※この作品はR-18です。

Dirty Works~Piece of Story~   作:空薬莢

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休める時に休め。
やれる時にやれ。
生など刹那でしか無いのだから――



Another Side Stories
The Guy's Holiday


昨日、エリアRos EI近郊で戦闘があったらしい。

確か、同地区には隊長と副隊長が出張った筈だから、ほぼ確実に彼らの戦果だろう。

日頃の戦闘を見る限り、負ける筈は無いし。

で、俺――エイノ――が何をしているかと言えば――

 

(『さぁ、飛び立て。地上の穢い絆など捨て置いて。本当の自由の為に。本当の絆の為に。生きていると実感する為に。……その為に僕らは飛ぶ。例え、僕達に翼が無かろうと、飛ぶ為に、歪な金属の棺桶に入ろうとも。……空の上では等しく無意味で、有意義。分からない者には、地を這う醜いアヒルの子も同じ。そう思うだろう?なぁ、相棒……』)

事務所の談話室で読書中だった。

因みに、本の題は『平等な世界(ソラ)を舞う者達~Innocence Flyer~』。

多くの人は、読まない作品だ。……内容が小難しいからか?

(面白いのに……勿体無いな)

ページを捲る。

こういう本を読みそうなのは、セルゲイさんやノルシェさんぐらいだろうか?

アランやリベリは読みそうに無い。特に、アラン(単純バカ)は。

兎にも角にも、今日は読書に興じられるほど暇なのだ。

依頼自体は来たのだが、破壊大好きなお姫様と、単純バカ。それにお向かいさんの問題児が出撃した為、その他のメンバーは非番。

各々が自分の時間を過ごしている次第。

……だが、至福の時や予定、自由時間というのは潰される事が多い。

「邪魔するぞー」

雑な台詞と共に、談話室に入ってきたのはタボール。

横目で確認した後、読書再開。

「誰もいねぇのか――って、エイノだけか。……おい、エイノ」

声を掛けられる。

「何ですか、タボールさん。出来れば読書の邪魔をしないで頂きたいのですが?」

「それについてはわりぃと思ってる。……だけどよ、街まで行かねぇか?」

街……つまりは買い物だろうか?それならば、別に一人でも――

「一人でも良いんじゃないですか?」

俺を誘う必要性が無い。

「まぁな。……野郎じゃなくて、麗しの女性でも侍らせて行く方がよっぽど良いだろうが……俺達の身近に、デートに誘えるような女性がいるか?」

「……確かに」

脳裏に便利屋の女性陣を思い浮かべ、納得。

 

――思考回路の読めない副隊長。

――そもそもイカれきったヴェルファー。

――真面目過ぎて、気疲れしそうなリベリ。

――児童虐待で通報されかねない天樹ちゃん。

――ガレージに引き篭もりがちなノエルさん。

…………うん、デ(・)ー(・)ト(・)に付き合ってくれそうな女性が誰一人としていない。

「かといって、居残り組の野郎の中でも――」

「……で、消去法で俺が残った、と」

「……あぁ」

……なるほど。

要約すれば、男二人旅に行かないか、という事か。

「何処に行く予定ですか?」

目的地次第では、一考の価値がありそうだ。

「何処って言われると…………酒場か銃砲店か?」

酒場は……女漁り目的かな?

で、銃砲店は…………俺にも行く価値はある。

新製品の確認だ。特に、JA社の。

「女漁りでしたら付き合いませんが、銃砲店に行くのでしたら、良いですよ」

「お、行く気になったか」

「えぇ」

栞を挟み、本を閉じる。

「準備してきますよ」

「武装を忘れんなよ―」

そして、お互いに準備する為、談話室を出た。

 

数分後――

俺は共用ガレージに向かい、シトゥイークと合流したのだが――

「……バイクで?」

「あぁ」

当のシトゥイークは、大型の側車付きバイクの近くにいた。

全体的に無骨な形状。

駆動する事、酷使される事を最優先した機構。

明らかに、軍用か、悪路用の種別。

「《WA'S ORS-35H》ってバイクだ。コイツはいいぜ」

「……目的地はLim-E市街地じゃないんですか?」

「通い慣れた場所も悪かねぇが、たまには別の店も回りてぇだろ?……ってなわけで!目的地はエリアRos Lim-SSEだ」

……Lim SSE。

隣街か。

「そうですね。……で、俺は側車に乗れば良いんですね?」

「あぁ。お前は大型自動二輪免許、取ってねぇしな」

……耳が痛い事実だ。今度、大型自動二輪車免許を取ろう。

人によってはどうでもいいような事を思いつつ、側車に座る。

「高速に入ったら、いつでも撃てるようにしておけよ?」

「分かってます」

最後通達のような確認の後、かかるエンジン。

「Давайте пойдем(かっ飛ばすぜ)!!」

急加速。

ガレージを出る同時に、ドリフト。

普通の人なら、苦情必至。

しかし、出だしだけで、市内は法定速度で通行。

心地良い風で、心を休める。

これから、一仕事するかも知れないから。

「なぁ、エイノ」

「何ですか?」

それは、互いに予想済みであり、大した問題ではない。

「音楽かけて良いか?……どうせ、奴(・)ら(・)は五月蠅ぇんだし」

……確かに、ね。

アイツらは五月蠅い。余程の爆音で垂れ流さない限りは、問題無いだろう。……ましてや俺もシトゥイークも強化個体なのだから。

「……お好きにどうぞ」

「ありがとよ……って、IC過ぎてからだな」

苦い顔をするシトゥイーク。

約100m先に、料金所。

もう、か。

準備を始めよう。

側車内のホルダーに差していた、得物を確認。

――JA社製5.56㎜突撃銃《AB-42》と、同社製12ゲージ散弾銃《DR25》。

この二挺があれば大丈夫。

「お、今日はお前らか。また依頼なのか?」

「いや、男二人旅って所だ」

料金を支払いながらの世間話。

「そうか。なら、依頼をしておくか。……派手に事(・)故(・)を起こしてやれ」

「事故は起こるさ、か?」

「まぁ、そんな所だな。……風になってきな!」

ゲート解放。

「Вы передень(準備は良いか)?」

シトゥイークが俺の方を向き、言う。

「問題ありませんよ」

《BA42》を手に取り、ボルトリリース。

「……そのようだな」

オーディオが起動。

「Возьми(飛ばすぜ)!!」

同時に、急発進。

戦(・)場(・)へと躍り出る。

エンジンが唸りを上げて、景色を置き去りにし、疾走。

体感だが、100は超えている筈だ。

次のスタンドまで燃料が足りるか?

「エイノ!早速来やがったぜ!!」

――心配している暇は無さそうだ。

振り返る。

「ヒャッハー!」

「バイクが一台!」

「乗員が野郎ってのは気に食わねぇがなぁ!!」

「まぁ、ブッ殺すだけだがな!」

「ハッ!違いねぇ!!」

無数のバイク。

いずれもが、無茶な改造を施された粗悪品。

アレが銃器ならば、俺は正気を失っているだろう。……それぐらい無茶で、阿呆で、矮小で、物を大事にしない手の入れよう。

シャール辺りは本気でブチ切れるな。

「出てこなければ良いのに」

手にした《AB-42》を構える。

照門(リアサイト)にバイクの車体を合わせ、照星(フロントサイト)には、搭乗者を。

ダッドサイトを装着しなかった事が悔やまれる。

アレなら、照準も楽なのに。

(……悔やんでもしょうがない)

トリガーに指を掛け、短く指切り。

数発の5.56㎜弾が撃ち出され、

着弾。

運転手の脇腹と左腕を抉り、バイクは横転。

後続車が何台か巻き込まれ、アスファルトに頭部を打ち付ける。

ヘルメットをしていないようだから、最悪死ぬな。

……自業自得だ。

(数年とはいえ、軍に身を置いたせいかな……。生と死に対して冷淡になりかけてる)

入りたくもなかった世界に無理矢理押し込まれ、適応した結果。

殺し殺されるのが自然の摂理。

歪まねば、生きていけないって事か。

「考え事は後にしろ、エイノ!野郎共が撃ち始めたぞ」

「了解」

返答し、奴等を一瞥。

(……歪まないと生きれないなら、俺がやれる事は――)

再照準。

トリガー。

着弾。

今度は右顎と首筋。

出血量からして、頸動脈をやったらしい。……数秒で絶命。

「腕を上げたな!だが、まだまだ奴等は――掴まってろ!」

「嬉しくない言葉で――うおぁっ!?」

唐突な急制動。

過去にいた位置を通過する7 62㎜ライフル弾。

振り落とされそうになりながらも、射撃し続けた《AB-42》のボルトが後退して止まる。

残弾無し。

「……やりやがったな」

空弾倉を抜き、投擲。

行く末は確認せずに、予備を装着。

ボルトコック。

初弾装填。

「うおぁっ!?」

っと、一台横転。

「邪魔するなっ!!」

で、仲間に銃殺と。

所詮は目的が同じだけの集まり。

結束力なんて無い。

「とはいえ、数が減らねぇな……」

「全くですね……」

ようやく飛来し始めた銃弾が描く射線を避けつつ、二人して呟く。

「纏めて片付けてぇな……。後ろのホルダーのヤツを使えよ」

「はい?……って、なんて物を積んでるんですかっ!?」

指示されたホルダーに収まっていたのは、JA社製の250㎜特殊擲弾射出器《PG-38》。

面制圧用のジャジャ馬だ。

「装弾は多目的榴弾(HEAT-MP)だ。派手にブチかましてやれっ!」

「本気で殺る気じゃないですか!?」

中途半端な対人対装甲用弾薬とはいえ、非装甲車両相手には過剰だ。

「殺らなきゃ、殺られんのが、世界の法則だ!見ろよ!奴ら、TRGまで持ち出しやがって!」

「ちょっ!?それは洒落にならないっ!!」

こちらも非装甲車両。いかな低弾速の対装甲ロケット推進擲弾とはいえ、当たれば致命傷。

急いで《PG-38》を構え、安全装置解除。

トリガーに指を掛け。

「出て来なければっ!!」

発射。

弾き出された250㎜擲弾はバイクの群れへと向かい、

炸裂。

複数発の擲弾に分裂。

荒れ狂う擲弾の雨はバイクを呑み込み、黒煙の花を咲かせる。

黒き花の栄養は……命だった。

肥料が生物の肉で。

水は鮮血。

でも、花が咲くのは僅かな時間。

すぐに花は枯れ、天へと伸びる、黒き蔦へと変わる。

そして、蔓が種をつける事は無い。

「綺麗に咲いたもんだぜ。……だが、命の花ってのは…………醜いな」

「喩えが間違ってますよ、タボールさん。……アレは怨恨と無念の花。醜くて当然ですよ」

自分で言った台詞が痛い。

「……そうだな。じゃ、これ以上気分を害する前に、目的地へ向かうぜ」

力強くかかるアクセル。

「Давайте пойдем!!」

急加速し、俺達を乗せたバイクは疾走した。

 

 

数時間後――

「着いたぜ」

俺達はエリアRos Lim-SSE市内の銃砲店に着く。

(さて……。楽しませてくださいよ)

ヘルメットを置き、入店。

出迎える、数多の銃火器。

(CA、RG、FF……)

メーカーを流し見て、苛立つ。

エリアU.S.のヤツばかりだ。

昔から銃火器を振り回す事が自由の証であり、自分達が世界の正義だと吹聴してきた奴等の銃火器は好かない。

第一、あの国の銃火器は脆い。飽くまで、そこらの密造品よりマシ程度の信頼性。そんな物に命を預ける奴の気が知れない。

(……今度、リベリにもJA社製散弾銃を薦めておこう)

なんて思いつつ、カウンターへ。

店主にクレームを入れなければ。

「店主。JA社の製品は置いてないのか?」

「あぁ。……彼処の製品を買うのはならず者ばかりなんでな。……テメェもならず者か?」

が、クレームに対する答えは質問と、隠す気もない殺意。

「……違いますよ」

怒りを抑えて、答える。

「…………」

暫く、店主と睨み合いが続く。

「…………そのようだな。半端者の眼じゃねぇ。悪かったな。治安の為に出来る事はしてぇんだ」

「そうですか」

一先ず、殺気が消えた事に安堵し、店主の前を去る。

理由が理由だ。密造品とはいえ、JA社製銃火器はならず者の玩具という認識が広まっているようだ。

腹立たしい。

「ひでぇ面だな、エイノ」

「…………目的は済みましたので、出ましょう」

「…………なるほど」

納得したシトゥイークと共に、退出。

バイクに乗り、街中をツーリング。

しかし、

「……クソッ、いい酒場がねぇ」

シトゥイークは不機嫌だ。

「…………どっちの意味でですか……」

良い酒場と断定する要素は一般的に、ストリッパーの質か、酒の質のどちらかだと思う。

シトゥイークが重要視するのは、おそらくストリッパーの質ではないだろうか。……というか、大抵の男はストリッパーの方が酒より好きだろう。

「アルコール的な意味だ」

そっちか。

「帰ろうぜ。やっぱり店長の酒が飲みてぇ」

「……そうですね」

お互いに、収穫を見込めないと悟り、ICへと向かう。

料金を払い、進入。

念の為、《AB-42》を構え、ボルトリリース。

「…………そう何度も戦いたくはねぇけどな」

起動したオーディオ。

急加速。

「ヒャッホーッ!!」

幾度も車線変更を繰り返し、トラックやら乗用車やらを追い抜く。

すると、後方から聴こえたクラクション。

横に並ぶ、大柄な車輌。

「余所者共。俺の庭で遊んでんじゃねぇよ」

「遊んでいるつもりは無いんだが?」

「黙れよ」

返答に答えず、向けられた騎兵銃。

(……零八式短歩兵鎗)

AB-40カービンモデルの密造品じゃねぇか。

反吐の出る物を出すんじゃねぇ。

「そして死ね」

引き絞られたトリガー。

吐き出される7.62㎜ライフル弾。

「危ねぇな……民間人に流れ弾が当たるだろう?」

だが、俺達には1発も当たっていない。

シトゥイークが速度を落として射線から離脱したのもあるが、相手側が突撃銃を片手撃ちしたからだ。

見た感じでは、ほぼ常人であったから、ライフルの片手保持自体が厳しく、射撃も安定する筈が無い。……ライフルを持った事がある奴ならば、理解していて当然の常識。

「……にしても、行きも帰りもお出迎えありかよ……」

「こっちとしては、いい迷惑ですね。……お代わりもあるみたいです」

俺は後方を一瞥し、言う。

懲りずに、ならず者共がリンチに来たのだ。……今度は車輌で。

「ハハハ…………厄日だぜ」

言葉とは裏腹に、シトゥイークの口元は緩んでいた。

「行きはエイノの任せちまったしなぁ……」

続く言葉と共に、シトゥイークが左手をハンドルから離す。

そして、サイドバックから、大柄な9㎜短機関銃《JA BP25》を抜いた。

「今度は俺も手伝うぜ……」

「……主導権を譲りますよ」

進んで引き金を引きたいわけじゃない。

「なら、運転できるか?」

「免許不携帯で塀の向こうに行くしかないじゃないですか……。俺が持ってるのは普通と大型特殊の履帯限定ですよ」

「だろ?……じゃ、行くぜ!!」

急加速。

件の車輌を追い抜く。

(……後続車輌は奴らのだけか)

トリガーに指を掛け、数射。

タイヤを撃ち抜く。

「オマケだ!取っときなっ!!」

続けて、シトゥイークが何かを後方に投擲。

一瞬だけ見えた、それは手榴弾――いや、書かれた文字が“Свето-звуковая граната(閃光音響弾)”。

「一応、耳塞いでなっ!!」

再び急加速。

数秒後に、遥か後方で響く高音と高周波。

続く、複数の衝突音。

どうやら、盛大に起(・)き(・)た(・)よ(・)う(・)だ(・)。

「……“事故は起こるさ”」

何処か遠くを見るようにシトゥイークは言い、

「…………えぇ……事故は……“事故は起こるさ”」

俺も同情するように呟いた。

割り切るしか無いんだ。

これは、依頼。

報酬の無い、依頼。

依頼という形に納得できないならば、こう言い換えよう。

これは……ボランティアだ……。

どうでもいいような思案を置き去りにバイクは進む。

 

 

その日、俺達が思った事は共通していた。

 

――休日だからといって、いつもと違う事をし過ぎると、ロクな事が起きない、という事。

言い換えれば、隊長がよく言う言葉通りというわけだ。

 

――世界は辛辣で無慈悲で、そして何より、人間の不幸が酒の肴だということだ……。

 

 

 






……以上、The Guy's Holidayでした。
何処が休日だ、というのが大半の人の思うことでしょう。
何故だろうか、日常が書けなくなっていました。……世界観が書かせないのか。
さて、軽い解説。
JA PB-38が随分とぶっ飛んだ火器じゃないのか、と思った方もいると思いますが、あれは歩兵携行型超短距離MIRVランチャーみたいなもので、威力はともかく、現実的には可能なものです。
それに、エリアRosは旧ソ連やロシアの事で、同国の兵器は特殊な弾薬を使うものが多いので、ある種、特徴としては間違ってもいません。

……では、推奨BGMについて。
今回は複数種類。それぞれタイミングが微妙に違います。

・Omnia Vanitas(IC通過後)

・Holocaust(同上)

・N.O.S(ガレージシーンから)

・FaV(同上)

・ClairsentiencER(IC通過後、タボール第3声後)

・ライダーズ・スピード(ガレージシーン、掛声と同時)


お好きな曲をどうぞ。尚、曲自体が分からない方は、活動報告に簡単に纏めておくので、参照してください。
では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました。

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