Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
人間は誰しもが愚者。
自分は愚者ではないと言い切れる奴など、誰一人としていないのだ。
だからこそ、世界は醜く廻る――
(……交戦の意志は無いみたいだね)
件の輸送車は私達に近付いて来るが、それに乗る四人の男女の言葉は聴き取れたからだ。
確認できた搭乗者の服装を見るに、エリアJpe系――つまり、モンゴロイド系かつ元の世界に於けるかつての軍装。
……つまりは、転移者であろう。
(…………ならば、聴かれる質問は薄々考え付く)
ここは何処か。
お前らは原住民か。
etc……。
(……まぁ、さっきの自衛官よりは好感が持てそうな人っぽいね)
元々、自衛隊は存在意義の都合上とはいえ、軍隊ではなく国防組織。
とはいえ、中身は軍人である。
(……だからこそ、私達が気に喰わないのは当然だけどね)
私達は正規軍では無い。
正規軍という所属は仮初。ただの首輪に過ぎない肩書き。
(…………どうでも良いね)
そう思った直後、気付く。
また、来た。
(……東北アジア連邦側か。……人型兵器10、汎用ヘリ10、主力戦車20…………少ないなぁ)
狩りがいの無い量。
聴こえてくる砲声。
向こうも大分、対策を練ってきたのかな?
と、思ったが違う。
砲弾が穿つのは、接近してくる輸送車周辺の地面。
……そっちが先なんだ。
まぁ、彼らがデコイになるならば、こっちは好都合。
情報伝達もどさくさに紛れて行えるしね☆
そうと決まれば、実行するだけ。
「メドヴェーチ3より各員へ。前方に敵勢力。種別は人型機動兵器10、汎用ヘリ10、主力戦車20」
『……確認した。各自、ゴミ掃除だ。現在攻撃を受けている、輸送車の連中は敵ではない。彼らを援護しつつ、鉄屑を作製。後は臨機応変に。以上だ、戦闘開始』
メドヴェーチ7の指示。
各々が必要とされる行動へと移行。
即座に展開する、110㎜対空/120㎜対装甲ランチャー《FL AA/SA-PSL》と、60㎜軽迫撃砲《AA TM20R》。
110㎜対空ミサイルと、120㎜HEATを装填。
各々の目標は、汎用ヘリと主力戦車。
ターゲット、ロック。
照準修正……終了。
フォイア!
同時に、コンテナへと両武装の格納。
「出掛けてくるね~♪」
跳躍し、砂漠へと降り立ち――
「せーのっ!」
スタンディングスタート。
僅かに地面を陥没させ、走り出す。
数百mの距離を同じく数秒で走り抜け、再び跳躍。
「やっほーお兄ちゃん♪」
振りかぶる拳。
そのまま汎用ヘリのコクピットへと降り下ろす。
割れる防弾ガラス。砕けるメインフレーム。
まずは一機。
破壊したヘリから、パイロンに懸架された250㎜対戦車ミサイル、95㎜ロケットポッド、胴体下部の14.5㎜多銃身ガンポッドを強奪。
降下しながら、ガンポッドを人型機動兵器へと向け、斉射。
易々と正面装甲がブチ抜かれ、全機のパイロットがミンチへと変わる。
これで、人型機動兵器は殲滅完了。
撃ち切ったガンポッドを投げ捨て、両手には対戦車ミサイルを搭載したフレームを持つ。
更に、コクピットから、センサーの類いを引き抜いて、フレームに無理矢理接続。
他の汎用ヘリのコクピットをロック。
発射。
同時に、ランチャーも投げ捨てる。
さもなければ、後方奔流をモロに食らっちゃう。
数瞬遅れて、ミサイルが汎用ヘリに着弾。
全機撃墜。
続け様に、ロケットポッドを構えた時だった。
「Урααααααααααααααααααααααααα!!」
咆哮と弾雨が見えた。
件の輸送車の搭乗者の一人が、乱射魔と化してる。
(……気が合いそうな人だけど、会わない方が良いかもね)
だから、私は大きく息を吸い――
「Урα♪」
高らかに言い、95㎜ロケットを主力戦車の上部装甲へとバラ撒いた。
そして黒煙と破壊のコーラスが鳴り響いて、
『例の輸送車への世界の概要の説明が終了した。……あまり信じてはいない様子だったが、それが当然というものだ。……メドヴェーチ3、“遊び”には飽きたか?』
「うん、飽きたよ~」
戦闘も終わりを告げる――
一時間後――
遠ざかる件の輸送車を見送った直後、メドヴェーチ7に無線が入ったらしい。
洩れ聴こえる、例の堅物の自衛官の声。
『こちらは陸上自衛隊の古矢だ。……頼み……いや要求がある。貴様らが我が隊を囮として利用していることはすでに分かっている。それ自体は構わないが報酬が欲しい、速い話がこちらの手が足りないと思った時、3回だけでいい。手を貸してほしい。見返りは囮として使われ続けてやることだけだ。もし、拒否するなら我々は貴様らから失探されるように動く。こちらとしてはどちらでも構わない。どうだゴロツキ共?』
……戯れ言を。
保険なぞ要らない癖に。
軍に評価されるのは構わないけど、アンタみたいな堅物の評価なら、落第点と同義だ。要するに、価値無し。
『……冗談が過ぎるな、古矢さん?俺達は軍の雇われに過ぎない。それに、貴官らを囮としてはいないのだがな。貴官らが勝手に呼び寄せた敵対勢力をこちらの目的の元に潰したに過ぎん。……また、俺達からLostする……貴官は自殺願望保持者か?……依頼としてならば協力しよう。報酬は敵対する兵士の死体で構わない。……が、この際、無償でも構わんが』
とはいえ、私達の本質は便利屋。依頼ならば、引き受ける。報酬も、現状で考えれば妥当だ。
……が、
『そうか、ならば交渉は決裂だ。貴様らはどこぞの似合いの場所で息絶えろ』
この堅物は戦力よりも一般論を優先した。……それとも、本当は誰も信じちゃいない道徳を、かな。
どっちだっていい。
第一、似合いの地?そんなものは何処にも無い。
堅物さん達のような、体面を大事にするような連中は決まって、正式な埋葬をされたがるだろうけど。
……これもどうだっていい。頭の凝り固まった存在こそが、犬死にする。……なんて言ったところで、頭の凝り固まった堅物さんは鼻で嗤うだけ。
ゴミ掃除が仕事だった私には関係無いし、あの時の苦痛が、平和な国でのうのうと勉学し、訓練を積んだ士官であろうあの堅物さんには分からないだろう。
……私達は私達に課せられた依頼をこなすだけ。
『或いは、貴官らがそうなるかも知れないがな』
だから、メドヴェーチ7の発言には賛同でき、
『ハッ、舐めるなチンピラ。これが死装束になる覚悟など、とっくの昔に済ませている』
堅物の勝ち誇ったような戯れ言には笑えてくる。
言い負かした気で無線を切ったその様が実に滑稽。
死装束になる覚悟など、とっくの昔に済ませている?
嘘を言わないでよ。貴方達は物心着いた時から、死ぬ覚悟が出来ていたとでも?何歳から、数年程度しか返り血を浴びた事の無い人間風情が、そんな事をほざくな。
まぁ、口ではどうとでも言えるし、チンピラやらハイエナやらに、死ぬ覚悟の無い青臭い臆病者だと馬鹿にしているも同然であるその口舌は、自分達は上だと高を括る馬鹿である事を表している。
少しだけ思いかけていた殺意は堅物さんの滑稽さが過ぎて興醒め。……命拾いしたね、堅物さん達♪
『……さて、聴こえていただろうが、自衛隊を餌にする価値は無くなった。……アイツらの言う通り、
『了解。俺達なんぞに頼るようじゃ、自衛隊としてのプライドと品位を無くすだけだろうな。聴こえてんだろう、自衛隊さん?』
『……止めておけ、メドヴェーチ8。ミジンコがどんなに自己主張した所で、蟻の目にも留まらないのと同じだ。……彼等にとって、俺達は……いや、最底辺の人間など、例え国民であってもその程度の価値しかない。……鼻っ柱を折るならば、一人で行け』
……そうだね、メドヴェーチ7。向こうがそう思うならば、思わせておけばいい。
上の奴らに下の――最底辺の者の事など、想像上でしか理解出来ないのだから。
自分達にとって都合良く解釈し、さも真実のように嘯く。
それが表と、仮初の表を演じる裏の者の処世術。
…………クソ食らえ!
なんて思った所で、何の意味も無い。
私の戯れ言を掻き消すように、輸送車は転回する。
こちらに向かってくる国連軍の軍団へと――
――以上、BreakⅧでした。
今話において、僕が力を入れてしまったのは、後半ですね。
尚、これによって共闘はほぼ不可能となりました。……まぁ、作中のメドヴェーチ8の発言通り、彼らだけでも充分でしょうが。
今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました――