美しい少女が妖艶に踊る一夜。
お伽噺のような状況、貴方はそのまま眠れますか?
踊り子さんに手を出した方が、ぐっすり眠れるのでは無いでしょうか。
その際のタイトルは「新約:村雨の、アラビアンナイト♪」です。
月明かりを背に村雨が躍る。
豊かな肢体を包むのは、露出の派手な衣装。
生地が小さく、肌色の面積が大きすぎる。
村雨の魅惑を煽り立てるデザインだ。
「……これはどういうことなんだ?」
当惑する提督に村雨は微笑みを返すだけだ。
緩やかなテンポで、艶めかしい肢体が踊る。
月明かりを伴奏に、情熱と扇情が一つになった姿を魅せる。
「村雨、聞いているのか……?」
りん、りん、りん。
腰に括り付けられた鈴が、静かな室内にリズムを刻む。
完全に目を奪われる。
息を飲んで見つめるばかり。
村雨が可憐な少女の微笑みを浮かべる。
躍る肢体は少女のそれとはかけ離れているのに。
両手を大きく広げ、緩やかなターンが続く。
申し訳程度に隠された豊かな乳房が弾む。
飛び散る汗が、月明かりに照らし出される。
張り付く髪の毛が、肌を艶やかに彩っていた。
――――――――
港町の繁華街、猥雑な一角にある派手なネオンが輝く店。
酒と女とが提供される店に、軍人の一行がいた。
恰幅のいい初老と、付き従う者が数名。
お偉いさんの接待と思われる一行だった。
原色の照明が店内を彩る。
席には客の男と話し相手になる店の女性。
化粧と香水、汗と脂の臭いが濃く混ざり合う。
それは固体と言える密度であり、殴りつけるような匂いに提督は辟易していた。
「一番高い奴だ、持ってこい!」
軍のお偉いさんは、赤ら顔で上機嫌に騒いでいた。
提督は、どちらかというと下戸だ。
軍隊勤めならば、上の階級の人間に誘われてノーとは言えない。
渋々ながらに付き合わされていた。
「男たる者遊びも覚えないといけないぞ――」
酔っぱらいの説教にうんざりしつつ、席の隅でちびちびと飲む。
酔えない酒を堪えつつ、時が過ぎるのを待つしかなかった。
堅物として有名な提督だった。
化粧の濃い女性は、好きではない。
加えて、強く自制しているところもある。
自分の下で艦娘たちは命がけの日々を送っているのだから、女にうつつを抜かすわけにはいかない、と。
それが堅物の評判を更に塗り固めることとなり、軍の偉いさんが面白半分で連れ回してしまうようにもなった。
飲みたくない酒に苦戦していた時、店内がどよめく。
そちらに目を移せば、一段高くステージになっている場所の幕が開いていた。
今夜は中東で有名なダンサーを招いてショーをする日だった。軍の偉いさんもこれを知って、提督を連れだしたのだ。
両手を頭上に差し上げ、ダンサーがポーズを決める。店内が静まりかえった。
それを合図に曲が響く。アラビア風のゆったりとしたリズムで官能的な曲だ。
提督の目線が釘付けになった。
これがベリーダンスであることは分かった。
しかし、見識に偏りがあった。
煽ることを目的にした場末のストリップ小屋の卑猥な踊り、それくらいにしか見ていなかった。
だが、目の前で展開される光景はまるで違っていた。
まず目を引いたのは、腰回りの流麗な動き。
ゆったりと円を描き、時には軽く、細かく揺する。
胸や足下は動かず、腰だけが巧みに踊る。
見事な
腰回りが特に強調されるが、優美な振り付けだ。
ただ煽るだけのイメージとはかけ離れていた。
体幹を起点とした手足の振り付けにも感心していた。
空気を撫でるような手つきは、スネークハンドと呼ばれる振り付け。
肩から指先まで流れるような滑らかで柔らかな表現が目を引く。
ヒップの動きに従って蹴り出される脚が曲線の魅力を余すところなく見せる。
水の上を滑るような繊細な動きでありながら、全身のパフォーマンスを力強く支えている。
腰の律動は激しくとも体軸は動じない。ターンに合わせて妖艶な目線が客の顔を撫でてゆく。
見つめられただけで踊りに引き込まれる。提督とて例外ではない。
全身が一体となり、表現の幅がどこまでも広がってゆく。
腰がリズムを刻み、手足に流れ、目線に乗り、情熱を響かせる。
女性の曲線美を芸術まで昇華した、プロのダンス。
エレガントと艶麗を併せ持っており、目の当たりにした全ての者を虜にする。
一挙手一投足に見入り、自分の不明を恥じた提督。
知らぬ間に手を打つほどの感動を覚えていた。
「気に入って貰えたかね?」
お偉いさんの言葉で我に返る。
酒焼けしかかっている濁声が、先ほどまでの艶麗なダンスの余韻を無遠慮に打ち破った。
無理矢理流し込んだ酒が回ってきたのか、その夜の記憶は、以降が曖昧だった。
お偉いさんの相手をしている女性も踊れるとか、そんな記憶はあった。
今度は自分のも見てほしいと名刺を預かったようだが、グラグラとする視界の中で真っ直ぐ歩くので精一杯だった。
――――――――
爽やかな潮風が泊地の島を撫でる。
雲が疎らの快晴、深海棲艦の気配もなくのんびりとした時間が流れていた。
日向にいれば汗ばむ陽気だが、執務室には心地良い微風が吹き抜けていた。
静かな部屋の中、二つのペンの音が響く。
今日は泊地にいる艦娘が極端に少ない日。哨戒に出るのは当然としても、いつもならば待機している艦娘も出払っていた。
現状は提督一人、秘書艦一人の状況だった。
「ここもいよいよお別れね。早かったなぁ」
山と積み上げられた書類を前に溜息をつくのは、白露型駆逐艦三番艦、村雨。
大きく伸びをして、固くなった肩と背中を労っている。
「かれこれ三年か。ひとえにお前達の頑張りのお陰だよ。感謝している」
提督が村雨に労いの言葉を掛けた。
その提督の前にも書類が高く積み上げられていた。
「コーヒーを淹れてくる。ちょっと待っていてね」
席を立つ村雨。
椅子に身体を沈め、提督は見送っていた。
歩調に従って揺れる、明るい栗色のツーサイドアップ。
セーラー服を基調とした制服の下、体形を強調するピッタリと張り付くインナー。
端整な顔立ちは、少女の可愛らしさから淑女の美しさへと変化しつつある。
何より目を引くのが体形。出る所は出て、締まる所は締まる、悩ましい体つき。
女として成長した様は、後ろ姿すらも男の本能を刺激して止まない。
村雨は提督が配属されてから最初にやってきた駆逐艦娘。
本来、秘書艦として配置されるのは「叢雲」の予定だった。軍の担当者の手違いで「むらくも」ではなく「むらさめ」が配属されたのだ。
小学生レベルの間違いが判明したとき、二人で頭を抱えたことも懐かしい。
それから三年。
本部から与えられる任務をこなし、哨戒を重ね、時には深海棲艦の大侵攻に対処した多忙な日々。
提督は着実に武勲を重ねて、海域を統括する鎮守府への昇進が決定した。
今はその引っ越し準備のためにほとんどの艦娘が泊地にいなかった。
村雨は泊地における主力として、ずっと駆け回っていた。
当初は駆逐艦のトップとして最前線、戦力層が厚くなれば新兵の教導に。
地頭が良く数字にもそれなりに明るいので、たまには秘書艦の任務にも就けている。
気が付けば側にいることが当たり前になっていた。傍から見れば恋人同士と思われる距離感だった。
「これがここでの最後の任務となるか……」
書類を取りだした提督が溜息をつく。
通称『指輪任務』。
ケッコンカッコカリ、と言うシステムがある。
艦娘の潜在能力を解放するとも言われるアイテム。
見た目は宝石店で扱っているような指輪だ。それを提督から艦娘に贈ることで艦娘のさらなる成長を促すという代物だった。
これは艦娘達の間でも有名な話であり、提督から贈られる愛の証とも噂されていた。
しかし、提督が頭を悩ませるのはこの指輪の性能だ。
戦艦や空母など大型艦に対しては強く影響して、駆逐艦を始めとした小型艦への影響は限定的。
数字だけを見れば、泊地における戦艦の古参である長門に贈るのが妥当だ。
提督も最初はその方向性で決めていたときに、『指輪任務』に対しての艦娘達の視点を知って悩んでいた。
単純に愛情を示すならば村雨だ。
泊地の艦娘達も村雨がずっと側で支えたことは認めている。
しかし、提督には踏み込めない事情があった。
指輪を介して更に関係が深くなったとき、提督と艦娘、上司と部下の関係でいられなくなるのではないか。
村雨に、部下以上の存在になって欲しくなるかもしれない。
変わってしまうことが怖かった。
今のままでいるのが村雨とのもっとも心地良い距離感だ。
「はいはーい、お待たせ。今日はいつもとは違う豆だよ~」
考え込んでいた所で村雨が戻る。
心地良い潮の微風に、香り高いコーヒーの旨みが乗る。
鼻腔への刺激だけでも自然とリラックス出来た。
「書類仕事ばかりで疲れるだろう。すまないな」
「水くさいこと言わないでよ。村雨と提督の仲じゃない」
「分かった。甘えさせて貰うよ」
「そうそう。これからもちょっと良い村雨、見せてあげるから」
栄転という事もあって村雨も熱が入っている。
常に支えてきた相手が昇進することを、自分のことのように喜んでいた。
「本当に色々あったよね、最初は演習だってボッコボコにされて帰ってきたり」
「あの時は……悪かった。運用が分かっていなかった」
「こっちは駆逐艦、向こうは戦艦から空母まで勢揃い。手も足も出なかったわ」
「ずっと、世話になりっぱなしだな」
「良いの、良いの。村雨、これからも頑張るからね」
「改めてよろしくな」
付き合いの深い二人ならばコーヒー一つでも自然と会話が弾む。
後から入ってきた艦娘達から見れば、提督と村雨は恋人同士に映っていた。
当人達にその意識は無い。着任したての新米の時から距離感は変わっていない。そのつもりだった。
「さて、やれる所までやるか。引っ越しの期日がある」
「はいはーい」
再び書類と睨めっこになる二人。
聳え立つ山を片付けるのは、今日中では無理だった。
◆ ◆ ◆
書類の山の隙間から秘書艦席を覗く。
出会った頃よりもずっと女として成長した村雨がペンを片手に悪戦苦闘している。
『艦娘のいろは』すら分かっていなかった頃から、ずっと見てきた。
改装を重ねる度に女としての成長を見せ、二段階目の改装が終わった辺りで明確に成熟の気配を纏わせていた。
特に体形。
上背はそこまで変わらないのに、横の曲線を誇示するようになり女を意識させるようになる。
加えて特徴的なのが
深海棲艦の解析によりフィードバックした技術が施されたと聞いているが、詳細は分からない。
可憐に輝く明るいブラウンの左目と、妖しく輝く緋色の右目。これが引き込まれるような妖しさを身に付けさせた。
淑女と少女の
この頃から、提督は村雨との距離感に悩むことが多くなった。
端末を操作して画面を変える。
宝石店のHPが映し出された。
暇があれば眺めていた。
提督は溜息をつく。
軍支給の無粋な奴じゃなくて、もっと似合うのがあるはずだ。
任務で渡された物ではなく、一番の物で飾ってあげたい。
そう思えてならない。
成長と共にオシャレのセンスも研ぎ澄まされた村雨。
ばっちりと決めた様子を眺めるのは、微笑ましかった。
だから、軍に支給された物が薬指に輝くのは違和感があった。
しかし自分でも、どうしてそう考えたのか理解していない。
親代わりに見守っている大切な娘、その程度の認識だ。
自他共に認める堅物。そのイメージに凝り固まりすぎて自由になれないことには気付いていない。
村雨との距離を埋める一歩は、現状では遥か遠いところにあった。
◆ ◆ ◆
村雨は、書類の山の隙間から執務机を覗く。
少しだけ眉を顰めた表情は、いつもの明るさがない。
浮かべた憂いを書類が覆い隠してくれていた。
作業の手伝いをしている時に知ってしまった『指輪任務』。
スケジュールからして、これが泊地での最後の任務となるだろう。
この指輪、果たして誰に贈られるのか。
それを考えたとき、やりきれない思いに駆られる。
軍のお偉方に連れられて強かに酔った提督を介抱したことがあった。
あの時は村雨も随行として本土に行っていた。
宛がわれた宿舎で待っていれば、足下も覚束ない提督。
ソファに寝かしつけ、水を持って来る。
上着を脱がせてやったときに足下に落ちた物がある。
提督が飲み屋で渡された名刺。
それを見たとき、言いようのない不安を覚えた。
村雨と提督は、ずっとこのままなのか?
この距離感からもう一歩踏み出す手段は無いのか?
提督だって男だ、普通の女を求めるのは道理かもしれない。
人なのかもよく分からない『艦娘』の括りに留め置かれ、ずっとこのままなのではないか?
私は?
新米の時から精一杯頑張ってきた。
時には命を掛け、一ヶ月の加療を要したことだってあった。
二段階改装を終え、もっと役に立てると張り切っていたのに。
いつしか、提督を本当に特別な存在だと思い始めていた。
人間と艦娘、その差を埋められると思っていた。
だから、悔しかった。
どれだけ命を掛けても、自分は一線を越えられないのではないか。
あの時から提督をどこかで疑ってしまっていた。
心地良い潮風が吹いても、村雨の内側は冷えていた。
◆ ◆ ◆
錯綜する思いを抱きつつも書類仕事に勤しむ二人。
静寂を破ったのは執務室に備え付けられた無線機だった。
哨戒に向かっていた部隊が深海棲艦との小競り合いとなった。
追い払うのは成功したが、一人が中破した。
本体の損傷は軽微、入渠施設の使用を許可願う、と言う内容だった。
「村雨、頼めるか?」
「はいはーい。村雨、行ってきます」
仕事ともなれば、常のコンビネーションが戻る二人。
どれだけの葛藤を抱えつつも心の奥底では繋がり合っていた。
もっとも、当の二人はその事に気が付いていなかった。
――――――――
村雨と入れ替わりにやって来たのは古参の戦艦、長門。
深海棲艦の討伐任務を終え、顛末をまとめた書類を届けに執務室へとやって来た。
提督が顔を上げた瞬間、微風が吹き抜けた。
長門の足下に一枚の書類が落ちた。
「ほう、噂のあれか……?」
長門が目を丸くする。
鷹揚に構える長門なので指輪についてもリアクションは薄い。
あれば便利なツール、程度にしか思っていなかった。
「移転前にやる最後の任務となるだろう。今、人選について悩んでいてな」
「詳しくは知らんが、戦艦や空母が優先されていると噂に聞く。この長門も候補か?」
「そうには違いないんだが……」
「どうした?歯切れが悪いな」
その時、村雨も戻ってきた。
ノブに手をかけた瞬間、扉越しに声が響く。
ハスキーで凜々しく、扉一枚だけでは止まらない声の主は確認するまでもない。
村雨は扉の傍らに立って耳をそばだてていた。
その間も提督と長門の話が進んでいた。
「そういうことならば、この長門でも良いんじゃないか?」
次の瞬間、聞こえてきた言葉に戦慄した。
背筋を氷の固まりが滑り降りる。
噂は本当だった。
どれだけ頑張っても所詮は駆逐艦、こんな時は後回しだ。
どれだけ頑張っても私は艦娘。全て性能で評価される。
どれだけ頑張っても、私は駆逐艦。
私は、艦娘……。
全てを聞き終わる前に、その場を離れた。
提督の考えは至って当然だ。
命令は絶対、受け入れる以外にない。
それは分かっているけれど、頭を整理する時間が欲しい。
「やはりそう思うか。指輪の効果は公平じゃないようだ」
「戦艦や空母が優先されているとの噂は本当だな。私たちの方が恩恵は大きい」
長門は私情を挟むタイプではなく、堅物の提督と意見が合うことが多い。
この場に村雨がいなかったことも影響して、とんとん拍子に話が進んでしまう。
「では作戦遂行を三週間後とする。ここにおける最後の任務となる。準備は怠りなく頼むぞ」
「了解した。戦艦長門、任務受諾する」
提督の脳裏に村雨の姿が映っていた。
もし、指輪を渡したら村雨は危険な場所に赴くことがさらに増えてしまう。
変わって欲しくない、と言う想いが走る。
いなくなる、など考えたくない。
そばにいないことが、あり得なくなっていた。
もっと近づく……艦娘を相手に、それは許される行為なのか。
ある日突然、海からやってきた娘。軍の管轄で兵器扱いの存在。
自分は軍の所属で、横領する行為が許されるのか。
根っからの堅物は建前を越えるのも容易ではない。
私情と相反したとき、整理をつけられないのは提督のもっとも大きな欠点ともいえた。
悩みはするが、目の前の書類の山は消えない。
移転まで一ヶ月を切っている。まずはこれを処理しなくてはならない。
この山が多忙へと繋がり、提督と村雨の想いを隔て、事態は思わぬ方向へと向かうのだった。
◆ ◆ ◆
その日の夜。
自室でベッドに腰掛け、肩を落とす村雨の姿があった。
胸の中が空洞になったかのような虚脱感が覆い被さっていた。
「あと三週間、かぁ」
提督の昇進とそれに伴う移転。
そこに指輪の任務が絡んでくるとは思っていなかった。
夜には正式に決まり、長門を旗艦として海域に向かうこととなった。
村雨はその随伴として指名された。
「はぁ……」
指輪の任務を随伴艦としてこなしてしまえば、距離を詰める手段は、もうなくなる。
提督と自分は、ずっとこのままでしかいられないのか。
この先もずっと、そばで微笑んでいられるけれど……。
「……本当に、これで良いのかな……」
提督を異性として意識しているのは自分でも認めていた。
提督と艦娘が結ばれた事例を知っている。垣根を越える愛が存在したことを耳にしていた。
しかしそれは並大抵の苦労ではなかったことも。
堅物の提督が、それを進んで行えるか?
村雨にも答えられない問いだった。
かさり、と音がした。
ベッドの下に落ちていたのは、心を乱す元凶となった過日の名刺。
提督が強かに酔って帰ってきたときに持ってきた名刺だった。
拾い上げてぼんやりと眺める。HPを見つけ、店の紹介動画を見たとき、村雨の目が見開かれた。
「……これは……!」
先日のイベントで中東のダンサーが踊った動画が上がっていたのだ。
妖艶とエレガントの饗宴、同性の村雨ですら見入ってしまった。
提督はこれを見に行ったのか。プロの技だとすれば納得できる。
「ふぅん、そっか、これなんだ……」
提督は趣味らしい趣味を持っていない。これは泊地の艦娘に共通している認識で、たまに読書をする程度だ。
ダンス観賞の趣味があるなど、付き合いの深い村雨ですら知らなかった。
大人のお店に行ったことには失望を覚えたが、このダンサーならば話は別だ。
しばしの黙考の後、村雨の表情が明るくなった。
諦めるのはまだ早い、その思いが考えを巡らせる――
泊地においてこのダンサーを知っているのは村雨一人だけ。
これを突破口として、村雨が提督にとっての唯一無二の存在となれるならば?
障害となるのは提督の堅物ぶりだ。
人間と艦娘、この壁をどうやって越えればいい?
立ち上がり、姿見に全身を映す。
同じ駆逐艦連中からは羨望の目線を集める成熟した肢体。
見つめる内に口元に妖しい笑みが浮かぶ。
自分でも見たことがない、内なる本能より浮かぶ笑み。
先ほどのダンサーの影響なのか、鏡の向こうには見たことがない自分がいた。
「……なぁんだ。簡単なコトじゃない」
鏡の向こうの自分が囁く。
覚悟を決めろ、と。
村雨は女であると分かって貰えば、それで良い。
初めてはちょっと痛いって聞いたことがあるけれど、砲弾とか魚雷で痛いのは慣れているはず。
現状を打破するには強力な一撃が必要だ。リスクが伴うのは仕方がない。
「――もっと良い村雨、見せたげる」
姿見からベッドに戻ったときの村雨に憂いはなかった。
命がけで大物をねらう駆逐艦の夜戦。
その時の高揚感に包まれ、微笑みすら浮かんでいた。
盛大な誤解に基づくことではあるが、村雨に気づく機会は与えられなかった。
――――――――
澄み渡った夜空を満月が彩る。
不快指数が高い夜だった。景色ほど心地は良くなく、とても寝苦しい。
昼の暑さは夜になっても引かず、湿度を伴う暑熱が肌に纏わり付く。
提督は就寝時にクーラーは使わず、風を通している。
海風の生温さに悩まされ、なかなか寝付けなかった。
あれから二週間、村雨とは事務的な会話しかしていない。
いつか話をしようとは考えていたが、時間だけがたってしまった。
カチリ、と小さな音がした。
音もなく扉が開く。
しかし提督は気付かない。
ようやく訪れた睡魔に遮られ、聞き逃していた。
ふぅわりと、マロンの香り。
嗅覚を刺激されれば瞼が上がる。
気配はすぐ側まで、忍び寄っていた。
「はいは~い、こんばんは。ご機嫌いかが?」
誰何するほどではない。聞き慣れた声だ。
吐息が掛かるほどの距離から囁きかけていた。
部屋に入れたことはあったが、夜を共にしたことはない。村雨がここにいるのは不自然だった。
「……どういうことだ?」
意識の覚醒が浅く、とっさに頭が回らない。
寝ぼけ眼を擦りつつ出てきたのは、ありきたりな質問。
村雨は答えない。
窓辺に腰掛け、月光がシルエットを映し出す。
満月を背に、グラマラスな体つきが投射されていた。
生まれたままを思わせる曲線のシルエット、身につけているのは水着程度か。
『夜這い』の単語が提督の脳裏に浮かんだ。
「提督に見て貰いたい物があるの」
「オレにか?」
「ちょっと上手く行ったんじゃないかなって、思うから」
月明かりを背にして表情が見えない。
はぐらかす回答が村雨を不気味に演出する。
そもそも、夜に来ることがおかしい。さっさと追い返せばよかった。
しかし、引き込まれていた。
月光が村雨をミステリアスに彩り、曲線美が女を強く意識させる。
純粋な男の欲望が、提督の思考の覚醒を妨げていた。
「提督はダンスが好きだったんだ。知らなかった」
「何のことだ?」
「とぼけるんだ。すぐに思い出して貰うから」
「だから、何だと――!?」
マッチを擦る音が聞こえ、机の上に用意された燭台が灯される。
心許ない陰影の中に浮かび上がった姿に提督は目を見開いた。
ビキニよりも際どいデザイン。明るい茶色を基調とした生地は、局部しか隠していない。
乳房こそ覆っているが肩と脇を紐で止めるだけ。
袖のようなパーツもなく、ブレスレット以外に腕を覆う物がない。
股座をギリギリ隠す布は、サイドを細い紐で腰に括り付けられるだけ。
腰から膝上までの前後に垂らされた布が股や尻、内腿を覆うがシースルーで隠す役割がない。むしろ透けて見える分だけ煽り立てられる。
足首まで何も纏っておらず、足の甲が大きく露出したサンダルを履いている。
「提督に、ちょっと良い夜をプレゼントしちゃうかなって」
「年頃の娘がする格好じゃないぞ」
「……夜戦をしに来たって、言ったら?」
「何だと?」
「提督に見て貰いたい物があるの」
「どういうことだ?」
「もっと、うーんと、良い村雨。見せてあげる。だから……」
きゅっと唇を引き締める村雨。
考えが読めず困惑するばかりの提督。
薄暗い室内が緊張で張り詰めた。
村雨が静かに動き出す。
窓を背に、両手をゆっくりと差し上げた。
月光をその手に湛えるようなしなやかさ。
それが合図だった。
◆ ◆ ◆
半歩だけ踏み出し、勢いで腰がスライドして、突き出される。
側面から眺めれば裸も同然、背丈に似合わぬ豊かなヒップラインを見せつける。
体幹が律動を刻み、腰が揺らめく。
挑発的な振り付けが村雨を妖艶に彩った。
提督は思い出していた。
お偉方に無理矢理連れて行かれた、中東から来たダンサーの振り付けだ。
それを村雨が再現していた。
りん――
静寂に響く鈴の音。
村雨の腰元から聞こえた。衣装に括り付けられており、腰が刻むリズムを音として表現していた。
そのリズムはあの夜と同じだった。
伴奏は存在しないのに、提督の頭の中には過日の音楽が蘇りダンスを彩る。
あの夜のダンサーと村雨が重なる。
自然と提督は見入っていた。
りん、りん――
潮風を優しく撫でる
凪の水面に浮かんでいるような幻想的な足さばき。
突貫工事だったはずなのに、素人とは思えないレベルでこなしていた。
艦娘の身体能力と村雨の器用さ。その合わせ技に舌を巻く提督。
りん、りん、りん――
艶めかしく腰が揺れる。
突き出すような体勢で大きく円を描き、女体の曲線を強調する。
提督を見つめる視線はぶれない。全身は細い一本の糸で吊されているような安定を示し、体軸以外の全てがしなやかに動いている。
過日のダンサーに比べれば劣るが、魅力を見せるには申し分ない。
提督が生唾と固唾をまとめて飲み下す。
目の前の光景に見入り、指一本動かせない。
ゆったりとしたターンで背を向ける。
さらに腰をくねらせ、ヒップラインを見せつける。
ヒップの丸みに対して心許ない程度の生地が覆うのみだ。雄の本能にまともに訴えかけてくる。
首を捻り、肩越しに村雨が目線を送ってくる。
挑み掛かるような剣呑と、引き込まれるような妖艶を併せ持っていた。
りん、りん、りん、りん――
腰回りを強調する振り付けが、局部しか隠さない衣装と相まって村雨の体つきを強く印象づける。
それを繊細な脚捌きが支える。滑るような足取りは物音一つ立てない。
煽ることばかりに終始せず、妖艶の中にもエレガントが表現されていた。
――良い感じ、良い感じ。
村雨は提督の目線を感じて、更に熱が入る。
大きな作戦以上に気合が入った。
突貫工事で覚えた振り付けはかなりの出来だ。
出撃はほぼなく、書類仕事の日々だったのが幸いして時間を作れたのだ。
指輪の話は頭では理解していた。
でも、納得できなかった。
他の艦娘の薬指に煌めいている光景が、どうしても、認められなかった。
そして、任務の期限が迫る焦りが村雨を突き動かした。
危うい賭けとは分かっていたが、引き下がる選択肢はなかった。
――どうしたら良い?
提督は悔やむ。
ちゃんと話をしておけば良かった。
軍支給の指輪など無粋だ、二人で選んだ指輪にしよう……と。
村雨の機微を多忙で塗りつぶした、自分の責任だ。
提督の熱い胸の内に寒風が吹き込む。
色香が理性を押し潰そうとしている。
押し倒せ、契りを結べ、と本能は告げる。
しかし、その先はどうなる?
想像出来ないことが恐怖となってのし掛かる。
築き上げたアイデンティティの崩壊を想像して震える。
堅物と揶揄されてもここまでやってきた自分が、どんな風に変わるのか分からないことがたまらなく怖かった。
――見て、提督。もっと……よく見てよ。
村雨のパフォーマンスはさらに大胆になる。
くるりとターンして背を向け、両手を頭上で組み合わせて腰を大きく揺する。
髪を振り乱し、垂らされた布が大きく揺れてヒップの谷間に食い込む布まで明らかになる。
手が頭上にあるので必然的に腰に提督の目線が吸い寄せられる。
「……ふふ♪」
「――!?」
村雨の片手がヒップに伸びた。
肩越しに目線を送り、ちろり、と悪戯な表情で舌を見せる。
指で垂らされた布をめくり上げれば、その向こう側のヒップの曲線。
そう、曲線は『全て見えた』。
股座を直接覆う生地すらもシースルーだった。
前後に垂れた布よりも色が濃い生地で誤魔化されていただけ。目を凝らせば村雨の全てが見える。
妖艶な躍動の中に見える、女が秘するべき『奥』。
丸出しで見せつけられるよりも、きつい。
ギリギリ見えるか見えないかという状態を躍動の中に見せつけられれば、提督の雄がお預けを食らうばかりだった。
テンションが上がる村雨と、興奮に打ち震える提督。
二人きりの舞台は熱気に包まれていた。
村雨は微笑む。妖艶と快活を使い分けて。
くねり、突き出し、律動に従って揺れるヒップ。
腰の動き一つで様々な表情を見せつける。
身体の正面を向けているときは、リズムをメインに大きく動かさない。
背を向けたときに大きく腰をくねらせてヒップラインをアピール。
演出は派手でも、エレガントも忘れない。露骨に煽る振り付けは入れない。
提督は唸る。理性と本能が反発している。
突き上がる性欲の固まりに吐き気すら覚える。
この一線を越えれば、どこに行くのか想像もつかない。
分からないことが恐怖に繋がる。
しかし、理性は押し止める力を失っていた。
ヒップの向こう側を覗こうとする眼球を制御出来ない。
マロンの香りと少女の甘い香りと、蒸れる股の奥の女の匂い。嗅覚に神経が集中する。
緊張に口の中が乾き舌が張り付く。押し倒そうとする本能を止めるのが精一杯だ。
静寂の中で聞こえるのは過日の曲。思い込みだとしても聞こえ続けている。
あの肌に触れたい、唇を吸いたい、抱きしめて自分のモノにしたい。
職責の中に押し込めていた想いが弾けようとしていた。
踊り子一人に観客一人。
興奮が巡り合い、共に高ぶってゆく。
息苦しいほどの熱気が部屋に満ち、二人をさらなる高みへと導いた――
――――――――
男の目線が少女の肌に絡みつく。
それは幾重もの愛撫となり、踊りの最中にエクスタシーを迎えてしまう。
だから、まだ踊り続ける。
契りと絆を結び、離れられなくなるまで。
少女の魅惑に男は沈む。
身も心も捧げた求愛のダンスが理性をねじ伏せた。
震えるばかりだが、恐怖ではない。
理性が砕かれ、全身の統制が失われているのだ。
何を躊躇っていたのか。
抱きしめて、その後に考えろ。
堅物でなくなれば良い。明日は明日の風が吹く。
男の脳裏にそんな言葉が響いた。
少女はより派手に、挑発的に、身を投じる。
男の心臓ははち切れんばかりに強い鼓動を打ち続ける。
全てが暗くなり、お互いしか目に映らない。
二人は共に、内なる世界へと入り込んでいた。
例えば、ワルツ。
流麗を前面にしたあれでも『立ちながら行うセックス』と評することもある。
向かい合って踊り、ステップがハマる瞬間にキマるエクスタシー。
男の内部では静かで、劇的な変化が起こっていた。
身体が熱い。
全ての血液が表面に在る。
身体の芯は凄く寒い。
血流が脳に行っていない。
だから。理性は機能を失った。
――本当に、困るんですけどぉ……高かったのにぃ……!
少女の声が聞こえた気がした。
男は理性が働いていない。聴覚の情報が処理されない。
抱えて引きずり下ろし、押し倒す。
力に任せて、薄布を剥ぐ。
柔らかな身体を力一杯抱きしめる。
言葉を紡ぐ前に、唇に吸い付く。
本能を剥き出しにして、男は少女を貪る。
少女は抵抗しない。
うっすらと微笑んだ。
雌の妖艶と、少女の可憐を調和させた笑み。
少女は、賭けに勝ったのだ。
――――――――
静寂の中に喘ぎが響く。
ベッドの上には引き裂かれた生地が散乱している。先ほどまで村雨が纏っていたものだ。
仰向けにされ、股を開かされる村雨。自分で膝を抱え込み、晒された秘部に提督が吸いついていた。
「んっ、やぁっ♪あっ、あっ、っ、そこ、――んぅぅぅ♪」
勢い任せのクンニリングスの快感が村雨の体を奥まで抉る。
オナニーの経験はあったが、他人の、それも舌がそこに触れたことなどない。
村雨は男を知らない。秘裂もぴったりと閉じたままの生娘の体だ。
そこに舌の表面のざらつきが刻まれる。
「――うぁっ、あっ、っ、っ、あうぅぅぅ……!」
提督の舌使いはポイントを的確に掴んでくる。
ここと悟られれば、ひたすら抉り返す。
感じたことのない愉悦に、至福の笑みを浮かべていた。
先程まで踊り、蒸れた股の匂いを嗅がれている。
どうしようもなく恥ずかしいはずなのに、今はただひたすら嬉しい。
それに煽られて提督が理性を失っているのが心地良い。
こんな愉悦を味わったのは、初めてだった。
唇を離せば指先が入り込む。
生娘の襞を優しくかき分け、少しずつ奥を開拓した。
さらに割り開き、舌が入り込む。
探るように少しずつ奥を刺激して、その度に村雨は突き上げる快楽に喘がされた。
――いい感じ、いい感じ……もっと村雨のこと……!
股座から上目遣いに探る提督の目線が心地良い。
理性の光が失せて、脂ぎった欲望の目線が浮かんでいる。しかし、その奥は鋭い。村雨が見せる細かい反応を全て看破する。
「あっ、ぅ、っ、っ、あっ!?やぁっ、あっ、提督、もっと、もっと……!」
提督が口を離し、指先の攻めに転じる。
膣全面のざらついたポイントを人差し指が確保して、親指がクリトリスをこね回す。
生娘の体から強引に引き出されたクリトリスが、感じたことのない刺激に晒される。
何度も背筋を突っ張らせ、手で膝を引き上げればあられもない姿を晒す村雨。
尻の穴すらも大開きにするような大胆な格好になっているのも気づかずに、ただ快楽に身悶えるばかり。
――村雨、これからどうなっちゃうんだろう?
全身がゾクゾクと震える。
提督の理性が壊れて、堅物のアイデンティティがひび割れていると直感させる。
ちょっと痛い思いはするかもしれないけれど、今夜で全部決める。
駆逐艦として駆け回り、鍛えたタフネス。この程度では収まらない。
「――やぁぁっ、あっ、あああぁぁぁぁぁん♪」
提督の指先がもたらすバイブレーションに翻弄され、自分がいつ叫んだのかも分からない。
感じたことのない愉悦が意識を押し流し、体の制御を奪った。
白く染まる視界の向こう、提督が手を伸ばしてくる。
汗が浮かんだ素肌の感触、鼻腔に飛び込む雄のフェロモン。提督も全て脱ぎ捨てていた。
村雨も両手を伸ばしてしっかりと抱きつく。
強く抱きしめた提督の体は、筋張っていてとても頼もしく感じた。
――――――――
提督は女を知っていた。
先輩に娼館に連れて行かれ、女を悦ばせる術を学ばされた。しかし誰一人として夢中になることはなかった。
性欲がないわけではないが連れてきた先輩の顔が頭に浮かぶと、どこかで醒めてしまっていた。
海を守る多忙と緊張の日々の中で置き去りにしてきた性欲。
提督とて艦娘を相手に邪な気持ちを抱いたことはなくはない。村雨にもだ。
それは理性で押さえ込めた。彼女たちはあくまで軍の一部、自分が手を出すなどあり得ないと。
それを村雨が解き放ってしまった。
一人の女として、秘めていた雄が求めるようになる。
行き着く先など、一つだった。
「力を抜いてくれ。痛かったら、止めるからな?」
「ん……スタンバイ、オーケーだから……」
ベッドの上に緊張が走る。
提督はベッドサイドに立ち、村雨の膝に手を添えて足を開かせる。
仰向けになり、膝を立てて待ち受ける村雨。男を知らない身体にこれから刻み込むためのタイミングを計っていた。
「大丈夫だって。主砲も魚雷も貰ったんだよ?ちょっと痛いくらい、平気だから」
和ませようと微笑みかける様子は普段通りの村雨だ。
その娘が、あれほどまで妖艶に化けた。
揺れる腰、弾む胸、全てが焼き付いていた。
その娘を自分のモノに出来る。
もはや、提督に選択肢は一つしかなかった。
「はぅっ、んんっ、きつ、い、んぅ――!!」
ゆっくりと腰を進める、が提督に怪訝な表情が浮かんだ。
生娘特有のきつさはあるが、きついなりに根元までゆっくりと押し込めた。
娼婦しか相手にしたことがないので処女膜の感覚は知らない。途中で一際きつい部分はあったが、生娘とはこうなのか。
疑問に包まれる提督を村雨の微笑みが迎え入れる。
「……言ったでしょ?主砲も魚雷も貰ったんだよ、って」
提督は直感した。
激しい戦いに身を投じる日々で、村雨の処女膜は不完全になっていた。
それを優しく迎え入れる微笑み。
提督の中で、全てが氷解した。
「……動くぞ」
「うん」
腰使いに神経を集中させる。
ゆっくりとカリ首が生娘を掻き分ける。きつい感触に、少しずつ己を刻む。
これだけ頑張った娘を相手に、何を躊躇っていたのか。
あそこまでされてやっと動けた自分への自戒も込めて、村雨を少しずつ愛していく。
入り口から奥へ、奥から入り口へ。
支える足腰に負担が掛かるほどに優しい腰使いで男を知らしめていく。
「なんか、ちょっと、変な感じ?」
「痛いか?」
「ううん、続けて……っ……」
初めこそ緊張した様子だったが、少しずつ慣れ始めている。
男でしか味わえない快楽の存在を感じ始めているようだ。
「――っ、んぅっ♪」
ポイントに触れたのか、村雨の反応が強くなる。
性の悦びを徐々に覚えつつある女の表情、その瞬間、提督の心が強く揺れ動いた。
踊ったときの村雨が脳裏に浮かぶ。
込み上がる性欲に限界になり掛かる雄を抑え、慎重に腰使いを進めた。
村雨が反応する角度を探り、耐えられるペースを導く。
徐々に緊張が解けるのが伝わってきた。
「提督、もっと、やっちゃって……良いかも……♪」
クンニリングスで濡らしていたのも功を奏し、村雨は性の快楽に目覚めていた。
カリ首が襞を掻き回す心地良さに目覚め、一突きごとに愉悦の表情を浮かべ、身を震わせる。
提督のペースが更に上がり、村雨の身体に存在を刻みつけてゆく。
「提督、ちょっと、良いかも……ねえ♪」
村雨が両手を差し出す。
招かれるように提督は身体を重ねる。村雨の豊かな胸が胸板を受け止める感触が心地良く、二人は更に強く繋がり合った。
徐々に腰使いが力強くなり、肌を打つ音が響くようになる。
村雨は両手両足でしっかりとしがみつく格好となり、提督の全てを受け入れる。
男と女として交わり合える悦びに目覚めていた。少女は、女になった。
――何だ、簡単なことだったのか。
ペニスを通じて交歓する悦びに打ち震え、更に腰使いを高めてゆく。
その中で自分が作ってしまっていた壁に気付いていた。
この体たらくだから、先輩やお偉いさんに揶揄われていたのか。
あれこれ考えずに、目の前の娘の思いに向かい合ってやれば良かった。
気を揉ませた分の埋め合わせをしようと、それだけを考えて交わる。
「入った、ぞ……続けて良いか?」
「オーケー、村雨、オーケーだから……」
根本まで埋まり、包み込まれる快楽は極上だった。
幾重もの襞が取り囲み、優しく、強く、抱きしめる。
やっと男を知ったばかりもあるが、艦娘として鍛えられた体幹も影響しているだろう。
締められただけでも目の奥がちかちかとするほどの快楽が提督にのし掛かる。
煽られる雄、自然と腰が動いていた。
「提督?村雨でぇ、気持ち良くなっているのぉ?」
「そうだな……、っ――!」
「は、ぁ、っ、よかった♪っ、っ、んっ……!」
想像以上に心地良い村雨の中。
自分でも驚くほどに抑えが効かず、避妊なども考えずにペースアップ。
村雨がしっかりとしがみついてくるので、力を逃す場所も無い。
高みまで追い詰められるのにさほど時間は掛からなかった。
「村雨……村雨……!!」
「――はぅっ!?ああぁぁぁぁ……!!」
勢いのままに奥を何度も突き、提督が先に絶頂を向かえてしまう。
初めて感じる子種の温かさに村雨も達し、本能のままの絶頂締め。
「はぁ……はぁ……村雨……?」
「提督ぅ♪まぁだ♪」
「なんともない……のか……?」
「ふふふ♪村雨、スタンバイオーケーよ♪」
村雨が首を横に振った。既に余韻から醒めつつあった。
元々が好き者の体質なのか。加えて、艦娘のタフさは尋常ではないのか。
煽られるがままにピストンを再開してしまう。
――ええい、こうなれば!
何もかもかなぐり捨てた本気だった。
村雨がここまでの素質とは意外だったが、些末なことに思えた。
上司とか部下とか、そんなことを考えるのもやめた。
体位を少しだけ変えた。
村雨の足首を握りしめ、ピンと足を突っ張らせる。
踊りで妖艶なリズムを刻み続けた下半身を手の内にしたかった。
負担のかかる体位でも村雨は応える。シーツを握りしめ、エネルギーを受け止めた。
「うぁっ、あっ、あっ!?はっ、ああっ、っ、っ……!!」
身体も、声も。本当に男を誘惑する素質があった。
下半身の肉付きの良さが伝わる。腰回りの丸み、太股の丸み、鍛え上げた筋肉の裏打ち。腰を叩き付けた瞬間の弾力が溜まらない。
ピストンの度に揺れる豊かな胸が視覚から煽り立てる。
村雨ほどの見目麗しい少女が、強引に股を開く羽目に陥っているような光景が男としてのプライドを擽り、勃起も勢いを取り戻した。
悶えようにも、足首を押さえられているので思うように動けない村雨。
僅かながらに膝が動くだけで、がに股のような更に恥ずかしい格好になる。
先ほどとは違う、征服感の混じった心地良さが提督を精神的な快楽で押し上げていった。
「――村雨……村雨……っ!!」
「んっ、来る、来ちゃう……ああぁぁぁぁっ!!」
とどめの一発が村雨の全身を揺さぶる。
肉付きの良い身体が大きく揺れ、膣奥で射精を受け止めた。
「ふ、ぁ……提督……提督……♪」
村雨の瞳はまだまだ光を宿している。
脱力感の心地良さなどどこ吹く風、身体を起こして強請る様子を見せた。
提督の人生における、もっとも深い夜の始まりでしかなかった。
――――――――
濃密な夜のインターバル。
未だに勢いを保ったままのペニスは引き抜かれ、村雨の太股に間に収まっている。
膣とは違うすべすべとした感触が今だ止まない興奮をとろ火で持続させていた。
二人は深く唇を重ね合う。
強く抱きしめ、お互いの身体を肌に刻みつける。
勢いで始まってしまった空白を埋め合わせるかのように、優しい一時が流れていた。
「んっ、ふはぁ、はぁ……はぁ……ふふ♪」
唇を離した村雨。酸素を求めて喘ぐ姿も艶っぽく、男を知ったことで少しだけ変わった表情を見せるようになっていた。
「まさか、オレがこんな形の付き合いになるとはな……」
提督は改めて現状を理解する。
堅物などと呼ばれていた自分だから、色恋沙汰も形通りに告白から入っていくのだとばかり思っていた。フィジカル・ラブからとは想像していなかった。
しかし肉欲の味を知ってしまっては手放せない。
腕に力を込め、村雨の身体を強く抱きしめる。
「でも、悪くないんじゃない?」
村雨が上目遣いに悪戯っぽく微笑む。
色の違う瞳が等しく提督を見つめた。
「それにこれは提督からの愛の告白なんだよ?」
「何だと?」
合点が行かず、首を傾げる提督。
とっておきの悪戯が決まったような満面の笑みの村雨。
柔らかな肢体を押しつけ、提督の性欲を更に煽り立てる。
「二回出した後に、濃いキスが出来るのって愛している証拠なんだって」
「オレが村雨を愛していることを、身体で示したと?」
「そう言うこと♪もっと良い提督、堪能しちゃった♪」
「文字通りのフィジカル・ラブか……」
苦笑いを浮かべるが、今となっては分かる。
あれこれと考えすぎて壁を作ったお陰で村雨を待ちぼうけさせてしまった。
これくらいの衝撃がないと何も変わらなかった。結果として、村雨の行動は正しかった。
「埋め合わせ、良いか?」
「なぁに?……、んぅ、ふぅっ♪」
続く言葉の代わりに深い口付け。
抱きしめた身体は思っていたより細かった。
この肩で戦場、命のやりとりを背負っていたのか。
今までの労いを込めて、唇を強く重ね合わせ、村雨の温もりを味わった。
村雨が自らの髪に手を伸ばす。
可愛らしく結い上げているツーサイドアップ、それを解いた。
ふぅわりと香るのは纏わせていたマロンの甘い香り。ここからは「女の子」ではなく、「女」として向き合う決意を示していた。
◆ ◆ ◆
「提督、こういうので……どう?ちょっと、良い感じ?」
「それで良いと思う。独特だな」
ベッドに座り大股を開いた提督。屹立したペニスが威容を示す。
股の間に膝立ちになった村雨が両の乳房を持ってそれを挟み込む。
ずっと前に娼館でやって貰ったテクニックを村雨で再現してみたのだが、乳房のボリュームは申し分なくペニスを包み込めていた。
両の乳房に外側から手で圧を加え、根元から先端まで扱きあげる。
膣とは違う肌の質感が提督の興奮を煽り上げていた。
「ちょっと変えてくれるか?さっき言った……そう、上手いぞ」
「ふぅん、こういうので良いんだ?」
「ああ……器用だな、村雨は」
「はいはーい、村雨にお任せ♪」
半信半疑、困惑の表情を浮かべつつも乳房で奉仕する村雨が可愛らしく、優しく頭を撫でる提督。
にっこりと満面の笑みを浮かべる村雨、こうして受け答えをする様は成長しきらない女の子だ。
しかし、奉仕するそこは完全に成熟した女のそれ。
扱きあげるスタイルから、左右の手で円を描いて乳房をバラバラに動かし、変則の刺激を与えるスタイルへと変化する。
娼婦のテクニックさえも貪欲に吸収して、村雨は更に妖しい女としての顔を見せるようになる。
「提督のこれも……ちょっと、良い感じ♪」
乳房の谷間から突き出る亀頭を見て妖しく微笑む。
インターバルでやや勢いを失っていた状態から、パイズリによる刺激でフルパワーモードへと戻りつつある。
先走りを迸らせて雄の匂いを纏わせているそこを眺めてうっとりと微笑む様子は、完全にフェロモンに当てられた雌。
初めての奥の刺激から急速に村雨は変化していた。
「しかし、何だな……凄く、気持ちいいぞ……!」
「ふふ、村雨との相性が良いんじゃないかな?」
「……かもな」
改めて頭を撫でてやれば、満面の笑みを返す村雨。
今は褒められた子供だ。こうやって
身体の相性も良い。かつて娼館でやって貰ったときはここまで興奮することはなかった。
村雨だからこそ出来ることを実感すれば、更に提督はのめり込んでゆく。
裸の少女を上から眺める光景も新鮮だ。
ひざまずいた中腰気味に両手の動きは力がこもるので、体を支えるためにヒップがきゅっと引き締まる様が見える。
艦娘として鍛え込まれてもいるのが背筋から腰回りは特によく分かる。それでいて凹凸のグラデーションがはっきりしている。抱くには極上の体だと、見ているだけで雄は止まらない。
「村雨、そのまま……!」
「ん?これで良いの?」
両の乳房を互い違いに転がす愛撫。
村雨の手のひらの動きはより大きくなり、ボリュームと質感を誇示する。
煽り立てられたペニスは張りつめ、痛いほどの興奮に包まれる。
提督として海を守るようになってから抑えていた性欲の全てが村雨の手で解き放たれたようで、自分の体なのにセーブが利かない。
「ヤバい、出る、――!」
「――きゃっ!?」
豊かな質感に押されるようにして村雨の顔に発射してしまう。
二回出してもなお濃厚な粘液が美しい少女を汚す。
「……すっごい臭い。こんなのがお腹の中に?」
「スマン。抑えられなかった」
フェラチオの経験がない村雨は、強烈な臭気に顔を歪める。
ティッシュで提督が顔を拭い取れば、その下から予想外の表情が表れた。
「――でも、嫌じゃないかも。ちょっと、良いかも♪」
妖艶な雌の微笑み。村雨のそれは男を引き付けて止まない蠱惑を湛える。
両の瞳の
提督は口の渇きを覚えた。
潤すにはどうすればいいか。
「ねえ、提督――」
立ち上がり、しなだれ掛かる村雨。
潤してくれる女は、腕の中にいた。
――――――――
「これで良い?……すっごく恥ずかしいけど」
「そんな感じだ。無理はするなよ?」
「うん。平気」
ベッドに戻った二人。提督が仰向けになり、村雨がその上に跨がる。
女を覚えた花弁は淫蕩の蜜を滴らせて受け入れる手はずを整えていた。村雨が慎重に腰を下ろしていく。
提督は村雨の腰に手を添え、ゆっくりと導いていた。
異性を相手に自分から跨がるなど、覚悟を決めた村雨にしても羞恥は抑えられない。そんな様子が踊っていたときの妖艶とのギャップとなり、提督の心を擽っていた。
「はっ、あ、ぅ、――!!」
「村雨、大丈夫か!?」
「ごめん、ちょっとびっくりしただけ……んぅぅ……♪」
ペニスの先端が触れた瞬間、村雨の腰が落ちた。
自重を持って奥まで入れてしまい、子宮に衝撃が伝わる。甘イキした様子で全身を震わせた。
「……オレも……限界だ。動くぞ……!」
「ちょ、まっ、提督!?」
「くっ、むぅ……!!」
「あはぁっ!?あっ、さっき、来た、からぁ♪やっ、あっ、あうっ♪」
腰砕けになった村雨に構わず、突き上げを食らわせる。
提督は体のずっと奥に渇きを覚えていた。
特に村雨の揺れる腰を見ると、渇きが強くなる。
先ほどのベリーダンスが、頭から離れない。
腰が揺れる光景をどこまでも求めたくなる。一突きごとに喘ぐ村雨を見ればさらに渇き、潤いを求める。だから突き上げた。
「――!?」
偶然の悪戯だった。突き上げた瞬間に村雨の腰が横に揺らめいた。
ペニスに捻る力が加わり、締め付けとなって反映される。さらなる快楽が提督の顔に浮かんだ瞬間を村雨は逃さない。
――ちょっとエッチな村雨、見せたげる♪
艶然と微笑む村雨、次の瞬間には逆襲が始まった。
ベリーダンスの時の腰使いを再現する。
円を描くようにくねらせ、ヒップラインを誇示するように揺さぶり、時には自分のペースで上下させる。
提督が本当に望んでいた姿とも合致しているので性欲は天井知らずに煽り立てられ、突き上げはいよいよ激しくなる。
「はぁっ、ああぁっ♪提督、激し、あっ、んっ……お、おぉっ♪」
「村雨……これ、ネットで見たのか……!?」
「知らない、知らない、っ、んっ、おっ、はぁ、ああぁっ♪」
揺れる腰を見る度に提督の疼きが増して行く。
艶麗に踊る腰つきが頭から離れない。あの時の村雨を汚しているような感触が性欲を加速させていく。
お腹の奥から込み上げる圧迫感で口を閉じられなくなり、時折あられも無い声を零す村雨。その様子に更に渇き、潤いを求めて突き上げる。
提督は自分自身に驚いていた。
一人の女をこんなにも熱狂的に愛することが出来たのかと。
これだけ激しいセックスともなれば、明日への影響も懸念されるのにそれどころではない。ただひたすら、村雨の身体を貪りたい一念だった。
――来た、また来た……♪
村雨もまた、目覚めた本能に翻弄されていた。
人間と艦娘の間で子を為した例は少ないのだが、ここまで濃厚なのをやれば「当たる」危険もあるはずだ。
そうなれば軍務から外れることだってあり得るのに、頭の中から完全に抜け落ちている。
腰を落とし、全身に広がる快楽の大波が愛おしくて続けてしまう。
揺らめく腰を見せつけ、提督が煽られて更に凄い突き上げが返ってくるのを待ちわびてしまう。
一人の雌として何もかも忘れて、ただひたすら貪りたかった。
村雨が両手を項で組み合わせる。
揺れる胸と、揺らめく腰と、全てが見える格好。
提督の心臓が一際強い鼓動を打った。
村雨の腰を改めて押さえ、心ゆくままの突き上げを食らわせる。
「あっ、っ、あはっ♪提督、すご、い、ん、おぉっ、はぁ、おおぉっ♪」
「村雨、それ、マジでヤバい……!」
豊かな乳房が揺れる。肌を打つ音が響き、ボリュームを誇示して雄を煽る。
掻き上げた髪の毛が大きく揺れ、項からほんのりと香る汗に混ざるフェロモンが嗅覚を犯し、脳を蕩けさせて村雨の色に染め上げる。
乱れた髪が肌に張り付く光景が少女を女へと仕立てた達成感となり、さらなる雌を求めるように視覚から揺さぶる。
叩き付けた腰から伝わる尻の丸みは極上だ。これが女の本当の味なのかと、提督の感覚器官が中毒を起こしかけている。
しかし口の中は乾く。潤いを求めて村雨を貪る。提督の理性は完全に霧散していた。
くねる腰が時にはペニスから逃げるような動作となる。
抜け掛かる所まで行き、ストンと腰を落とす。
それが二人にとって極上の快楽となる。カリ首を狭い膣が入念に愛して、その分だけの勢いが子宮へと跳ね返る。
呻きとも、咆吼とも、取れる声が響き、二人は最高潮を目指す。
「村雨、また来る、あっ、提督、提督……♪」
「オレもだ……村雨……そら……っ!!!」
「んぅぅぅぅっ♪」
トドメの突き上げが村雨を貫いた。
膣の一番奥に今だ濃厚なままの精液が噴出する。
子宮にべったりと張り付いた熱が村雨の理性を飛ばし、絶頂の咆哮を上げさせた。
ほんの、一分にも満たない時間。
余韻の心地良い脱力感が至福の一時となる。
しかし、勢いは終わらない。
「提督……まぁだ♪」
「お、おい、村雨……!」
油断大敵。
村雨は甘イキだった。
提督の腰に、ヒップの丸みを刻み込むような円運動。
ベリーダンスの腰つきを再現したような煽りに対してペニスが反応してしまう。
村雨の手の平の上は悔しいが、貪れるならばいくらでも返してしまう男の性。
――ええい、毒くわば皿まで!
全身を包み込むような極上の快楽が訪れようとも、渇きが癒えない。
突き上げれば村雨はまだまだ答えてくれる。
揺れる豊かな乳房に、受け止める柔らかなヒップ。
体力の限界に挑戦するかのごとく、突き上げを再開した。
「良い感じ、良い感じ♪ねえ、もっと♪」
「言われるまでも……ない……!」
前傾して提督と向かい合う村雨。
サイドから流れるロングヘアーが提督の視界を遮り、村雨しか映らなくなる。
両の瞳はともに蠱惑の光を湛えており、提督のずっと奥まで捕まえて離さない。
貪り尽くす。今はそれだけだ。
下から手を伸ばし、村雨を強く抱き抱える。
村雨が提督に覆い被さる体勢で深く交わり合う。
先程とは違い、村雨の身体の柔らかさを堪能出来る。
「ん、ああぁっ、提督、ちょっと、やらしいかも……」
背筋から腰、ヒップを丹念に手の平で味わう。
ヒップの谷間に指が入り掛かったとき、村雨から悲鳴交じりの精子が入れば腰を突き上げることに専念する。
見せびらかす先ほどとは違って村雨の温もりを存分に感じることができる体位、提督はまだ残っている精力を掻き集めてピストンを食らわせた。
「村雨……村雨、また、イクぞ……!」
「うん、今度、すごいの、来ちゃう……、――ああぁぁぁぁっ♪」
強く抱きしめているのでエネルギーの逃げ場がない。
膣の襞を余すところなく抉り回され、子宮まで揺さぶられた村雨は今度こそ目の前が真っ白になるほどの絶頂を味わう。
提督もまた、一時的にでも渇きが潤される至福に包まれていた。
直後、二人は唇を重ねる。
まだまだ終わらない。
特に村雨、初めての身体には思えぬ貪欲さで食らいつく。
提督もまた極上の身体を肌に焼き付けてしまえば戻れなくなる。
これまでの人生で燻り続けた性欲が一気に爆ぜた、そんな激しい夜となったのであった。
――――――――
窓から朝日が差し込む。
清浄な光が二人を照らし、微睡みから引き戻した。
あれから何度交わっただろうか。
夜が明ける直前まで続けて、気絶するように眠った二人。
仮眠程度の時間で叩き起こされ、気怠いのは同じだった。
「……おはよ~、提督」
先に起き上がったのは村雨。
二人の汗が混ざった物が乾き、肌はカピカピだ。
それでも裸体の美しさは、損なわれていない。
意識が戻りつつある提督だったが、しばし村雨の身体に見蕩れていた。
「すっごいことになっちゃったね……」
「全くだ。何にも考えずにこうなったとはな」
剥ぎ取られ、散らばったダンス衣装を見た村雨が苦笑を浮かべた。
通信販売でちょっと良いお値段だったのに、布きれと化していた。
何発出されたのかも分からないほどの交わりで、堅物の提督がこれ程の獣を内側に飼っていたとは予想外だった。
「なあ、村雨」
ようやく身体を起こした提督が目を合わせて問いかける。
そこには、昨夜の欲情の光はなかった。
「指輪のことなんだが……」
「うん」
村雨が聞きたかったことは、これだ。
背筋を正して提督を見つめるも、その口からは予想外の答えが返ってきた。
「指輪任務の方は、長門で変わりがない」
「――えっ!?」
不満を口にしようとしたその時。
提督が強く、強く、村雨の身体を抱きしめた。
大きな手の平が優しく背中を撫で、緊張が解ける。
「改めて思ったんだが、軍支給の指輪はお前には渡せない」
「どういうこと?」
「似合わない。断言出来る……二人で、選ぼう」
「提督……?」
提督は村雨を真っ直ぐに見つめている。
色の違う二つの瞳を包み込むような優しい光があった。
「もし、オレの子が出来たら……産んでくれるか?」
「ふふ、あれだけ出しちゃったらね♪」
そっとお腹を撫でる。
人間と艦娘ではそう簡単には出来ないが、妊娠した事例も僅かながらにある。
まして身体の相性は良かった。
初めてでも、あれだけ激しい夜になったのだから。
それならば村雨が妊娠する可能性を、考慮に入れなくてはいけなかった。
「いずれ、退役という事になるだろうな。それでも良いか?」
「……うん」
提督はずっと奥にあった思いに気付かされた。
心の内側で壁を作っていただけで、村雨のことは一人の異性として見ていた。
方法こそ強引だったが、それが証明された以上は村雨を前線に送り出すなど、もうできない。
押さえ込んでいた分だけ愛しさが溢れれば、一人の部下として扱えなくなっていたのだ。
朝日が見守る中、二人は誓いの口づけを交す。
村雨を軍務から外し、本格的に一人の女として愛し抜く誓い。
快晴の空から差し込む陽光が、祝福を投げかけていた。
千の夜よりも濃い一時を、あなたに。
村雨の、
―Fin―