真夏の眩しい日差しが照りつける、8月半ばの登校日。
蝉の鳴き声が響く通学路を抜け、僕は久しぶりに校門をくぐった。
宿題の提出や連絡事項の確認を終え、下校時刻を知らせるチャイムが鳴る。僕は妹のさきと下駄箱の前で待ち合わせる約束をしていたため、少し早足で昇降口へ向かった。
自分の下駄箱まで来て、上履きからスニーカーに履き替えようとした、その時だった。
「……あの、はるくん」
後ろから、遠慮がちな声で名前を呼ばれた。
振り向くと、そこに立っていたのは、夏休み前に裏廊下でさきをからかっていた6年生の女子2人組のうちの1人、まりなだった。
いつもは少し意地悪そうに、どこか気取った態度を見せるまりなが、今日は妙に落ち着かない。僕と目が合うとすぐに視線を逸らし、通学かばんのストラップを指先でもてあそんでいる。
「まりなさん……? どうしたの?」
僕が首を傾げると、まりなは一度だけ僕の顔を見上げ、またすぐに俯いた。
「あの……ちょっと、話したいことがあって」
「あのね……夏休み前のこと、ずっと気になってたの」
「夏休み前?」
「ほら、裏廊下で……さきちゃんにいろいろ言っちゃったでしょ。あれ、ごめん」
思いがけない言葉に、僕は目を瞬いた。
「ああ……あの時のこと?」
「うん。私、ちょっと言いすぎた」
まりなはそう言って、気まずそうに視線を落とした。
「でも、なんで急に?」
そう尋ねると、まりなはしばらく黙り込んだ。それから覚悟を決めたように、小さな声で続けた。
「……さきちゃんが嫌いだったわけじゃないの」
「え?」
「ただ……はるくん、いつもさきちゃんと一緒にいるじゃん」
そこで一度言葉を切り、まりなは頬を赤くした。
「それ見てたら、なんか……いいなって思って。ちょっとだけ、ずるいなって」
「ずるい?」
「だって、はるくんって女子にも人気あるし……私も、その……前からちょっと気になってたから」
最後の方は、ほとんど聞き取れないくらい小さな声だった。
僕が何も言えずにいると、まりなは慌てたように続ける。
「だからって、さきちゃんにあんなこと言っていいわけじゃないって分かってるよ。はるくんにも、嫌なやつだって思われたくないし……ちゃんと謝っときたかったの」
「まりなさん……」
「あ、それでね」
まりなはようやく顔を上げた。
「今度、みんなでどこか遊びに行かない? さきちゃんも一緒に」
思いがけない誘いに、僕は返事を忘れてまりなの顔を見つめた。
その時の僕はまだ知らなかった。
少し離れた下駄箱の陰から、こちらの様子をじっと窺っている人物がいたことを。
「……はるにぃ」
聞き慣れた声に振り向くと、下駄箱の角からさきが姿を現した。
いつからそこにいたのだろう。
手には上履き入れを持ったまま、僕とまりなの方をじっと見ている。表情はいつもと変わらないように見えたけれど、その手だけが、上履き入れの持ち手を強く握っていた。
「さき。来てたんだ」
僕が声をかけても、さきはすぐには答えなかった。
一度だけまりなの方へ目を向けると、そのまま僕の隣まで歩いてきて、当然のように右腕を取る。
「はるにぃ、帰ろ」
「え?」
「お腹すいちゃった」
そう言いながら、さきは僕の腕を両手で抱え込んだ。
普段より、明らかに力が強い。
「あ、うん。じゃあ、まりなさん──」
「あ、待って」
僕が別れを告げようとすると、まりなが慌てて声を上げた。
「さきちゃん」
呼びかけられても、さきはすぐには振り向かなかった。
けれど、まりなは少したじろぎながらも、その場を離れようとはしなかった。
「あの、この前のこと……ほんとにごめん」
さきの足が止まった。
「私、さきちゃんが嫌いだったわけじゃないの。ちょっと、その……はるくんといつも一緒にいるのが羨ましくて。それで意地悪なこと言っちゃった」
まりなは言い終えると、ぎゅっと通学かばんの持ち手を握った。
「だから……ちゃんと謝りたかったの」
さきはしばらく何も言わなかった。
僕の腕を抱いたまま、まりなの顔をじっと見ている。
「……まりなさん」
「う、うん」
「はるにぃのこと、好きなの?」
「えっ!?」
まりなの顔が一気に赤くなった。
「す、好きっていうか……その、気になるっていうか……」
「ふーん」
さきの腕に、また少し力が入った。
「さき、痛いって」
「知らない」
即答だった。
まりなはそんな僕たちを見て、困ったように笑った。
「それでね。この前のお詫びもしたいし……もしよかったら、今度3人で遊びに行かない?」
「3人で?」
「うん。さきちゃんも一緒に」
さきはまた黙った。
てっきり、そのまま断るのだと思った。
けれどしばらくして、さきは僕の腕を抱く力を少しだけ緩めた。
「……この前のことは、もういいよ」
「え?」
まりなが顔を上げる。
「嫌だったけど……ちゃんと謝ってくれたから」
さきは少し気まずそうに視線を逸らした。
「それに、こういうこと言うのって……結構、勇気いるでしょ」
まりなは驚いたように目を瞬いた。
「さきちゃん……」
「でも」
さきは僕の腕をもう一度ぎゅっと抱き寄せる。
「はるにぃは渡さないからね」
「ええっ!?」
まりながまた真っ赤になった。
「ちょ、さき! 何言ってるんだよ!」
「別に。妹として言ってるだけ」
そう言い切ると、さきはようやく少しだけ笑った。
まりなも最初は呆気に取られていたが、やがて小さく笑い返す。
「……分かった。じゃあ、今度ほんとに3人で遊ぼうね」
「うん。それならいいよ」
さきはそう答えると、今度こそ僕の腕を引いた。
「ほら、はるにぃ。帰ろ」
「あ、うん。じゃあね、まりなさん」
「うん。またね、はるくん。さきちゃんも」
「……またね」
さきは今度だけは、ちゃんとまりなの方を振り返って答えた。
その声にはまだ少しだけ警戒心が残っていたけれど、さっきまでの刺々しさは、もうなかった。
学校を出て、自宅マンションへと向かう夏の帰り道。
さきはさっきから、ずっと僕の腕を離さなかった。
「さき、暑くない?」
「暑い」
「じゃあ離れればいいのに」
「それは嫌」
即答だった。
いつものさきなら、こんなふうに人目も気にせず僕にくっついて歩くことなんてほとんどない。
それどころか、僕が少しでも兄らしく世話を焼こうものなら、「子供扱いしないで」と文句を言ってくるくらいだ。
なのに今日は、僕が歩けば一緒に歩き、信号で止まればぴたりと隣に止まる。
「ねえ、はるにぃ」
「なに?」
「今日ね、図工で作ったもの持って帰ってきたの。家に着いたら見て」
「いいよ」
「絶対だよ?」
「分かったって」
それだけで、さきは少し安心したような顔をした。
けれど、しばらくするとまた僕の腕をぎゅっと掴む。
どう見ても、いつものさきではなかった。
「……まりなさんのこと、まだ怒ってる?」
僕が尋ねると、さきは少し考えてから首を横に振った。
「もう怒ってないよ」
「じゃあ、なんでそんな顔してるの?」
「そんな顔って?」
「なんかずっと機嫌悪そう」
「……別に」
そう答えたものの、さきは僕から目を逸らした。
しばらく蝉の声だけを聞きながら歩いていると、やがて小さな声が聞こえた。
「まりなちゃん、すごいなって思っただけ」
「すごい?」
「ちゃんと謝ったし……あんなこと、はるにぃに言うのだって勇気いるでしょ」
「まあ……そうかも」
「だから、そこはすごいと思う」
さきはそこで言葉を切った。
「でも、それとこれとは別」
「何が?」
「……なんでもない」
また腕を強く掴まれる。
何が「別」なのか、僕にはよく分からなかった。
ただ、まりなを責めるつもりはないのに、それでも何かが気になって仕方がない。
そんな複雑な気持ちを、さき自身もうまく整理できていないように見えた。
マンションに着いて玄関の扉を開けると、静かな部屋が僕たちを迎えた。
両親はまだ仕事から帰っていない。
「ただいまー」
いつもの癖で声をかけても、当然返事はない。
靴を脱いでいると、先に上がったさきが振り返った。
「はるにぃ、部屋来て」
「図工のやつ?」
「それもあるけど……」
珍しく歯切れが悪い。
子供部屋に入ると、さきは通学かばんを机の横に置き、そのまま二段ベッドの下段に腰を下ろした。
僕も隣に座る。
「それで、どうしたの?」
さきは膝の上で両手を組んだまま、しばらく黙っていた。
「……私ね、まりなちゃんのこと、嫌いじゃないよ」
「うん」
「今日だって、ちゃんと謝ってくれたし。私だったら、あんなふうに言えるかなって思った」
そこまで言ってから、さきは俯いた。
「でも……なんか嫌なの」
「何が?」
「分かんない」
さきは困ったように眉を寄せる。
「まりなちゃんが悪いんじゃないって分かってるの。でも、まりなちゃんがはるにぃのこと気になるって言ったら、急に胸のところがモヤモヤして……」
「それでずっとくっついてたの?」
「……たぶん」
さきは小さく頷いた。
それから少し迷って、僕の袖を摘まむ。
「はるにぃ」
「ん?」
「まりなちゃんと仲良くなっても、私のこと忘れたりしない?」
思ってもみなかった言葉だった。
「するわけないだろ」
「ほんと?」
「ほんと。さきは僕の妹なんだから」
さきは少しだけ頬を膨らませた。
「……大事な妹じゃないの?」
「え?」
「ただの妹みたいに言うから」
「そんなわけないだろ。大事な妹だよ」
そう答えると、さきはようやく満足したように笑った。
「……ならいい」
それでもまだ少し甘え足りないのか、今度は僕の肩にこつんと頭を預けてくる。
「じゃあ、もうちょっとだけこうしてていい?」
「暑いけどな」
「我慢して」
「なんで僕が我慢するんだよ」
そう言うと、さきがようやくいつものように笑った。
見境なく甘えてくる妹の愛らしさに、僕の理性が甘く痺れていく。そして、密着するさきの体温と熱意に応えるように、僕のズボンの下では、抗えない生体反応として男性器が嫌な熱を帯びて硬く脈打ち始めていたのだった。
西日が二段ベッドの木枠を橙色に染め上げている。 両親が夕方の買い出しに出て、マンションの子供部屋には静寂だけが広がっていた。 リビングからの生活音も聞こえない密室の中で、僕とさきは下段のマットの上に膝を並べて座っていた。
「ねえ……はるにぃ」
不意に、さきが僕の顔を覗き込んできた。 制服のスカートの裾を両手で少し持ち上げ、上目遣いで僕を見つめる。
「なに……?」
「あのね、夏休みに田舎の離れで過ごしたときのこと。覚えてる?」
その言葉を聞いた瞬間、喉の奥がキュッとなった。 暗い離れの部屋。自分の意志とは無関係に、身体の奥から突き上げてきたあの恐ろしいほどの衝動。 思い出すだけで、自分の身体が自分のものではないような、得体の知れない不安が襲ってくる。
「……覚えてるよ」
「あのときみたいに……今日も、二人でいっぱい助け合おうよ」
さきは、まるで遊びの続きでも誘うような、屈託のない笑顔で言った。
「助け合うって……どういうことだよ」
「はるにぃの射精を見れなかったから、見たいの。はるにぃの全部知りたい。知らないことがあるのが嫌」
さきは確信めいた口調で言い、僕の困惑をさらに深める。
「さき……でも、今は学校の服を着てるし。もし、あのときみたいになっちゃったら……」
「じゃあ、脱いじゃえばいいじゃん」
さきは僕の言葉を軽くあしらうように、ひとつの答えを提示した。
「はるにぃの、私に直接押し当てて……。あのときみたいに、出してほしいな」
「っ……」
言い返そうとした言葉が、喉に詰まった。 さきの瞳は、真っ直ぐに僕の目を見て、逃がしてくれない。 抵抗したい気持ちとは裏腹に、僕のズボンの下では、抗えない生体反応が静かに、けれど確実に熱を帯び始めていた。
「……そんなこと、急に言われても……」
「急じゃないよ。ずっと、思ってたもん」
さきはそう言うと、僕の返事を待たずに、制服と下着をさっと脱ぎ捨てた。 残ったのは、薄いキャミソール一枚の姿。 彼女はそのままマットの上に仰向けに座り両膝を大きく左右に広げてみせた。
「ねえ、はるにぃ。……早くぅ……」
西日に照らされた白い太ももとその奥の割れ目が僕の視界を占拠する。 さきの瞳は、まるで、僕が再びあの「熱」に飲み込まれるのを、楽しみに待っているかのようだった。
「……うん。分かった……さき」
僕は諦めたように頷くと、制服のズボンのベルトを緩め、ゆっくりと脱ぎ捨てた。 下着を膝まで引き下ろすと、隠しようもなく、硬く熱を帯びた僕のすべてが露わになる。
「あっ、はるにぃ!」
さきが声を弾ませて、身を乗り出してきた。
「なに……?」
「……私、はるにぃの全部が見たい。あのね、本で読んだことがあるんだけど……皮を捲ると、カメさんみたいな頭が出てくるんでしょ? それ、見たいな」
思わぬ角度からの質問に、僕は思わず顔が熱くなるのを感じた。
「えっ……そんなこと知ってるの……?」
ここ一年、お父さんに言われて、お風呂で捲って洗うようにはしていたけれど、他と同じ感覚がない不思議な場所と感じていた。あまりにも裸の自分をすべて見せるかのような感覚で、見せるのは恥ずかしかった。
「うん。見たい! ……ねえ、私がやってもいい?」
さきの瞳は、まるで新しいおもちゃをねだる子供のように、純粋な好奇心で輝いている。 僕は戸惑いながらも、抗えない熱を感じていた。
「え……ちょっと、待って……っ」
止める間もなかった。 さきの小さな指先が、僕の包皮の根元に触れた。 そのまま、ゆっくりと、けれど迷いのない手つきで後ろへと引き下げていく。
「あ……」
ぬるりと皮膚が滑り、背徳感とともに、隠されていた赤く過敏な先端が剥き出しになった。 それと同時に、独特の、少しツーンとした匂いが立ち上がる。
「あ……本当に出てきた! カチカチで、すごく赤くなってる……。ねえ、はるにぃ、痛いの?」
さきが心配そうに顔を覗き込んでくる。 僕は、お父さんに教えられた「お風呂でちゃんと洗うこと」を思い出し、猛烈な羞恥心に襲われた。
「痛いわけじゃないけど……でも、なんか……変な感じだし、その……おしっこ臭いよ……」
俯いて、消え入りそうな声で告げる。 けれど、さきは嫌がるどころか、くすっと小さく笑った。
「ふふっ、大丈夫だよ」
さきは僕の目を見つめ、いたずらっぽく、けれど優しく提案した。
「前に、私のあそこを拭いてくれた時みたいに……今度は、お互いきれいに拭きっこしようよ」
さきは通学かばんに入っていたウェットティッシュを手に取ると、一枚のシートを静かに引き抜いた。
「ほら、はるにぃ。じっとしててね」
さきは小さな指先にシートを巻き付けると、剥き出しになった先端の裏側や、その筋を、丁寧に、けれど優しく拭い始めた。
「んっ……あ……さき、冷たいよ……っ、そこ、触られるとおしっこが出そうな感じがする……」
ひんやりとしたシートの感触が、過敏な場所に直接伝わってくる。
「えっ、やめた方がいい……?」
さきが少し不安そうに顔を上げた。
「……我慢……できる、から……」
僕が震える声で答えると、さきは「わかった」と小さく頷き、また作業に戻った。
「じゃあ……ここ、少し白くなってるから。きれいに拭いてあげるね」
シートの冷たさと、さきの指先のわずかな圧力が、僕の理性をかき乱していく。 下半身がビクンと小さく跳ね上がり、自分でも抑えられないほど呼吸が荒くなった。
さきは、真剣な眼差しで僕の先端を拭き終えると、満足そうに、どこか誇らしげな笑みを浮かべた。
「はるにぃのここを知ってるの……私だけだよね?」
その瞳は、僕のすべてを自分だけのものにしたことを確かめるような、強い光を宿していた。
「う、うん……そりゃ、そうだよ……」
僕は、逃げ場のない熱い感覚の中で、ただ小さく頷くことしかできなかった。
今度は僕が新しいウェットティッシュのシートを引き抜き、さきの身体の上へと手を伸ばした。
「じゃあ……次はさきの順番ね」
「うん、きれいに拭いて、はるにぃ」
さきは太ももをそっと開き、デリケートな割れ目を自ら僕へと委ねてくれた。
いつもの、僕の下半身をダイレクトに刺激するさきの匂いが漂ってくる。僕だけが知っているさきの匂い。
僕は指先にシートを巻き、さきの愛液で湿った過敏な粘膜の溝を、傷つけないよう慎重に拭い取っていった。
「ん……ぁ……っ……はるにぃ……冷たくて……気持ちいい……っ」
その時、割れ目の上部に小さく隆起している部位の存在に、改めて気がついた。
もしかしてと、両手の指先で割れ目の中央から左右上方へと押し広げるように引っ張ってみると、そこには真珠のような核が隠れていた。軽く触れてみた。
「んあっ……! そこ……っ、だめ……っ」
さきが小さく身体を跳ねさせた。
「……もしかして、ここも……おしっこが出そうな感じがする?」
僕が尋ねると、さきは熱い吐息を漏らしながら、僕の頭にそっと手を添えてきた。
「……うん。はるにぃと同じ……。なんか、嬉しい……」
さきは、まるで自分だけが僕の秘密を共有できたかのような表情で微笑んだ。
誰にも見せたことのないさきの身体も、こんな風に感じる繊細な反応も、僕だけが知っている。他の誰も知らないさきを自分だけが知っているという事実が、むずがゆいほどに僕を嬉しくさせた。それと同時に、さきが僕のことを何でも知りたがっていた気持ちが、痛いほどよくわかった。僕だって同じだったからだ。
拭き合いっこを終えた時、僕たちの間には単なる性的な衝動にとどまらない、もっと深く、重い、言葉にできない熱量が満ちていた。
「おしっこが出そうな感じがするところを押し付け合うよ」
とさきは言った。
拭き合いっこを終え、僕たちは再び身体を限界まで密着させた。
さきの小さく開かれた太ももの間、愛液で濡れて過敏になった粘膜の割れ目へと、僕は剥き出しになった先端を直接押し当てた。
「んっ……あ……はるにぃ……直接当たって……すごく熱い……っ」
「さき……っ、んっ……!」
下着という一枚の隔たりすら存在しない、生の肉体同士の摩擦。
さきの身体から溢れる濃い匂いと愛液が滑剤となり、ぬるりと滑らかな感触が下半身を包み込む。
ゆっくりと腰を揺らすたび、真珠のような核と、僕の一番敏感なところが、お互いの蜜を塗りたくりながら直接擦れ合った。ピンと張り詰めた神経の束をじかに擦りつけられているような、痺れるような刺激が脳裏を突き抜ける。
田舎で起きたあの「予期せぬ事故」とは、まるで違っていた。
今の僕は、誰に強制されたわけでもなく、自らの意思と抑えきれない衝動で腰を動かしている。この破裂しそうな熱と昂ぶりを解き放ちたくて、溢れ出す欲のままに、ただひたすらさきの熱に貪りついていた。
「はるにぃ……もっと強く押して……はるにぃの固いのを擦りつけて……っ」
「うん……っ、さき……僕も……なんか、すごく気持ちいい……っ」
さきのうっとりとした顔と途切れ途切れの声に押されるように、僕は夢中で腰を擦りつけ続けた。
剥き出しの先端の裏側が、さきの過敏な割れ目や真珠のような核と擦れ合うたび、痺れるような快感が脳裏を駆け抜けていく。
ぐっと体重をかけて押し当てるたび、ぬるりと湿った肉と肉が合わさり、生々しい水音がふたりの間に響いた。
「あっ……んぁっ……! はるにぃ……あの感じがくる……っ!」
激しく擦り合わされる刺激に耐えかねたように、さきが声を弾ませて身体を固く強張らせた。
次の瞬間、押し当てている先端の裏側に、さきの生々しい律動が直に伝わってきた。
「んんっ…………ぁ……っ」
さきはうっとりと目を細めながら、どこかトローンとした蕩けた表情でため息を漏らした。さきから立ち上る甘酸っぱい匂いが、顔を近づけるたびに熱く鼻腔を突く。
さきのその反応に煽られるように、僕の擦り合わせるテンポも上がっていった。下腹部の奥であの田舎の夜と同じ熱い波が急速にこみ上げてくるのが分かった。もう自分では止められない。限界を超えた感覚が、一気に背筋を駆け上がってくる。
「っ……あ……さき、僕……出そう……っ!」
「えっ……出ちゃうの……!?」
さきは驚いたように目を見開き、僕の下半身と顔を交互にじっと見つめてきた。
限界に達した瞬間、僕の身体が大きく跳ね上がり、強烈な熱さと快感に身をよじらせながら絶頂を迎えた。
ドクッ、ドクッという強い脈動とともに、先端から熱いものが勢いよく噴き出していく。
「あ……ぁ……っ!」
僕が声を漏らして身悶えるのを、さきは息をのんで間近で見つめていた。
さきのお腹や開いた太もも、キャミソールの裾、そして僕の手の上に、白く濁った熱い液が飛び散り、ぽたぽたとお腹を伝って落ちていく。
ふたりの間には、愛液の匂いと混ざり合うように、栗の花に似た濃い精液の匂いが立ち込めていた。
身体の奥からの猛烈な脈動とともに射精を終えた直後、僕の頭の中を一気に塗りつぶしたのは、氷のように冷め切っていく強烈な虚脱感と正気だった。そしてそれと同時に、僕のすぐ目の前で息を呑んでいるさきへの、やり場のないほど強烈な愛おしさがこみ上げていた。
「っ……あ……僕……何やってるんだ……っ」
熱狂が急速に引き去った室内で、僕は引きつった息を漏らしながら、白く汚れた自分の手と下半身、そして精液が付着したさきのお腹を見つめて完全に固まっていた。
田舎で起きたあのハプニングとは明確に違っていた。今回は自らの意思と強い性衝動で腰を動かし、愛しいさきの身体を自分の手で汚してしまったのだという残酷な現実が、重くのしかかってくる。
「自分は凶暴な男の本能に屈し、なによりも大事なさきを性的対象にして汚してしまった」という猛烈な自己嫌悪と罪悪感が、冷や水のように頭から降り注ぎ、胸の奥を鋭く抉った。その横で、さきは僕の抱える絶望的な葛藤には気づかず、お腹に付着した白い体液を指先でそっと触り、至近距離で目撃した絶頂の凄まじい熱量と身体の跳ね上がりに純粋な驚きを覗かせていた。
「……はるにぃ、手すっごく震えてるよ? でも……すごかったね。目もトロンとしてて……身体がビクンビクンってなってた……」
「っ……あ、いや……なんでも、ない……っ」
僕は荒い呼吸を整えようとしたが、胸の奥を突き上げる激しい自己嫌悪は消えてくれなかった。
しかし、さきは僕の引きつった反応を気にする素振りもなく、無邪気な瞳を輝かせながらすがりついてきた。
「ねえ、はるにぃ。凄かったんでしょ? どんな感じだったの?」
さきにとって、僕と重ねる触れ合いは安心感を得る大切な時間となっていたが、同時に「自分には決して味わえない男としての強烈な快感の反応」に対し、純粋な興味を抱いていたのだった。
「えー、ずるいよはるにぃ。私にもその感じ、教えてよ。はるにぃばっかりそんなに気持ちよくなるなんてさ……私にその凄い感覚、教えて欲しいな」
「う、うん……分かったよ、さき。また今度……ちゃんと教えてあげるから……」
僕は引きつった微笑みを浮かべながら、さきの華奢な肩を強く抱き返した。絶望と罪悪感に怯える僕と、男の快感を無邪気に羨ましがるさき。二段ベッドの密室の中で、二人の間には決定的な心理的温度差と深い歪みが定着していった。
やがて夕暮れの西日が完全に沈み、子供部屋の中には静かな群青色の暗闇が広がっていった。僕とさきは乱れた服と下着を整え、二段ベッドの下段に並んで腰掛けた。
ウェットティッシュで汚れを丁寧に拭き取ったものの、部屋の中には栗の花に似た濃密な匂いと、甘酸っぱい愛液の名残が微かに漂っていた。その時、廊下の向こうから聞き慣れた足音が近づいてくる気配がした。
「ただいまー。ちょっと買い出し長くなっちゃったわね」
階段を上る靴音と、買い出しから帰ってきた両親の楽しげな会話。ガチャリと音を立てて、玄関ドアの鍵が解除される音が室内に響き渡る。僕とさきは身体を強張らせ、互いに固く息を呑んだ。扉一枚を隔てたすぐ向こう側には、いつも通りの家族の日常が広がっている。
けれど、この部屋で交わした生の肉体の感触と、吐き出された体液の記憶は、もう二度と元には戻せない、僕たち二人だけの不変の契約となっていた。