硬派に生きようと思ってたのに、俺のことが好きな同僚がTSして子作りを求めてきた 作:品川カタン
なんとなく察してはいると思うが、その後の俺たちは別にお互い見せ合いをするだけでは終わらなかった。
「ドメインッ、ふうっ、今日はこれで終わりだ、出すぞっ」
「んっ♡♡ わかっひゃ♡♡ らひていいよ団長♡♡♡」
ドメインはバイブ……という魔法具をパンツで固定させ、機械にピストンされながら俺の勃起したものを舐めている。ぐぽぐぽと口から音を響かせながらも自分自身の奥にも容赦なく与えられる快楽に顔を蕩けさせて、それでも一生懸命に舌をカリ裏に沿わせて俺への奉仕を止めようとしない。
「ぐっ、うっ、出る、ドメイン、出る!!」
「ん゛っ♡♡♡」
ドメインも下から突かれ続けて耐えきれなくなったのか、俺の精液を口の中で受け止めながら絶頂した。小さくて細い喉がごくんと音を立てて嚥下して、口を開いて全て飲み干した様子を見せた。
だが、それだけで終わったわけではない。
「だんちょうっ♡♡ だめっ♡♡ 玩具奥にぐりぐりしちゃだめぇっ♡♡♡」
俺は時に、自分の肉棒を扱きながらドメインの自慰を手伝うこともあった。
「団長、だめっ、イッてるっ!!♡♡ それ以上やられたらへんになるっ、もらしちゃうっ!!♡♡」
玩具の規則正しい動きを無視して、俺が好きなようにドメインの肉穴の中に玩具を出し入れしてやり、イキそうになったら一度動きを止め焦らすこともあった。もしくは今のように、絶頂した後もそのまま動かし続けてやって、ついには限界まで弄んで漏らさせてしまうこともある。
ここまでしておいてか、と思うかもしれないが──俺たちはこれで盛り上がった後に直接セックスをすることは、あの日から二週間ほど無かった。ドメインも「お互いこれ以上やったら明日支障が出るよね」と言って、ある程度自制しているように見えた。
だが、自制しているとはいえ、俺たちはほぼ毎日この倒錯した行為を繰り返した。明日は朝から仕事だから、一時間で済ませるという暗黙の了解をお互いに守り──しっかりその時間内に事を終えて、そしてお互いの部屋へと帰っていった。……いや、時々俺が引き止めかけることはあったが、ドメインはその度にさっさと立ち去っていくのだ。
「…………」
当然、俺は何も足りていなかった。
仕事に支障は出ていないが、日常生活には支障が出ているような気がする。俺は、普通の自慰行為ではあまり満足できなくなっていることに気がついてしまったからだ。
「あと一日あと一日あと一日……」
カレンダーを見た。
明日には、久々の休日が入っている。この日は業者に頼んでギルドハウスの移動を行うため、俺たちは宿に泊まることになっているのだ。そうなるとやはり色々と融通が利かなくなるため、この日は任務を入れないようにすると事前に決めていた。
(事前に決めていた。だから別に普通だ! 狙っていた訳ではない! 何かしらの意図があったわけでは──)
そうやって頭の中で常に言い訳していることに気が付き、俺は思わず頭を抱えた。
ギルドハウスの移動の日に休日を入れるのは、本当に普通だ。普通の筈だ。だからおかしくないのは本当なのだ。それなのに、その日を「普通の休日」として見られなくなっている自分がかなり嫌になった。
「…………この悪癖を克服できないせいで」
俺は勇者になるために、様々なことにおいて自制を心がけてきた。酒は付き合いで飲む程度にし、煙草は吸わない。稼ぎがあっても散財はしない。
…………性欲だって、上手くコントロールできていたはずだ。今までは。高潔な勇者になるために、最も気をつけてきたことだ。
【え〜? この子息子さん? かわいいね〜】
ふっと、過去の記憶がいま、俺の頭の中へと駆け込むように流れてきた。
【おうクソガキ! いま大人の話してんだよ! おめーは外行ってろ!】
【あははは! ひどーい!】
女の肌をあれほど多く見たのは、あの日が初めてだった。家に帰ると、赤いレースで飾られたインナーと、ガーターベルトの付いた黒いパンツを履いた女が父といた。カールされた髪の毛は茶色で、細い目元にホクロがあった。
【ねえ見た? 顔赤くなってたよ〜! 子どもって感じ!】
去り際に、女がそう言っているのが聞こえた。振り返ってもう一度見ることなどは絶対にしなかったが、俺は確かに緊張していた。あの時、胸元に自然と目が向き、顔が熱くなって、そして奥底から羞恥心に近い性欲が湧いていた。
【あ〜?】
また、父の声も聞こえた。
【そりゃあ男だからな! オッパイ好きなんだろオッパイ! あっはっはっはっ!】
父にそう指摘された途端、自分の中で静かに煮えたぎっていた欲望が、とんでもなく邪悪で汚らしいものであるように思えて俺は泣きそうになるのを堪えながら歯を食いしばってひたすら外を走った。
(母さんが死んでから知らない女の人ばっか来る)
ある日は金髪の女の人が。ある日は長い黒髪の女の人が。そして、何日か続けて同じ女性が来たと思ったら、部屋の中でコップを投げるくらいの口論になり、そうして二度と来なくなった。
父はいつも、仕事が終わった後に女を連れ込んでいた。だから父が仕事から帰って来る時間には、俺はなるべく家にいないように努めた。
(魔族戦争が終われば、父さんだって前の父さんに戻るはず──)
その数年後、人間側が魔族を限界まで押しのけたことで、戦争は終結した。
父の死と引き換えに。
【天に召されたアーサード様の平安をお祈りいたします。皆様、命を賭して最期まで戦った英雄に感謝を!!】
俺は泣いている人達と一緒に棺桶へ花を入れた。
その時思ったことがある。
(死に逃げされたな)
こいつは、確かに戦争を一時的に終結させたが……
俺にとっては、まったく勇者ではなかった。
そして今、俺自身が誰かの父親になる可能性を前にして、あいつのことを思い出していた。
「……ドメインは避妊ポーションを飲んでいるが、確実に避妊できる訳ではない」
というよりも、俺が飲ませた。今の時点で子供ができてしまっては任務に支障が出るし、ドメインも了承した。装着避妊具よりは安全だろうが──仮に子供が早くできた時、俺はどうする?
稼ぎは十分にあるから苦労はさせないだろう。だが、俺が父と同じにならない保証がどこにある? 血は争えないということを、俺は身をもって実感している。ドメインが女性になってから暴力的な自分自身をよく見ているというのに、そもそも俺が誰かと恋愛をする資格があるのか?
(どうする、俺はどうすべきだ、俺はどう困難を乗り越えるべきだ、どうすれば、どうすればいい)
俺の中に様々な記憶が流れ込んできた。母が亡くなった時の記憶、父が仕事終わりに必ず女を連れ込んだ時の記憶、酒を飲んだ父に殴られた記憶、父が亡くなった時の記憶──
(あ、そうか)
そして、
俺の中で何かが、ブツッと切れるような感覚がした。
(全て、父と反対の行動をすれば良い。悪い手本がいるじゃないか、簡単なことだった)
父と同じことをしたくないのならば、俺が行う全ての行動を父の行動と比べれば良い。
俺が模範的な勇者を目指したきっかけも、父を許すことができないからだ。俺は、今まで父を避けるような行動をしてきたのだから──これからもそうすれば良いじゃないか。こんなに簡単なことを、なぜ思いつかなかったのだろうか?
(父が女性を求めていたのならば俺はドメインに与えれば良い。ドメインの望むことをして、俺自身の欲求は最大限抑えれば良い。そして、父と違って暴力的な行為をしなければ良い)
俺の頭の中は、一切の障害物が無くなったようにすっきりとしていた。
視界が広い。よく見えるような気がする。俺は、これからどう生きていけば良いのかわかった気がする。
俺は、父と同じにさえならなければ、それで良い。
「……団長、部屋入っていい?」
夜、全ての仕事を終えて報告書の整理をしていると、ドメインが俺の部屋を訪ねてきた。
「……構わん」
ガチャ、と扉が開く音が聞こえた。ブカブカのシャツを着たドメインが頬を赤らめながら、指先をモジモジといじり、俺の方を見ていた。
素直に可愛いと思った。ドメインが俺の部屋に来たのは、俺を求めているからだろう。表情や仕草、そして服装を見れば流石にわかる。いつもの俺ならば、ここで緊張していたのだろうが──今は不思議と、この状況を冷静に見つめられていた。
「ドメイン」
立ち上がり、ベッドへと歩いて腰を下ろした。
「お前が求めることを全てする、来い。明日は休みだから問題ない」
ドメインが、少し不思議そうに俺を見つめた。俺も、ドメインを見つめた。
「……わかった」
それでも、ドメインは俺の元へと来た。俺は優しくその腕を引き、身体を抱き寄せてベッドへ寝かせた。すると、ドメインはまた恥ずかしそうに俺のことを見た。俺はその瞳を見つめながら、ゆっくりとゆっくりとシャツのボタンを外していった。
「……団長、何かあった?」
「いや?」
そして、ドメインのパンツの中に手を入れて、秘部の中にそっと指を入れた。
「何も無い」
「……ッ♡♡」
ドメインの体がびくんと揺れる。その姿を見て、一瞬だけ俺の中の獣性が溢れそうになったが──耐えられた。俺は、誰のようになってはいけないのかわかっていたからだ。
ドメインの弱いところを軽くノックするように触れていく。その度にドメインの身体が小さく揺れ、次第に瞳が潤んでいった。吐息が荒くなってきたのを確認し、一度イかせた方がこれから挿入する時に負担がかからないだろうと思い、そのまま弱点を優しく押していく。
「……っ♡♡ だんちょう、なんか、今日優しいね……♡♡」
「そうするべきだからな」
それでもドメインが気持ちよくなる方法はわかっている。肉穴の天井にあるザラザラとした部分を小刻みに押していくと、ドメインは明らかに声を我慢できなくなっていた。
「あっ、だっ、団長っ♡♡ いきそうっ♡♡ いくっ♡♡」
「ああ、良いぞ」
ドメインの中がビクビクと痙攣して、絶頂したのがわかった。俺の中で性欲が強く疼き、思わずその姿に息を呑んだが、すぐに自分を落ち着かせた。あくまで冷静に、理性を持ってこのままドメインに奉仕をしようと思い、自身のパンツを脱いでいく。
「しっかり解れたから挿れるぞ」
「ふうっ、団長、僕も団長の触ってあげるよ……?」
「必要ない。お前が良ければそれでいい」
「必要ないって……〜〜〜〜っっ♡♡♡」
ドメインがすぐに疑問を呈したが、挿入した瞬間に気持ち良さで上手く声が出なくなったのか、そのまま黙った。顔を覗かせた支配欲から目を背け、俺はドメインに負担がかからない程度の速さでドメインをピストンしていく。
「あっ♡♡ だっ、だんちょうっ♡♡ きもちいっ♡♡ 久しぶりのエッチきもちいっ♡♡」
「そうか、良かった」
「団長はっ♡♡ 団長は気持ちいいっ?♡♡」
俺は黙った。あまり答えたくなかったので、そのままドメインの弱いところのみを突く作業に集中した。ドメインは相変わらず分かりやすく感じていて、顔を真っ赤にしながら俺の腕をぎゅうっと掴んだ。
「いっいきそう♡♡ 団長っ♡♡ ごめんっ♡♡ 久しぶりだからもういきそうっ♡♡」
「イッて良い。俺も一緒に出す」
「団長っ♡♡ すきっ♡♡ だいすきっ♡♡♡」
一瞬、その言葉に呑まれそうになった。思わず激しく肉穴に擦り付けたくなったのを、歯を思い切り食いしばり、我慢した。俺は、同じことを繰り返してはならない。父のようになってはいけない。父のようにさえならなければ良い。
「俺も好きだ」
「いくっ♡♡ いくいくいくっ♡♡♡ あっ♡♡ うあ゛っ♡♡♡」
ドメインが絶頂した。顔を真っ赤にしながら身体を揺らし、今にも泣き出しそうなドメインの姿を見ながら、俺も射精をした。久しぶりのセックスだったせいか、頭の中に強い快楽が襲いかかってきたが、それ以上欲望を出すのは良くないと思い、自分自身の本能を抑え込んだ。
ドメインの中から勃起したものを引き抜くと、体液が糸を引いて、そのまま重心を持って切れた。これ以上、ドメインの扇情的な姿を見るのは毒だと思い、顔を背けた。
「身体は平気か?」
顔を背けつつドメインの頭を撫でながら聞くと、彼女はこくんと静かに頷いた。
「そうか、ならば良い」
これで良い。
これが正解だ。
俺は父のように女性を……同僚を、物のようには扱わなかった。これでいいんだ。胸の中に小さな達成感が湧き、その感情を胸に刻みながらベッドへ寝転がった。
「そろそろ寝よう。明日は昼頃にここを出て、宿に行かねばならないからな」
「……うん、そうだね」
「遅くまで起きては良くないからな」
ドメインが俺に何かを言いかけたが、そのまま抱き寄せ続きを聞かないことにした。俺の胸の中にすっぽりと収まったドメインは、一瞬だけ不満そうに声を漏らしたが、仕事の疲れも重なっていたのか、やがてそのまま寝始めた。
(これからもこうすれば良い)
俺も目を瞑った。
…………そして朝、俺はドメインよりも早く起きた。窓から射し込む朝日が眩しい。その明るさに目を細めたあと、彼女を起こさないようにそっとベッドから離れて洗面台の前へと向かった。
鏡を見て髪の毛を整えたあと、髭が少し生えているのを見て剃刀を取り出した。
(そういえば父は、いつも無精髭を生やしていたな)
俺は念入りに、自身の顎と口周りに剃刀の刃を滑らせた。
(大丈夫だ)
滑らせていく。
(髭を剃れば、似ていない)
少し力が入ってしまい、刃に沿ってぷつりと小さな傷ができてしまったが、血をすぐに拭って髭を剃り続けた。