それからはまさに極楽と呼ぶにふさわしい自堕落な時間が続いた。
ベッドの脇に酒や買ってきたつまみの袋を引っ張り込み、ダラダラとお互い酒を飲み、つまみを口に運びながらの「ながらセックス」で、買ったばかりのコンドームを次々と消費していった。部屋のテレビでは相変わらずチープな映画が流れていたが、もはや画面を見ている者など誰もいない。
片手に缶ビールを持ったまま腰をゆったりと動かし、どちらからともなくムラついたら再び激しく腰を叩きつける。疲れたら挿入したままの状態で動きを止め、ベッドの上で乾き物を突っつく。
ここまでだらけきった無計画なセックスは互いにこれまでの人生で経験したことがなかった。だが、一度緩みきった欲望のネジは一向に締まる気配を見せず、不思議と興奮が冷めることもなかった。
「なぁ、平塚さん」
「ん……なんだよ」
「お前、さっきから繋がったまま普通にジャーキー食ってんの、絵面として凄まじいぞ」
「うるさいな。腹が減るんだから仕方ないだろ。お前こそ、ナカでピクピク動かしながらビール飲むなよ。変な感覚になる」
「お互い様だろ。……しかし、この調子でヤってたら、あんなに買ったつまみも酒もそろそろ全滅しそうだな」
「本当だ。柿の種もスルメもスカスカじゃん。お前がハメながらバカバカ食うからだろ」
「俺だけのせいにするなよ。お前だってさっきサワー二本一気に空けてただろ」
互いに身体を繋げたまま、遠慮のない駄弁りを交わす。繋がっている部分から伝わる互いの体温と微かな脈動が、言葉の端々に生々しいリアリティを与えていた。
一応飯としてカップ麺も買っておいたがどちらの胃袋も酒と乾き物で膨れていて食慾が湧かない。いつもの如く持ち帰りコースだろう。
やがて転がっていた空き缶の山を押し除けて確認すると、冷やしてあったビールは最後の最後、残り一缶となっていた。そして、ベッドの脇に置かれた箱の中を探ると、コンドームも綺麗にちょうど最後の一個。
これを使えば、今回の一泊二日の狂宴も本当にお開きということになる。
「最後の一缶と、最後の一個か」
「綺麗に使い切ったな。……じゃあ最後、どうヤる?」
「どうせなら、最後まで酒を楽しみながらヤろうや。飲ませ合いながら、ほろ酔い気分でさ」
「いいね、それ。じゃあ私の上に跨がるか?」
「いや、最後はお前が上になれよ。跨がって動いた方が楽だろ」
「ちぇっ、人使いが荒いねぇ」
平塚さんは文句を口にしながらも、慣れた手つきで俺の上に跨がってきた。ゴムを装着し、ゆっくりと腰を落とし込んでいく。すでに何度も受け入れ、俺の形に馴染みきった彼女のナカは、何の抵抗もなくぬめりとした熱気で俺の竿を根元まで飲み込んだ。
彼女は手元に残った最後のビール缶を手に取ると、プシュッと音を立てて開けた。そして、自分の口内にビールを並々と含む。
「……ん」
彼女はそのまま上半身を深く倒し込み、俺の顔の上に覆いかぶさってきた。重なった唇から、冷たい液体が滑り込むようにして俺の口内へと流し込まれていく。彼女の口内の温もりと麦芽の苦味、そして冷たい炭酸の刺激が混ざり合い、喉を通って胃へと落ちていく。
「ふはっ……いきなりだな」
「へへ、どうだ? 美味いだろ」
「悪くない。だが、手が止まってるぞ」
「言われなくても」
彼女はニヤリと不敵に笑うと俺の胸に両手をつき、一気に腰を激しく上下させ始めた。
ナカの熱い粘膜が、俺の竿を擦り上げながら激しく収縮する。彼女が腰を打ちつけるたびに、結合部から湿った生々しい音が部屋に響き渡った。ほろ酔い気分の心地よい浮遊感と、下半身を襲う圧倒的な肉の快楽が混ざり合い、脳の輪郭がトロトロと溶けていくような感覚に陥る。
「んっ……あふ……ッ、お前……これ、すっごい深くまで入ってくる……っ」
「お前が自分で上から落ちてきてるからだろ……っ、ほら、もっと酒よこせ」
「はいはい、欲望に忠実な奴……ん」
彼女は再び缶ビールを口に含むと、髪を振り乱しながら再び俺の唇を塞いできた。今度は口移しと同時に、腰の回転を強めてくる。口内に流れ込んでくるビールの冷たさと、下半身を包み込む灼熱の対比に俺の理性が弾け飛んだ。
彼女の口から零れたビールが、俺たちの顎を伝い、首筋から胸元へと伝い落ちていく。酒の匂いと、お互いの汗の匂い、そして何度も吐き出してきた精の匂いが混ざり合い、部屋の中は濃密な性愛の空気で満たされていた。
「ッ――、平塚さん、激しすぎる……っ」
「あはっ……いいじゃん、最後なんだから……っ! 私も……もう、限界……っ!」
彼女は俺の胸を爪が食い込むほど強く掴み、なりふり構わず腰を打ちつけ続けた。口移しで流し込まれたビールが喉を突き、ほろ酔いの頭に強烈な快感が突き刺さる。舌を絡め合わせながら、俺は下から腰を突き上げ、彼女の最奥へと何度も深く叩きつけた。
「んんっ、ぐ……っ!! イく、イくからっ……一緒にイけ……っ!」
絶頂の瞬間、彼女は俺の口内に含んでいた最後のビールをすべて吐き出し、同時にナカを力任せに締め上げてきた。俺も耐えきれず、彼女の腰を掴んで突き上げたまま、最後の一滴まで絞り取るような勢いで、コンドームの中に濃厚な射精を叩き込んだ。
互いに酒と快楽に酔い痴れ、激しく身体を震わせながら、俺たちは最後の絶頂の余韻に身を任せていた。