Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
俺が出会った技術者は……後者のような気がする。
――エリアU.S.国内 旧アリゾナ州 フォート・フェスト陸軍基地
エリアRosでの
俺が射撃訓練場の休憩スペースで装備品の整備をしていると、
「ここにいたのか、レオン」
小隊仲間のジャックがやってくる。……駐屯地に似つかわしくない連中を連れて。
「お客さんだぜ?」
「民間人じゃねぇか。……守衛は何やってんだ」
溜め息を吐きながら、整備を終えた.45口径大型自動拳銃――《FF FH-02A1》を仕舞おうとしたが、出来なかった。
「《FH-02A1》か……しかも、マズルスパイクとエクステンドマガジン付きの近接仕様……。
「いや、耐久性の点からバヨネットは要らないだろう。
「先輩は堅物過ぎるぜ。ここは弾倉式のハンドランチャーユニットを取り付けて、簡易のグレネードランチャーにすれば良いじゃないですか」
「「黙れ火力厨」」
ジャックの後ろにいたワンピースタイプの作業着を纏った民間人達の
「……うるせぇよ、オッサン共。使い方なんて、人それぞれだろ。余計な意見はいらねぇ」
銃火器談義は他所でやれ。聞いていて不愉快だ。
「……ハァ。これだから、頭の軽い兵士は…………」
「死んだら武器のせいにする。……嘆かわしい」
「喧嘩売ってんのかよ、兄ちゃん?」
頭を抱える、或いは敵意むき出しの民間人達。
本当に苛つくな。頭脳労働者共は。
口だけは達者で、そのくせ視察だ、何だと“前”に出たがり、死ねば挙って非難する。
死にたがりは勝手だが、軍のやり方が気に食わないならば、国の方に文句を言ってくれ。死んだ場合は自己責任。
「まぁまぁ、落ち着いてください。コイツが馬鹿なだけですから。……それで、御用件の方はよろしいのですか?」
お前もお前だ、ジャック。
なんだ、その媚び諂った物言いは。吐き気がするぞ。
「こんなチンピラ風情にやらせては、我が社の信用に関わる。……他の候補はいないのかね?」
その言葉で、俺はキレた。
「聞き捨てならねぇな、ホワイトカラー共。アンタらの製品は好きだが、従業員は好きになれねぇな。会社の信用に関わる?技術者風情が経営に口を挟むなよ!」
「黙れ、三流兵士がっ!!お前のような屑が国防を担うなど、笑い話にもならん。反吐が出るな」
「……さっさと死ねよ、屑人間」
と、加熱し始めた論争。
「…………いい加減にしろ!!」
すぐに静止が入る。
ジャックだ。
「互いの思想が分からなくは無いが、今は落ち着いて。……馬鹿な奴程扱いやすいってもんでしょう?それとも、馬鹿の手綱すら満足に扱えないんですかね、今の企業は」
相も変わらず、互いの癪に触れる言い方。
だが、効果はあったらしい。
「言ってくれるな、小僧。……良いだろう、参考程度に
……俺には、苛立ちしか残らなかったが。
「行くぞ、レオン。場所は隣の射撃場だ」
「……あぁ、解ったよ」
《FH02A1》をホルスターにしまい、立ち上がる。
怒りを露にしたまま歩く作業員の後に続いて、歩き出す。
「で、だ。……レオン。お前、ホワイトカラーとブルーカラーの違いは分かってるか?」
「……は?」
唐突に何を言っている?
「ホワイトカラーは“頭脳労働者”の事で、大体は科学者や教師の事だ。……で、ブルーカラーは“肉体労働者”。……技術者とか、土方の野郎共の事だな。つまり、アイツらはブルーカラーだ」
「……どうでも良いだろ、んな事」
「……だからお前はアホなんだよ……。馬鹿な男はモテねぇぜ?」
「……女は足枷だ」
恋だ何だと、女絡みは面倒事しかねぇ!
「頑なだな……。あの教育でも駄目なのかよ」
「48時間連続でAVと純愛映画を並列視聴させる事の何処が教育だ。……倫理観でも破壊したいのか?」
あの作戦の後、“矯正”と称して、行われた地獄を思い出す。
「どっちにもなびかねぇ辺り、相当業が深い性癖らしいな。……俺としても、ケモナーだったら手に負えんからな……」
「なんだよ、ケモナーって」
「簡単に言えば、獣に欲情できる奴の事だ……って、この話はまた後だな」
気が付けば、指定された射撃場に着いている。
確かに、話は後になりそうだ。後にもしたくない論争だが。
「早く来たらどうかね、穀潰し」
苛立ったような、技術屋の声。
「ひでぇ物言いだ。……気に食わねぇのはお互い様だがな」
「それについては同意する。……レオンはともかく、俺は穀潰しじゃねぇからな」
「……後で覚えてな」
捨て台詞気味に言い、技術屋の元へ向かう。
「で、俺は何をすればいい?」
「貴様の前にある物のテストだ」
「前……あぁ、これか」
足元に置かれた、やけにゴツい長方形の箱。
蓋は開かれており、中身が見える。
「……新種の“ミニガン”か?」
中身は巨大な回転銃身式機関銃だった。
「あんな骨董品と一緒にしないで貰いたいな。……我が社の面制圧用火器《XHMG-37》を。愛称は《Jaguar Note》。見た目で分かるだろうが、多銃身機関銃の一種で、銃身数は一般モデルの3倍。機関部自体が3つあるからな。……だが、コイツは例の骨董品同様、歩兵携行兵器の類いじゃない。所謂ドアガン用だが……まぁ、貴様のような奴は実際に使用してみた方が分かりやすいだろう」
……大したご高説。ミニガンを骨董品というだけはある。……事実とはいえ、アレは名銃だぞ。元を含めて。
「そうかい。……じゃ、試してみますか」
箱に収められた《Jaguar Note》の機関部上部に位置する、頑強なキャリングハンドルを掴み、
機関部後方に位置するトリガースイッチ付グリップも握る。
(……元が元だからな…………使わねぇと駄目だな)
そして、《Ripper》としての能力を全解放。
「うらぁっ!!」
持ち上げる。
やはりというべきか、《Jaguar Note》は歩兵が保持できる重量じゃない。
「戦闘重量は弾倉弾薬を含まず、320.2㎏だ。固定銃座用となるのは、そこが理由の一つだが……貴様のような、強化兵ならば、然したる問題でもなかろう?」
「……いや、充分戦闘機動に支障をきたすぞ。……で、次は撃ってみればいいのか?」
重量挙げ世界記録よりも重い戦闘重量とか…………。正気の沙汰じゃねぇぞ!
「そうだ。念の為、装備されているアンカーを併用する事を推奨する」
「了解だ」
射撃レーンに移動。
両足を肩幅で開き、 《Jaguar Note》を構えて、キャリングハンドル脇に位置するアンカーユニットのスイッチを押す。
機関部脇の筒から、太い杭が地面に撃ち込まれ、安定させる。
同時に、立ち上がったマンターゲット。
トリガースイッチを押し込む。
刹那の“慣らし”の後、唸りを上げて回転した三つの銃身束。
電動工具に似た回転駆動音に混じり、7.62㎜ライフル弾が弾雨を形成し、
「く、おっ!!」
激烈な反動が俺を襲う。
反動を抑え込むのに手一杯で、狙いを定める事が出来ない。
数秒の速射の後に弾倉装填分の弾薬が切れ、自動で駆動停止。
18ある銃身から硝煙がたなびき、俺の周囲には空薬莢の山が出来上がっていた。
(的の方は…………)
《Jaguar Note》を下ろし、視線を標的に向けると――
「……
正面奥の鋼板に円形の弾痕が刻まれ、標的は基部の装置を残して吹き飛んでやがる。
「一つの銃身群につき、毎秒50発の7.62㎜ライフル弾が速射される。……つまり、総合的な火力としては、秒間150発の弾雨を形成できるという事だ。……まぁ、指切り射撃を推奨する」
「…………あぁ、そうだな」
技術者の問いに俺は、やつれた声を返した――
数時間後――
最初は敵意剥き出しだった技術者は、結果と意見に満足し、出ていった。
肝心の《Jaguar Note》こと、《FF XHMG-37》だが、軍上層部の方はやや採用する向きに傾いていたらしく、少数を購入。試験運用が開始されるとの事。
俺としては、精々重要拠点用の固定銃座としての採用が関の山だと思うが、一介の兵士にとって、自分の所に産廃が回って来なけりゃ、どうでもいい。
今、問題とすべきはそこじゃないからな。
「――で、だ。レオン、お前は何フェチだ?」
談話室の一角。安物のテーブルに向かい合わせで座る俺とジャックは、ジャック主導による卑猥になりかねない会話をしている。
「フェチもなにも、俺は女に興味はねぇ」
「ならば、“タチ”だというのか?」
「違う。女に興味がねぇからって、同性に欲情するような屑になった覚えもねぇ」
「どうだかな。恥ずかしがり屋な奴はそういう場合もある。知り合いのバイから聞いた話だが」
「…………お前の交友関係はどうなってんだよ」
聴きたくもねぇけど。どうせ、ろくでもない。
会話がろくでもない方向に進んでいる事が、その証拠か。
「俺の交友関係はどうでもいいだろう。時間が詰まっているんだ、答えろレオン。お前は“不能”か?」
「…………ちげぇよ。“処理”はしている」
「なら良かったよ。……じゃ、俺はデートの約束があるんだ。じゃあな」
「盛大に玉砕してこい、色男」
何処か安心して去っていくジャックを眺め、俺は言った。
説得力が無いかもしれないが、あぁ言う奴は女の敵なんだろう。
いつか刺されても知らねぇぞ。
なんて、思っていると――向かいの席に一人の女性兵士が腰を下ろした。
「事後承諾だが、席が空いてなかったんだ。悪いね、レオン」
「構わないさ。……俺が席を立てば解決する」
そう言い、腰を上げたようとして――足を踏まれた。
「暇なんだ。話し相手になってくれないかな?」
女性は笑顔で言う。
対する俺は、苦笑いを浮かべる他なかった。
(やれやれ……。災難だぜ……)
と、思いながら、上げた腰を再び下ろす。
幸い、女性との会話は他愛無いもので済んだのは、僥倖というべきか――
――以上、“Solder” & “Crazy Geek” Ⅰでした。
今話はエリアU.S.正規軍 第7特化強襲小隊のレオン・ディス編…………だよな?
タイトル、内容的に、技術屋の闇的な感じが若干する。
その証拠が、XHMG-37。
計18の銃身を持つ、回転銃身式機関銃。リアル寄りであるDW的には、狂気の沙汰。
しかもこれ、現行の設定上は後継モデルが存在します。FF社の特徴である、『纏めて消し飛ばせ』感が増していきますし。
……現実的には、固定銃座用としては出来るでしょうが、狂気の沙汰度は増していきます。……一般創作界隈の重火器よりは全然ですけどね。
では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました。