※この作品はR-18です。

結愛姐さん、ちょっと待ってください   作:晴矢会長

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また、瀧村グループかよ

俺は浜崎結愛姐さんと一緒に、瀧村グループの計画を幾度も阻んできた。

――まあ、阻んだのは結愛姐さんですが。

俺は、その……いつも結愛姐さんの後ろに付いていくだけ。

何か役に立った記憶もありませんね。

それなのに、結愛姐さんは俺を頼りにしてくれる。

 

「細川君ってさ、真面目だし、いい人じゃん。だから信用できるんだよね」

以前、そう言われたことがある。

……結愛姐さん、俺を信用してくださるなんて、本当に有難う御座います。

でも、できれば危ないことは、あんまりしたくないんですけどね。

 

 

――国府学院高等部の朝。

俺は結愛姐さんと一緒に、二年一組の教室へ入った。

生徒たちは、いつも通り楽しそうに話していた。

「ねえ、小倉さん。今年の代表生徒の第一候補なんでしょ」「うん。でも、私でいいのかなって」

小倉美咲が少し照れくさそうに答えた。

「小倉さんなら、学校の顔って感じがするよ」

「私もそう思う」

周囲の生徒たちが頷いた。

 

代表生徒に選ばれれば、学校案内の表紙を飾り、学校説明会では在校生を代表して挨拶する。

国府学院では、大きな名誉とされていた。

 

美咲は恥ずかしそうに目を伏せた。

「そう言ってもらえると嬉しい」

そのとき、少し離れた席で、一人の女子が美咲を鋭く睨んでいた。

――瀧村瑞穂。

瀧村グループ代表・瀧村美鈴の三女だった。

 

結愛が教壇へ向かった。

「はいはい! みんな静かに!」

生徒たちは慌てて席に戻った。

 

結愛姐さんは、今日も金髪にチューブトップ姿だった。

色は毎日違う。

何着持っているんだろう。

……相変わらず美しい。

それに、近くにいると、結愛姐さん特有の匂いがする。

「小倉ちゃん! 代表生徒の第一候補なんだって? 頑張りなよ! 私も応援してるから」

美咲は顔を赤くした。

「ありがとうございます」

生徒たちから拍手が起こった。

 

朝のホームルームが終わった。

俺は結愛と廊下に出た。

すれ違う男子生徒たちの視線が結愛に集まる。

「中野君、頑張ってる?」

「まあ、それなりに」

「それなりって、この前のテスト、凄かったじゃん。この調子で!」

結愛が男子生徒の肩を軽く叩いた。

男子生徒は照れくさそうに笑った。

 

男子たちは結愛に目を奪われ、女子たちは自然と憧れを抱いた。

けれど、結愛は、誰に対しても明るく接する。

俺は結愛姐さんのお供。いや、番犬……いや、金魚のフン。

――それは卑下しすぎだな。

結愛姐さんの応援団長ってとこか。

 

数日後。朝のホームルームが始まる前、二年一組の教室で妙な話が広がっていた。

「小倉さん、なんで代表生徒を辞退したの?」

「えっ、辞退したの?」

「小倉さん、向いてるのに」

生徒たちが次々に美咲へ尋ねた。

美咲は無理に笑顔を作った。

「うん。私、思っていたより人前に出るのが苦手みたい。だから、やっぱり向いてないかなって」

俺には、無理に笑っているように見えた。

生徒たちも、それ以上は尋ねなかった。

 

そのとき、瀧村瑞穂が大げさに声を上げた。

「うそー。小倉さん、辞退しちゃったの?」

驚いた口調とは裏腹に、瑞穂の口元はわずかに歪んでいた。

 

朝のホームルームが終わると、俺は結愛姐さんに腕を引かれ、階段の踊り場まで連れていかれた。

結愛は周囲を見渡し、声を落とした。

「小倉ちゃん、代表生徒を辞退したでしょ。本人は自分から辞退したって言ってるけど」

そこで一度、言葉を切った。

「でも、辞退届を学校へ持ってきたのは、小倉ちゃん本人じゃない。学院広報主任の鈴木先生」

「……はい」

「辞退する前日まで、美咲は学校説明会で読む原稿を直していたのよ。私も一度、原稿を見た」

俺は真剣に尋ねた。

「誰かに辞退させられたということですか?」

結愛が首を振った。

「そこまでは分からない。分からないけど……」

俺は思わず顔を曇らせた。

 

次の言葉は聞くまでもなかった。

結愛は少し強い口調で言った。

「真相を調べる」

――やっぱり。

もう、十五回目くらいか。

今回も瀧村グループが絡んでいるんだろうな。

瀧村グループって、表向きはホワイトな大企業だけど、実態はブラック企業――じゃなくて、デビル企業じゃないか。

 

俺は、どこまでも結愛姐さんに付いていきます。

……後からひっそりと。

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