Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
足掻く事しか出来ない醜さは人間の本質か?
否、本質自体はそこらの動物と変わらない。
即ち、生存と繁栄であり、その為の“手段”をもっともらしい形に塗り固めたに過ぎない――
※化物による機動兵器の蹂躙回。
(……アレは…………ギガースの親戚かな?)
一ヶ月ぐらい前の事だ。
エリアRos SE近郊でも私は馬鹿みたいな人型機動兵器に出会っている。
何もかもが兵器として欠陥だらけでありながら、こちらの攻撃がほぼ通じない、という点だけで調子にのっていた黒き巨人。
アレとは全く違うものの、その外見から察せる馬鹿らしさはギガースに負け劣らない。
「……ほんっと、馬鹿みたいな兵器」
上空を一瞥し、吐き捨てる。
脚部は原理こそ不明だが、浮遊式と思われ、上半身が極端に細い。
武装も見た限りでは、両腕固定式の機銃と、肩部に三連装のロケットランチャー。
対人用だろう。
(……まぁ、外観から察せるお粗末な性能では無いだろうね。ギガースの例があるから)
ならば、六割ぐらいは解放しようか。
着地した6機の機動兵器――取り敢えず、
「メドベェーチ3から各員へ。……機動兵器群を破壊する。六割解放するから、下がっていて」
『……正気か?』
メドベェーチ7
「うん。正気。火器が通じない可能性があるから、
『……了解だ。俺達は索敵行動に移る』
「任せたよ」
無線封鎖。
――出力、60%。
更なる細胞の活性化。
火器は対装甲ロケットランチャーである《M35A5》以外格納。
「さて……行くよっ!」
地を蹴る。
ただそれだけの行為で、フローキーとの距離であった約8000mが詰まる。
所要時間も数秒だ。
このまま一発ブチ込んでやる――と、思うが、聴覚が機械の駆動音、嗅覚が焦げ臭い臭いを感じ取り、咄嗟にサイドステップ。
直後、一瞬前に私が存在していた場所を青白い火焔が奔る。
(火炎放射っ!?)
青白いという事は、最低でも1000℃以上の高温。つまり、融点660.3℃のアルミニウムぐらいは余裕で融かせ、人間ならば、一瞬で焼死体だ。
おまけに、放射範囲は目測だが250m。
性能としては脅威的。
だが、実に馬鹿な兵装を積んでいるとも、言える。
高温であるほど、長時間使うほど放射器自体が焼き付き、傷むのは当然であり、燃料や酸化剤の量と放射時間の容量対放射時間とでも言うべき物は……まぁ、コストと言えるか。が非常に悪い。
だから、火炎放射器は1900年代後半ぐらいから、ほぼ登場しなくなり、代わりの役割を担ったのがナパームや燃料気化爆弾。21世紀前後からは燃料気化爆弾から発展した、サーモバリック爆弾等だ。
要するに、威力はともかく、軍用としての運用面では時代遅れも甚だしい御荷物。
ウイルス兵器やらには効果的らしく、自衛隊では一応調達されていたとか……。
(でも、利用させて貰おっか!)
放射器は内蔵式。
内蔵箇所は浮遊ユニット前部。
数は二基。
《M35A5》をコンテナに格納。
手近なフローキーに向かって跳躍。
そして、
「はぁっ!!」
列泊の気合いと共に、浮遊ユニットに貫手を叩き込む。
貫通。
(アレ?)
てっきり、指が折れるかと思ってたのに。案外脆いなぁ。
ともかく、内部配線を掴み、引き千切りつつ、空いた片手で外装を剥ぐ。
露になった、火炎放射器。
引き千切る。
(……フローキーは人工知能による無人制御かぁ。……中枢は胸部)
引き千切った配線から、電気信号の流れを読み取り、中枢ユニットの位置も割り出す。
再び、跳躍。……胸部まで。
放射器を突き立て、回路に信号を流し込む。
臨界駆動しろ、と。
胸部装甲を蹴り、バックジャンプ。
離れると同時に放射器が青白い火焔の奔流を発して、装甲もろとも、中枢部を融解させた。
まずは一機。
じゃ、次♪
残る五機のフローキーが腕部の機銃を撃ち始める。
が、狙いが甘い上に、後追い射撃となっていた。
まるで、新人機関銃手の射撃。
当然、当たる事は無かった。
難なく、二機、三機と中枢を焼き切る。
で、残り二機。
次々っ!
今度は趣向を変えてっ♪
ユニットを叩き割り、火炎放射器を奪うが、これは保険としてっ!
跳躍。
今度は頭上まで。
そして、肩部ロケットランチャーを引き千切る。
(……原理自体は、そこらの戦闘ヘリ用と同じか)
なら、制御は容易。
胸部に全弾斉射。
着弾と共に、発生したメタルジェットが装甲を貫徹するが、やはりというべきは効果は微々たるもの。
対象が本来もっとも厚い正面装甲である上に、近代の時点で成形炸薬弾が威力不足になっている為だ。
やはり、融解させる方が早い。
火炎放射器を突き刺し、臨界駆動。
焼き切る。
着地。
残り一機っ!
他にやれそうな手段は――
(あっ)
主力戦車には効かない手段だけど、フローキーは無人機。
ひょっとしたら効くかもしれない手段はあった。
必要な材料はそこら辺に転がっているはず。
ライフル弾の弾雨を避けつつ、辛うじて使えそうな、主力戦車の滑腔砲――即ち、主砲の弾薬を探す。
殆どが
これは使えない。
だから、薬嚢だけを回収。
別の弾薬――
これだけあれば、充分かな。
跳躍。
「プレゼントだよぉっ!!」
抱えていた弾薬全てを胸部装甲に叩き付ける、メリ込ませる。
そして、メリ込んだ弾薬の雷管を蹴って、バックジャンプと同時に起爆。
連鎖的に全ての弾薬が誘爆し、膨大な爆発――衝撃が胸部装甲に襲い掛かり――
数秒後に、最後のフローキーは停止した。
――ポプキンソン効果。
対象に密着した状態で爆発を発生させると、衝撃波が対象内部を伝わる。
この衝撃波は自由面――金属板で言うところの反対面――で反射すると逆方向への衝撃波――引張波となって伝わる。
岩石やコンクリートなどは圧縮強度(圧力に対する強さ)よりも引張強度(引っ張り荷重への抵抗力)が弱いが、金属は双方の差が無い。
よって、爆発による圧縮応力(圧力)で破壊されなくても、引張波による引張応力によって、表面剥離が生じる。
……専門的言えば、そういう感じだが、ざっくり言ってしまえば零距離で爆発させたら、衝撃波が内部で反射しまくって、弊害として引っ張られた表面が割れて破片となり、反射する衝撃波で弾き飛ばされるというもの、かな。
主力戦車は対策として、装甲の内張りとしてケプラーやらを張って、破片が飛散しないようにしているから効かないが、どうやらフローキーには、そのような処置がなされていなかったようだ。
これで全機破壊。
暇潰しにはなったか。
歯応えはまぁまぁだったけど。
フローキーの残骸に腰掛ける。
無線起動。
「メドベェーチ3より各員へ。機動兵器の破壊は終わったよ。周辺に敵対勢力はいる?」
『俺達に対して、敵対している勢力はいないな』
返ってきたメドベェーチ7の言葉は、
「引っ掛かる言い方だね……」
癪に障るもの。
『例の平和の使者様方の方は悲惨な状況だぜ?。メドベェーチ3のやり合った機動兵器とは違うが、似たような機動兵器たったの二機相手に蹂躙されかけてるよ』
「まぁ、強化外骨格有りとはいえ、所詮は中身が真人間同然だろうから、当然と言えば当然だろうね♪」
メドベェーチ8の発言に、半笑いで答える。
『違いねぇ。大口叩いてあの様だ』
私達のような化物ならば、狩れる相手ではあったが。
『その辺りにしておけ、メドベェーチ8。別世界の住人とはいえ、彼らにとっての矜持があるんだ。……それを貶される事は、何処の軍隊でも嫌うだろう。俺達エリアRosの軍人が特殊なだけだ。……で、だ。メドベェーチ3』
メドベェーチ8を嗜めた後に、会話の矛先が私に向いた。
『暇潰しは多い方が良いのだろう?……彼らは俺達の力など不要だと言ったが、現状では必要だろう――』
「りょーかい。……一機潰すだけで良いよね?」
言わんとする事は単純明快だった。
『あぁ。全部やってしまっては彼らの面子が丸潰れだからな』
無線封鎖。
フローキーの残骸から、火炎放射器を引き千切る。
出力解放――――65%。
細胞活性率を上げ、目標を確認。
全高8~10m程度、二足歩行型の、昔から娯楽媒体で見かけるような、機動兵器だ。
(おそらく、弱点はフローキーと同じ)
胸部を狙えばいい。
火炎放射器を担ぎ、出来の悪いクラウチングスタートの姿勢をとる。
対象――仮称、クークラとの距離は13㎞強。
軽く行って、十数秒で辿り着ける計算だが、面倒だ。
膨大な粉塵と軽度の地盤沈下を誘発させながら、跳躍。
数秒で辿り着き――
「余所見禁止だよぉ~」
クークラの胸部にドロップキック。
盛大に歪み、陥没する装甲に火炎放射器を突き刺し、信号伝達。
今度は腹部に相当する部分を陥没させながら、私はバックジャンプを行い、クークラから離れる。
空を裂きながら、青白い閃光が対象を焼き切る様を見ながら。
数秒後――
再び地盤沈下を起こしながら、元いた付近に着地。
そして、私に近付いてくる一台の装輪輸送車。
「終わったよー」
一応、無線を入れておく。
『言わなくても分かるっての。……もうすぐ着くから待ってろよ』
返答はメドベェーチ8。
「面倒だから、私の方から行くよー」
コンテナを担ぎ直して、走り出す。
輸送車に向かって。
――真っ正面から、ね♪
――以上、Last Breakでした。
サブタイトルはLast Breakとなっていますが、これがエピローグというわけではありません。
次回、キチンとエピローグがあります。
今話の敵対勢力は、アルファるふぁ氏の戦場シリーズから、雑魚機ロトスの対人仕様です。
もう一種出ていますが、そちらは多重コラボ先である新人2等空士氏サイドで語られるでしょう。
また、それぞれの仮称の意味ですが、フローキーはロシア語で、綴りは『хрупкий』。壊れやすいという意味。もう一種のクークラもロシア語で、『кукла』と書き、意味は人形。
ある意味、皮肉です。
どちらもギガース等というような、仰々しい名前が似合わないような、一般量産型HMMASですからね。
では、最後に今話登場のロトス対人仕様の設定をのせて締めます。
拝読ありがとうございました。
ロトス・キラー
・全高…7メートル
・推定装甲厚…200~300㎜
・特徴…ホバークラフトの脚部
・コクピット…胸部
悪地を走るためには浮けばいい、という考え方のもと作られた。
しかし、ホバークラフトの性能が低く、重武装が不可能な為、機体上半身は脆い。
本機は通常仕様の両腕を9㎜口径汎用機関銃(マガジン弾数6000発)に換装、300㎜口径肩部外装式3連装ロケットランチャーを装備し、脚部に大型火炎放射器を内蔵した専用の物へと換装した対人特化仕様。
一方でHMMASを含む対装甲目標への攻撃性が大幅に低下している上、火炎放射器を内蔵したが故に、排熱効率と整備性の大幅な悪化も招いており、前線兵士、整備士からは出来の悪い欠陥機と酷評されている。