※この作品はR-18です。

Dirty Works~Piece of Story~   作:空薬莢

15 / 37
踏み出した一歩は、時として過ちとなる。
だが、踏み締めた何かには、
踏み出す決意には、
必ず意味があるのかも知れない――





Innocent Shooter
プロローグ


A.M.7:00。

耳をつんざく炸裂音に私は目を覚ます。

(セルゲイさん達……訓練始めたんだ……)

いまいち回らない頭のまま、ベットから起き上がり、パジャマから薄手のワンピースに着替え、適当に朝食を摂る。

身嗜みを整えて談話室に向かうと、ソファで丸くなっているグラナデさんを見つけるが――無視。

起こすのは、何処か可哀想。

(いや……違う……)

セルゲイさんに釘を刺されたから。無理にコイツを起こそうとするな、と。

自分達は無理に起こしているじゃないか、とは思うものの、おそらくグラナデさんは慣れているのだろう。

慣れない者が起こした場合、痛い目を見る、という事か。

(……まぁ、良いかな)

書き置きだけ残し、便利屋を出る。

(眩し……)

出迎えるのは、自己主張の激しい太陽光と、落ち着き払う街並み。

車通りすら疎らな道路を渡り、数分歩いた後、目的地に着く。

――Cafe&Bar ENGAGED

 

……冷静に考えれば、かなり直接的な名前だよね。

ストリップバーとしては問題無いかも知れないけど、生憎とここは普通のカフェ兼バー。ストリッパーはいない筈だ。

私が今日からお世話になる場所であるが、ストリップバーなら、逃げ出したい。

ボンテージ衣装は嫌だ。

正面ではなく裏口に周り、建物に入る。

「おはよう、早いな」

直後、この店の店主である巨漢――ウェブリー・アライアス氏と鉢合わせ。

昨日も思ったけれど、本当に般若が仏に見える程、厳つい顔。……本人には言えないけれど。

「おはようございます……店長……」

「堅っ苦しいな……。店長って呼ぶのは仕事中だけでいい。後、これがロッカーの鍵。……中に制服が入れてあるから、それに着替えてホールに、な」

店長は苦笑し、鍵を投げ渡す。

「分かりました……」

その鍵をキャッチし、更衣室と書かれた部屋に入る。

自分の名前が書かれたロッカーを開け、中にあった制服は――ある意味、予想通り。

やや丈の短い白のワンピースに、ブラウンのエプロン。

所謂、ウェイトレススタイル。……色が変だけど。せめて、逆の方が良いよね?

とは思いつつも、着替える。

軽く身体を動かし、キツくないかの確認。――問題なし。

私服はハンガーに懸けてロッカーにしまい、施錠してホールに向かう。

ドアを開けて、入ったホールにいたのは、店長だけだった。

「似合ってるじゃないか。……客引きとしては充分だな」

「ありがとう……ございます?」

誉められたのか、貶されたのかよく分からないが、客引きとは露骨過ぎる。

「一応聞くが、料理は出来るか?」

「はい」

親の料理が壊滅的だった為、必然的に私が作る羽目になっていたからだ。

初めのうちは、苦い顔されたけどね……。

上達するまでは、誰もが通る道だろう。

「……なら、よし。じゃ、仕事の説明だが……簡単だ。客から注文(オーダー)を聞き、それを俺に伝えて、出来た品物を客に配膳するだけだ。……クレームへの対応やら何やら細かい事は色々あるが、その辺は追々ってな。……取り敢えず、自分の良いと思ったようにやってみな」

「随分……アバウト、ですね」

こんな上司、そうそういない。……いない、筈だよね?

「初っぱなから完璧に出来るとは思ってないからな。……幸い、ウチは昼間は比較的暇だからな。……常連客はセルゲイらぐらいだし。ゆっくり覚えてけばいい」

「分かりました」

大丈夫なのだろうか、とは思いつつ、仕事が始まる。

台布巾を手に取り、カウンター、テーブルを拭き掃除。

それが終われば表に移動し、看板を置いて、立札は《Близко(閉店)》から《Открытый(開店)》へ。

後は店内に戻り、顧客を待つだけだ。

 

――二時間後――

(……本当に…………来ない)

私は暇を持ち余していた。

全く、お客さんが来ない。

店長の言葉は間違いではなかったのか。

よく、こんなに閑散としているのに潰れないもの。……いや、夜の――バーとしての――売り上げが補っているのだろうか?

……未成年者たる私に知るよしは無いが。

(……って、気を抜いちゃ駄目……)

こういう時に限って、お客さんが来るものだと、思うから。

「よぉ、開いてるみてぇだな、ウェブリー」

ほら、来た。

「い、いらっしゃいまひゅ……」

噛んじゃった!?

だが、相手は気にしていないのか、

「……おい、ウェブリー。何処から攫ってきやがったんだ?」

怪訝そうな様子で、店長に問う。

「攫ってませんよ。……ウチの新入り。今日からだけどな」

対する店長は苦笑。しかし、フランク寄りな敬語。

……知り合いなのかな?

と、思いつつ、改めてお客さんを確認する。

短く刈り込んだプラチナブロンド。岩から削り出したのかと思えるような、ゴツい顔付き。

店長に負け劣らず、筋骨隆々な巨漢であり、端からは対となった阿修羅像が鎮座しているように見える。

(……本当に阿修羅像なら、ユニークだけど)

カフェの入り口に阿修羅像。……何処の寺院だ。

って、そうじゃない。

お冷やと御絞りの提供、それに席へのご案内しないと――

「ほぉ、随分と可愛い新入りだな。…………今度から通うかな……。ウェブリー、ブラックコーヒーな」

(カウンター席に着いてたよ!?)

いつの間にっ!?

「……来るなら夜にしてください。……チェルミが相手をしてくれますから」

「アイツも悪かねぇが……。ウェイターは雇わねぇのか?」

「雇ったら、通いつめて掘るつもりでしょう、中(、)佐(、)。勘弁してくださいよ」

店長はそう言って、ブラックコーヒーの注がれたカップをカウンターに置いた。

(……中佐?)

軍人なんだ……この人。

中佐と呼ばれた巨漢はコーヒーを一口含んだ後、真面目な口調で言う。

「で、ウェブリー。……セルゲイらは何処にいるんだ?」

「……また、馬鹿がヘマでもやらかしたのか?」

途端に、店長も真面目な口調で言う。

……セルゲイさん達に関係ある話……なのかな。

何だろう?

というか、馬鹿って誰の事だろうか?

「あぁ、馬鹿が粋がりやがったな。……で、セルゲイらを呼べ、とさ」

「……多分、射撃場だな。……天樹、場所は分かるか?」

「……え?あ………」

突然言われ、思案。

射撃場の場所――

「わかんねぇか。……え~と……………よし、即席だが地図をやる。セルゲイ達を呼んできてくれ」

思案した時点で、分からないと悟ったらしい店長がメモ用紙を渡してくる。

メモ用紙には、簡素な地図が書かれている。

雰囲気的に、拒否できない状況。

(大人しく、引き受ける方が良さそう)

だから私は、

「は、はい……」

地図を受け取り、店を飛び出した――

 




――以上、Innocent Shooter編プロローグでした。
時系列的には、本編Ⅱ弾倉目の中間ぐらいから。
どの辺りかな、という点は本編拝読済みなら分かります。
では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。