※この作品はR-18です。

Dirty Works~Piece of Story~   作:空薬莢

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誰が読むのか、銃火器解説シリーズ第一回。

今回は銃火器自体の簡単な発達史。




スナリャートちゃんの銃火器/重火器解説
》銃火器の基本Ⅰ~銃火器発達の概略~


某所の講堂。

貴方(貴女)の目の前には、小柄な少女が立っている。

銀髪紅眼。端正な顔に、華奢な身体。発育自体は普通。

贔屓目に見ても、美少女。

おかしい、と思う。

確か、ここは銃火器の知識を習熟する場のはずだ。

教壇に立つ者が、この少女しかいないところを見ると、この娘が教官という事になる。

普通、少女が教官である軍事研修などあるものか。屈強な女性兵士(一部の国では女性自衛官)ならば、ありえるが。

などと、考えていると少女が口を開く。

「Hello.講習を始める前に、軽く自己紹介。……私はスナリャート。私個人に対する質問はすべて無視するので、そのつもりで。……では、説明を始める」

そして、講習が始まる。

貴方(貴女)はペンとメモを手に席に着き、スナリャートの話に耳を傾けた――

 

 

「流石に銃火器と重火器自体を知らない人はいない?…………そう。では、この二つがどう違うか、について。……まず、銃火器というのは、皆さんがよく目にする、拳銃や長銃といった物の事で、重火器というものは、よくバズーカと誤用されるロケットランチャーや固定して使われる重機関銃といったもの……分かりやすく言うと、威力が大きく、重い火器の事を重火器と呼ぶらしい。……実のところ、私もよく分からない」

それでいいのか、教官。

「細かい説明は私よりも優秀な先生がいる。そちちに聞くといい。次に進む」

丸投げか。潔いまでの丸投げだ。

「銃火器という武器は元々、『飛道具』と『火器』という二つの武器が合体した物だった。それぞれを簡単に説明すれば、『飛道具』というものは、腕力や物体の反発力といった物理的な力で物を飛ばして攻撃する武器の事で、弓や投石機等の事。一方、『火器』というものは、可燃物や爆発物などの『火』に関係する化学を使用する武器の事を言う。例を挙げると、『ギリシャの火』と呼ばれる、生石灰、軽油、硫黄を主成分とする焼夷剤や、竹等の筒に火薬を詰めた爆竹なんてものがある。……因みに、『火器』は原料的理由で、中国付近(中東)から西ヨーロッパで発達したらしい」

中国付近から西ヨーロッパで?

「そう。これは火薬の話になるから、後で説明する」

後で、か……。

「14世紀当初、火薬を用いた兵器は今日日の大砲のような運用方法が主であり、城壁の破壊、音などによる敵軍を驚かせる為に使われていた。例を挙げると、元という国が用いた《てつはう》等。火薬を用いた兵器を多く見かける中国だが、実は花火としての発達が主であった。兵器の発達は副次的な物だったと言えるが、銃火器の原形といえる物の一種、青銅製の筒を用いる手把鋼銃(ハンドカノン)と呼ばれる物が造られている。そして、15世紀頃のヨーロッパ。……小さな孔の空いた鉄製の筒に火薬、石や鉛玉等を詰め、着火した火縄を火薬に押し付けて弾体を飛ばす武器が誕生する。代表的な物に、『アーケバス』。これは手で持てる程の小さな孔の空いた鉄製筒で、小さな孔に火縄を押し込んで火薬に着火する方式を用いた。……この方式を《タッチホール式》と呼ぶ。……で、このアーケバスに肩当てを付け、火縄の固定具と引き金を兼ねる、金属製の金具が取り付けられた《サーペンティン》という物が出来上がる。……もっとも、初期のサーペンティンは金具がS字型だったことから、《S字型サーペンティン》とも呼ばれた。……尚、サーペンティンは、初頭教育で知る事になる火縄銃の最も古い物と言われている」

アレの原形が《サーペンティン》というものか……。なるほど。

「ここから、火縄銃の説明に移る。……ヨーロッパでは火縄を用いた銃器を《マッチロック》というが、この《ロック》という単語は火薬への点火方法の事を指す。しかし、現代では別の意味なので注意。……では、マッチロックの説明へ。……マッチロック式は火縄が出来た事により、生まれた物。タッチホール式は火種に、焼いた鉄等も使用していた為、気象条件等に左右され、非常に扱いづらかった。そこで試行錯誤の結果、生まれた点火手段が火縄。火縄とは、竹の繊維や檜の皮、木綿等を結い、それを硝石の水溶液に浸して、乾燥させた物。長時間、火が消えづらい為、導火線として重宝した。……因みに、マッチロック式はヨーロッパと日本では方式が異なり、ヨーロッパは握り込む方式の引金を用い、ゆっくり火縄が動く《緩発式》。日本は一般人のよく知る引金を持ち、バネの力で勢いよく火縄が動く《瞬発式》。その他、点火薬を盛る火皿や火縄を固定する火挟みの形状に差異があるが、そこは割愛。続けて、ホイールロック式へ」

ホイールロック?なんの事だ?

と、思う人が大半の中、スナリャートは続ける。

「16世紀初頭頃から、火薬への点火は、火ではなく《火花》の方が良いと考えられるようになった。また、この頃には懐中時計やゼンマイ時計が開発され、多方で偉業を残したレオナルド・ダ・ヴィンチは、それを銃火器の点火方式に応用しようとした。結果、犬頭(ドッグヘッド)と呼ばれる部品に黄鉄鉱を挟み、回転する歯車のような歯輪《ホイール》に擦り付けて、火花を起こす機構が出来上がる。これは現代におけるZIPPOライターにも使われている技術。ホイールロック式は、基本的な射撃方法は火縄銃とさして変わらないが、引金を引くと火皿を覆う火蓋が開き、ホイールも回転。火挟みに当たる犬頭が勢いよく降下して、火花を起こして着火する。尚、予めホイールをスパナという部品で回転させ、スピンドルという部品を回す必要がある。……これによって、弾丸と火薬を装填、黄鉄鉱を犬頭に固定してさえいればすぐに発射できるようになり、携帯性に優れる短銃……所謂、ピストルも誕生したが、それ故に銃器を隠し持つ事が容易になり、犯罪者が急増した為、各国皇帝によりホイールロック式は16世紀中頃から、中世にかけて携行禁止となり、特権階級の玩具となってしまった」

まぁ、そうなるのも道理か。

人間とは性根が黒い奴もいる。

「三つ目にフリントロック式の説明。16世紀半ば頃、オランダとスペインではバネ式により、勢い良く犬頭が作動する、マッチロック式の機構を組み合わせたホイールロック式である、《スナップハンス》と《ミカレット》が造られていた。……これら元にして、17世紀半ばに生まれたものがフリントロック式で、黄鉄鉱に変わって燧石(フリント)が使われた。理由は、黄鉄鉱は損耗が激しく、燧石に比べて入手しづらい為。フリントロック式(スナップハンス)では、火蓋と、ホイールロック式におけるホイールを兼ねる当たり金(フリズン)という部品があり、引金を引くと、犬頭に当たる鶏頭(コック)と呼ばれる部品に挟んだ燧石が当たり金にぶつかり、火花を起こす。同時に、当たり金が動いて、火花は火皿に落下。発砲という仕組み。装填手順は銃口から発射薬、弾丸を込め、鶏頭を半分起こした後、当たり金も開いて、火皿に火薬を盛る。後は当たり金を下ろして鶏頭は全て起こす事で、射撃可能になる」

そこで貴方(貴女)は回りを見ると、数人の受講者が居眠りをしていた。

勿体無い。

「四つ目、パーカッションロックについて。19世紀初頭に、衝撃を加える事で火花を発生させる雷汞(らいこう)という物ができ、これを元に様々な機構が作られるが、アメリカのジョシュア・ショーが雷管(プライマー)と呼ばれる、銅製キャップに雷汞を塗った部品の特許を取り、それを利用したパーカッションロックが生まれた。パーカッションロックは、火皿や当たり金が省かれ、雷管(プライマー)を嵌めるニップルという部品と、雷管を叩く撃鉄のみと、シンプルになる。因みに、パーカッションロックの由来は、雷管の一種である《パーカッションキャップ》。射撃方法は、銃口から発射薬、弾丸を込め、撃鉄を起こして、ニップルにパーカッションキャップを嵌める。そして、引金を引くと、撃鉄が雷管を叩き、発生した火花がニップル中の孔を通って発射薬に点火する。……これ以降、銃火器は飛躍的に発達する……が、その前に先込め式と元込め式について説明する」

先込め?元込め?と、疑問の声が上がる。

一部、達観した奴もいるが。

「今まで説明した各ロック式は、全て先込め(マズル・ローダー)式で、銃口から発射薬と弾丸を装填する方式。その為、基本的には一発毎に銃自体を立てて装填する必要があり、装填に時間がかかり、かつ装填過多も起きやすかった。……それ故に、今日日のような弾薬を用いる銃……元込め(ブリーチローダー)式が生まれる事になる」

なるほど。

「けれども、初期の――フリントロック式の元込め式は銃尾の閉鎖が不完全であり、燃焼ガスが漏れるなどの問題が多かった。比較的成功したと言えるものが、フォーガソンライフルとホールライフル。どちらも、フリントロック式の域からは出なかったが、装填時間は短縮された。そして、パーカッションロック式に移り変わってからは、ニードルガンやシャープスライフルという物が生まれた。前者はボルトアクション式、後者はレバーアクション式の先駆けとなるが、それはまた別の話。これ以降の元込め式への改良は基本的に弾薬の話になる。……故に、火薬と弾薬の基礎を話す前に、10分間の休憩。各自、トイレ等を今の内に済ませておくように」

そう、言い残して、スナリャートは講堂を出ていった――

 





――解説系の短編は疲れる。
少しでも読みやすいように、キャラを用意して余計に疲れる。
教職の方々って凄いね。
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