※この作品はR-18です。

結愛姐さん、ちょっと待ってください   作:晴矢会長

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結愛姐さん、圧巻です!

瀧村グループの男たち三人が、一斉に動いた。

俺は慌てて出口へ向かった。

……怖い、怖すぎる。

でも、結愛姐さんのことが気になって、振り返った。

 

一人の男が結愛の肩をつかもうとしていた。

結愛は半歩下がってその手をかわし、男の腹部へ素早く突きを入れた。

男が身体を折ったところへ、脇腹を蹴った。男は近くの椅子へ倒れ込んだ。

 

もう一人の男が腕を伸ばした。

結愛は身を低くし、男の胴へ拳を叩き込んだ。

男はその場に崩れ落ちた。

 

三人目の男が横から近づいてきた。

結愛は素早く向き直り、正面から蹴りを放った。

男は前のめりに倒れた。

――あっという間だった。

 

結愛は追い打ちをかけず、男たちとの間合いを取った。「まだ来る?」

一人の男が腹を押さえたまま、結愛を睨んだ。

瀧村グループの責任者らしい男が、部下の落とした資料へ手を伸ばした。だが、その前へ結愛が立った。

「触るんじゃないよ!」

男は構わず、結愛を押し退けようとした。

 

結愛は身体を横へずらし、男の手を外した。

そして、隙をついて拳を胴へ叩き込んだ。

さらに短い突きを続ける。

男は後退し、舞台の縁へ背中をぶつけて崩れ落ちた。

 

結愛は床に落ちた資料を拾い上げた。

「これは渡さないよ」

男は結愛を睨みつけた。

だが、倒れている部下を見ると、舌打ちした。

「覚えていろ!」

吐き捨てるように言って、出口へ向かった。

三人の部下も、よろめきながら立ち上がった。

男たちは結愛を警戒しながら、旧講堂を出ていった。

 

 

――結愛姐さん、圧巻です。

俺は出口の近くから、ようやく歩き出した。

鈴木先生は俯いたまま、動かなかった。

日頃の鈴木先生は穏やかで、生徒にも丁寧に接する教師だった。

結愛は何も言わず、鈴木先生が口を開くのを待った。

 

やがて、鈴木先生が絞り出すように言った。

「瀧村グループから、学院への支援を見直すと言われた。広報設備の更新も、奨学金への寄付も、すべてだ」

声が震えていた。

「私は、学院を守るためだと思い込もうとした。小倉美咲一人が辞退すれば済む。そう考えた」

 

鈴木先生は顔を上げた。

「小倉には、辞退しなければ家族にも迷惑が及ぶかもしれないと伝えた。あの子がどれほど怖がったか……。私は、生徒を守るどころか、生徒を脅したんだ」

鈴木先生は目を伏せた。

 

「教師を続ける資格はない。辞職する」

結愛が一歩前へ出た。

「辞めるかどうかは、そのあとで決めてください」

鈴木先生が顔を上げた。

「小倉ちゃんにしたことも、瀧村グループに言われたことも、学院長に全部話してください。小倉ちゃんにも謝ってください」

 

結愛はじっと鈴木先生の顔を見た。

「辞めると言えば、それで終わりになると思いますか」

少し間を取ってから続けた。

「小倉ちゃんは、今も家族に何かされるんじゃないかって怖がってるんですよ。先生だけが辞めても、その不安は消えません」

鈴木先生は何も言わなかった。

「逃げないで、先生がやったことを元に戻してください」

 

長い沈黙が流れた。

俺は、鈴木先生が処分しようとしていた資料を見た。

あれが捨てられていたら、小倉さんはどうなっていたんだろう。

 

そう考えると、黙っていられなくなった。

「もう、捨てようとしないでください!」

自分でも驚くほど大きな声が出た。

鈴木先生が俺を見た。

「小倉さんを代表生徒に戻してください。そのうえで、全部話してください!」

……言ってしまった。

俺は急に怖くなった。

 

鈴木先生はしばらく黙っていた。

やがて、深く頭を下げた。

「分かった。すべて学院長に話す。小倉美咲にも謝る」

結愛は何も言わず、抱えていた選考資料を鈴木先生へ差し出した。

 

鈴木先生は両手で資料を受け取った。

「すまなかった」

そして、結愛へ顔を向けた。

「ありがとう」

鈴木先生は深く頭を下げ、旧講堂を出ていった。

 

俺は窓際まで歩き、窓の外を眺めた。

結愛が近づき、俺の背中を軽く叩いた。

「細川君、格好いいじゃん」

……えっ?

俺は思わず結愛姐さんを見た。

結愛は笑っていた。

「私が戦ってるとき、猛スピードで逃げたけど」

 

俺は何も返さなかった。

 

というのも――。

目の前で人が格闘するところを見るの、意味が分からないほど怖いので。

結愛姐さん、毎度お世話になります。

色々な意味で。

結愛姐さん、圧巻です!

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