Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
口先だけの輩は掃いて捨てるほどいる。
綺麗事でも、絵空事でもほざくだけならば、自由だからだ。
だが、実行する意思と能力を持つ奴は少数だ。
――魔法か何か。
男はそう言った。
「残念だけど、ファンタジー要素は零っ♪オジサン、足音が五月蝿いから」
本当は、敵兵とは異なる歩調、空気だったから。……場馴れしていない者の雰囲気。
私は男を観察し直し、
(馬鹿なオジサン)
再度、呆れる。
戦場にスーツで来るようなアホを見るのは久し振りだ。
視察を工場見学と勘違いしているような重役もいたからなぁ……。嫌な思い出だよ。
だからだろうか?
自然と殺意が沸く。
でも、抑える――が、無駄だった。
「……若過ぎんな。5、6年待てば……っ――痛ぁっ!?」
件の男が癪に触る発言をしたから。二発撃つ。
装弾は炸裂弾ではなく、徹甲弾。
破損した《FL AF25Ver.3》が落ちる。
続けて、背負う《FL SA/AA-PSL》にも直撃。ランチャーの先端が折れ、意味を失う。
「おいおい冗談だろ!?俺様に敵対する気はねぇぞ!?」
「ふざけた格好で戦場にいる方が悪いよ☆」
本気で殺す気なら、初弾で殺ってるよ。
だから、武装を撃ったのは警告みたいなもの。
今すぐ立ち去れ、という意味。
「ふざけた格好?普通だろうが。俺様から見れば、嬢ちゃん達の方がふざけた格好だがね。戦争ごっこか?」
「…………脳味噌まで黴びてるの、オジサン。野戦服も知らないなんて……余程の平和ボケと思えるよ」
一度区切り、《MW-01》を下ろす。代わりに抜くのは両脚の9㎜短機関銃《JA BP25》。
「平和ボケした阿呆はさっさと消えて☆じゃないと…………この場で家畜の残飯にしてあげる」
銃口を下ろす。
『メドヴェーチ3、どうした?」
「……なんでもないよ」
ホルスターに《BP25》を納銃。《MWL-01》を肩に担いで男に背を向け、前線基地の奥へと歩き始める。
「オジサンは平和ボケした国で生き過ぎていたんだと思うよ。だから、
男に向かって、二度目の忠告をしながら。
こんな男に価値は無い。
戦場に必要な人間は、何の躊躇も罪悪感も感じずに、生殺与奪を実行でき、命令に従える強者のみ。
酒と女に溺れるような奴は、ただの弱者。人的資源の無駄遣い。
兵器工場やらにブチ込んだ方が幾らかマシだろう。
弾薬を割く価値は…………止めよう。
モチベーションの低下しか呼ばない。
そう、思った直後に、
『おい、メドヴェーチ3!中隊用の60㎜迫撃砲があったぞ』
先行していたメドヴェーチ8から無線が入る。
「本当!?」
やったよ!暫く、弾薬に困らないね!
迫撃砲があるならば、一般火器の弾薬も当然あるはず。
ついでに、車両も強奪できれば……って、さっき私が吹っ飛ばしたか。
「はぁ……」
嘆息。
状況が状況だったけど、足を吹っ飛ばしたのは不味かったかなぁ。
なんて思いつつ、武器庫の中へ。
メドヴェーチ8の言った通り、60㎜迫撃砲と弾薬がある。
自前の迫撃砲を取り出し、弾薬の互換性を確認すると…………合った。
(これはラッキー☆強奪するのは弾薬だけで良いんじゃん)
で、弾種のラインナップは?
全部貰ってこ。
後は――各種弾薬の補充…………これはいっか。
武器庫内を見る限り、携行兵装の弾薬その他は補充された様子だ。
各自、補充は終えたらしい。
……合流しよう。
弾薬をコンテナに詰めて立ち上がりつつ、
「……殺る気なら、そのふざけた服を捨てたら?オジサン。『俺を殺してくれ』って全身でアピールしてるよ。……そんな馬鹿が武器を持ったところで邪魔。目障りだから」
入口にいた件の男に再度警告。何度警告されれば気が済むのやら。
「後……戦場にも酒が無いわけではないけど、飲む奴は脳味噌が黴びてるよ」
追加で、そう言い武器庫から離れる。
男が武器庫に入っていく様子を一瞥し、ある程度離れてから無線起動。
「メドヴェーチ7、8、10。合流地点は何処にする?」
『そこから200m先の格納庫だ』
『一両だけ、
『ついでに、ありったけのウォッカを箱で持ってきといた』
三者三様の返答が返ってきた。
しかし、ウォッカか。
度数に高いヤツだといいな。
良い
あの酒と牝犬臭いオジサンなら、迷わず飲み干すだろう。
戦場で手に入る酒は――アルコールは――飲料じゃない。モルヒネがわりなら、理解できるけど。……つまり、何も考えずに飲み干す等、愚の骨頂。
「リンネルか布はあるよね?」
『当然だ、後マッチもなぁ!コイツらがねぇと、モロトフに捧げる酒は作れねぇからな』
お、気が利くね。メドヴェーチ8。
材料も揃って、足も強奪出来たなら、
「なら、良し。すぐに向かうよー♪」
すぐに向かわないとね!
指示された格納庫へと走り出す。
数分後――
「遅ぇぜ、メドヴェーチ3」
着くなり、メドヴェーチ8が呆れたように言う。
で、輸送車は……二連タイヤの四輪か。踏破力は高いが、大型だね。
燃料が心配。……あ、銃座がある。
車体上部と後方に。どちらにも、12.7㎜重機関銃が据え付けか。
「ゴメンゴメン。武器庫穿っていたら遅れた☆」
確認しつつ、軽い調子で後部銃座に着く。
弾薬もフル。
「全員乗ったか。……出すぞ」
後方から聴こえた、メドヴェーチ7の声。
同時にかかるエンジン音と、唸るタイヤの擦過音。
数瞬後に、輸送車は発車。
瓦礫だらけの基地内へと躍り出る。
が、
「おーい待ってくれよ~」
それもすぐに中断。
「……何の用、オジサン。さっさと国に帰ってよ~邪魔だから」
「帰れるんなら、帰ってるって。……帰れねぇんだよ、俺様が元いた場所に」
「……あっそ。私達には関係無いね」
本当に邪魔だ。……メドヴェーチ7、轢殺してくれないかな。メドヴェーチ6あたりなら、躊躇無く轢くのに。
「全くだな。……早く行こうぜ、メドヴェーチ7」
車体上部の銃座に着いていたメドヴェーチ8も同調。
「……メドヴェーチ10はどうだ?」
「俺はどちらでも。……だけど見た感じ、この人は戦力外だ。俺達の基準では」
「…………了解。先を急ぐぞ」
再び唸るタイヤとエンジン。
「おいおいおいっ!?薄情だな、お前らっ!?」
そして、進路上に躍り出てくるオジサン。
「退いてくれ。轢き殺されたいのか?」
メドヴェーチ7が呆れ混じりに言う。
「轢き殺されたかねぇよ。どうしてそう、短気なんだよアンタらは」
「ここが戦場だからだ」
「戦場なら、人を見捨てても良いと?」
チッ、駄目人間風情が。
「誰もそうは――」
「寝言は寝て言いなよ、オジサン」
メドヴェーチ7の発言を遮り、私は口を開く。
「人間の価値っては確かに高いよ。……でもね、それは飽くまで上の連中だけ。オジサンみたいな奴は見捨てられるのが普通なの。……で、オジサンはそこまで私達に固執する理由は、私達と行動した方が安全だと思ったからでしょ?」
嘲笑。馬鹿な選択だよ。
「それは間違い。……私達と行動する方が危険だよ。素人をうまく扱えるほどの余裕は無い」
「俺様が弱い?ふざけんのも大概にしろよ、嬢ちゃん」
流石に堪忍袋の尾が切れたのか、怒り出すオジサン。
「弱いかどうかはまだ分かんないぜ。……なぁ、一緒に行こうぜ?」
「…………私は嫌だね」
牝犬と酒と賭けだけで生きていそうな、人間との共闘は御免だ。
「確かに、人間的には好きになれねぇな。……だが、俺は構わねぇ」
「なんで!?」
『良い弾除けになる。せいぜい、敵さんの弾薬を一発でも多く浪費させてくれれば良いんだしよ。死んだら、保有する武器弾薬を採りゃあ良い。俺達にデメリットはねぇぜ?』
ホントだ。
残る二人はというと――
「俺はノーコメントで。先輩方の意見に従います」
「……ハァ。三者三様か」
保留と言う名の逃避行動と、呆れ混じりの肯定……かな?
「……アンタ、名前は?」
あ、参加決定みたいだ。……嫌だなぁ。
「烈火だ。……そういうお前らは?」
聞き返された。当然だけど。
「俺はメドヴェーチ7とでも呼べばいい」
運転席からメドヴェーチ7は言い、
「同じく、メドヴェーチ10です。……まぁ、死なない程度に頑張ってください」
メドヴェーチ10も助手席から挨拶する。
「メドヴェーチ8だ。……邪魔だけはすんなよ」
上部銃座からメドヴェーチ8、
「……メドヴェーチ3。早く乗りなよ」
私も後部銃座に着いたまま、挨拶した。
「メドヴェーチ……どういう意味だ?」
「今は関係無い。……早く乗れ」
「へいへい、乗りまよ……っと」
軽い調子で乗車するオジサン――烈火。
但し、
「……なんで私の所?」
後部銃座に。
狭い。
「どうせ乗るんなら、野郎の隣よりは嬢ちゃんの隣の方がい――」
「黙れ汚物☆」
「ごふっ!?」
烈火の鳩尾にコークスクリュー。
白目を剥いた彼を無造作に後部座席へ放っておく。
「…………酷ぇな、メドヴェーチ3」
「……オジサンが悪いだけだよ」
メドヴェーチ8に吐き捨てるように返した直後、
「…………お前ら、出すぞ」
メドヴェーチ7がアクセルを踏んだのだろう。
急発進。
心地良いGが私を襲い、自然と笑みを浮かべる。
いつもより少しだけ賑やかな(嫌な意味で)メンバーになった。
どうなるかは分からないけど、いつも通り炸薬と遊ぶだけ。
烈火がどうなろうが知ったこっちゃない。
そう思い、輸送車が基地から出た直後――
「っ!振り落とされるなよ!!」
ドリフト。
真横を大口径のロケット弾が飛んでいく。
横目に周囲確認。
歩兵一個小隊、主力戦車一個小隊、武装ヘリ六機、
「各自、迎撃行動開始」
メドヴェーチ7の指示に対して、
「メドヴェーチ8、了解だ!」
上部銃座にて、メドヴェーチ8が120㎜地対空ミサイル装填済みの《FL SA/AA-PSL》を構え、
「メドヴェーチ10、了解」
メドヴェーチ10は《FL AF25Ver.3》を保持し、サイドドアを開く。
「メドヴェーチ3、了解☆」
私も《FL SA/AA-PSL》を取り出し、120㎜地対空ミサイル装填。空を睨む。
さぁ、花火を打ち上げようか――
……以上、BreakⅢでした。
今回からコラボは本格化。
正直、ここまで嫌悪感剥き出しのグラナデちゃんは久し振りに書いた気がする。
普段はふざけた彼女も、真面目に仕事をこなしている。……だからこそ、ふざけきった人は嫌いなのです。
今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました。