秋というか、秋の長雨はイマイチ好きになれない。バイトに行くのも片手が塞がってしまうし、野外ライブの場所も限られてしまう。なにより、みんなの顔が傘で見えなくなって少しだけ不安になる。
「すみません。まさか雨が降るとは思わず……」
でも、こういうハプニングなら願ったりだった。
プロデューサーがこれからの予報を見ながら部屋を右往左往する。自分の家なのに落ち着かない様子で所在なく歩き回っているその脳内では必死に、あたしをどうやって寮に帰すか考えているのだろう。
突然の雨だったので外泊届も出していないし、一度降った雨は止まない。それに——。
「激しくなってきちゃいましたし、これじゃ傘差しても濡れちゃいますね~」
窓の外は鈍い色をして、パタパタと横殴る音がくぐもった個室に雨の強さを伝える。後ろを振り返るとプロデューサーの顔がまた一段と曇った。
「今すぐタクシーを——」
「えっと……あたし的には、このままでもいいってゆーか……泊まっちゃいたいな~~って思ったり?」
「それはできません。こちらの不手際とはいえ、担当アイドルを自宅に泊めるなど言語道断です」
「でもでも、かわいいアイドルがずぶ濡れになって風邪引いちゃうかも~~~とか? せっかく元気になって調子絶好調のことねちゃんが体調崩してダメダメになっちゃうかも、とか?」
うぐっ。とプロデューサーは頭を抱える。あたしの言い分をもっともなことだと思ったらしい。別にあたしはプロデューサーを責めるつもりはないのだけど。
「こんな無防備な女の子を一人にしたら襲われちゃうなぁ~」
「寮の前まで送りますが……」
「とにかく! プロデューサーが何言っても帰らないですから!」
何分睨み合ったか、唸り声を上げて臨戦態勢に入ったあたしとの膠着状態が続き、やがて観念したように端末を叩いた。
——後で一緒に怒られましょうね。
そう言ったプロデューサーは少し嬉しそうに笑った。呆れ笑いだったかもしれない。
学園にメールを送ると、すぐさま電源を切ってジャケットを脱いだ。眼鏡を机の上に置いて、ソファに座り込む。
普段はなかなか見ることのできない、完全なオフのプロデューサー。目頭を押さえて、思い出したという様子で立ち上がり、冷蔵庫からお酒の瓶を取り出した。
視線に気づいて、手酌で注ぎながら訝しげにこちらを見る。
「イヤ、さすがに飲まないですから」
「そうですか」
思えばプロデューサーがお酒を飲んでいるのを見るのは初めてだった。そりゃたしかに大学生なら飲み会のひとつやふたつ行くだろうけど、この人、あたしのことばっかりだからなぁ。もちろん学園内の飲酒なんて禁止されてるし。
いつもこうやって一人で飲んでいるのだろうか。友達と遊んでいるところも全く想像できない。
「失礼なことを考えているようですが、仲間くらいいますよ。宅飲みの余りです」
「えっ!? えっと、いくらプロデューサーでも、そこまでの読心術はちょっと無理カモ……です」
「本当に失礼ですね」
このくらい心を読むまでもありません。と言ってまた一口含んだ。
「くしゅっ」
「——濡れましたか」
くしゃみをしてパーカーを引き寄せたあたしの方を見る。眼鏡を拾ってこっちのベッドまで歩いてくる。
「ん……ちょっと寒いかナ~ってだけです。プロデューサーが庇ってくれたので、濡れてはないですけど」
スタジオから出た時既に雨は降り始めていて、軒下のタイルを浅黒く濡らしていた。まだ小降りだったので走ればなんとかなるかとも思ったのだが、どこからともなく現れた大きい折りたたみ傘によって、あたしは雨から護られることになった。
一本の傘では二人を収められない。想像以上に勢いを増した雨はあたしの足も濡らし始めたのだから、ましてプロデューサーは。それなのにこうしてあたしの心配をするのは、なんというか、好きすぎる。
「風呂を沸かしてきます。暖房が効くまで耐えてください」
「は~い」
浴室に消えていくプロデューサーを見届けて、ベッドの上でくしゃくしゃ状態の布団に無造作にくるまった。まだ暑さが残る日々、秋のことで、ブランケットに近い夏用の薄布団だった。
プロデューサーの香りが鼻先から入り込む。目を閉じて、ぎゅっと布団に手を回した。
感覚が研ぎ澄まされる。雨が地面を打つのに紛れて、遠くから浴槽を洗う音が聞こえてくる。暖房の、低く唸るような声も、通り過ぎる車の音と同化している。
指先に乾燥を覚える。普段使っている教室には加湿器が置かれているが、この部屋には置かれていないらしかった。日常を過ごす寮にも当然配備されているので、湿度の低いこの部屋は特別寒く感じたのだ。
浴槽の栓をしたプロデューサーが戻ってくる足音がする。すぐそこまで来て、何も言わずソファに腰掛けた。あたしが寝ていると思ったのか、テレビを付けることもなく、カラカラと氷の音だけを響かせている。静かな空間で、暖房の音がうるさいくらいだ。
しばらくそうしていて、お風呂が沸いた。プロデューサーがあたしを起こす前に跳び上がると、驚いた表情をする。
「起きてたんですね」
「はいっ。お風呂、お借りしま~~っす♡」
まだ少し呆然とするプロデューサーを横切って洗面所に入る。
洗面所は狭く、いかにも一人暮らし風だ。多少の着替えもここにあるらしい。そういえば、替えの服、ないかも。タオルは目に付く場所に平積みされているが、さすがにあたしサイズの服は見当たらない。
まあ、それは後で考えることにしよう。
風呂の扉を開けてすぐ、化粧品類の少なさに気づいた。シャンプーにリンス、ボディソープとジェルタイプのクレンジングがあるだけだ。これは文句を言っておかなければならない。
そうして椅子に座ったのだが、低気圧で微妙に回っていなかった頭がシャワーで解されていくのと同時に、今自分が置かれている状況を認識してしまった。
この椅子とか、ボディソープとか、全部プロデューサーが使ったやつだよな……。ってか裸だし、カゴに下着とか入れてきちゃったし、何やってんのあたし!
気づいた時にはもう髪を洗い終わっていて、ボディソープに手を伸ばしているところだった。ヘッドに力を入れると、泡が手のひらに広がっていく。
ごくり。生唾を飲む音がして、恐る恐る自分の身体に泡を押し当てる。手の甲から腕に伸ばしていくと、ふいにプロデューサーの手が思い浮かび、重なる。プロデューサーのゴツゴツとした大きな手は、存外に柔らかい。そこには彼の人柄が現れているのだろう。あたしに向けられた彼の温かい笑顔が脳を過ぎる。
いつの間にかあたしは胸に手を伸ばしていた。
「っっ、ん……」
胸全体についた泡を滑らせ、弱い力で揉み上げる。乳首はもう、これ以上無いほどに緊張して、周囲に触れるだけでもお腹の奥が締めつけられてしまう。薄桃色の乳輪を撫でるしたたかな快楽に加えて、乳首に擦れる爪先の身体を貫くような刺激に苛まれる。
ゆるく腰を突き出し、下腹部に力を込めるとますます快感が強くなって、指が激しくなる。人差し指の先で乳首を押しつぶし親指の腹を使って摘むと、張られた弦の、矢の放たれたように上反って、思わず甲高い声を出しそうになる。
反射的に口を押さえたところであたしは正気に戻り、さっと全身を流して湯船に浸かった。
一体何をやっているんだろう。まだ温かいままの湯船で顔を覆う。
さすがにサカリすぎだって、あたし! 人の家に上がり込んで風呂貸してもらって、耐えきれなくてオナニーとか、ありえないでしょ。しかも同じボディソープ使って興奮するってどんだけ変態なんだよ!
でも、まだイけてないあたしのお腹がうずうずじんじんしている。プロデューサーの物に囲まれて我慢できないって、いま顔を抑えているこの手を外せば、すぐにでもさっきの続きをしてしまいそう。
このままここに居たらどうにかなってしまいそうだったから、火照る頭を振り払って立ち上がった。
◇
「プロデューサー。おまたせしました~……」
「藤田さ——」
プロデューサーは言いかけたまま動かなくなってしまった。
あたしは大きなTシャツに一枚袖を通しただけで、彼の前に出てきていた。
「あ……えっと」
「着替え無かったので、畳んであったの着ちゃいました♪」
「————! すみません、すぐに買ってきます!」
「イヤイヤ、それじゃプロデューサーが濡れちゃいますって。それに、たまにはこういうのもいいかな~って……安心、するし……」
部屋着だと思われるそれは、あたしが着ると袖が大きく余ってしまう。もちろん、丈は腰よりも深く、太腿の辺りまで届いている。シルエットを隠すくらいにぶかぶかで、多分プロデューサーが着てもゆったりとしたものになるだろう。
手首を顔に近づけると、柔軟剤の匂いがする。
「藤田さん、下着は……」
「……気になっちゃいます?」
「いや、その」
「確認、してもいいですよ」
上目遣いで誘う。誘う言葉が、自分でも甘い響きをしていると判る。心臓のどきどきが全身に脈を打たせている。下半身から垂れた熱い雫を、プロデューサーが目で追う。
プロデューサーの座っているソファに一歩、二歩近づいて、手を広げた。重い足取りで、じりじりと距離が縮まっていく。プロデューサーはまだ何が起きているか分からない様子で、夢でも見ているようにぼんやりしている。あたしも、どうしようもなく淫らな熱に浮かされていた。
プロデューサーの膝にゆっくりと腰を下ろす。ぐちゅ、と水音がして、ズボンの生地の感覚が直に触れた。
「どう……ですか?」
肩に手を回して、距離を縮める。
「んっ……」
クリトリスが擦れる。びくんと震えると、その動きでまた擦れる。
「あっ、んぅ」
「だ、駄目です藤田さん」
ようやく金縛りから解けたプロデューサーが、あたしを引き離そうと身体を摑む。親指の先がたまたま、あたしの胸だった。
「ぅあ!? イっ——」
鋭い快感が迸り、お腹の奥が激しく収縮する。乳首に感じる思わぬ衝撃がさっきまで寸止めていた絶頂の堰を切り、それを前戯でなくしてしまった。熱い、浮遊感。そしてバランスを崩したあたしはプロデューサーを押し倒した。
「痛っ——だ、大丈夫ですか」
「っっは、んく、っはぁ、はぁ……」
心配そうに真下から見上げるプロデューサーに、あたしは答えられない。だって、大丈夫であるはずがない。涙が出そうなくらい火照っているのに、子宮がじんじんしてプロデューサーの好きを欲しがっているのに、どうして離れられようか。
それに、ちょうどお尻の直下、もぞもぞと震えている硬化した物も、服を突き破ってあたしの膣内に入りたいって訴えている。
「んっ……」
ぱっくり開いたおまんこの唇でズボンの縫い目をなぞる。
——すり、すり。
一方ではやさしく、ちゅーするみたいにとろとろの愛液を塗りたくって、他方ではプロデューサーの長いまつ毛と、綺麗な黒色の瞳をじっと見つめる。
プロデューサーがなにか、制止するようなことを言った。だからあたしはこれみよがしに腰を落として、
「でも……ここ、硬いですよ? ——あたしも、もうガマンできない……です」
「……いけません」
「あたしのせいに、してもいいですからっ」
「…………」
「襲ってくださいっ。それか、大人しく襲われてください!」
意識してかせずしてか、あたしはクリトリスをプロデューサーの腰の上で押し付けていた。勝手に身体が動いているのか、自分で考えているのか分からないまま、ヒトの身体でオナニーをして、シャツ、ベルト、スラックスを問わずべちゃべちゃに愛液を染み込ませている。
お尻の穴におちんちんをあてがうようにして、その擦れる感覚が理性を削り落とした。
「…………」
「限界なんですっ、大好きな人に包まれて、おかしくなりそうなんですっ! だから……ぅぅっ、ひぐっ……」
訴えていたら、自分でもなにがなんだか分からないうちに、涙が溢れてきた。
真下を向いているから、それは頬を伝うことなくプロデューサーの首許に落ちていく。あたしは目許を拭う暇もなく、彼の輪郭に手を添える。
黙りこくっていたプロデューサーは、そっとあたしの頬に触れて、抱き寄せた。さらさらと流れる髪に指が通って、弱い力で頭を撫でられる。
「……分かりました」
「————!」
「ただし、藤田さんはまだアイドルですから、万一にも妊娠するようなことがあってはいけません。なので、挿入しない方法で行います」
「挿入、しない……?」
「はい。お互いの物を触るのも禁止です」
しばらくの抱擁があって落ち着いたあたしはTシャツを脱いで、まっさらな身体を晒していた。さっきまでほとんど裸だったとはいえ、いざこうして身を守るものを全て脱ぎ捨てると、途端に羞恥心を感じてくる。
でも、あたしの身体に釘付けになっているプロデューサーを見るのは悪くない気分だ。あまりにも真剣に見つめるから、そういうプレイをされているのではないかとも思ってしまう。
しかしそれで恥ずかしがっていてはいつまで経っても始まらないと、己を焚き付けて両手を身体から離す。また動けなくなってしまう前に、その手をプロデューサーのズボンへ伸ばして、チャックを下ろした。
雨の湿気と暖房によって籠った熱気が、綿素材の内から放たれる。それに、パンツの盛り上がった先端は黒く湿っていて、繊維は粘性を帯びている。興奮していたのがあたしだけではなかったのだと思うと、すごく嬉しい。
そのまま触れようとして——
「ストップ。油断も隙もあったものじゃありません。触るのは禁止と言ったでしょう」
「で、でもさっきいいって」
「スラックスの上からなら直接触れないからギリギリセーフと説明しましたよね? これ以上は触れてしまうのでアウトです」
「触ってほしくないんですか?」
「それとこれとは別です。それはまた……今度にしてください」
今度。それは、今日だけでこの関係性を終わらせないと宣言しているのと同じこと。二人が深く愛し合って、互いが互いを求め合う関係。
その「今度」を想像する。
目の前にある白いベッドで、二人は裸になっている。灯りを消して、暗闇のなかじっとりとした汗をかきながら呼吸音だけを感じる。その時に、プロデューサーが優しくリードして初めてを貰ってくれるのだ。
意固地なプロデューサーのことで、それがいつになるかは判らないけど、必ずその時を用意してくれる。だから今日は見つめ合ってするオナニーで満足してほしい、ということ。
そんな物思いをしている間に、プロデューサーはいつもの格好のまま物を外に出していた。暗がりでディテールはよく分からない。
臭いと聞いたことがあったけど、この距離では大して何も感じない。顔を近づけようとすると、肩を押し返されてしまったので、大人しくプロデューサーの膝に跨る。
膝立ちになって、プロデューサーの背中に手を回しながら漸近する。まだ、少し離れていた。下腹部が物寂しくて、ソファが狭いから、と言い訳して胸が当たるくらいに近づいていく。
いよいよ、お腹に熱い物があたっていた。ぴく、と震えるのが直に伝わる。質量を持ったそれはあたしに寄り掛かるように反り立って、じっとりとした熱と重さが、ちょうど子宮の辺りにのしかかる。プロデューサーは何も言わない。
プロデューサーの熱い吐息が頸許を照らす。この距離ではもう、お互い誤魔化しがきかないほどに興奮していた。
「ちゅ……。ちゅっ、く」
どちらからともなく唇を重ねる。舌を入れない、軽いキスで水音が跳ねる。柔らかいこととか、多少の感触しか分からないけど、何度も何度も食んでは顔を離す。
「んちゅ、ちゅうっ——ちゅっ」
深くしないのはたぶん、プロデューサーの配慮だ。それでも繰り返し小さなちゅーをするのは愛されている証拠で、重ねる度に好きが溢れてくる。ついばむようなキスでも気持ちいいのは、相手がプロデューサーだからだ。
「ぷろでゅーさぁ、もっとほしい……ん」
くっついて、離れる。顔を寄せると同時に、腰が蠕動する。
微小な動きでも、熱い物がお腹の外側を行き来して、擦れている。ぐちゅっ、ぐぢゅ。どろどろの液体が塗り拡げられていく。粘度の高い先走り汁は重く淫靡な音を鳴らして、カリ首の叩き打たれる快感を何倍にも増幅させる。
べた、べた。
唇を離せばまたそれが予備動作をして、近づければごくわずかな振動が表皮から子宮を揺らす。互いに、軽く重い愛情表現で貪り合っているのだ。
「ぷろでゅーさぁの味、おぼえちゃう……」
「…………! 覚えてください。絶対に忘れないでください。……絶対に覚えさせますから」
「——んぅ!? んん、ぢゅるる、っちゅ。ぅぅ、ぢゅうぅ」
乱暴に舌を捩じ込まれる。
巻き付くように腕を頸に回して頭を摑み、俺のだぞって解らせるみたいに口内を蹂躙する。それが、どうしようもなくうれしい。
「……舌、出して」
「ひぁっ! ぇ……んっ~~~~~! ぢゅるるうっ、ぢゅっ。ぷはっ——あぅ、ん、ぢゅうう」
全身にじんわりと汗が滲み出ていた。絡み合った腕がじっとりと濡れて、二人を分かちがたく、一体のものとしている。
もはや、おまんこはぐずぐずに蕩けてしまっていた。スラックスが使い物にならないくらい浸してしまっていてもおかしくない。それと同じくらい、おちんぽがあたしのお腹をぐちゃぐちゃにマーキングしている。
やがて、あたし達は一分にも満たない休憩をした。続きをするには酸欠になりそうな熱気を冷まさなければならなかった。もちろん、まだプロデューサーに跨って、抱き合っている。
息も絶え絶えに上下する背中を感じる。それは下腹部も同じで、大きく脈打つのが伝わってくる。
やっぱり、触りたくなってしまった。それで伸ばした手を摑まれる。
「ダメです。代わりに……ここをお願いします」
そう言って耳を指さす。
「プロデューサーそういうの好きなんですかぁ?」
「好き……というかですね」
知っている。
「音声作品、聞くんですよね? 耳舐め……的な」
「いやまあ、その、」
「女の子に迫られるのが好きだから、だぁ~~~いしゅきな担当アイドルに、いっぱいしてほしいんですよね?」
悪戯に耳許でささやいた。
「しょうがないなぁ、いいですよ♡」
左手をプロデューサーの頬に添えて、頸筋に舌を這わせる。血管を犯すみたいに下から上へ、そして耳に辿り着く。吐息が当たると少し震えるのがおもしろくて、意地悪したくなってしまう。
「ちゅっ。……ふーーーっ、」
下で大きく反応したのが判る。耳に息を吹きかけられて、興奮しているんだ。
「はむ。むぐ、じゅるるる……じゅるっれるれるれぇ、ちゅ。じゅるるっ」
耳の上方を甘噛みして、舌先から垂らした唾液を啜り上げる。暗闇でも判るくらい真っ赤になった耳を口内と舌で弄ぶ。
プロデューサーの呼吸が荒っぽくなっている。前傾姿勢になったあたしのお腹で、何かが上下運動している。熱い液体が分泌されるその下で、プロデューサーの指の背が行き来しているのだ。
それが、子宮にマッサージのような刺激を与える。関節が交互にお腹を外から圧迫して、きゅう、きゅうと締めつけられる。
「ん……っ」
あたしも我慢できなくて、右手指を自分の膣内に挿れる。ぐちゃぐちゃした音。手の甲にプロデューサーの熱い感覚が伝わってくる。
「ぺちゃっぢゅ、じゅるるるっ————うまくできてます? あたしに耳舐められてぇ、こーふんしちゃってます? ひひー♡」
わざと吐息交じりに囁く。プロデューサーの動きが速くなり、あたしのお腹への刺激も増えていく。突き上げるように押されるのが、もうほとんど本番しちゃってるのと同じようで、膣内をかき回す指をおちんぽだと脳が勘違いしてしまう。
「くちゅ、くちゅ……♡ あたしのおまんこだと思ってぇ、たぁ~っくさんシコシコしていいですよ♪ あたしも、プロデューサーのだと思ってい~っぱい気持ちよくなっちゃいますからっ♡」
ぐちっ、ぐちゅぐちゅぐちゅ——。ぬるぬるのおまんこを乱暴に触りながら、プロデューサーに身体を預ける。
「ぇろっ、んぅ……♡ ぐちゅっくち、ちゅっ。くちゅ……くちゅっ、はぁ——♡」
肉襞を凌辱する二本指とは反対に、舌でやさしく軟骨の真ん中をなぞる。
くちゅ……♡ くちゅ……♡ って奉仕するあたしの下は淫乱そのもの。
「んん……♡ きもちいっ、ぷろでゅーさぁ♡ ちゅっ。ちゅ、ちゅっ——んっ♡」
執拗にキスをして、しゅき♡ あいしてる♡ ってあたしの想いを教えてあげる。プロデューサーのかわいい反応を見ると愛しさが止まらなくなって、お腹の奥、ちょうどプロデューサーの物が当たっているところがきゅんきゅんしてくる。
そろそろ、限界が近かった。
「ぷ、ぷろでゅーさぁ、あたし、そろそろイキそッ——あぅっ」
————いっしょに、
苦しそうな喘ぎが聞こえてきて、スパートをかける。耳許に口をつけて、
「————いくっ」
小さく呟いた。
びゅっ——! びゅるっ びゅるるる——
——びくっ、がくがくっ
痙攣するあたしの、右手とお腹に精液がぶち撒かれる。侵略するみたいに、熱い液体があたしの身体を犯す。頭がふわふわする一方で、大量に放たれた精液が重く鈍くあたしを堕とした。
心地のよい倦怠感に包まれながら、プロデューサーの頭を撫でる。
「はぁ……♡ はぁ……♡ 上手にしゃせーできましたね、プロデューサー♪」
背を伸ばしておっぱいの間にプロデューサーの頭を収める。
そのまましばらく手を行ったり来たりさせていて、プロデューサーが何も発さないことに気づく。まさか、罪悪感とかそういうので落ち込んでいるのではなかろうか。
顔を放して、「……? プロデューサー、どうかしましたか
————ひぁ!?」
頸筋に鋭い、なにか食い込む痛み——。放したはずのプロデューサーの頭が視界から見切れていて——。
「ぅ゙~~~~~~~~!!」
絶頂。〆られた魚みたいに腰の制御が効かなく成って、射精したばかりの硬いおちんちんに何回もクリトリスを擦りつける。快楽を司る神経を直接噛み砕かれたような痛みに、呆気なく幾度目かの絶頂を迎えてしまったのだ。
暴れるあたしの腰を摑み、犬歯はますます深く突き刺さっていく。瀕死の獲物を仕留めるように、プロデューサーは離さない。
いく、いく、いく。潮かなにか、噴いている。きっと頸筋から血も流れている。
あ————————
◇
「——痛っ」
プロデューサーが苦しそうな声を出す。
「『——痛っ』じゃないですよぉ! あたしの頸にこーんな痕つけておいて、どの口で被害者面してるんですかッ!」
…………すみません。そう言うプロデューサーの頸からは三箇所、歯型が刻まれている。当然あたしがつけたものだ。
「これに懲りたら、もう絶~~っ対にやらないでください」
仕方のないプロデューサーの傷痕を、やさしく舐めた。