Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
今回は銃火器自体の簡単な発達史。
》銃火器の基本Ⅰ~銃火器発達の概略~
某所の講堂。
貴方(貴女)の目の前には、小柄な少女が立っている。
銀髪紅眼。端正な顔に、華奢な身体。発育自体は普通。
贔屓目に見ても、美少女。
おかしい、と思う。
確か、ここは銃火器の知識を習熟する場のはずだ。
教壇に立つ者が、この少女しかいないところを見ると、この娘が教官という事になる。
普通、少女が教官である軍事研修などあるものか。屈強な女性兵士(一部の国では女性自衛官)ならば、ありえるが。
などと、考えていると少女が口を開く。
「Hello.講習を始める前に、軽く自己紹介。……私はスナリャート。私個人に対する質問はすべて無視するので、そのつもりで。……では、説明を始める」
そして、講習が始まる。
貴方(貴女)はペンとメモを手に席に着き、スナリャートの話に耳を傾けた――
「流石に銃火器と重火器自体を知らない人はいない?…………そう。では、この二つがどう違うか、について。……まず、銃火器というのは、皆さんがよく目にする、拳銃や長銃といった物の事で、重火器というものは、よくバズーカと誤用されるロケットランチャーや固定して使われる重機関銃といったもの……分かりやすく言うと、威力が大きく、重い火器の事を重火器と呼ぶらしい。……実のところ、私もよく分からない」
それでいいのか、教官。
「細かい説明は私よりも優秀な先生がいる。そちちに聞くといい。次に進む」
丸投げか。潔いまでの丸投げだ。
「銃火器という武器は元々、『飛道具』と『火器』という二つの武器が合体した物だった。それぞれを簡単に説明すれば、『飛道具』というものは、腕力や物体の反発力といった物理的な力で物を飛ばして攻撃する武器の事で、弓や投石機等の事。一方、『火器』というものは、可燃物や爆発物などの『火』に関係する化学を使用する武器の事を言う。例を挙げると、『ギリシャの火』と呼ばれる、生石灰、軽油、硫黄を主成分とする焼夷剤や、竹等の筒に火薬を詰めた爆竹なんてものがある。……因みに、『火器』は原料的理由で、中国付近(中東)から西ヨーロッパで発達したらしい」
中国付近から西ヨーロッパで?
「そう。これは火薬の話になるから、後で説明する」
後で、か……。
「14世紀当初、火薬を用いた兵器は今日日の大砲のような運用方法が主であり、城壁の破壊、音などによる敵軍を驚かせる為に使われていた。例を挙げると、元という国が用いた《てつはう》等。火薬を用いた兵器を多く見かける中国だが、実は花火としての発達が主であった。兵器の発達は副次的な物だったと言えるが、銃火器の原形といえる物の一種、青銅製の筒を用いる
アレの原形が《サーペンティン》というものか……。なるほど。
「ここから、火縄銃の説明に移る。……ヨーロッパでは火縄を用いた銃器を《マッチロック》というが、この《ロック》という単語は火薬への点火方法の事を指す。しかし、現代では別の意味なので注意。……では、マッチロックの説明へ。……マッチロック式は火縄が出来た事により、生まれた物。タッチホール式は火種に、焼いた鉄等も使用していた為、気象条件等に左右され、非常に扱いづらかった。そこで試行錯誤の結果、生まれた点火手段が火縄。火縄とは、竹の繊維や檜の皮、木綿等を結い、それを硝石の水溶液に浸して、乾燥させた物。長時間、火が消えづらい為、導火線として重宝した。……因みに、マッチロック式はヨーロッパと日本では方式が異なり、ヨーロッパは握り込む方式の引金を用い、ゆっくり火縄が動く《緩発式》。日本は一般人のよく知る引金を持ち、バネの力で勢いよく火縄が動く《瞬発式》。その他、点火薬を盛る火皿や火縄を固定する火挟みの形状に差異があるが、そこは割愛。続けて、ホイールロック式へ」
ホイールロック?なんの事だ?
と、思う人が大半の中、スナリャートは続ける。
「16世紀初頭頃から、火薬への点火は、火ではなく《火花》の方が良いと考えられるようになった。また、この頃には懐中時計やゼンマイ時計が開発され、多方で偉業を残したレオナルド・ダ・ヴィンチは、それを銃火器の点火方式に応用しようとした。結果、
まぁ、そうなるのも道理か。
人間とは性根が黒い奴もいる。
「三つ目にフリントロック式の説明。16世紀半ば頃、オランダとスペインではバネ式により、勢い良く犬頭が作動する、マッチロック式の機構を組み合わせたホイールロック式である、《スナップハンス》と《ミカレット》が造られていた。……これら元にして、17世紀半ばに生まれたものがフリントロック式で、黄鉄鉱に変わって
そこで貴方(貴女)は回りを見ると、数人の受講者が居眠りをしていた。
勿体無い。
「四つ目、パーカッションロックについて。19世紀初頭に、衝撃を加える事で火花を発生させる
先込め?元込め?と、疑問の声が上がる。
一部、達観した奴もいるが。
「今まで説明した各ロック式は、全て
なるほど。
「けれども、初期の――フリントロック式の元込め式は銃尾の閉鎖が不完全であり、燃焼ガスが漏れるなどの問題が多かった。比較的成功したと言えるものが、フォーガソンライフルとホールライフル。どちらも、フリントロック式の域からは出なかったが、装填時間は短縮された。そして、パーカッションロック式に移り変わってからは、ニードルガンやシャープスライフルという物が生まれた。前者はボルトアクション式、後者はレバーアクション式の先駆けとなるが、それはまた別の話。これ以降の元込め式への改良は基本的に弾薬の話になる。……故に、火薬と弾薬の基礎を話す前に、10分間の休憩。各自、トイレ等を今の内に済ませておくように」
そう、言い残して、スナリャートは講堂を出ていった――
――解説系の短編は疲れる。
少しでも読みやすいように、キャラを用意して余計に疲れる。
教職の方々って凄いね。