Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
だが、踏み締めた何かには、
踏み出す決意には、
必ず意味があるのかも知れない――
プロローグ
A.M.7:00。
耳をつんざく炸裂音に私は目を覚ます。
(セルゲイさん達……訓練始めたんだ……)
いまいち回らない頭のまま、ベットから起き上がり、パジャマから薄手のワンピースに着替え、適当に朝食を摂る。
身嗜みを整えて談話室に向かうと、ソファで丸くなっているグラナデさんを見つけるが――無視。
起こすのは、何処か可哀想。
(いや……違う……)
セルゲイさんに釘を刺されたから。無理にコイツを起こそうとするな、と。
自分達は無理に起こしているじゃないか、とは思うものの、おそらくグラナデさんは慣れているのだろう。
慣れない者が起こした場合、痛い目を見る、という事か。
(……まぁ、良いかな)
書き置きだけ残し、便利屋を出る。
(眩し……)
出迎えるのは、自己主張の激しい太陽光と、落ち着き払う街並み。
車通りすら疎らな道路を渡り、数分歩いた後、目的地に着く。
――Cafe&Bar ENGAGED
……冷静に考えれば、かなり直接的な名前だよね。
ストリップバーとしては問題無いかも知れないけど、生憎とここは普通のカフェ兼バー。ストリッパーはいない筈だ。
私が今日からお世話になる場所であるが、ストリップバーなら、逃げ出したい。
ボンテージ衣装は嫌だ。
正面ではなく裏口に周り、建物に入る。
「おはよう、早いな」
直後、この店の店主である巨漢――ウェブリー・アライアス氏と鉢合わせ。
昨日も思ったけれど、本当に般若が仏に見える程、厳つい顔。……本人には言えないけれど。
「おはようございます……店長……」
「堅っ苦しいな……。店長って呼ぶのは仕事中だけでいい。後、これがロッカーの鍵。……中に制服が入れてあるから、それに着替えてホールに、な」
店長は苦笑し、鍵を投げ渡す。
「分かりました……」
その鍵をキャッチし、更衣室と書かれた部屋に入る。
自分の名前が書かれたロッカーを開け、中にあった制服は――ある意味、予想通り。
やや丈の短い白のワンピースに、ブラウンのエプロン。
所謂、ウェイトレススタイル。……色が変だけど。せめて、逆の方が良いよね?
とは思いつつも、着替える。
軽く身体を動かし、キツくないかの確認。――問題なし。
私服はハンガーに懸けてロッカーにしまい、施錠してホールに向かう。
ドアを開けて、入ったホールにいたのは、店長だけだった。
「似合ってるじゃないか。……客引きとしては充分だな」
「ありがとう……ございます?」
誉められたのか、貶されたのかよく分からないが、客引きとは露骨過ぎる。
「一応聞くが、料理は出来るか?」
「はい」
親の料理が壊滅的だった為、必然的に私が作る羽目になっていたからだ。
初めのうちは、苦い顔されたけどね……。
上達するまでは、誰もが通る道だろう。
「……なら、よし。じゃ、仕事の説明だが……簡単だ。客から
「随分……アバウト、ですね」
こんな上司、そうそういない。……いない、筈だよね?
「初っぱなから完璧に出来るとは思ってないからな。……幸い、ウチは昼間は比較的暇だからな。……常連客はセルゲイらぐらいだし。ゆっくり覚えてけばいい」
「分かりました」
大丈夫なのだろうか、とは思いつつ、仕事が始まる。
台布巾を手に取り、カウンター、テーブルを拭き掃除。
それが終われば表に移動し、看板を置いて、立札は《
後は店内に戻り、顧客を待つだけだ。
――二時間後――
(……本当に…………来ない)
私は暇を持ち余していた。
全く、お客さんが来ない。
店長の言葉は間違いではなかったのか。
よく、こんなに閑散としているのに潰れないもの。……いや、夜の――バーとしての――売り上げが補っているのだろうか?
……未成年者たる私に知るよしは無いが。
(……って、気を抜いちゃ駄目……)
こういう時に限って、お客さんが来るものだと、思うから。
「よぉ、開いてるみてぇだな、ウェブリー」
ほら、来た。
「い、いらっしゃいまひゅ……」
噛んじゃった!?
だが、相手は気にしていないのか、
「……おい、ウェブリー。何処から攫ってきやがったんだ?」
怪訝そうな様子で、店長に問う。
「攫ってませんよ。……ウチの新入り。今日からだけどな」
対する店長は苦笑。しかし、フランク寄りな敬語。
……知り合いなのかな?
と、思いつつ、改めてお客さんを確認する。
短く刈り込んだプラチナブロンド。岩から削り出したのかと思えるような、ゴツい顔付き。
店長に負け劣らず、筋骨隆々な巨漢であり、端からは対となった阿修羅像が鎮座しているように見える。
(……本当に阿修羅像なら、ユニークだけど)
カフェの入り口に阿修羅像。……何処の寺院だ。
って、そうじゃない。
お冷やと御絞りの提供、それに席へのご案内しないと――
「ほぉ、随分と可愛い新入りだな。…………今度から通うかな……。ウェブリー、ブラックコーヒーな」
(カウンター席に着いてたよ!?)
いつの間にっ!?
「……来るなら夜にしてください。……チェルミが相手をしてくれますから」
「アイツも悪かねぇが……。ウェイターは雇わねぇのか?」
「雇ったら、通いつめて掘るつもりでしょう、
店長はそう言って、ブラックコーヒーの注がれたカップをカウンターに置いた。
(……中佐?)
軍人なんだ……この人。
中佐と呼ばれた巨漢はコーヒーを一口含んだ後、真面目な口調で言う。
「で、ウェブリー。……セルゲイらは何処にいるんだ?」
「……また、馬鹿がヘマでもやらかしたのか?」
途端に、店長も真面目な口調で言う。
……セルゲイさん達に関係ある話……なのかな。
何だろう?
というか、馬鹿って誰の事だろうか?
「あぁ、馬鹿が粋がりやがったな。……で、セルゲイらを呼べ、とさ」
「……多分、射撃場だな。……天樹、場所は分かるか?」
「……え?あ………」
突然言われ、思案。
射撃場の場所――
「わかんねぇか。……え~と……………よし、即席だが地図をやる。セルゲイ達を呼んできてくれ」
思案した時点で、分からないと悟ったらしい店長がメモ用紙を渡してくる。
メモ用紙には、簡素な地図が書かれている。
雰囲気的に、拒否できない状況。
(大人しく、引き受ける方が良さそう)
だから私は、
「は、はい……」
地図を受け取り、店を飛び出した――
――以上、Innocent Shooter編プロローグでした。
時系列的には、本編Ⅱ弾倉目の中間ぐらいから。
どの辺りかな、という点は本編拝読済みなら分かります。
では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました。