※この作品はR-18です。

Dirty Works~Piece of Story~   作:空薬莢

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世界は優しくできていない。
優しい世界、都合の良い世界など、本当の意味では存在し得ない――



BreakⅥ 楯と矛の違いⅠ

その強化外骨格は、武装を持っていなかった。

いや、その表現は正確ではない。

両手には、武装を持っていなかった。

(……使者か何か?…………いや、それは無いみたいだね)

私はコンテナから《AGSL-01A1》を取り出す。

同時に、両手を上げてこちらへと歩みよっていた強化外骨格兵が止まり、

「日本国陸上自衛隊、SORF 二等陸尉、古矢義人だ。交戦の意思は無い、そちらの指揮官との会談を要請する」

スピーカーを通したような、若い男性の声が響く。

「……交戦の意思は無い、か。後方で兵士達に警戒させて言う台詞じゃないね。……この場合は仕方無いけど」

強化外骨格兵の後方を一瞥。

「……レミントンM24SWS、ベレットM82、FN M249MINIMI、迫撃砲etc……。せめて、携行火器はAI AW50やM98B、GE M134、GAU-8辺りにすべきだね」

どれもこれも、骨董品だけど。

《ヴァルハラ》の物では無さそうだから、他世界の自衛隊って所かな。可能性の域を出ないけど。

「ご託は後にしてくれないか。戦場で足を止めるのは危険だろう?」

ごもっとも。……でも、戦場で交戦の意思は無い、とかほざく貴方に言われたくはないね。

「だから、さっさと指揮官を出せ、と」

「そうだ」

指揮官は話が分かる人物だと思っているわけか。当然と言えば当然。

だけどね、

「悪いけど、私達に指揮官なんて役職は無いよ」

今(・)の(・)私達に指揮官なんてものはいないんだよ。

適時、適当な指示を誰かが飛ばすだけ。

暫し黙った強化外骨格兵――本人の言葉を信じるなら、古矢二尉は、再び話し出す。

「……では、誰でも構わない。話の分かる会談相手を呼んできてくれないか?」

「呼ぶ必要は無いね。会談の必要も。……要件を言ったら、お兄さん?」

「…………君のような者では話が通じそうに無いが、仕方無い。……俺達が欲しいのはこの戦場の情報だ。何か知っている事は無いか?」

要件は実に単純だった。

「大した事は知らないし、教える義理も無いね」

会談というならば、こちら側への交換条件を用意すべきだ。

それを提示しない辺り、信用性も無い。

「……交換条件が必要か」

「そ、タダで教える馬鹿はいないから。対価を払えないなら、部下の元にでも帰った方が良いよ」

敵も迫っているし、ね。

古矢二尉に視線を向けながらも、視覚以外の五感は周辺警戒へ。

(8時方向、約8マイルに……この音は、汎用ヘリか。数は30ぐらい?)

……また、対空ミサイル(SAM)が減るのかぁ……嫌だなぁ。

なんて、思っていると、

「……おい、嬢ちゃん」

烈火が近付いてくる。

「さっきから黙ってりゃ、グダグダと戯言ほざきやがって。嬢ちゃんには慈悲も無ければ、善意もねぇのか?」

放たれた言葉は、怒りを孕んでいる。

「無いね。そんなものは基本的に破滅の種でしかないよ」

善意も、慈悲も……結局は仇となって返ってきた。

世界は無慈悲かつ理不尽に出来ているのだから。

現時点で、自衛隊なる組織は信用に足らない。

(……まぁ、私の考えなんて、オジサンには分からないだろうけど……)

だから、オジサンが次に言い放った言葉も、想定内だ。

「……あぁ、そうかい。なら、俺様は自衛隊とかいう方に付くとするわ。嬢ちゃんと一緒じゃ、心が乾いちまう」

「好きにすれば?もっとも、そこの古矢二尉――おそらく、自衛隊の小隊長かな?――が、受け入れれば良いけど」

吐き捨てるように言い、私は踵を返す。

「私達に、貴方が求めるような情報は無い。交戦の意思が無いのなら、私達の邪魔だけはしないで。……もし、背後から撃とうものなら――」

視線だけを背後の古矢二尉と烈火へ。

「その強化外骨格と部下達を、纏めてミートパイにしてあげるから。……あぁ、埋葬は気にしなくて良いよ。ミートパイにした後で美味しく頂くから」

殺意と、狂気を込めて言い、今度こそ輸送車へと歩き出す。

「……下衆が」

嫌悪感剥き出しの、吐き捨てるような声。

「どうとでも。……生きとし生ける物全ては下衆だから」

振り向く必要は無い。

その時は、自衛隊と烈火を殺す時だ――

 

数分後――

(……敵が、増えた)

輸送車の後部ガンポートに着いた私の五感が、新たな敵の気配を察知する。

「メドヴェーチ3から各員へ。八時方向、敵。種別、数は汎用ヘリ30、爆撃機2、制空戦闘機4。攻撃対象は自衛隊みたいだね。……どうする?」

『自衛隊が敵対しているであろう勢力は、俺達の装備拝借元――死体の認識票曰く、“東北アジア連邦”という国家の軍隊であり、もう一つの勢力――国連平和維持軍では無いと思われる。……つまり、今回の敵勢力は東北アジア連邦国軍だな』

『……何が言いてぇんだ、メドヴェーチ7?』

理解できないらしいメドヴェーチ8が問う。

『俺達は何故、ここにいるんだ、メドヴェーチ8?』

『……依頼だからだ』

『そうだ。俺達が二勢力の心底どうでもいい戦争の一戦線で、両勢力に壊滅的打撃を与えなければならない』

……あぁ、そういう事か。

私はメドヴェーチ7の意図を理解する。

『……なるほど。じゃ、やる事は一つって事か』

やや遅れて、メドヴェーチ8も理解したようだな。

『理解したようだな。では……手始めに、爆撃機を落とすぞ』

『メドヴェーチ8、了解』

『メドヴェーチ10、了解』

「……メドヴェーチ3、了解。じゃ、早速始めるよー」

ガンポートから飛び降り、散らばる残骸群――その中でも、戦車とロボットの残骸へ。

(120㎜滑腔砲、105㎜ライフル砲……うん、やれる)

手早く、健全な105㎜ライフル砲、120㎜滑腔砲各2門を集め、適当な残骸を砲架代わりに、設置。

閉鎖機開放。

其々の弾薬を装填、閉鎖。

「装填完了。SAMの準備は?」

『終わってるぜ!』

『いつでもやれます』

よし。

仰角修正。

爆撃機の予測進路上へ。

即席対空砲の外見から推測される砲口初速と、高度から着弾時刻を割り出して暫し待ち、

砲撃。

即座に、空薬莢を排出。

次弾装填。

仰角修正。

上空に火球。一機落としたか。

照準修正完了。

砲撃。

(次、制空戦闘機……対空砲では……無理だね)

巡航速度が音速を超えている。

加えて、戦闘機相手に歩兵携行型対空ミサイルでは、確実性が無い。

どうする?

戦車砲には、対空用の砲弾は無い。

HEAT-MPでは、弾速の関係上命中率が著しく低い。

かつて、戦艦搭載火砲用に対空散弾があったが、あれはそもそも威力が無く、使い物にならなかったらしい。

(…………あ)

無茶な手だが、やりようがある。

105㎜ライフル砲用弾薬の内から目的の弾種――あった。

目的の弾薬とは、HE。

「よいしょっと」

弾頭だけ抜き取り、

「Урα!!」

上空に向けて投擲。

数秒後、

上空で火球。

よし、一機撃墜。

続けて3発投擲し、残りも落とす。

(……何とも言えない状況だなぁ)

地上の人間に落とされる、速度と機動性に重点が置かれるであろう、制空戦闘機。

実に滑稽だ。

『メドヴェーチ8、一機撃墜。残りは……って、ねぇ!?』

『当然だろう。……自衛隊も応戦しただろうからな』

メドヴェーチ7、8のやり取りを聴きながら、対空砲付近に薬嚢と弾薬を纏め、敵兵の保有していたプラスチック爆弾をセット。

輸送車に戻る。

後部ガンポートに着く。

12.7㎜重機関銃をチェック。問題無し。

それらが終了して暫し待つと、発車する輸送車。

燃料の問題は無い。

破壊した輸送車から奪って補充済みだ。

『メドヴェーチ3、次の敵拠点の方位は解るか?』

メドヴェーチ7の問いに、暫し瞳を閉じ、集中。

「…………私が感知できる範囲内には無いね」

『そうか。……なら、索敵ついでに傍観と行くか』

「了解」

メドヴェーチ7の指示に了承を示し、手にプラスチック爆弾の起爆スイッチを押す。

盛大な爆発音と共に、戦場ではありふれた黒煙が立ち昇った。

死者を弔うように。

或いは――生者を呪うように――

 

 

 





はい、BreakⅥでした。
……接触編と言っておきながら、それらしい感じは一切無い。
どうしてこうなる……。
話す事も少ないので、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました。

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