※この作品はR-18です。

Dirty Works~Piece of Story~   作:空薬莢

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技術者は現場を省みる事もあれば、省みない事もある。
俺が出会った技術者は……後者のような気がする。



“Solder”&“Crazy Geek”Ⅰ

――エリアU.S.国内 旧アリゾナ州 フォート・フェスト陸軍基地

エリアRosでの作(・)戦(・)行(・)動(・)から数日経ったある日。

俺が射撃訓練場の休憩スペースで装備品の整備をしていると、

「ここにいたのか、レオン」

小隊仲間のジャックがやってくる。……駐屯地に似つかわしくない連中を連れて。

「お客さんだぜ?」

「民間人じゃねぇか。……守衛は何やってんだ」

溜め息を吐きながら、整備を終えた.45口径大型自動拳銃――《FF FH-02A1》を仕舞おうとしたが、出来なかった。

「《FH-02A1》か……しかも、マズルスパイクとエクステンドマガジン付きの近接仕様……。折畳み式銃剣(フォールディングバヨネット)はどうですかね?」

「いや、耐久性の点からバヨネットは要らないだろう。レーザーエイムデバイス(L.A.D)か、ドットサイト。又はタクティカルライトの装着が先決だろう」

「先輩は堅物過ぎるぜ。ここは弾倉式のハンドランチャーユニットを取り付けて、簡易のグレネードランチャーにすれば良いじゃないですか」

「「黙れ火力厨」」

ジャックの後ろにいたワンピースタイプの作業着を纏った民間人達のコ(・)ン(・)ト(・)に巻き込まれたから。

「……うるせぇよ、オッサン共。使い方なんて、人それぞれだろ。余計な意見はいらねぇ」

銃火器談義は他所でやれ。聞いていて不愉快だ。

「……ハァ。これだから、頭の軽い兵士は…………」

「死んだら武器のせいにする。……嘆かわしい」

「喧嘩売ってんのかよ、兄ちゃん?」

頭を抱える、或いは敵意むき出しの民間人達。

本当に苛つくな。頭脳労働者共は。

口だけは達者で、そのくせ視察だ、何だと“前”に出たがり、死ねば挙って非難する。

死にたがりは勝手だが、軍のやり方が気に食わないならば、国の方に文句を言ってくれ。死んだ場合は自己責任。

「まぁまぁ、落ち着いてください。コイツが馬鹿なだけですから。……それで、御用件の方はよろしいのですか?」

お前もお前だ、ジャック。

なんだ、その媚び諂った物言いは。吐き気がするぞ。

「こんなチンピラ風情にやらせては、我が社の信用に関わる。……他の候補はいないのかね?」

その言葉で、俺はキレた。

「聞き捨てならねぇな、ホワイトカラー共。アンタらの製品は好きだが、従業員は好きになれねぇな。会社の信用に関わる?技術者風情が経営に口を挟むなよ!」

「黙れ、三流兵士がっ!!お前のような屑が国防を担うなど、笑い話にもならん。反吐が出るな」

「……さっさと死ねよ、屑人間」

と、加熱し始めた論争。

「…………いい加減にしろ!!」

すぐに静止が入る。

ジャックだ。

「互いの思想が分からなくは無いが、今は落ち着いて。……馬鹿な奴程扱いやすいってもんでしょう?それとも、馬鹿の手綱すら満足に扱えないんですかね、今の企業は」

相も変わらず、互いの癪に触れる言い方。

だが、効果はあったらしい。

「言ってくれるな、小僧。……良いだろう、参考程度に馬(・)鹿(・)の意見を聞くとしよう」

……俺には、苛立ちしか残らなかったが。

「行くぞ、レオン。場所は隣の射撃場だ」

「……あぁ、解ったよ」

《FH02A1》をホルスターにしまい、立ち上がる。

怒りを露にしたまま歩く作業員の後に続いて、歩き出す。

「で、だ。……レオン。お前、ホワイトカラーとブルーカラーの違いは分かってるか?」

「……は?」

唐突に何を言っている?

「ホワイトカラーは“頭脳労働者”の事で、大体は科学者や教師の事だ。……で、ブルーカラーは“肉体労働者”。……技術者とか、土方の野郎共の事だな。つまり、アイツらはブルーカラーだ」

「……どうでも良いだろ、んな事」

民間人(シビリアン)と兵士(グリーンカラー)程度の違いが分かれば充分だ。

「……だからお前はアホなんだよ……。馬鹿な男はモテねぇぜ?」

「……女は足枷だ」

恋だ何だと、女絡みは面倒事しかねぇ!

「頑なだな……。あの教育でも駄目なのかよ」

「48時間連続でAVと純愛映画を並列視聴させる事の何処が教育だ。……倫理観でも破壊したいのか?」

あの作戦の後、“矯正”と称して、行われた地獄を思い出す。

「どっちにもなびかねぇ辺り、相当業が深い性癖らしいな。……俺としても、ケモナーだったら手に負えんからな……」

「なんだよ、ケモナーって」

「簡単に言えば、獣に欲情できる奴の事だ……って、この話はまた後だな」

気が付けば、指定された射撃場に着いている。

確かに、話は後になりそうだ。後にもしたくない論争だが。

「早く来たらどうかね、穀潰し」

苛立ったような、技術屋の声。

「ひでぇ物言いだ。……気に食わねぇのはお互い様だがな」

「それについては同意する。……レオンはともかく、俺は穀潰しじゃねぇからな」

「……後で覚えてな」

捨て台詞気味に言い、技術屋の元へ向かう。

「で、俺は何をすればいい?」

「貴様の前にある物のテストだ」

「前……あぁ、これか」

足元に置かれた、やけにゴツい長方形の箱。

蓋は開かれており、中身が見える。

「……新種の“ミニガン”か?」

中身は巨大な回転銃身式機関銃だった。

「あんな骨董品と一緒にしないで貰いたいな。……我が社の面制圧用火器《XHMG-37》を。愛称は《Jaguar Note》。見た目で分かるだろうが、多銃身機関銃の一種で、銃身数は一般モデルの3倍。機関部自体が3つあるからな。……だが、コイツは例の骨董品同様、歩兵携行兵器の類いじゃない。所謂ドアガン用だが……まぁ、貴様のような奴は実際に使用してみた方が分かりやすいだろう」

……大したご高説。ミニガンを骨董品というだけはある。……事実とはいえ、アレは名銃だぞ。元を含めて。

「そうかい。……じゃ、試してみますか」

箱に収められた《Jaguar Note》の機関部上部に位置する、頑強なキャリングハンドルを掴み、

機関部後方に位置するトリガースイッチ付グリップも握る。

(……元が元だからな…………使わねぇと駄目だな)

そして、《Ripper》としての能力を全解放。

「うらぁっ!!」

持ち上げる。

やはりというべきか、《Jaguar Note》は歩兵が保持できる重量じゃない。

「戦闘重量は弾倉弾薬を含まず、320.2㎏だ。固定銃座用となるのは、そこが理由の一つだが……貴様のような、強化兵ならば、然したる問題でもなかろう?」

「……いや、充分戦闘機動に支障をきたすぞ。……で、次は撃ってみればいいのか?」

重量挙げ世界記録よりも重い戦闘重量とか…………。正気の沙汰じゃねぇぞ!

「そうだ。念の為、装備されているアンカーを併用する事を推奨する」

「了解だ」

射撃レーンに移動。

両足を肩幅で開き、 《Jaguar Note》を構えて、キャリングハンドル脇に位置するアンカーユニットのスイッチを押す。

機関部脇の筒から、太い杭が地面に撃ち込まれ、安定させる。

同時に、立ち上がったマンターゲット。

トリガースイッチを押し込む。

刹那の“慣らし”の後、唸りを上げて回転した三つの銃身束。

電動工具に似た回転駆動音に混じり、7.62㎜ライフル弾が弾雨を形成し、

「く、おっ!!」

激烈な反動が俺を襲う。

反動を抑え込むのに手一杯で、狙いを定める事が出来ない。

数秒の速射の後に弾倉装填分の弾薬が切れ、自動で駆動停止。

18ある銃身から硝煙がたなびき、俺の周囲には空薬莢の山が出来上がっていた。

(的の方は…………)

《Jaguar Note》を下ろし、視線を標的に向けると――

「……Wow(酷ぇな)」

正面奥の鋼板に円形の弾痕が刻まれ、標的は基部の装置を残して吹き飛んでやがる。

「一つの銃身群につき、毎秒50発の7.62㎜ライフル弾が速射される。……つまり、総合的な火力としては、秒間150発の弾雨を形成できるという事だ。……まぁ、指切り射撃を推奨する」

「…………あぁ、そうだな」

技術者の問いに俺は、やつれた声を返した――

 

数時間後――

最初は敵意剥き出しだった技術者は、結果と意見に満足し、出ていった。

肝心の《Jaguar Note》こと、《FF XHMG-37》だが、軍上層部の方はやや採用する向きに傾いていたらしく、少数を購入。試験運用が開始されるとの事。

俺としては、精々重要拠点用の固定銃座としての採用が関の山だと思うが、一介の兵士にとって、自分の所に産廃が回って来なけりゃ、どうでもいい。

今、問題とすべきはそこじゃないからな。

「――で、だ。レオン、お前は何フェチだ?」

談話室の一角。安物のテーブルに向かい合わせで座る俺とジャックは、ジャック主導による卑猥になりかねない会話をしている。

「フェチもなにも、俺は女に興味はねぇ」

「ならば、“タチ”だというのか?」

「違う。女に興味がねぇからって、同性に欲情するような屑になった覚えもねぇ」

「どうだかな。恥ずかしがり屋な奴はそういう場合もある。知り合いのバイから聞いた話だが」

「…………お前の交友関係はどうなってんだよ」

聴きたくもねぇけど。どうせ、ろくでもない。

会話がろくでもない方向に進んでいる事が、その証拠か。

「俺の交友関係はどうでもいいだろう。時間が詰まっているんだ、答えろレオン。お前は“不能”か?」

「…………ちげぇよ。“処理”はしている」

「なら良かったよ。……じゃ、俺はデートの約束があるんだ。じゃあな」

「盛大に玉砕してこい、色男」

何処か安心して去っていくジャックを眺め、俺は言った。

説得力が無いかもしれないが、あぁ言う奴は女の敵なんだろう。

いつか刺されても知らねぇぞ。

なんて、思っていると――向かいの席に一人の女性兵士が腰を下ろした。

「事後承諾だが、席が空いてなかったんだ。悪いね、レオン」

「構わないさ。……俺が席を立てば解決する」

そう言い、腰を上げたようとして――足を踏まれた。

「暇なんだ。話し相手になってくれないかな?」

女性は笑顔で言う。

対する俺は、苦笑いを浮かべる他なかった。

(やれやれ……。災難だぜ……)

と、思いながら、上げた腰を再び下ろす。

幸い、女性との会話は他愛無いもので済んだのは、僥倖というべきか――

 

 




――以上、“Solder” & “Crazy Geek” Ⅰでした。

今話はエリアU.S.正規軍 第7特化強襲小隊のレオン・ディス編…………だよな?
タイトル、内容的に、技術屋の闇的な感じが若干する。
その証拠が、XHMG-37。
計18の銃身を持つ、回転銃身式機関銃。リアル寄りであるDW的には、狂気の沙汰。
しかもこれ、現行の設定上は後継モデルが存在します。FF社の特徴である、『纏めて消し飛ばせ』感が増していきますし。
……現実的には、固定銃座用としては出来るでしょうが、狂気の沙汰度は増していきます。……一般創作界隈の重火器よりは全然ですけどね。

では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました。
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