※この作品はR-18です。

Dirty Works~Piece of Story~   作:空薬莢

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銃爪を引け。
それが汝の為になるになるならば……いや、汝の為ならずとも。
引かなければならない理由があるのだから。




銃爪に指をかけた理由

《憤怒の再燃》作戦が終了した翌日――

「いらっしゃいませ……」

私は仕事をしている。

昨日はセルゲイさん達が依頼を受け、出ていった後にちらほらとお客さんが来た為、多少なりとも勉強ができている。

故に、焦って噛むような事は無くなった。……店長からは呑み込みが早い、と言われたが……そうなのかな?

「……ご注文が決まりましたら、御呼びください」

新規の御客様を席に誘導。決まり文句を言った直後、他の方に呼ばれたので、そちらへ向かい、

「――エスプレッソとアメリカンコーヒー、ハードタック二つですね。畏まりました」

注文をメモ、厨房に告げる。

しかし、ハードタックか。

物好きだと思う。

ハードタックとは蔑称であって、本当の名称はハードブレッド。訳せば、固いパン。……有り体に言えば、ヨーロッパ発祥の保存食の王道、乾パンの総称。旧アメリカ合衆国で使われていたものは酷かったらしい。

当時、保存食の技術があまり発達しておらず、アメリカ合衆国のハードタックは非常に固く、腐敗も保存食の割には早かった。……兵士達は、ハードタックを《鉄板クラッカー》と呼び、銃弾が直撃しても割れなかった、なんて冗談もあったらしい。……それ故に、コーヒー等に浸して軟化させて食したと言われている。

まぁ、こんな知識は女の子が知る知識ではないけれど、私が知っているのは、昨日店長が暇潰しに聴かせてくれた為だ。

他にも色々と聞いたのだが、今は仕事中。思い出すのは後にしよう。

「ほいよ、エスプレッソとアメリカン。ハードタック二人分」

丁度良いタイミングで店長がオーダーした商品を出してくる。

「お待たせしました。エスプレッソ、アメリカンコーヒー。ハードタックになります」

注文者の元に配膳。

「それでは、ごゆっくり」

決まり文句。

退散。定位置へ。

「……今日も客が少ないな」

店内を見回した店長が呟く。

(本当に少ないのかな?)

気になった私も、店内を見回す。

先程、配膳した男性二人組の他、数組の男性がいるだけだった。

「…………そうなんですか?」

が、元々然程席が多くない、という点を踏まえると、少なくは無いと思うけれど……。

「あぁ。いつも通りの客足。…………だが、どうにも嫌な予感がするな。天樹、用心しとけよ」

と、店長が言った時――

「有り金出せやゴルァ!!」

勢い良く店内にチンピラ達が入店。

各々が大型の突撃銃やら、散弾銃を手にしている。

(真っ昼間に堂々と強盗っ!?)

定位置で立ち尽くしたまま、内心で驚く。

顔に出しては駄目だ。恐らく、悪い方に事態が傾いてしまうと感じたから。

「……ハァ。嫌な予感が当たりやがったな」

一方で、店長は溜め息を吐いて、チンピラを睨んでいた。

「アンタが店主か?有り金寄越せよ。まだまだ長生きしてぇだろ、オッサ――」

銃声。

有り金を要求していたチンピラの顔が吹き飛ぶ。

鮮血と肉片が舞い、床や壁を汚す。

確認するまでもなく、チンピラは死んだ。

「タダ飯食らいに来る奴は帰りな。……帰らねぇ奴はミートパイにしてスラムの駄(、)犬(、)共の餌にしてやる」

いつもとは違う、低い声でそう言ったのは店長。

彼の右腕には、銃口から硝煙がたなびく大口径の散弾銃が握られていた。

全体的に直線的な形状に、大型の箱型弾倉が装着されたモデル。見るからに、凶悪なモデル。

「ハッ、老いぼれが調子に乗ってんじゃ――」

銃声。

発砲炎と共に、19.5㎜弾頭が打ち出され、

声の主であるチンピラの胴体に着弾。

肉を抉り、肋骨を折れ、潰れた弾頭は持てる運動エネルギーの全てを吐き出すように、内部組織を食い荒らす。

相当な激痛だろう。チンピラは絶叫を上げ、絶命。

死因は心臓を抉られたからか、それとも激痛によるショック死か。

どちらも、幸せな死に方には程遠い。

「さて……これでミートパイの原料は4人前ぐらいか。……あと何人前の材料が手に入るかな?」

店長が嗤う。

歪な嗤い。

昔、歴史の授業で見た映像にあった、戦場で頭がイカれた兵士が浮かべる嗤いと似ている。

店長もイカれているのだろうか?

それならば、この仕事は辞めたい。……私までおかしくなる前に。

と、畏縮していたのは私だけではないらしく、残りのチンピラ達もだったらしい。

最初の覇気はどこに行ったのやら、今は、猛獣を前にした子羊同然。

「まずは…………テメェはどうする?」

散弾銃の銃口が一人のチンピラに向く。

「う、うわぁぁあぁぁぁっ!?」

出口へと走り去っていくが、

銃声。

胴体が泣き別れ、チンピラが絶命。

「臆病者が。怯えたフリも出来ねぇのかよ」

近くにいた仲間に射殺された。

「調子に乗ってんじゃねぇぞ、老いぼれが」

即座に、私達に向けられる複数の銃口。

「……それがお前らの決断か?」

だが、店長は静かに聞き返すだけ。既に歪な嗤いはしていない。

「黙って有り金全部寄越せ、駄肉塗れのオッサン」

「結局は金とSEX(ファック)がお前らの目的だろ?……反吐が出る」

吐き捨てるように言った店長が開いた左手でハンドサインを送ってきた。

『伏せろ』

そう、理解した私は床に伏せる。

同時に、連続した銃声。

血と肉片が舞い、絶叫の輪唱。

視線を上げれば、目に映る、チンピラ達の醜いダンス。

やがてチンピラは床に倒れ、物言わぬただのナマモノと化し、銃声も止む。

「もう大丈夫だ、天樹」

変わりに耳へと届く、優しげな店長の声。

いつもトーンだ。先程までの恐怖は感じない。

顔を上げ、立ち上がると――客のいない血と肉片で汚れ、死体の転がる店内があり、

散弾銃こそ肩に担いでいるが、いつも通りの店長がいた。

「スラム近郊だと、こういう事もあるんだよな……。客も仲間だったみてぇだし……ハァ……」

溜息一つ。

「店の掃除……出来そうか?」

私は問われた。

血と肉片、死体が散らばる店内の掃除が出来そうか、と。

極普通の少女なら、無理だろう。今までの間に気絶しているか、恐慌状態に陥り、流れ弾で死んでいるだろう。

だが、私は一昨日の惨劇で、心が壊れてしまったらしく、

「大丈夫です」

血にも、肉片にも……恐怖は無くなっていた。おそらく、銃火器にも。

モップとバケツ、箒、塵取を用意。掃除開始。

手際良く血糊と肉片を集めていく。

その途中、

「天樹、お前は中等教育における、射撃訓練で何を履修した?」

店長がそんな事を聞いてきた。

約百年前に比べ、格段に治安が悪化している現在において、どの国家も銃器所持に寛容になっており、エリアRos、エリアAme(エリアU.S.)、エリアGer等は中等教育課程に射撃訓練が組み込まれている。

私が通っていた学校では、拳銃は必修で、選択制でもう一種の訓練が受けられた。

確か、自分が履修したのは――

「拳銃と……突撃銃でした」

「なるほど。……極一般的な歩兵の装備は履修したのか」

「一応……ですけど」

当時に訓練成績はあまり良くなかった。だから、一応という事にする。が、店長の言う通り、突撃銃(アサルトライフル)は現代歩兵の主兵装。

威力、射程、マガジン弾数、取り回し等の機能バランスが良く、高い汎用性を持つが故に。

「なら、便利屋の仕事もやれなくは無いわけだ。……一応、復習はしておいた方が良いだろうよ。セルゲイ曰く、天樹も便利屋のメンバー扱いらしいから」

「そう……ですね」

善意だけで、保護されたとは思えない。……それぐらいの代償は予想できるもの。……まぁ、おそらく請求されるであろう家賃を支払う為に、バイトをしているわけだけど。

「ま、便利屋の仕事をやんのは自由だが、さっきみたいな事態はままあるんだ。あぁいう奴らの相手が出来るようになってほしいが」

店長的には、そっちが本音では?

(……ともかく)

明確な理由があるならば、復(、)習(、)しておこうかな。

その為の先(、)生(、)は近くにいるわけだから。

 

 

三日後――

私は射撃場に来ていた。

目的は、自分に合う銃火器を見つける事。

ハンドガンは護身用と一般的な物であり、除外して良い。

故に、まずは散弾銃を試す。

極一般的なポンプアクションモデル。

銃身下部の筒型弾倉(チューブマガジン)に弾薬が詰まっている事を確認。

レーンに立ち、セフティリリース。

フォアエンド、スライド。

起き上がる人型標的(マン・ターゲット)。

散弾は放射状に広がる。正中線、胸部の辺りに銃口を重ね、

銃爪を引く。

発砲炎。

強力な反動が肩に伝わり、銃口は跳ね上がる。

バラ撒かれた散弾は標的に多数の風穴を穿ち、重力に引かれて地に落ちた。

(……キツい、かな)

ショットシェル特有の強い反動を吸収しきれそうに無い。

速射したところで、制圧火力は高が知れているだろう。

マガジンから残りのショットシェルを抜き、散弾銃はラックへ。

変わりに手に取ったのは、簡易狙撃銃。

所謂、マークスマンライフルと呼ばれる突撃銃の派生で、突撃銃と狙撃銃の中間辺りに位置する物。

簡易という言葉通り、有効射程は突撃銃より少し長い程度で、狙撃銃には遠く及ばない。

が、それを補うように、フルオート射撃という面制圧、近距離自衛用手段がある為、汎用性は上。

ボルト、セフティリリース。

付属のスコープを覗き、レティクルを標的の頭部へ。

だが、十字では合わせない。

風や湿度。気温などの外的要因で、弾道がぶれるから。

トリガーも絞り込むように引く。

軽い反動。

弾着は標的の頭部。部位的には前頭葉の右側か。ナマモノ相手なら、即死。

悪くはない、かな……。

射撃の感触は悪くない。

(でも……)

突撃銃の方が良いのかも知れない。

が、便利屋の仕事をするとしたら、バレットさん達の支援を考慮して、狙撃銃や迫撃砲の扱いを習熟しておくべき?

いや、確実にするべきか。

(……特訓しか、無いよね)

メインは突撃銃――か、簡易狙撃銃。サブは狙撃銃か迫撃砲辺りが妥当。

時間もある。今日はバイトの休日故に。

だから、私はライフルを手に取り、レーンへと向き直る。

さぁ、反復練習を始めよう。

 

 

 




――以上、Innocent Shooter第Ⅰ話でした。
やはり、生ゴミになるチンピラ。
もはや様式美。Darty Worksの日常。
現実なら、ただの世紀末。
では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました。

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