Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
同様に決裂も必然である。
では、和解は必然か?
それは、運命を司る神のみが知り得る事だろう。
もっとも、神は人々が作り出した偶像に過ぎないのだが――
(……メドヴェーチ3……派手にやりやがったな)
数時間前のやり取りは俺にも聴こえていた。
メドヴェーチ3がアイツら――旧日本国の国防組織、自衛隊を好かないのは理解できる。
専守防衛、文民統制。
人間的な軍人、国防組織としては素晴らしい理念だろう。
しかし、過去に自衛隊は戦争に参加しているのだ。
何回も。
そして、殺戮の限りを尽くしたという。
元を正せば、それもある大国とテロ組織が原因であり、先進各国には賞賛され、発展途上国では目の敵にされる。
やがて、日本国はエリアJpeと名を変え、再び中立国へと戻ったものの、外貨の為に死の商人へと成り下がっていた時期があったな……。
故に、エリアRos正規軍の素行不良連中は、博愛主義を語る資格の無い自称、中立国とでも思っているのだろう。……実際は、当時の指揮官が無能だった上に、練度不足だった為に起きてしまった惨劇らしいが。
(……まぁ、俺達の世界では、だがな)
言動から察するに、あの自衛隊はそれ以前の連中か、他の平行世界出身かのどちらかだ。
……おそらくは、後者だろうが。
(何にしても、気分が悪いのはお互い様だろう。……メドヴェーチ3、借りにしておくぞ)
心中で自嘲気味に呟き、俺は無線機の周波数を変える。
自衛隊の無線周波数は特定済みだ。
「さて、突然で済まない。……こちらはエリアRos正規軍 第3独立遊撃隊所属、コールサイン、メドヴェーチ7だ。訳あって本名は言えんが、そこは勘弁していただきたい。……先程は我が隊のメドヴェーチ3が不遜な態度と言動を取ったようで、済まなかった。……罪滅しというわけでは無いが、情報を伝えよう。……この世界は俺達や貴殿ら自衛隊を呼んだであろう存在からは《ヴァルハラ》と呼ばれている。……神話における、戦士達の安息の地の事だな。……俺達が呼ばれた理由は、現在進行形で起こっている戦争を物理的に終局へ導く事。おそらくだが、貴殿らが呼ばれた理由も同じだろう。……つまり、ヴァルハラから元の世界へと帰る方法はただ一つ。この地域での戦闘――正確には、国連平和維持軍と東北アジア連邦軍の小競合いにおいて、双方に壊滅的打撃を与える他に無い。こちらとしても、貴殿ら自衛隊に敵対する気はないが、忠告しておこう。難民を保護するのは勝手だが、同時に東北アジア連邦軍兵士を屠っておく方が良いと思われる。……本来血で汚れるのは、貴殿ら自衛隊から見れば三下以下の蛮族である我々の方が適切である上に、貴殿らは国連軍を相手にしたくは無いだろう。東北アジア連邦軍すら相手にしたくないのならば、我々の方へ誘導する手段を考えてくれ。誘導さえしてくれれば、殺戮は我々が引き受けよう。……以上だ」
無線を切る。
どこまで効果があるか、で言えば一割にも満たないだろう。
俺達は所詮、非正規軍の扱いの便利屋であり、国から捨てられたも同然の殺戮者の集団だ。
そんな奴の言葉に信頼性など無い。
(……神の奴等は、糞みたいな事を考えやがる)
あの時の口振りからすれば、世界平和を祈っているように感じたが、振り返ってみれば、神はそんな事を思わない。
(……アイツらの目的は……俺達の行動を観察する事だろうな)
暇を弄んだ神々の遊び。
人を、人類を役者に見立てた、殺戮劇といったところか。
……クソ食らえだ。
もし、神を殴り飛ばせるなら、俺は原形を留めない程度まで殴打しただろう。
メドヴェーチ3なら、灰塵すら残さんだろうが。
……どうでもいい話だな。
「……メドヴェーチ3、周囲に反応は?」
『特に無いよ~……あ、オジサンがまた昏倒した』
敵勢力の反応は無いらしい。
観察対象内で内輪揉め……というよりは、烈火の自業自得か。
メドヴェーチ3は奴も嫌っていたが、そこについては俺も同意する。
あんな本能と私欲中心で生きているようなエゴイストはロクな人間ではない。
それは、畜生にも劣る屑ばかりである、俺達の世界においても、当てはまる事だ。
「了解した。……監視を続けろ。尚、頃合いを見て、飯にしよう」
『メドヴェーチ3、了解。今日は何にするのかな?』
『また、国連軍のレーションは嫌だな。人肉の方がマシだぜ』
『そこまで酷くないと思いますけどね』
反応はそれぞれか。しかし、メドヴェーチ8。それは言い過ぎだ。
『…………メドヴェーチ3より、各員へ。6時方向より敵勢力。おそらくだけど、国連軍。種別は主力戦車30、歩兵一個中隊、汎用ヘリ3機』
……言ってるそばからかよ。
「了解した。メドヴェーチ3、射程圏内に入り次第、歩兵の頭に花火を打ち上げてやれ。……他はATM、ないしSAMの用意」
『了解。あ、自衛隊が東北アジア連邦軍と交戦開始』
「それは無視しろ。奴らだけでカタが着くだろう」
……余裕があれば、援護するぐらいで良い。メドヴェーチ3に対して、あんな啖呵を切れる程度には実力がある――あるはずだろうから。
そう思いながら、俺はハンドルを切る。
(……『貴様らが俺の仲間と守るべき無辜の命に手を出すというのなら、その言葉を黄泉路で悔やませてやる……覚悟しろ』、かぁ)
ガンポートに着いたまま、《FL AA/SA-PSL》に対空/対装甲ミサイルを装填しつつ、私は思う。
――無辜の命。
言うまでもなく、民間人の事だろうが、彼らが自衛隊――ひいては軍隊に対して思う事は一つだけだ。
――税金の無駄遣い。
21世紀前後から、専守防衛としては行き過ぎた戦力を保有していた自衛隊。
当然の如く、平和ボケした国民から見れば、税金の無駄遣いに他ならず、反感を買う。
(……それにあの目、私達をそこらのチンピラと同じだと値踏みしていたようだし……)
ヘリをロック。
ファイア。
撃墜。
(……確かに、私達は元々で言えば、チンピラ同然。……だが、自衛隊の方も、平和主義を語る偽善者の操り人形とも言えないかな?)
私達を反吐が出るような無知蒙昧に認識するならば、自衛隊は無能な閣僚のマリオネットとして認識したほうが良いのでは?
(とはいえ、それは私達の世界での話かもしれないけどさ……)
再装填。
ロック。
ファイア。
撃墜。
遠くに見える後方奔流の群れ。
対戦車ミサイルだね。
再装填を終えていたランチャーをコンテナに格納。
銃座据付けの12.7㎜重機関銃のグリップを握り、照準修正。
斉射。
断続的なマズルフラッシュの後に、12.7㎜ライフル弾が吐き出され、対戦車ミサイルを撃墜。
全てのミサイルが爆発四散した事を確認しつつも、コンテナから60㎜迫撃砲《AA TM-20R》を取り出す。
続けて取り出す弾頭は120㎜外装式クラスター砲弾。
装填。
(……さっき、メドヴェーチ7が謝罪していたし、これは軽いけど私からの謝罪だよっ)
仰角修正。
方向修正。
発射。
派手な砲煙と轟音を生みつつ、砲弾が撃ち出される。
放物線を描き、自衛隊と交戦中の東北アジア連邦軍の歩兵部隊直上で炸裂。
子爆弾の雨が東北アジア連邦軍兵士
また、不発弾も無い。旧来のクラスター爆弾は不発の多さが問題だったが、長い年月の間に解消された問題。
だから、気兼ね無く使える。
『おい、メドヴェーチ3!戦車が腐るほど残ってるぞ!』
「分かってるよ、メドヴェーチ8。今から潰すから☆」
《AA TM-20R》を格納。
再び《FL AA/SA-PSL》を取り出し、120㎜対戦車ロケットに装填し直す。
仰角修正。
発射。
放物線を描いて飛翔したロケットが一両の主力戦車砲塔に真上から着弾。
メタルジェットは薄い上部装甲を易々と貫徹。
真下にいたであろう車長の脳髄も破壊し、拡散して他の乗組員も死傷させ、一両の主力戦車が沈黙する。
確認しつつも、再装填の手は緩めない。
狙いを付けて、別のターゲットに向けて発射。
ただ、繰り返す。
クレー射撃も同然の行為。
一弾あたりの成果と、残弾数の計算が面倒なだけで、他はローチンワークに過ぎない。
(……いい加減、飽きてくるなぁ……)
本来、戦場――戦闘に飽きるも何も無いのだが。
ヲタク連中の好きな
気を引き締めないと。
そう思いながら、最後の主力戦車に対戦車ロケットを叩き込んだ時、私の感覚がある物を捉える。
四輪駆動の高機動装輪輸送車と、輸送車に乗る四人の軍人を――
――以上、BreakⅦでした。
作中で語られた悲惨な日本国ですが、これは現実の情勢を加味して、作者なりにアレンジしたDWの世界観的なモノです。
そうなってほしくは無いですが、色々と信用できないモノが多いので、儚い願いかも知れませんね。因みに、僕は左翼派ではありません。
今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました――