Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
数分後――
「俺達を殺す気か、メドベェーチ3?」
「いや、殺せないって。あの程度では、ね」
輸送車に飛び乗った私は、メドベェーチ7に笑顔を返す。
「まぁ、そうだろうな。明らかに、本気じゃねぇだろ、メドベェーチ3」
「冗談はその辺で終わりにしてください、メドベェーチ8。索敵行動が先決ですよ」
固いなぁ、メドベェーチ10は。そんなじゃ、生き残れないよ。
(……って、ふざけても生き残れるのは才能ある者だけか)
一般的には、ね。
だから、努力を重ねるんだろうけど……今は関係無い。
「……周囲40㎞圏内に敵対勢力はいないね~。いるのは、
そう。彼らだけ。
理想を掲げるのは勝手だが、プライドなんて余計な物のせいで、損をしていた。
暇潰しに、お手伝いなんてしない方が良かったか。
……感謝など、彼らはしないだろう。プライドがそれを許さないだろうから。
「了解だ。……っと。通信だな。各自、回線を開いておけ」
「「了解」」
「りょーかい」
指示を肯定。
回線を開く。
『初めまして、便利屋の皆様』
聞き覚えのない女性の声だ。
『依頼の件ですが、この辺りまで充分だ。これより、貴殿方を元の世界へと還そう』
が、実に腹立たしい口調ではある。
依頼人とは違う声だし――と、思った直後、私達は光に包まれ――視界が白く染まる。
暫し、白く染まった視界が回復した時、
『いやはや……塵芥にしては、やるではないか。称賛に値する。その存在にほんの少しとはいえ驚愕した』
件の声の主が目の前にいた。
厚手だが、襤褸切れにも見えるローブを纏う、中年の美女。
「黙れよ、ババア。口先だけだろ?」
女性に対して、当然の如く噛み付いたのはメドベェーチ8。
怖いもの知らずだよね、彼。……まぁ、メドベェーチ8が噛み付かなければ、私が噛み付いていただろうけど。
『だが、忘れてはならない。どんなに優れた個人であっても、所詮は人間。人間であるが故に、貴様らとて塵芥だという事を。能書きを吐き出すな。波に乗れ。そして流されろ。塵芥に選択は許されない。黙して従え。世界が法だ』
下らない口舌だ、と吐き捨てるのは簡単。
実際、多くの人は虚言だと吐き捨てるだろう。
だが、私は虚言とは思わない。ひとつの心理だ。
私の生い立ちがその証明だったりするから。
「おい、聞いてんのかババア?耳が遠いのか?カスが溜まって中耳炎でも起こしてんじゃねぇか?」
『人間の作りし法は法ではなく、制約だ。銅貨一枚の価値も無い、言葉の塊に過ぎない。そんな物に踊らされる者達に“道化”等という言葉すら勿体無い。塵芥で充分だ。自覚したまえ、愚劣な劣等種達よ』
メドベェーチ8の挑発は一切聞こえていない。……いや、受け流されている。
『さて、無駄話はこれまでだ。貴様ら塵芥への報酬は既に贈られている。元の世界へと帰還した後、探すが良い。……では、今宵の余興に従いし塵芥達よ。退屈かつ愚かな日常に戻るがいい――』
再び、視界が白く染まる。
(ようやく、帰れるかぁ……)
帰還したら、まずは寝よう。
ソファで丸くなって寝る。蹴られた蹴り返す。そして二度寝する。
それでいい。
セルゲイだって蹴ってやる。
不毛な未来を描いていると、視界が回復した。
目の前には、何時もの便利屋。
周囲を見回せば、いつもように、閑散としたストリート。
……元の世界だ。
帰ってきたのだと実感する。
ならば、言う事はただ一つ。
天を仰ぎ、大きな声で。
「ただいま、クソッタレな世界さん♪」
「あぁ、お帰り。クソガキ」
返すように、背後から聴こえる男性の声。
「クソガキは無いよー」
振り返る。おそらく、あの人だ。
「随分と長引いたな、お前ら」
背後にいたのは、予想通りの巨漢。
「……久し振りの大群相手だったから、ね」
返す言葉は辛辣だったが、帰還を歓迎していた事に変わりは無い。
こちらも笑顔で答えるべきだろう。
「おいおい……アレで久し振りかよ」
「末恐ろしいですね」
「普通なのだろう。所属部隊的観点から言えば」
仲間達の声もいつも通り。
いつもの日常。
平穏とは言えずとも、忙殺されようとも。
私達にとっての日常は変わらない。
この日常を“神様”が愚劣な劣等種の創造物としても、これしか選択肢は無い。
だから、精一杯の足掻きを、
人間なりの生命を――いや、化物なりの生命。
「じゃあ、マスター。昼御飯、お願いできる?」
その続きを紡ごう。
神様への退屈な見世物を――
Multiple Collaboration Story:Side『Dirty Works』 Another World War Breaker……End.
――以上、多重コラボ編《Dirty Works》Side、Another World War Breakerでした。
他の作者様より一足先に完結させたわけですが、これが出来たのは一重に、第3独立遊撃隊の面々が、他の作者様のキャラクターと相性が悪かった為、という点が大きいと思われました。
過去が悲惨であればあるほど、性格や価値観は歪むものですが、今作のメドベェーチ3――つまりグラナデちゃんは歪みまくっているのです。……まだ、本編中では語られていませんが。
辛気臭い話はこの辺で。
新たな多重コラボも歓迎中。参加したい方は直接メッセージを。
では、このような企画に参加してくださった作者に最大限の感謝を。
拝読ありがとうございました。