Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
大抵が、手こずり、頓挫する。
それが、社会の一端であり、世界の真理の一つかもしれない――
『あの色……エリアJpeの国防軍か?』
『……いや、それに似せた現地のキチガイどもじゃないか?』
野営地内に停まる車両群を確認したメドヴェーチ7、8が無線で呟くように言う。
確かに、あの塗装はエリアJpe国防軍のカラー。
しかし、私達以外にあの世界から、ヴァルハラへと送り付けられた住人はいないはずだ。
あの国は未だに海外への派兵はしていないはずだから、おそらくは復興支援活動となるが、戦場の真っ只中にいるのは、同国のスタンスにかなっていない。
敵か、私達同様、飛ばされた者かのどちらか、だろう。
と、結論付けた直後、背筋に悪寒が奔る。
思案しながらも、研ぎ澄ませていた五感と直感が、敵意を感じたからだ。
「……メドヴェーチ3から各員へ。鎧――というより、
『……何だって?』
メドヴェーチ7が疑問符を浮かべる。
「捕捉しただけで、トリガーには指を掛けていないみたいだけどね。……おそらく、私達を投降させる気かな?後、一般兵が多数」
一般兵は無視してよさそうだね。数が多いだけの雑魚っぽい。
暫しメドヴェーチ7が思案。
『投降する気はないが、相手は強化外骨格か。……仕方無い。各自、50%まで解放して良いぞ』
決断を下す。……排除らしい。
『50……やりすぎでは?』
メドヴェーチ10は呆れる。
無理も無い事だ。
メドヴェーチ10は第3世代型強化個体らしいが、第3世代の50%は、主力戦車大隊規模を一人で潰せる程度。
強化外骨格配備とはいえ、高々、歩兵小隊にそれが過剰だというのは確かだ。
が、私の直感はメドヴェーチ7の決断を否定する。
「……メドヴェーチ7、120%位の方がいいよ」
50%では、殺られるだろう。
向こうが、トリガーを引かないのは、己への絶対的な自信か、
(……後者なら、警告があってもいい筈だけど)
そう、思った直後だ――
「武装勢力に告ぐ。我々は日本国自衛隊です。我々に貴君と敵対する意思はありません。即時武装解除して投降するか、立ち去りなさい。繰り返します――」
合成音声が響いたのは。
「おいおい……投降か、帰れ、だとよ」
緊張感の無い烈火の声。
このオッサン、敢えて空気を読まないのかな?
『投降、か。……ふざけた事を抜かしやがる。これだから島猿ど――』
『それ以上は止めておけ、メドヴェーチ8。強化外骨格が相手にいる以上、無線盗聴されているだろう。……グラナデ、自衛隊を名乗る集団以外には、誰かいるか?』
「…………子供が数人、
『……了解した。移動するぞ』
メドヴェーチ8の指示は撤収。
理にはかなっている。
相手がかつて存在していた日本国、その国防組織である自衛隊は、そもそもが専守防衛の為の組織である為、攻撃性は低い。第一、戦場にいる方がおかしい組織。故に、弾薬と体力を無駄にしてまで潰す必要は無い。
向こうが撤収の時間をくれるというのならば、素直に従うべきか。
『了解した』
『了解だ』
メドヴェーチ8、10も了承する。
「了解だ。どうせ俺様に拒否権はねぇだろうし」
烈火も了解を示す。……嫌そうに、だが。
『輸送車に戻れ。メドヴェーチ8、銃座の弾に気を付けろよ。……メドヴェーチ3は後部銃座に着け。……奴らが自衛隊を名乗るクソ野郎共である可能性も捨て切れない』
『ATMのせいだっての』
「了解」
全員が輸送車に乗る。
私もガンポートに着き、誰かさんが銃身をイカれさせた12.7㎜重機関銃の銃身を交換。
同時に輸送車のエンジンがかかる。
振動。
一気に加速して走り出すが、私の五感はある特徴的な風切音と、エンジンの唸りを掴む。
「メドヴェーチ3から各員へ。11時方向、約3マイル先に敵部隊。構成は音響判断から主力戦車2個中隊、汎用ヘリ12機、例のロボットが10機、後は兵員輸送車多数」
『次から次へと……迎撃準備……と、いきたいところだが、メドヴェーチ3』
「何?」
『《FL AA/SA-PSL》込みで対戦車、対空兵装はどの程度残っている?』
なるほど、確かに対空は不安か。
「《AA/SA-PSL》は対戦車ロケットが10発、対装甲/対空ミサイルは5発、25㎜擲弾各60発ずつ、85㎜対戦車ロケット12発、40㎜擲弾各100~225発ぐらいかな。後は……力業ならば、カクテルも大丈夫だけど……それは歩兵用に使いたいよね」
ざっと装備の弾薬を思いだし、告げる。
「おいおい……どれだけ持ってんだよ嬢ちゃん」
烈火の呆れ声は無視だ。言われ慣れてるし。
『……把握した。メドヴェーチ3は装甲兵器を破壊、他は兵員輸送車と兵士の排除だ。武装は壊すなよ?……で、対戦車兵装は全てメドヴェーチ3に回せ。質問は?』
『無いぜ』
『ありません』
私も、
「了解」
意見は無かった。
何故ならば――
『おい、メドヴェーチ3。奴ら、さっきの野営地目指してないか?』
上部ガンポートに着くメドヴェーチ8が言う。
その通りだ。
既に野営地から離れているが、敵勢力の移動方向は全く変わっていない。
だから、私は了承した。
「わざわざ、ご演説するような人達だからね。狙われてるっていうなら、体の良い餌になってもらおうよ。不意討ちならば、弾薬も節約しやすいしね♪」
『……確かにな』
僅かに、笑みを浮かべたのであろう。メドヴェーチ8の声は楽しそうだった。
数分後――
野営地から1マイルほど離れた場所で、輸送車は停まる。
「なんで停めるんだ?敵襲なんだろ、もっと離れた方が良いぜ?」
相変わらず、戦場を知らないオジサンだ。
仕方無いから説明する。
「確かに、脚を止めない方が、攪乱にはなるよ。……でも、そうするとオジサン、弾薬の浪費しかしないから」
先程の戦闘で、烈火は5.56㎜小銃弾をワンマグ分全部外し、高々数人の歩兵相手に12.7㎜小銃弾も200発近く浪費している。
かつて起きたある戦争のレポートには、一人殺すにあたって消費する弾薬量を調べた物があったが、それでは一般歩兵が平均10000発、狙撃手は平均1.7発となっていた。
流石に、そこまで酷くはないみたいだが、無駄弾が多過ぎる事に変わりはない。
『だからって、重機関銃で狙撃はねぇだろ。かつての海兵隊狙撃手じゃあるまいし』
『口を慎め、メドヴェーチ8。狙撃訓練だと思って気楽にやれば良い。最初に被害を被るのは自衛隊の方だ』
メドヴェーチ8のぼやきに答えるメドヴェーチ7は、後部ガンポート上で銃座に着いている。
で、私は近くの掩体裏で、《AA/SA-PSL》のチェックを行っていた。
とはいえ、各部に問題はない。
既に110㎜対空ミサイルは装填済みで、ロックすればすぐに撃てる。
後は、奴らが餌に懸かるのを待つだけ――
『メドヴェーチ7より各員へ。敵汎用ヘリ一機が墜落。自衛隊が攻撃行動を開始したようだ。……俺達も攻勢に出るぞ、各自、兵装使用自由』
『『「了解」』』
「了解だ」
各自の了解の意を聴きつつ、保持したランチャーを構え、
隊列を組むロボットの一機をロック。
発射。
リロード。
残り発。
別のロボットをロック。
ファイア。
リロード。
ロック。
ファイア。
競技射撃の如くミサイルを装填しては撃ち続け、残弾が尽きる頃、遠くで挙がる黒煙。
私の目が捉えるのは、跪くように倒れたロボットと、損壊した汎用ヘリ。
込める弾薬を失ったランチャーを投げ捨て、
「貰うよ、オジサン♪」
勝手についてきた烈火の背負う、新品の《AA/SA-PSL》のランチャーと二発の110㎜対空ミサイルを奪う。
「な、おいっ!?」
抗議を無視して、弾薬をロード。
別のロボットをロック。
発射。
リロードしつつ、掩体から移動。
「メドヴェーチ3から各員へ。次で対戦車/対空ミサイルは最後になる。後の奴は射程1000m以内じゃないと、装甲兵器に効果は薄い。メドヴェーチ7、輸送車の始動準備、他はそのまま、現状の行動を維持して!」
指示を飛ばし、ロックオンが完了していたミサイルを発射。
空のランチャーをコンテナに格納。
同時に、
『メドヴェーチ7、了解。エンジンを始動した。早く乗り込め』
『メドヴェーチ8、了解。狙いづれぇだろうから、俺は後部ガンポートに移るぜ』
『メドヴェーチ10、了解。急いでください』
仲間達からの無線。
「オジサン、急いで輸送車に乗って!」
「分かってるよ!人使いの荒過ぎる嬢ちゃん!!そんなんじゃ、モテないぜ?」
烈火の言葉に、軽く怒りを覚える。
ストレスも溜まってきたし、一回ぐらいは良いよね?
速度を落とし、烈火と並走するような状態へ持っていき、
「軽口叩く余裕があるんだ……」
腕を掴んで背負う。
「おい、嬢ちゃん?何のつも――」
跳躍。
「メドヴェーチ8。悪いけど――」
空中で体勢を整え、
「オジサンのキャッチを頼むよっ!!」
烈火を後部ガンポート兼荷台へと投げ込む。
『「そりゃねぇよぉっ!?」』
烈火とメドヴェーチ8の声が重なる。
そして、私は上部ガンポートへ着地。
同時に、烈火は後部の荷台へと
『……全員の搭乗を確認した。移動するぞ!』
走り出す輸送車。
メドヴェーチ7も大分、私達流に慣れてきたのだろう。無線の声も落ち着いている。
(……さて、例のロボットは7機破壊したし、残りはヘリと戦車か)
背負うコンテナから、分割された部品を取り出し、組み立てる。
――40㎜擲弾機関砲《AA AGSL-00F》
何故か造られた、空挺部隊用のモデルで、分割が容易になっているのが特徴だが、耐久性と信頼性は通常モデルと変わらないという逸品。
流石はエリアGer。技術立国の一角なだけはあるね。
ともかく、ボックスマガジンも取り出し、装着。
フィールドカバーを上げ、ベルトリンクで繋がれた40㎜擲弾を装填口にロード。
カバーを降ろし、コッキング。
初弾、ロード。
(じゃ、始めるよ!)
内心で宣言した私は《AGSL-00F》を構え、トリガーを引く。
撃ち出されるのは、40㎜成型炸薬弾の群れ。
それらが無防備なヘリの横っ面を抉り、撃墜する。
呼応するように、野営地付近から放たれるミサイルや擲弾が主力戦車を破壊していく。
(……へぇ、自衛隊も殺れるんだね。息切れが速そうだけど)
感心しつつ、斉射で残存する汎用ヘリを全て撃墜。
《AGSL-00F》は格納。代わりに《AA/SA-PSL》を再び取り出し、対戦車ロケットを装填。
スコープを見る限りの有効射程は600m。
だが、有効射程であって、最大射程ではない。
通常、信管さえ起動すれば、高弾速でない限り威力に変動が無い成型炸薬弾に、有効射程という概念は本来無い。
ロケットモーターの燃料の都合だろう。
(……ならば、やりようはある!)
やや仰角高めでランチャーを構え、狙いを合わせて、トリガーを引く。
元々、ロケットランチャーという物は緩い放物線を描くような弾道。
故に、迫撃砲と同様に仰角調整をして発射した。
狙い違わず、撃ち出された120㎜対戦車ロケットは全部上面の装甲に着弾。
メタルジェットが装甲を貫き、ドライバーを殺害。
停止した戦車はすぐさま、別のミサイルによって、撃破される。
(この方法なら、射程の問題はクリア出来るみたいだね♪)
私は再装填を終えたランチャーを構え直し、第二射目を発射する。
敵対勢力の壊滅は時間の問題だった――
数十分後――
「大漁、大漁♪」
私達は屠った兵士から武器弾薬を奪っていた。
目当てであった対空ミサイルも20発近く入手できた為、暫くは持つだろう。
他メンバーにしても、一般火器用の弾薬は腐るほど入手出来たみたいだから、次の戦闘が余程大規模で無ければ、二回分ぐらいは、弾薬がある筈だ。
そう思い、輸送車に戻ろうとした直後、ある者を発見する。
こちらに向かってくる、デザートデジタルカモフラージュの強化外骨格兵の姿を。
――以上、BreakⅤでした。
今回もコラボ要素は薄いですね。
……しかし、元気なグラナデちゃんが書けない状況が続いている。彼女、そこまで本気を出していない筈なんだけどなぁ……。
因みに、今話は1日クオリティ。某本格カミヒコーキSTGをプレイしたテンションのまま執筆した結果です。
では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました。