Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
飽くまで、本短編は銃火器において最低限の知識を書いています。
10分後、戻ってきたスナリャートの姿を見た皆は唖然とする。
黒を基調としたフリルとレースに飾られた膝丈のドレス……所謂、ゴシック&ロリータ――ゴスロリの上によれた白衣。
何処のヤブ医者だ!?
と、叫ぶ奴がいたが、誰の事だろうか?
兎にも角にも、講師が来たのだ。
貴方(貴女)は席に着く。
暫し後、講義が再開する――
「さて、火薬と一口に言っても、様々な物がある。マッチロック式からパーカッションロック式までは一貫して『
ある種のリサイクルか……。
「しかし、最初期の黒色火薬は湿気りやすく、成分の分離も起こりやすかった為、『コーニング』と呼ばれる、火薬を粒状にする技術が15世紀頃に生まれた。初期のコーニングは水と黒色火薬を練り、団子状に纏めた物を天日乾燥させた後、砕く事で粒状にするもので、粒状にした黒色火薬は燃焼速度も改善された。後の実験結果では2.5mの距離を燃えるのにかかった時間において、非コーニング処理の黒色火薬が50秒、コーニング処理の黒色火薬は4秒と、歴然の差が出たという」
そりゃあすげぇ、と感嘆の呟きを上げる数人の生徒。
確かに、歴然の差が出ている。
「とはいえ、黒色火薬は19世紀に誕生する無煙火薬の数分の一程度のパワーしかなく、多量の白煙を発生させるという欠点がある。故に、かなりの火薬を詰めなければいけなかった為、先込め式銃器は火薬の調整がやり易く、競技用としては現在も価値がある……かもしれない」
……なるほど。
って、今は火薬の講義では?
「続いて、無煙火薬について。偶然で見つかったと言える黒色火薬とは違い、意図的に開発されたもの。……最初の無煙火薬は、1884年に綿火薬とも呼ばれる、ニトロセルロースをエーテル、アルコールの溶剤で
またか。
何故、割愛された?
「では、次に弾薬と薬包について。弾薬とは弾頭(弾丸。又は
……なるほどね。
道理だ。
「元々、弾薬は元込め式銃器用に開発が進められたらしく、初期こそ紙で弾頭、ワッズ、雷管を包んだ紙薬莢弾薬だったが、やがて銅と亜鉛の合金である真鍮の薬莢に変わり、薬莢のそこに雷管は埋め込まれた。が、最後まで試行錯誤が続いたと言えるのは、雷管への打撃方法。薬莢から突き出たピンを打つ『ピンファイアー』、薬莢底部縁を打つ『リムファイアー』等があり、他にも火薬の爆圧で膨張する金属薬莢を楽に取り出す方法の模索などもあった」
…………ん?
何故か、弾薬名に反応した奴がいたが、無視しよう。
「次に薬莢。……先程は弾頭、発射薬、雷管を纏める為の物と説明したけれど、実のところ、元込め式銃器の都合により誕生した物が金属製薬莢。……初期の元込め式銃器は銃尾の閉鎖が不完全だったと説明したが、それを力ずくで解決する為の金属製薬莢。……それ故に、様々な元込め式銃器が生まれた。…………最後に、弾頭について。マッチロック時代からパーカッションロック時代まで、弾頭――つまり弾丸は鉛でできていた。……これは、融点が低く、成形しやすかった為。だが、弾丸と言われて、思い浮かべるであろう球形は、空気抵抗が大きく、現代では主流となっているライフルでは扱いづらい。故に、ミニエー弾と呼ばれるドングリに似た弾頭をへて、先尖弾――現在のような銃弾になった。……ここで小休止…………とはいかない」
ふざけるな!
という抗議。
貴方(貴女)は、別に気にしなかったが。
講義にしては短すぎたからだ。
「では、銃身について。銃身は命中精度を左右する重要なパーツである。……それ故に、昔から様々な試行錯誤が繰り返されてきた。……その中に、『ライフリング』という物がある。『ライフリング』とは、銃身内に掘られる数本溝の事を指し、この溝によって、弾丸は回転を加えられ、弾道が安定。命中精度、弾道安定性が増す。このような、溝を持つ銃器を『ライフル』と呼ぶ。……が、現在におけるライフルとは意味が異なるので注意。因みに、ライフリングの恩恵は副次的な物であり、本来は銃身内に残る火薬の燃焼カスを取りやすくする為に彫られた溝が発展した物だった。しかし、溝を掘ることによって生まれた凹凸が弾丸を込めづらくした等の理由により、狩猟用以外でライフルが使われる事は少なかった。ここで、先程の『ミニエー弾』の話に戻る。『ミニエー弾』は、ドングリ状で銃身の口径より小さく、後部がくり貫かれており、爆圧によって膨張。ライフリングに食い込んで回転が加えられるという原理。……これにより、ライフリングが普及しなかった理由の一つである、装填の面倒さが解消され、ライフルは広く使われるようになった。最後に、補足。先込め式時代の歩兵用長銃は『マスケット』と呼ぶ。……以上で、火薬と弾薬についての講義を終わる。5分間の小休止の後、銃火器の種別について、講義を行う」
……こうして、二コマ目が終了する――
次回から、ある意味待望の現代銃火器系になります。
今回までは、所謂歴史の勉強ですから。