※この作品はR-18です。

結愛姐さん、ちょっと待ってください   作:晴矢会長

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結愛姐さんと共に

俺――細川大輔は、二十三歳。

はっきり言って、ブサイクだ。

女性を前にすると、どうしても緊張してしまう。

免疫がないからだ。

昔から勉強も苦手だった。

それなのに、いま高校教師をしている。

個人面接や集団討論なんて、順調に進むはずがなかった。

 

けれど、現にいま――

国府学院高等部二年一組の副担任を務めています。

 

今日は土曜日だ。

俺はベッドの上で仰向けになり、天井を見つめていた。

休日をゆっくり過ごす予定だった。

 

頭にあるのは、結愛姐さんのことだ。

『令和ギャル』

あの人が先生とは誰も思わないだろう。

――浜崎結愛、二十四歳。

国府学院高等部二年一組の担任教師。そして、俺はその副担任だ。

結愛姐さんの美貌、そして、人を陶酔させるような匂い。

国府学院に赴任してから、ずっと脳裏に焼き付いて離れませんね。

 

 

そのとき――

机の上のスマートフォンが震えた。

俺は目を擦りながら身を起こした。

「ったく。誰だよ」

画面には『結愛姐さん』と表示されていた。

……えっ、何!?

 

俺は半パン姿のまま、慌てて電話に出た。

「は、はい!」

思わず声が裏返った。

『今ね、細川君の家の近くなの』

結愛姐さんの声だ。

言葉が出てこない。

『もしもーし、聞こえてる?』

「はっ、はい! 全て、正確に聞き取っております!」

『もうすぐ、細川君の家に着くから』

「はい! 心よりお待ち申し上げております」

頭が真っ白になった俺は、そう口にしていた。

結愛はからっと笑った。

『なにそれ! じゃあ、心から待ってて!』

 

少しして、部屋のインターホンが鳴った。

結愛姐さんがマンションに着いたらしい。

俺はすぐにインターホンの通話ボタンを押した。

「はい! 到着で御座いますか!」

『マンション着いたよ、開けて』

「承知仕りました!」

俺は震えた指で解錠ボタンを押した。

 

やがて、玄関のインターホンが鳴った。

間を置かずに扉を開けた。

「結愛姐さん! お疲れ様でございます!」

「あのさ、私、極道の妻じゃないんですけど」

結愛は声を上げて笑った。

俺は結愛をリビングへ通した。

「どうぞ。……このような場所ですが」

 

浜崎結愛は、誰が見ても令和ギャルにしか見えない。

金色の髪。

肩紐がなく、胸元だけを覆うチューブトップ。下はジーンズ。

学校でも、その服装だ。

 

息を呑むほどの美人で、学生時代はファッションモデルをしていたらしい。

校内でも際立って目立ち、多くの生徒が遠くから憧れるような存在だった。

俺もその一人だった。

まあ……俺は教師だから、立場は違うけど。

 

結愛が入ってきた途端、部屋中に濃密でとろけるような匂いが広がった。

――汗でぐっしょり濡れた浜崎結愛そのものの匂い。

 

俺は少し姿勢を正して座り、その向かいに結愛が腰を下ろした。

結愛は一度、部屋を見回した。

「ねえ、どうやったらこんなマンションに住めるの? 細川君の家、超金持ち? だって、教師一年目だったら、お給料少ないでしょ」

「……はい。わたくしは、そうですね。細川物産のひとり息子で御座いまして」

「わおっ、会社経営者の息子かあ。……じゃあ、細川君と結婚したら、オーナー夫人になれるわけか」

結愛は軽い調子で言うと、俺の返事を待つでもなく立ち上がった。

すっと隣へ回って、俺の肩に軽く腕を回した。

俺は完全に硬直した。

「なに、緊張してんの。本題、これからだよ」

結愛は何でもないように言った。

 

そのあと、少し表情を変えた。

「唐突だけどさ。細川君、ちょっと手伝ってくれない?」

「えっ……」

俺は空気の抜けたような声を出した。

「何を、でしょうか?」

「瀧村グループの不正を調べる」

結愛は真剣な顔をしていた。

 

俺の勤める国府学院の財政を、裏から支えている瀧村グループ。

その資金提供は、学園の隅々にまで及んでいた。

奨学金制度の設立や、海外留学プログラムの費用負担。

瀧村グループがもたらす恩恵はあまりに巨額であり、もはや学園は企業側の意向に逆らうことなどできない。

 

教科書の採択から校則に至るまで、学校のあらゆる方針に瀧村グループの意向が反映されていく。

それは、まさに大企業による静かな学園支配そのものだった。

 

――そして。

それから俺たちは、幾度も瀧村グループの計画を阻むことになる。

そう。浜崎結愛と共に。

……結愛姐さんが頑張っているので。

 

まあ、俺はその……。

――足手まといにならないために、そっと後から付いていってるだけですが。

 

浜崎結愛と一緒にいられる日々。

人生の楽しみはこれだけ。

いまのところ。

まあ、未来もあんまり変わらないかな。

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