Dirty Works~Piece of Story~ 作:空薬莢
どんなに聖人君子の如く振る舞おうが、必ず堕ちる。
それを怨むなど、滑稽だ――
プロローグ
目が覚めると、無機質な照明器具の光が俺を出迎えた。
(手術室か……?)
照明器具に、鼻をつんざくゴムの臭い。間違いない。
ならば、何故?
俺は怪我もしてなければ……いや、していたか。
だが――
『これが今度の献体か』
『見た感じ、悪くは無さそうだ。……データ上は…………おぉ、コイツを見てみろ』
微かに聴こえる会話は、医師の会話ではなく、研究者の会話。……話から察するに、俺は
『…………上物も上物だな。……コイツはやりがいがありそうだ』
『さて、話していてもしょうがない。……始めるぞ』
不審な会話が途切れ、腕に無針高圧注射器が押し付けられる。
(ぐっ………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!)
耐え難い痛みが全身を駆け巡り、内側から肉と骨を破壊される感覚に、絶叫。
視界が赤く染まり、血の塊を吐き出す。
『量が多すぎたか?』
『いや、そう思うのはまだ早いだろう』
研究員の会話が聴こえていたが、内容までは分からずに、意識が途切れ始める。
――俺、死ぬんだな…………。
短い上に……クソッタレな人生だった。
来世では……マトモな生き方…………出来ると……良い……な…………。
そこで、意識は途切れた――
次に目を覚ますと、今度は白い無機質な天井が出迎える。
……病室か。
あまり働かない頭で結論を出し、再び瞼を閉じる。
世界は俺を殺さなかったらしい。
意外なものだ。殺されても文句は言えない筈なのに。
「……目が覚めたか?」
思案に耽る俺に、声が掛けられる。
(……医者か?)
思案を邪魔された事に苛立ちながら、声の主を探す。
天井同様、白で統一されたいかにも病室といった趣の中、部屋の雰囲気に似つかわしくない男。
ODで纏められた厚手の作業着のような服。考えるまでもなく軍用の野戦服。それを纏う男は駄肉無き筋肉質な体躯に、長めの銀髪。顔立ちは整っているものの、何処かやつれていた。
「……アンタは?」
「警戒するな……って、言っても無理はあるか。まぁ……落ち着け」
「……落ち着いているさ」
「結構」
コイツは何を言いたいんだ。軍の奴だとは分かるが――
「なんで軍人がいるのか、と思っているな?ここが軍の病院だ。補足するとお前は軍人だ」
「……冗談だろ?」
「冗談を言うように見えるか?」
「……いや、見えない」
「詳しくはこれを見てくれ」
そう言って、男から茶封筒を渡され、
中身を見る。
「…………冗談だろ」
内容は俺をエリアRos正規軍第17特殊強襲中隊へ一等兵として配属する事について。
冗談だと思いたい。徴兵制という概念が復活してかなりの年月が経っている。とはいえ徴兵は例外を除き、高校卒業後からのはず。
年齢だけで言えば、俺は高校一年生にあたり、徴兵されるのはおかしい。
「何事にも
「……例外、ね」
そこで思い出す。
徴兵される対象の条件で、俺が該当するものはあった。
(……自業自得か)
諦めて受け入れろ、というのが社会の答え。
「……決心が着いたみたいだな。これがお前の制服だ。着替えたら出てこい」
突き出されたのは、野戦服。
「…………了解」
受け取り、ベットから立ち上がり着替え始める。男は既に部屋の外に移動したらしい。
手早く着替え、ショートブーツを履いて、外に出る。
「終わったようだな。……他にも説明する事があるが、それは移動しながら話す。……無論、ここを出てからだが」
男と二人、歩き出す。
廊下、フロントを抜け、建物外で出迎えたのは晴天と雪景色。
だが、見向きもせずに駐車場へ。景色などどうでもいい。
乗用車が散乱する中、無駄に目立つ角張った無骨な車体。
世間一般では装甲車などと言われる物。外見を見るに、高機動装輪輸送車といったところか。
乗れ、と目で訴える男に従い、俺は助手席に乗る。
即座にエンジンがかかり、輸送車は街中を走行。
「名乗るのが遅れたな。……俺はグローム・ジャール。第17特殊強襲中隊、中隊長を押し付けられた奴だ」
つまり、俺の上官というわけか。
「ついでに言うが、お前の情報は軍から勝手に送られてきた。……セルゲイ・モヴィーク。15歳、男性」
……酷い社会だ。個人情報云々を激しく訴えてるくせに。
「だが、個人のコードなんぞゆっくり覚えればいい。重要なのは”
「…………問題無い」
嫌というほど、世話になった物。骨の髄まで技術として染み付いている。
それ故に、言葉尻は自然とぞんざいになった。
「だろうな。……上のクソ共も太鼓判を推していた。……デスクワーク主体の
「そんなに使えない奴らか……」
そう言えば、アイツも上はクソだとか言っていたな……。
「知っているなら復習だ。……上の連中で信用できるのは1割にも満たないと思え。……現実、信頼できるのは精々自分の部隊長位までだとな」
「つまり、俺が信用していいのはアンタ位までか」
「あぁ。基本的に、な。……後は追々、自分で見極めればいい。……目的地まではまだかかる。……暇だろうから、そこの本でも読んでおけ」
運転の邪魔をする気は、俺には無い。
指示された通り、置かれていた本に手を伸ばした――
――以上、Unhuman's Party編プロローグでした。
見て分かる通り、これはセルゲイ・モヴィークの過去編、第17特殊強襲中隊時代のエピソードです。
作中であった、もう一人の例外とは誰か?
……Darty Works本編を読んでいる方は分かりますよね?
では、今回はこの辺りで。
拝読ありがとうございました。