とりあえず徐々に戻って来たのでリハビリ・・・・・・ちなみにホモではありません。
深夜零時を回ったバックヤードには、大型冷蔵庫の重い駆動音だけが低く響いていた。
蛍光灯の白い光の下、男はタイムカードをラックに戻し、勝手口のマスターキーを指に引っ掛ける。
売上金の確認も、ゴミ出しも、すべての締め作業は終わっていた。あとは男が照明を落とし、扉を施錠して外に出るだけだった。
だが、スチール机の前のパイプ椅子には、まだ人影が残っている。
後輩の彼女だ。
すでに制服から私服のニットに着替え終えているというのに、膝の上でバッグの持ち手を両手で握りしめたまま、立ち上がろうとしない。
男は何も言わず、手元の鍵をジャラリと小さく鳴らして彼女を見下ろした。
帰らないのか。
そう告げるような無言の視線に、彼女の肩がびくりと跳ねる。
「あ……あの、先輩」
彼女は弾かれたように立ち上がった。
視線は定まらず、男の顎のあたりを落ち着きなく彷徨っている。
「すみません、待ってて……その、ちょっとだけ、相談したいことがあって」
男は立ち止まったまま、返事もしない。
身じろぎひとつせず、ただ静かに彼女の次の言葉を待つ。
「あの……恋愛相談、なんですけど」
(言っちゃった……どうしよう、こんな夜遅くに)
耳たぶまで一気に赤く染めながら、彼女は視線を床のビニールマットへと落とした。
男が相槌すら打たないため、沈黙が狭い室内を重く満たしていく。耐えかねたように、彼女は指先をもじもじと絡め合わせながら言葉を継いだ。
「サークルの人とかじゃなくて……その、身近な人で、好きな人ができちゃって」
男は眉ひとつ動かさない。
ただじっと、熱を帯びていく彼女の頬を見据えている。
「すっごく……無口な人で。普段から全然喋ってくれないし、何考えてるか分からないんですけど」
(先輩のことです、なんて絶対に言えない……)
「でも、仕事の手際がすごく良くて……私がミスしたときも、何も言わずにフォローしてくれて。いつも怒ってるのかなって不安になるけど、そうじゃなくて……ただ、言葉が少ないだけで」
そこまで一気に捲し立てて、彼女は小さく息を呑んだ。
並べ立てた条件が誰を指しているのか、自分で自覚して耐えきれなくなったのか、首筋まで真っ赤に染め上げている。
「その……どうやって距離を縮めたらいいか、分からなくて。もし、その人が……目の前にいたら、先輩なら、どうしますか……?」
上目遣いに向けられた潤んだ瞳が、男の反応を恐れるように、けれど縋るように小刻みに震えていた。
男は一切口を開かない。
ただ、指先に引っ掛けていた勝手口の鍵を、ゆっくりと背後の作業台の上に置いた。
カチャリ、と金属音が静まり返った室内に硬く響いた。
男は作業台に鍵を置いた姿勢のまま、ゆっくりと上体を起こした。
靴音が一つ、冷たいリノリウムの床を踏む。
続いて、もう一つ。
彼女が息を呑む暇もなかった。
狭まった距離に後ずさろうとした背中が、背後のスチールロッカーに硬くぶつかる。
(え、先輩……?)
逃げ場を失った彼女の視界を、男の広い影が完全に覆い尽くした。
男の大きな手が迷いなく伸び、彼女の華奢な顎先を強い力で捕らえる。
上を向かされた瞬間、抗議のために開かれかけた唇を、熱く湿った重みが乱暴に塞いだ。
「ん……っ!? んむ……っ」
驚愕に見開かれた彼女の口内へ、男の舌が容赦なくねじ込まれる。
無理やり隙間をこじ開け、歯列の内側を強引になぞりながら、逃げ惑う彼女の舌を根元から絡め取っていく。
男の荒い鼻息が直接肌を打ち、むせ返るような体温が彼女の全身へと雪崩れ込んだ。
(うそ……なんで、いきなり……息が、できない……っ)
顎から後頭部へと男の指先が滑り込み、黒髪を掴んで逃げ道を完全に塞ぐ。
角度を変えながら深く吸い上げられるたび、頭の芯が痺れるような感覚が走り、思考が急速に白く染まっていく。
抵抗しようと男の胸板に添えた彼女の両手は、指先から力が抜け、押し返すどころかシャツの生地をくしゃりと掴むことしかできない。
「ん……っ、ふ……っ、ぁ……」
唇の端から零れかけた吐息すら、男の喉へと強引に飲み込まれていく。
静まり返ったバックヤードに、重なり合った粘膜が擦れ合う湿った音だけが響き、彼女の膝は立っていることすら耐えられないかのようにガクガクと震えていた。
唇がわずかに離れた瞬間、細い銀の糸が二人の間に引かれ、ぷつりと切れた。
結衣は肩を大きく上下させ、乱れた呼吸を整えようと必死に喘ぐ。
だが、男は一歩も引かなかった。
逃げ出そうと横へ逸れかけた彼女の肩先を遮るように、男の左腕がスチールロッカーの扉に叩きつけられる。
ガコン、と鋭い金属音が狭い空間に反響した。
(逃げられない……っ)
身をすくませた結衣の、反対側の退路を塞ぐように、今度は右手がロッカーを突く。
冷たい鉄の扉と、男の厚い胸板。そのわずかな隙間に、彼女の身体は完全に閉じ込められた。
男は何も言わない。
ただ、すぐ目の前から、容赦のない視線で彼女の濡れた瞳を見据え続けている。
至近距離から吹きかかる熱い息遣いが、結衣の耳朶を容赦なく打ち据えた。
「せ、んぱい……っ」
かすれ切った声で呼びかけても、返ってくるのは冷徹な沈黙だけだった。
何を考えているのか、怒っているのか、それともからかわれているのか。言葉がないからこそ、男の存在感そのものが圧倒的な重圧となって彼女を圧迫する。
(どうして……何も言ってくれないの……?)
耐えかねて視線を逸らそうとした瞬間、男の大きな手が伸び、結衣の細い手首を無造作に掴み上げた。
強く握り潰すような乱暴さはない。けれど、絶対に振りほどくことを許さない、確かな力で固定される。
そのまま持ち上げられた彼女の手は、頭上のスチール扉へと押し当てられた。
「あっ……待っ……て……」
(力、入らない……立てないよ……)
膝の力が抜け、ずるずると崩れ落ちそうになる身体を、男が自らの体重でロッカーへと押し戻す。
密着した身体越しに、男の規則正しい心音と、硬い骨格の感触がダイレクトに伝わってきた。
男の空いた手が、結衣の紅潮しきった頬へとゆっくりと伸びる。
親指の腹が、濡れて赤く腫れた下唇を強く押し下げ、口元を無防備に押し開かせた。
言葉を奪われ、退路を断たれ、手首を押さえつけられたまま、結衣はただ荒い息を吐きながら、自分を見下ろす男の瞳から目を離すことができなくなっていた。
(怖い……っ)
見下ろす男の瞳に感情の色はなく、結衣の背筋を冷たい悪寒が駆け抜けた。
何を考えているのか分からない。怒っているのか、それともただ弄ばれているだけなのか。
無言のまま冷たいロッカーに縫い止められ、手首を掴まれた状態では、息をすることすらままならなかった。
心臓が耳元で早鐘を打ち、震える爪先からじわじわと血の気が引いていく。
(何をされるの……嫌だ、先輩……っ)
たまらずギュッと瞼を閉じ、次の手荒な接触を身構えた。
だが――唇に触れたのは、驚くほど静かで、柔らかな熱だった。
「……っ」
先ほどのように強引に口内を抉じ開ける気配はない。
男の唇は、怯えて震える結衣の口元をそっと包み込むように重なった。
奪うためではなく、熱を分け与えるような、静かな吐息の混ざる口づけ。
わずかに触れては離れ、角度を変えて、赤く腫れた下唇を慈しむように優しく吸い上げてくる。
(え……?)
混乱で思考が白く霞む。
硬直していた結衣の肩から、すっと強張りが抜けた。
手首を押さえつけていた男の指先が、静かに離れる。
代わりに、大きな掌が結衣の脇腹をすり抜け、背中へと回された。
薄手のニット越しに、男の熱い掌の輪郭がはっきりと肌へ伝わってくる。
ゆっくりと。
怯える小動物を宥めるように、男の手が結衣の背骨に沿って、首筋から腰のくびれへ向けて撫で下ろされた。
冷え切っていた背中に、じわりと大きな熱が浸透していく。
(さっきと、全然違う……っ)
乱暴に突き放される恐怖のあとに与えられた、あまりにも穏やかな温もり。
その落差が、結衣の胸の奥を激しく揺さぶった。
怖いと拒絶しかけていたはずなのに、背中を大きく撫でられるたび、こわばっていた身体の芯が溶けるように弛緩していく。
男のもう片方の手が結衣の後頭部を優しく支え、さらに深く、けれどどこまでも丁寧に唇が吸い合わされた。
男の唇の隙間から漏れる熱い呼気が、結衣の鼻腔をくすぐる。
(だめ……こんなの、安心しちゃう……っ)
背後にある鉄の冷たさなど忘れ、結衣の膝からふっと力が抜けた。
男を突き放すはずだった両手は、気づけば頼りなく男の胸元へと添えられ、そのシャツの生地をすがるようにギュッと握りしめていた。
背中を撫でていた大きな手のひらの動きが、不意に止まった。
安堵に息を吐きかけた結衣の意識が弛緩した、まさにその一瞬だった。
男の手が躊躇なくスカートのウエストを掴み、力任せに引き下ろした。
ファスナーの擦れる硬い音が、静かな室内に鋭く響く。
「え……っ、せ、んぱ……っ!?」
(嘘でしょ……? さっき、あんなに優しく――)
混乱で言葉がもつれる結衣の隙を見逃さず、男の体重が再びロッカーごと彼女を圧迫した。
退路を完全に塞がれる。
先ほどまでの穏やかな温もりなど最初から存在しなかったかのように、無言のまま、強引に衣服が引き剥がされていく。
「待って……っ! ここ、バックヤードです……っ、誰か来たら……っ!」
必死の懇願に対して返ってきたのは、耳元を打つ男の重い呼気だけだった。
何を言っても届かない。初めから対話などする気のない冷徹な腕力で押さえ込まれ、結衣の膝は成すすべなく割られた。
(あ……ダメ……っ、逃げられない……っ)
男は、先輩としてではなく、逃げられないメスを前にしたオスとして、その雄々しく勃起したチンポを膣口に宛がう。
濡れていた膣口に対し、男はそのまま、無造作に腰を押しつけた。
ずぷり、と無遠慮な亀頭が処女膜を破り、亀頭が膣奥を叩く。
結衣が何かを言う隙も無く、ショック以外に何も感じないうちに、その亀頭が膨らみ、濁流のような熱が弾けた。
どびゅっ、どびゅっ、どびゅっ、と膣内を精液が満たす。
結衣は遅れて事態を飲み込み、広がる熱に恐怖した。
「えっ? えっ? えっ? これ、中に? えっ? なんで?」
恐怖。困惑。そんな結衣に、男は覆い被さるようにしてまた優しいキスをする。
結衣は意味も分からないまま、ただ恐怖ばかりの中でこのキスだけが救いというように、好きな男の唇の熱を感じ、安心を求めた。
そうして、しばらくして。
荒い呼吸の音だけが、蛍光灯の白い光の下に落ちていた。
結衣はロッカーの前に力なく座り込み、冷たい床の上で身じろぎもできずにいた。
乱れた衣服、肌にへばりつく汗、そして太ももを伝い落ちる熱の感触が、先ほどまで行われていた理不尽な行為をまざまざと突きつけてくる。
(どうして……こんな……)
震える指先で服をかき集めようとしても、身体の芯から力が抜けて動かない。
視界の端で、男が無言のまま身なりを整え、背を向けるのが見えた。
一言の言葉も、労わりも、言い訳すらない。
男は作業台の上に置いてあった勝手口の鍵を再び手に取ると、チャリと小さく金属音を鳴らした。
その無機質な音を聞いた瞬間、結衣の胸の奥に冷たい諦念が満ちていった。
優しくされたと錯覚したのも、自分の想いが少しでも届いたのではないかと期待したのも、すべて思い上がりに過ぎなかったのだと。
(もう……普通の後輩には、戻れないんだ……)
男の大きな背中を見上げながら、結衣の瞳から零れ落ちた涙が、無言のまま床へと染み込んでいった。
しかし、男がしたのは、施錠だった。自分も結衣も残ったまま。外から誰も入ってこないようにする施錠だ。
「えっ・・・・・・?」
結衣は、そのまま近付いてくる男に、ぐちゃぐちゃになった心でただ抱かれる他に無かった・・・・・・