11階層、区切りの10階層を抜ければダンジョン内はガラリと変わ……そんなに変わらなかった。
石造りから赤煉瓦造りに変わった、出現モンスターはゴブリンとスライムがリストラされた。
変わったと言えば変わったが、俺達の戦闘パターンはこれまでと変わらないから作業染みていた。
防具一新でさらに硬くなったエレンはザコモンスターの攻撃を寄せ付けず、その背後から魔法や爆発瓶が飛んできてモンスターは消し飛んでいく。
俺はやることがなくて時折背後を気にして挟み撃ちを警戒するくらい、1階層上がったくらいで劇的にモンスターの強さが変わるわけもなく結果的に蹂躙。
稀に挟み撃ちが起こるが、エレンが前をせき止め、後ろはリオナの魔法とハツキの爆発瓶で消し飛ばし、残る前のモンスターも特に理由のある暴力がモンスターを襲う――!!
「……やっぱ、広くなってんなぁ」
オートマッピング機能なんて持ち合わせてないから、スマホのマッピングツールでどういう通路を通ったか記録していく。
9階層と比べて通路と部屋が増えている、既に9階層よりも広い事が確定した上で次の階層の階段が見つかっていない。
モンスターは時間経過でリポップするらしいから、大暴れして倒しまくってもモンスターと遭遇する時間は長くなる。
もし連戦しまくっても、戦闘に時間がかかり過ぎなければ必ずどこかでモンスターは途切れることになる。
今がその状態で、結構歩いているが前の戦闘から5分は経過している。
「今度は中心側を探索だな、そっちに階段がある」
「おっけー」
マップの埋め方として外周から回るようにしている、外側から埋めていくのはよくある手法だろう。
ダンジョンはワンダーなダンジョンだから毎回構造が変わる、1000回どころか死ぬまで遊べるダンジョンだぜ。
階段の位置もバラバラだから探索時間もバラバラになる、まあパーティーの方針としてしっかりレベリングしつつ素材を拾って潜っていく事にしているので多少時間がかかろうが問題ない。
ただ、今後もダンジョンを下るたびにマップが広くなっていく。
ピラミッド方式と言えばわかるだろう、天辺が1階層で降りる毎にダンジョンは広がっていく。
この方式がダンジョンの走破を不可能にしている要因。
ダンジョンは世界中にあるが、ただ一つたりとも最下層に到達して走破されたダンジョンは存在しない。
とある国は500階層まで到達してダンジョンを走破したと喧伝しているが、誰も信じちゃいない。
まともな記録として現在の最高到達階層はアメリカのダンジョンで、91階層とのこと。
ちなみにこの学校ダンジョンは52階層が最高到達点、基本的にここの学生しか潜れないんで3年間でどこまで潜れるかで優秀さを競っている。
最高到達階層までワープで行けるものの、52階層とか50キロメートル四方くらいはあるのではと噂される。
東京都の中からノーヒントで1個だけある次の階層への階段がある部屋を探せとか無理臭い、ステータスの運が高いと階段が近くに出現するとかあるのかねぇ?
91階層とかガチで運が良かったとしか思えない、もし広さに限界がないならダンジョンそのものを解明しない限り走破なんて無理そうだ。
広すぎるダンジョンに軽く辟易しながら、モンスターを轢き殺しつつぐるぐるとマップの中心へと向かっていく。
「んー、運が悪い!」
「ねー、こういうの嫌いだわ」
速く階段を見つけたいわけではないが、きっちり探索して最後の部屋に階段があると何だかなぁってなる。
階段を降りて12階層のセーフティーゾーンへ入る、マジックバックからスマホを取り出し11階層の攻略時間を確かめる。
タイマーは26分を過ぎたところ、内20分は移動時間なのでかなり早いほうだろう。
「あのさ、もう階段目指さない? ちんたら進んでも時間の無駄っしょ」
「いやでーす、安全に進みまーす」
セーフティーゾーンで座り込んで休憩中の中でリオナが提案するも即拒否る。
「能力値のバフでぶん殴って安全に楽しくダンジョン潜りしてんのに、何でそのアドバンテージを失くすようなことすんだよ。 急がなきゃいけない理由があんの?」
「いや、無いけど」
「じゃあいいじゃん、急がなくてもダンジョンもポイントも逃げない。 安全に素材を鷲掴みにして一番稼いで学年首席になればいいさ」
「うん」
体操座りのリオナが気落ちしたように見えた。
「……どうしたよ、なんかあったのか?」
「なんかあったと言うか、なんか居ると言うか」
「なんか居る?」
リオナの要領を得ない言葉に首を傾げる。
「いやさ、ちょっと噂聞いたんだけど。 1年でヤバいパーティーが居るって」
「……俺らじゃなく?」
「あ、それ私も聞いたかも。 SSRパーティーの話でしょ?」
「それそれ、めっっっっっちゃレアいジョブだけでパーティー組んでるのが居るってさ」
「え、やばぁ……。 学年首席争奪戦はルール無用ってか?」
「へー」
真剣に学年首席狙ってる生徒からすると、圧倒的ジョブパワーでダンジョンを蹂躙して首席を掻っ攫っていくんでしょ?
萎えるだろうなぁ、まあダンジョンジョブなんて自分で決められないから最初っから公平ではないから仕方ない。
俺みたいなグリッチのようなことがないと、圧倒的戦闘センスがあっても無理やろなぁ……。
……ところで俺、急にBANされないだろうな?
「だから急いだほうが良いかもって話か」
「そゆこと」
「そんなバケモンっぽいのがいる中で、主席取るなら多少無茶しないと取れなさそうだなぁ……」
能力値的にはあと2か3階層進んでも、おそらく問題なくいけるだろう。
だが個人的には焦って進みたくない、俺が死にたくないのもあるが三人が痛みに苦しんだり死んだりするのを見たくない。
「一応聞いておくけど、皆は絶対に首席を取りたいって訳じゃないよな?」
「取れるなら取るって感じ」
「私も、まあどうでもいいかな。 貰えるなら貰う派」
「わたしは取れたらカッコイイかなぁって感じです」
「まあ……、ランキング次第か」
月末発表のランキングで、そのSSRパーティーが40とか50階層行ってたら無理だわって投げるだろうな。
逆に俺等といい勝負ならチャンスは有る、相手が競ってる中でレベルアップしてもっとすごいスキル覚えたら? 知らん。
12階層、休憩を挟んで同じように外側からマップを埋めていく。
『雷よ、連なれ! 【チェイン・ライトニング】!』
レベルの上がったリオナが覚えた新しい雷魔法が遭遇したモンスターに炸裂する。
魔法の対象としたモンスターの一定距離内に居る別のモンスターに連鎖して、稲妻が連続で撃たれていく。
連鎖数は3なので最大3匹まで連鎖し、連鎖する毎に威力は下がるが能力値の暴力で3匹とも一撃で仕留められるので消費MPも相まってリオナは重宝する。
四大属性の魔法も新しいのを覚えているので、どんなモンスターでも属性を気にせず高火力を叩き込める魔法アタッカー。
「粘着行くよー」
白くベタつくなにかが入った封管をモンスターの群れに投げ、割れると同時に拡散してモンスターたちに張り付く。
明らかにモンスターたちの動きが鈍化する、動けはするが歩こうとすれば地面と足が白くベタつくなにかで引っ付いて、腕を動かそうとすれば白くベタつくなにかが腕と胴体に引っ付いて引っ張り合う。
いわゆる低速状態という行動を遅くする状態異常ポーション、それに掛かったモンスターは歩いているのと変わらない速度で迫ってくる。
「行きます! 【アストラルフォース】!」
エレンが盾を掲げて新しいスキルを使うと、青い光が盾を覆う。
「【シールドタックル】!」
青く光る盾を構えて、さらに別の新しいスキルを使う。
弾けるように一気に加速、盾を押し出しながらの体当たり。
慣性を全てぶつかったモンスターに押し付け、交通事故もかくやという衝撃。
文字通りエレンにふっとばされて、バウンドして転がり塵と消えるモンスター。
アストラルフォースは盾にフォースを形成して盾の防御範囲と防御力を上げ、シールドタックルは盾ごとぶつかって相手を吹き飛ばすスキル。
防御力を上げて防御力で殴る、盾で殴るバッシュと同様の防御力が高ければ高いほど威力が上がるスキル。
交通事故集の動画でなきゃ見られないようなふっ飛ばされ方したモンスター、白くベタつくなにかで回避もままならない中で衝突。
俺も街に出たら道路を走る車にはちゃんと注意しようと思いました、まる。
新しいスキルでハツキの妨害スキルは非常に有効だ、モンスターが避けれないし逃げれない状況を強要して他のスキルが当てやすい状態にする。
狼系や赤蟻のような足が早いやつには普通の攻撃は回避される可能性がある。
複数出てこられると範囲攻撃が乏しいジョブのパーティーはくっそ面倒だろうな、狼系は回避モードだと跳ねながら蛇行してくるし、赤蟻は急加速急減速でカクカク動くから遠距離攻撃は特に当てづらい。
範囲攻撃でふっとばすか、前衛がヘイトを集めて対処するしかない。
まあうちのパーティーはリオナの魔法があるし、ハツキの妨害スキルもあるし、エレンの挑発スキルもあるし、簡単に対処できる。
戦闘で進行速度が下がることはないだろう、11階層よりも広い12階層だが幸運にも早めに階段のある部屋が見つかった。
ただレベルがまだ上っていないので、素材収集を兼ねてマップを全埋め。
宝箱やレア素材も見つからなかったので、殲滅モードで12階層を彷徨く。
30分ほど掛け三人はレベル12に、俺はレベル11にレベルアップして13階層に移動する。
「バックもパンパンだし、今日はもう終わるか」
ワープ装置を触って13階層を登録、素材も結構パンパンになってこのまま13階層を探索すると素材が拾えなくなる。
「そだねー、あたしはまだ行けるけど」
「どーかーん」
「わたしもまだまだいけますよ」
三人とも元気いっぱいだぁ!
「言うても30回は闘ってんねんぞ、戦闘時間が短いからって勘違いしてんやない!」
ターン制の戦闘なら1ターン目に敵の群れを全滅させてるようなもの、消費も効率も他のパーティーより格段に良いだろう。
でもちゃんと戦闘は重ねているから、疲労が見え始める前に終わらせたい。
「まだ行けるはもう危ない、別に無理するときじゃないから帰ろうぜ」
「タツがそう言うなら止めとくか、……じゃあ帰ったら遊びに行かない? 最近ダンジョンばっかだし」
「賛成! 行きたい行きたい!」
「そうだ! 美味しそうなお菓子屋さんがあるんですけどそこ行きません?」
本当にまだ行けそうなくらい元気になる三人、素材換金してもっかい潜っても良かったかも。
「……おう、まさか俺も?」
「ったりめーでしょ、それともなに? タツは美少女三人侍らして遊ぶのが嫌だってんの?」
「んなわけ無いだろ、ありがたいことでしょ常識的に考えて」
「だよねぇ、嫌だって言っても引きずって行くところだったわ」
「たっくさん遊びましょう、センパイ!」
逃げる気はないのにがっしり腕を組まれて、はんば引きずられるように4人でダンジョンを後にした。