Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
よく、人が言う戯れ言だ。
可能性など、世界に存在するのならば、どんなに楽なものか。
所詮は、出来なかった自分への慰めである。
……本来、現実に於いてならば――
Another World War Breaker プロローグ
昼近くに部隊長両名が依頼を請け、エリアRos EIへと向かった。
現状、便利屋で待機しているのは、俺を含めた旧第65、第100歩兵大隊、第13機甲大隊のメンバーと、元民間人2名。
全員が、そこそこの実力を持っているだろうが、現状は……。
俺は談話室を見回し、心の中で溜息を吐く。
イスに腰掛け、5.56㎜自動小銃《AA SG36》の整備を行う天樹。
同じくイスに腰掛け、哲学書を読むグレゴリオ。
……この辺りは良い。有益な時間の使い方だ。……俺も見習うべき時間の活用法かもしれない。……が、残りはどうだ?
ソファ一を占領し、猫のように丸くなって惰眠を貪る、ヴェルファー。
壁に寄り掛かって、ヘッドフォンから漏れ聴こえる程の爆音でデスメタルを聴き、青年誌を読み漁るアラン。
酷い有り様だ。……因みに、この場にいないジャール、リベリ、シュトゥイークだが、それぞれが戦車の整備、ランニング、筋トレだそうで、こちらも有益な時間の使い方だろう。
(……どうにかならないものか)
アランは兎も角、ヴェルファーは依頼さえ入れば、元気になる
依頼さえ、来ればいいのだ。
と、思った矢先、俺の携帯端末が振動。
思った側から依頼とは……。
気が利く神様もいるものだね。……神の存在自体は信じたくないが。
端末起動。
届いたのは着信ではなく、メールだった。
最近はメールによる依頼も増えたらしいからな……。
で、肝心の内容は――
From Unknown
諸君らの腕を見込んで頼みたい依頼がある。
これは、魔物相手の依頼ではない。……人を殺める依頼である。その事を留意した上で、請けてくれるのならば、明日、武装した上で、下記のポイントに来てほしい。……内容は以上だ。良い返事を期待する。
(……依頼主、不明か)
しかも、対人戦の依頼。
昨今は魔物討伐の依頼が主である中、こういった人間を始末する依頼も来る事は来るらしい。
人によっては、便利屋は殺し屋の代替品なのだろうから、なんら不思議なことではないともいえるのか。
(……だが、キナ臭いな)
依頼主が不明な点は無視できない。
俺達に恨みを持つ連中からの
本気で便利屋を潰そうとするなら、武装した上で、なんて気の利いた事は指示しない。
つまり、
と、なれば――
(……軍、金持ちの市民、資産家辺りか)
いや、軍は無いな。
上層部は俺達を
資産家辺り…………が妥当か?
「ふぁ…………ん?」
ならば、始末する対象はなんだ?
――盗人?……いや、警備システムにも金は掛けているだろう。
――会社役員?……お抱えの掃除屋とかは無いか?
――市民?……まさかな。過去の独裁者じゃあるまいし。
――自由業者?……一番妥当か。俺達が出るまでも無いだろうけど。
と、思案に耽っていると――
「何見てるのー?」
「うおっ!?」
頭上から、端正な顔が降ってきた。……それも、至近距離に。
端正な顔の持ち主はヴェルファー。……というか、こんなふざけた行動を取るのは、彼女しかいない。
あぁ、心臓に悪い。
「……少しはマトモな行動を取ってくださいよ、ヴェルファーさん」
「取ってたよ?でも、エイノが気付かなかったからさ……やっちゃった☆」
小さく舌を出し、はにかむヴェルファー。
嘘を言っていないか、この女は。
何度も声を掛けたのならば、周りの奴らが……少なくとも、グレゴリオか、天樹が気付くはずだが、それがない。
つまり、最初からふざけた手段で声を掛けてきたのだろう。
(……まぁ、キレても……何も変わらないけどさ)
一週間そこらしか、ヴェルファーに関わっていないとはいえ、大抵の事は言っても無駄だと理解している。
だから諦め、
「……依頼、みたいですね」
端末の画面――そこに表示されるメールの文面を見せる。
「……へぇ…………対人依頼かぁ。……私は請けたいな♪」
画面を一瞥したヴェルファーはやる気だ。
「依頼か。……俺にも参加させろよ」
次いで、ヘッドフォンを外したアランがやって来る。こちらも、やる気満々。
「お好きにどうぞー」
「了解だ。……で、エイノ。テメェはどうすんだ?」
勝手に話が進み、剣呑なアランの目が俺に向く。
(どうするか……)
人殺しに抵抗は無い。
殺らなきゃ、殺られるならば……狩り尽くすだけだから。
生きる為にやる事に、本来ならば、罰則も糞も無い。
だったら――
「……請けるさ。ツーマンセルで済むような依頼でも無さそうだからね」
俺は生きる為に、人殺しを選ぶ。
翌日――
俺達は指示された場所に着く。
依頼通り、全員が武装済みで。
「さて……依頼主はどこにいるんだか」
首の骨を鳴らしながら、吐き捨てるように、アランは呟く。
「指定時刻の五分前だ。相手が時間を気にする人間だと思えば良い」
それに対して、冷静に答えるのはグレゴリオ。……彼もこの依頼に参加する事になっていた。……本人曰く、アランのストッパー役として。
信用が無いのか、アランは。
「そーだよ。依頼は依頼なんだからさ♪」
追撃を加えるヴェルファー。何処か楽しそうだ。
(……こんなメンバーで大丈夫なのか……)
色々と不安になるな。
が、俺は黙ったまま、談笑に耳を傾ける。
すると、
「来てくれたか」
依頼主と思われる、人間が現れる。
声質からして、20代の女性、身長は180くらいか。
体格、顔は薄汚れた厚手のローブによって、隠されており、分からない。
怪しい奴だな。……便利屋界隈で考えれば、依頼主がカルト集団なんてザラだろうが。
「これから詳しい依頼内容を話そう」
ローブの女は一旦、言葉を句切り、依頼内容を話し始める。
「君達が
それも、矢継ぎ早な説明であり、質問の余地と言えば……
「……敵対勢力の情報があれば、提示していただきたい。……それに、平行世界への移動手段を俺達は持たないのだが?」
という、二つだけ。
「……あぁ、その二つか。……敵対勢力は現地の軍隊だ。少なくとも、君達が遅れを取るような連中では無いだろう。……次に、現地への移動手段は……気にしなくて良い」
女性がそう言うと共に、俺達は光に包まれ――
「私が送り届けよう。……目的を達したと判断した場合も、同様に、この世界へと送り届けよう。……では、行こうか」
視界が白く染まる。
「アンタは……何者なんだ……?」
全てが白く染まった中で、俺は女性に問う。まだ、気配を感じているからだ。
「何者、か。……一番分かりやすい表現を使うなら、“神”になるだろうな」
「……神、だと……?」
「大体、そんな者だ。私自身の事など、依頼には関係無いだろう。……もうすぐヴァルハラに着く。……幸運を祈っているよ、傭兵達」
それきり、“神”の気配は消え、視界が色を取り戻し始めた――
多重コラボ系短編 Another World War Breaker編のプロローグでした。
今回はDarty Worksにおける、導入編であり、コラボ自体はしていません。
参加したい方は早めに、僕に対して直接メッセージを下さい。
では、拝読ありがとうございました――