を優しくさする。
リーファちゃんは、ゴダスにされたことを覚えていない。こんなことされても困惑するだろう。
でも、死ぬまで追い詰められた彼女を想うと自然に腕に力がこもった。
「どどっ、どしたの、ラトレっ!? だいじょぶ!?」
「大丈夫じゃないの、リーファちゃんじゃないか」
「それは、そーなんだけど……。ごめんね、ラトレ。あたし、色々触られちゃった」
悔しいとか嫌だった、じゃなく。
ここで僕に対して謝ってしまう気質が、自殺にまで行きつくのだろう。
それが怖くて離れられない。だんだん彼女の体温が上がってる気がする。
「えーとさ、確認しておきたいことが、あります」
「うん」
「ウチの村、早めに結婚して家庭を持って、って結構普通だよね? で、あたしはー、その、将来そういう風になるのは、ラトレだなー、なんて、思ってたり、して、ね?」
そう言えば、今まで口にしたことはなかった。
なんとなく僕たちは、二人でいっしょになるんだろうな、くらいの認識だった。
だから覚悟だ。ここで、僕は自分の意思をはっきり伝える。
「僕はリーファちゃんが好きだよ」
「ふぁっ!?」
「村の慣習とかじゃなくて。元気で明るくて振り回してきて、でも修行は真面目で真摯で、美味しいものに目がないのに小食で……自分の気持ちを曲げないのに、そのせいで傷付いて泣いちゃうような。強くて弱くて繊細なリーファちゃんが好きだから、いつかいっしょになりたい」
「お、思ったよりラトレがあたしのこと大好きだった!?」
そこで驚かせてしまうのは僕の努力の足らなさだ。
田舎では“なんとなくそういうもの”で済ませていた弊害でもある。
「あたしも、ね? 村ではそれが普通だから、とかじゃなくて。ほら、けっこう振り回すイメージ持たれてるじゃん? なのに、ずっと一緒にいてくれて。魔物蹴り飛ばせるくらい強くなっても引かないしちゃんと女の子扱いしてくれて、意外と色々あたしのこと考えててくれたり、シンプルに一緒に遊ぶのが楽しかったりで、その、すす、好き、です」
闘技場の前で抱き合いながら好きを伝え合う。
ロマンティックとは程遠い状況だけど、僕らはお互い真っ赤だった。
※※ ※
告白から始まった3周目。
流れは前とほとんど変わらない。
デシデリウム魔導爵にえっちなことをされたリーファちゃんのために、止めさせる文書を作って。
ヌロデ選手に快勝、ミレイネさんと知り合った。
そこでマティアス・レテ・トラニア侯爵の目に留まり、彼はまた宿屋を訪れた。
「華燎宴武最年少の招待選手。ドラゴンを拳で穿つと謳われた拳聖タインの直弟子で、風麗拳の正統後継者。昨日の試合でも、自分よりはるかに大きい相手を一蹴りで吹き飛ばした。その上こんなに華奢で可憐な美少女なんだ、興味を持つなというのが難しい」
「えっ、えっ、びび、美少女ですかっ!?」
「ああ、思わず見惚れるくらい綺麗だったよ」
「や、そ、そんな……へへ」
マティアス侯爵に褒められて頬を染めるリーファちゃん。
……始まりの世界で、彼女は“リーファ・トラニア”だった。
どうしてそうなったか、分からないけど。この美青年の妻だった時期があるんだよな。
それを考えると少し胸が痛かった。
「あたしも、すごいトラニア侯爵のことを」
「マティアス、でいいよ。ラトレくんもそう呼んでほしい」
「い、いんですか? じゃ、じゃあマティアス侯爵のこと、尊敬してるんです。だって、一代でマティビーフみたいな牛を育てる牧場を作って、他にもいろいろ領民のために美味しい食べ物を作ったり。すごい領主さまだなって」
「嬉しいね。美味しいモノを食べるというのは、身分に関わらず幸せに感じられる瞬間だ。領地を運営するには莫大な資金がいる。どうせ稼ぐなら、美味しいモノを作れば民も私も喜ぶものがいい。実は、私も結構食べるのが好きなんだ」
領主さまなのにすごく気さくな感じだ。
魅力的な人だな、と思ってしまう。悔しいけど。
そこでチラリと彼は僕を見た。そう、彼の目的は、僕なんだ。
「さて、端的に言おう。私の目的は、青田買いだ。ラトレくん、今代筆の仕事をしているそうだね。トラニア家で働いてみる気はないかな。文字の読み書きができる、頭の回る若者。あと、クソ父にいっぱい食わせたナイスな男の子。文官として育ててみたいと思ったんだ」
それを前回は断った。
でも今回は違う。今の僕は、マティアス侯爵の心に響く言葉を持っている。
「よろしくお願いします。僕をトラニア家で雇ってください」
「お、おお……? まさかの即決とは」
「……デシデリウム魔導爵は最低です。あんな大会潰さないといけない。でも、たぶん、トラニア家にも特別区から資金が流れていて、真っ向からの対立は無理なんですよね」
「そう、その通りなんだ!」
「だったら、いずれデシデリウム魔導爵が衰えるその時までに体制を整えて、没した後すぐ潰せる手はずを整えるべきだと思います。そうしないと、リーファちゃんみたいな被害者が増える」
「まったくだ! 父は、招待選手の名目で美しい女性を呼び、闘技場のランカーによって陵辱させることを娯楽として、腐った貴族どもから金を集めている! こんなものは迷宮都市の恥、トラニア家の汚点! そして君達のような被害者を股生み出すことになる!」
「マティアス侯爵、どうか僕をあなたの描く正しい都市の未来、それを作る者達の末席に加えてください」
「もちろんだ! キミほど私の心を分かってくれた者はいない!」
そりゃあ全部教えてもらいましたから。
でもこれで僕は貴族家と縁を持てた。
「あ、もちろんリーファさんも、ウチの護衛とか衛兵として雇うつもりだ」
「どう考えても、あたしはおまけっ!?」
「そ、そんなことはないぞー? あ、リーファさんはマティビーフに興味があるらしいね。どうだい、食事でも」
「ごめんなさーい、侯爵様。あたしが、他の男の人と食事するとぉ、ラトレがきっとぉ、寂しがっちゃうからぁ……」
めっちゃくねくねしてる。
先程の告白で、微妙に行動が変わってしまった。
リーファちゃんは嬉しそうだけど、ちょっと故渡場には気を付けないといけないかもしれない。
「そうだ、マティアス侯爵。どうにか、僕は闘技場に出入りできるようにならないでしょうか? この汚い闘技大会で戦わないといけないリーファちゃんを、せめて近くで応援したいんです」
「……イヤなものを、見ることになるかもしれないよ?」
「それでもです」
敗北すれば絶対服従、は理解している。
僕の決意を感じ取ってくれたのか、侯爵は頷いた。
「正確に言えば特別区は父の領地だが、闘技場の入場くらいなら意見を通せる。ラトレくんが自由に出入りできるよう、専用の通行証でも用意してもらおう」
「あ、ありがとうございます!」
やった、これで代筆の仕事をしなくても闘技場に入れる。
そうしてリーファちゃんの試合を見て……負けた時点で【原初の神秘】を使う。
歪みというのが前周までの経験なら、それを利用して彼女に戦闘経験を積んでもらう。
初めての時は苦戦していたヌロデ選手を、安全に処理できるようになったみたいなことを、全選手で出来るようになればいいんだ。
でも敗北したらえっちなことをされちゃうから、応援席で試合を見て、負けたら即逆行。
三、四回の奇跡の使用は覚悟している。
その間に、リーファちゃんの勝ち筋を作るんだ。
……なので、勝ち筋が出来たら普通にトラニア家就職を蹴って田舎に戻ります。
マティアス侯爵ごめんなさい。