※この作品はR-18です。

結愛姐さん、ちょっと待ってください   作:晴矢会長

5 / 5
結愛姐さん、危険です!

――数日後。

俺は結愛姐さんと一緒に、高等部二年一組の教室へ入った。

 

教室の中では、明るい声が響いていた。

「小倉さん、代表生徒に戻ったんだって!」

美咲の席に、生徒たちが集まっている。

「良かったね」

「やっぱり、小倉さんが一番合ってるよ」

「学校説明会、頑張ってね」

美咲は照れくさそうに笑いながら、何度も頭を下げた。

「ありがとう。今度は、最後までちゃんとやるから」

 

鈴木先生が学院長に事情を説明し、代表生徒の選考は改めて確認された。

そして、美咲の復帰が正式に決まったのだ。

 

結愛は教壇から美咲を見ていた。

「小倉ちゃん、良かったね!」

美咲は結愛へ顔を向けた。

何も言わず、深く頭を下げる。

結愛は軽く頷いた。

 

教室の後ろでは、瀧村瑞穂が机の上で拳を握り締めていた。

美咲を囲む生徒たちの笑い声が、気に入らないようだった。

「なんで……」

瑞穂が小さく呟いた。

近くにいた生徒が振り向く。

瑞穂は慌てて顔を伏せた。

だが、握り締めた拳は震えていた。

 

そのとき、結愛がゆっくりと歩き出した。

瑞穂の席の横で足を止める。

俺が結愛を見ると、他の生徒たちも顔を向けた。

瑞穂が小さく尋ねた。

「先生、何ですか?」

 

結愛は黙ったまま、瑞穂を見下ろした。

「だから何?」

瑞穂が苛立ったように言った。

結愛は軽く微笑んだ。

「立って」

「はあ?」

「いいから、立って」

瑞穂がゆっくりと立ち上がった。

 

結愛は真剣な顔で、瑞穂の肩に腕を回した。

「その態度、気に入らない。締め落としてもいい?」

教室の会話が止まった。

……結愛姐さん?

いくら何でも、それはまずいんじゃないでしょうか。

「暴力振るったら、どうなるか分かってます?」

瑞穂が少し強く返した。

結愛は目を逸らさなかった。

 

しばらくして、結愛は腕を解き、教壇へ戻った。

「はい! じゃあ、小倉ちゃんの代表生徒復帰を祝って、出席を取ります!」

明るい声だった。

生徒たちは戸惑いながらも、席へ戻っていった。

 

 

結愛姐さん――。

やっぱり、怖い人なのかな。

いや、俺にとっては最高に素敵な女性なんですけど。

 

結愛姐さん、香水は付けていません。

それなのに、結愛姐さんのからだから、濃厚で官能的な匂いが漂ってくる。

結愛姐さんの性の匂いです。

濃密度二百パーセント。

 

――結愛姐さん。

これまでの人生で、一度も負けたことがないそうですが。

類稀な美貌、鍛えた肉体、とろけるような匂い。

結愛姐さんの素敵なからだを、一度拝ませて下さい。

いや、抱かせて下さい……いや、逆だな。

結愛姐さん、どうか俺を抱いて下さい。

一生に一度のお願いです。

 

でも、すぐに射精して、それで終わるか。

一瞬で終わるのは、ちょっと嫌だな。

 

 

――その夜。

国府学院から離れた瀧村家の邸宅。

瀧村グループ代表取締役会長・瀧村真由の前で、三女の瑞穂が苛立ちを隠そうともせずに叫んでいた。

「浜崎結愛! あいつだけは許せない! 何とかしてよ、お母様。あの女を早くぶちのめしてよ!」

真由は小さく笑った。

「あまり乱暴な言葉を使うと、品が落ちるわよ」

 

傍にいた秘書が静かに尋ねた。

「いかが致しましょうか」

真由は椅子をゆっくりと回し、しばらく黙っていた。

やがて、微笑みを浮かべて口を開いた。

「そうね。大庭をここへ呼んで」

瑞穂は嬉しそうに笑った。

 

しばらくして、秘書が扉を開けた。

巨大な男が部屋へ入ってきた。

男の身体が大きすぎて、扉が狭く見えた。

――大庭重徳。瀧村家の専属警護員だった。

 

身長は二メートル近くあり、肩幅も胸板も並外れていた。

真由は椅子に座ったまま、大庭を傍へ呼び寄せた。

机の上には、浜崎結愛の写真が置かれていた。

「可愛い子でしょ」

大庭は黙ったまま写真を見た。

 

真由が写真へ指を滑らせた。

「浜崎結愛は相当強いわ」

真由は軽く微笑んだ。

「でも、あなたの役目は、この女と戦うことではない」

大庭が初めて口を開いた。

「何をすればいい」

 

真由の笑みが深くなった。

「明日、学院へ行きなさい。ある人物の指示に従ってもらうわ。あなたの役目は、この女を逃がさないこと。それだけよ」

秘書が静かに尋ねた。

「あの人物ですか?」

 

真由は机に置かれた浜崎結愛の写真へ目を落とした。

「ええ、そうよ」

少し間を置き、大庭を見上げた。

「あの人は必ず期待に応える。……浜崎結愛、二十四歳。若い女よ。若い子はね、恐怖をからだに覚えさせれば、大人しくなるの」

大庭は何も答えなかった。

 

真由に一礼し、部屋を出ていった。

瑞穂と秘書も退室した。

真由は一人になると、無表情のまま浜崎結愛の写真を見下ろした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。