Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
理不尽な世界で生き残る術はただ一つ。
適応し、穢れる事だ――
プロローグ
「待ちやがれ糞餓鬼共ぉっ!!」
背後、野太い男性の咆哮が木霊する。
追っ手の声だ。
終われている原因は至極単純。私の背負うリュックの中身。
消費期限切れも甚だしい携行糧食と、痩せ細ったような芋。
そのどちらも、懐の紐が緩そうな
(……結構走ってるけど、振り切れないかぁ……)
脚を止めずに後ろを一瞥。
損傷の激しい衣服を纏う、図体の良い数人の男性と、紙袋を抱える数人の子供。
子供の方は今回の窃盗に於ける仲間だが、彼らと男達との距離は10m程度。逃げ切れる見込みは無さそうだ。
男達に捕まった場合の末路は単純。
男ならば、粉骨砕身の後、畑の肥料か犬の餌。あるいは人食主義者のオヤツになり、女ならば、飽きるまで犯され続け、飽きたら、ポルノ関係者に売り捌かれる。
無論、私は犯される気も無ければ、犬の餌になるつもりも無い。……加えて、逃げ遅れてる
(せいぜい、男共を満足させてね)
逃走経路を変更。
今まで疾走していた路地から、裏路地へ移動。
ここの裏路地は複雑に入り組んでいる。熟知した者でも、探すのは大変な程度に。
予め頭に叩き込んでいた順路を移動しつつ、再び背後を一瞥。
……一人、追い縋る男がいた。
(……振り切れないか)
でも、追っ手は一人だけ。
流石に、先天的な体力差は覆せないか。
(……ならば、やる事は決まっている)
殺ろう。
腰に提げたホルダーを確認。
収まっているのは、やや大振りな戦闘用ナイフ。……まぁ、粗悪品だけど。
銃器も無くは無いが、弾薬が貴重だ。
(相手も血迷っているみたいだし……殺りやすいね)
脇道に入り込む。
数m先は行き止まり。
分かっていた事。
「追いかけっこはしまいか、小娘?」
当然のように、男は余裕を見せ始める。
「だとしたら……おじさんの黴が生えた陰茎でも放り出すだけだよね?」
少し、挑発してみよう。出方を伺う為にも。
「へっ……スラムの餓鬼は馬鹿だな。……テメェの下のお口にブチ込むんだよ。……たっぷり楽しませて貰ってから、魔物でも孕ませて、内側から食い殺させてやる」
……やはり、この男は馬鹿だ。苦痛を与えて殺す事しか考えていない。
(もう……価値は無い。最初から価値なんて皆無だけど)
ホルダーに手をかける。
「一瞬の苦痛と、耐え難い苦痛。……どっちがお好みかな?」
一応の最後通帳。答えが分かっているから、意味の無い言葉。
「誰が苦痛なんぞ受けるかよ。テメェこそ、前の口か、後ろの口か。どっちからブチ込まれるのがいいんだ?特別に選ばせてやる」
……糞が。
リュックを落とし、ひび割れたコンクリートを蹴る。
「じゃあ…………」
零距離。
「ぐおっ!?」
移動の勢いそのまま、膝蹴りを股間に。
「っう……………!」
悶絶し、股間を押さえた所で、ガラ空きの両足に足払い。
転倒。
「オジサンの身ぐるみかなっ!」
素早く、ホルダーからナイフを抜き、股間に一閃。
「ぐあぁあぁぁっ!?」
睾丸を含む陰嚢ごと、陰茎を切断。
絶叫。
構わず、両手首も切断。
最後に、足首も切り裂き、ナイフの刃が限界を迎える。
(……あっちゃあ……もう駄目かぁ……)
重篤な刃毀れを起こしたナイフを男の眼球に突き立て、抉り込んで手を離す。もう、用は無い。
代わりに、男の身ぐるみを剥ぎ、持物の拾得。
(……戦闘用ナイフ一本、9㎜口径の密造拳銃と予備弾倉が4本。後は……手榴弾が一個か)
中々、良いもの持ってるじゃん。
弾倉をポケット、拳銃はホルスターごと腰に装備し、ナイフをホルダーに収めた後、リュック回収。
「……さて、
周囲を確認しつつ、移動再会。
今度は走る必要は無い。
追っ手の気配も無ければ、女の喘ぎ声も聴こえないから。
窃盗仲間は全員、肉便器か犬の餌になっただろうし。
(……ここで生きてくってのは……己だけを信じるって事だよ……)
仲間なんて、いやしないんだ。本当の意味では。
なんて、誰に言うでもなく、私は塒を目指して歩く。
エリアRos某所のスラムを――
――以上、Рев порохом и бойни プロローグでした。
本作はグラナデ過去編であり、一般人の想像しやすい境遇では最も悲惨かつ、同情の余地が無い話だと思います。
……現状で語れるのはこのぐらいですので、今回はここで締めます。
拝読ありがとうございました――