Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
今回は散弾銃についてです。
あ、講師が変わりますよ。
10分後――
「っしゃあ、講義の続きだ!テメェら気合い入ってんだろうなぁ!!」
講堂にスナリャートは戻ってこなかった。
代わりに入って来たのは、スナリャートと同じく銀髪紅眼の勝ち気そうな少女。
ひょっとすれば、彼女の血縁だろうか?
講堂内で唯一、居眠りしていない貴方(貴女)はそんな事を思いながら、講師と思われる少女を眺める。
「……って、
貴方(貴女)は頷く。
「……ならいい。私はクローフィ。自己紹介なんざ、このぐらいで良いだろうしな。……じゃ、さっきスナリャートが述べた通り、散弾銃についての講義を行うぜ」
そして、講義が始まる。
「まず、散弾銃――ShotGun――の起源だが、明確な散弾銃って括りじゃなければ、マッチロックの頃から存在していたんだ。……というにも、散弾銃の元々の区分は猟銃。散弾の誕生経緯からすりゃ当然なんだがな。まずは、その辺から説明してく」
スナリャートとは違い、かなりフランクな口調で説明がなされていく。
「元々、散弾銃は貴族の持ち物で、奴らにとっての暇潰し――狩猟用に使われた。最初のうちは鳥撃ちがメインだったんだが、危機感知能力の高い鳥に、単発の鉛弾が当たるわけが無ぇ。それ故に、小口径の鉛玉を大量に詰め込んで射撃したのが散弾の始まり。銃口から飛び出れば、放射状に拡散して、広範囲にバラける。適当に撃ってもどれかは当たるって寸法だな。こんな風に、鳥撃ち用の散弾の事を《バードショット》と呼ぶんだが……まぁ、そのまんまだ。因みに、バードショット一粒あたりの直径は1.25~5.59㎜ぐらいだ。鼠撃ち用のラットショット(スネークショット)等もあるが、コイツは1.3㎜ぐらいだったかな」
大きくても6㎜以下――鳥相手ならば、そのぐらいでも充分か。
「だが、人間ってのは度し難いからな。そのうち、散弾で鹿やら熊やらを狩ろうとした。当然、バードショットなんかじゃ、余程当たり所が良くなきゃ、殺れるわけが無い。そんなわけで、より大口径の鉛玉であるバックショットが生まれる。……現代では対人用にも使われてるぞ。こっちの口径は6.1㎜~9㎜ぐらいだ」
確かに大きい。口径だけ見れば、ライフル弾クラスだ。
「んでもって、これらの散弾は基本的に鉛製の球形弾だったんだが、現在では弾道や環境汚染的理由から、鋼鉄性になっている。その為、《スチールショット》とも呼ばれる。……が、行動抑制力《ストッピングパワー》は鉛の方が上なんだ。……これについてはスナリャートが解説してくれんだろうから、私からはしないぜ?」
……また、他人任せか。
「今までの話で薄々感づいただろうが、近代まで散弾銃は狩猟用限定と言って良かった。……が、対人用として脚光を浴びたと言えば、第一次世界大戦だな。……知らねぇ奴はいないだろうが、1914~1918年にかけて行われた、世界規模の喧嘩。……この当時の戦争が塹壕戦主体だった事は周知の事実だな。……で、塹壕内での戦闘で役に立ったものの代表格はシャベルと短機関銃だが、散弾銃も重宝されたんだ。……まぁ、それより前にも、旧アメリカ合衆国では、対人用として使われていたけどさ」
「で、現在では主に警察機関で使われてんだ。暴徒鎮圧用には持ってこいなんでな」
クローフィがそう言うと、一部で疑問の声が上がった。
「過剰だって?まぁ、散弾を使うんならな。散弾銃の利点は、広範囲をカバー出来る、じゃないんだ。それは飽くまで“散弾”の利点であって、散弾銃の利点は使用弾薬の豊富さなんだよ。……お前ら、散弾銃の口径を示す“ゲージ”ってのはどういうのか知ってる……わけねぇか。1ポンドの鉛玉を基準にして、何分の何ポンドの鉛玉の口径か、で表される口径の事だが……1ポンドの鉛玉の口径なんざ殆どの奴は知らねぇからな。一般的な弾薬の口径だけ言うと、12ゲージで18.5㎜。10ゲージで25.2㎜って所だ。……普通の銃火器より大口径なのは分かるな?」
「で、大口径にもなりゃあ、弾頭重量、弾頭面積も増すから爆薬を詰めたり、大量の散弾を詰めたりと色々出来るわけだ。……散弾銃の弾薬は豊富だって話に戻るが、数が多いんで一例だけ説明すんぞ?…………まずは、散々説明した《散弾》。次に、一粒のデカイ弾である《スラグ弾》。安定翼を持つ小型グレネードである《フラグ弾》。暴徒鎮圧用の《ゴム散弾》。……この辺りが一般的な弾種だな。一応言っとくが、《フラグ弾》の“フラグ”は
……何処のブラック企業だ。
「さて、話が逸れたな。まぁ、散弾銃は色々撃てる、大口径の銃火器って事だ。最後に、種別についての説明をして、この講義は締めんぞ」
着々と進む講義だが、起きる生徒は現れない。
修了試験が存在するならば、何人が苦労するのやら……。
「まずはポンプアクション。散弾銃の一般的な形状として、一見銃身が二つあるような物があるが、それの片方は弾倉で
信頼性と即応性。どっちを取るかは悩み所だ。
「が、警察等では敢えてポンプアクション式散弾銃を採用している。理由は脅しだ。フォアエンドの操作は言うなれば、安全装置を外すようなものとも取れるだろ?つまり、警察的には『投降しな。じゃねぇと、テメェの
暴発現象ならば、修正されるよね……。
「次に半自動式だが……これは大きく二つに分かれる。一つはガス圧利用式。……メーカーごとに色々と差異はあるが、大体はガスピストン式とポンプアクション式がセットになっている。で、もう一つはイナーシャ・ドリブンと呼ばれる、慣性を利用する機構だ。……ざっくり言うと、『燃焼ガスの圧力を受けたボルトと保持具が慣性の法則によって後退ではなく、前進し、バネを圧縮。ボルトの後退を止め、バネの反発力によって、排莢する』という物だ。……コイツの利点は、機関部が汚れず、構造的が単純である事、保守整備が容易、弾薬の発射薬の量に左右されにくい事等が挙げられるが、実は銃の保持が甘いと作動不良を起こすという致命的な欠陥があり、軍と法執行機関では採用されない。……一方で、民間用としては人気らしいぜ?」
「続けて、全自動式。俗に戦闘用散弾銃――Combat Shotgun――共呼ばれる種類で、速射性が高く、近距離における制圧火力は絶大だ。……が、銃自体は重くなるわ、有効射程は短いわ、指定弾薬以外では作動不良を起こすわで、軍も法執行機関も採用しなかった。特に、重量からくる取り回しの悪さは大きな問題になるからな。……後は……中折式とアドオン式か」
中折?アドオン?
「中折式ってのは……狩猟でよく見かける、水平二連とかに用いられるタイプだな。散弾銃の中では、最も単純で、信頼性が高い。なんせ、撃針を動かすだけだからな。……でも、装排莢時に駆動させるヒンジの摩耗には注意だな。……で、アドオン式…………早い話、突撃銃とかの銃身下部に取り付ける、小型の物だ。軍用でよく見かけるな。ドアブリーチング……閂の破壊に使われたりする。一般にはポンプアクション式だ。……最後に、ソードオフについても軽く説明するが、突撃銃のカービンみたいな違いで、銃身の短縮とストックの削ぎ落としを行って、取り回しを向上させた物の事だ。散弾の拡散率が上がり、スラッグやフラグなら、命中精度が悪化する。……この辺もカービンと同じだな」
言葉を句切る、クローフィ。
「いい加減起きろ、惰眠を貪ってんじゃねぇ!…………起きねぇか。まぁいい。後悔すんのは居眠りした当人だ。……起きてる奴は休憩だ。10分後に、次の講義を始めっからな~」
そして、愚痴と共に講義は終了した。
――疲れてきた。
本ッ当に役立ってるのだろうか、この解説。
一向に杜撰な銃器が減らない気がする。
…………気にするだけ無駄か。
今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました――