その薬の効力とは――。
――そろそろ来る頃ね。
まだ青臭さの残る畳の上に正座をする藍の姿は、その内面に膨らむ邪(よこしま)な感情とは裏腹に静を体現している。
最後に表情筋の緩みを矯正させると、八雲邸の縁側の木目を慌ただしく踏み鳴らす音が近づいて来る。
――来たわね。
口の端から溢れそうになる高熱の液体を飲み込み、藍は今しばしの辛抱を味わう。この辛抱と言う名の隠し味が後に昇華するのを心得ているからだ。
「ラ、ランしゃま大変なんですっ!」
「そんなに慌ててどうかしたのかしら?」
いつも通りの落ち着き払った自分を演じる藍。それすらも今の彼女にとっては、後に訪れる事となる幸福絶頂の時間を盛大に堪能する為の布石である。
「股から変な物が生えてきたんです」
「変な物?」
――それは男性器だよ。
藍は心の内でほくそ笑むが、決してその表情を表出させないように努めようと舌を押し潰すように歯で挟む。
「恥ずかしいですけど、その、見てください……」
小さな饅頭のような頬を赤く染める橙。
藍は今にも噴き出しそうな欲望を必死に抑える。が、無意識に荒くなる呼吸に抗えない。
「ど、どうしたんですかランしゃま? 息が荒いみたいですけど」
「――な、何でもないのよ? 少しビックリしただけよ。本当に何でもないのよ?」
「そ、そうですか」
――危ない危ない。
藍は額から滴り落ちてくる冷や汗を拭い、金色の眼に全神経を集約して橙の下腹部のみを見定める。
そして橙がゆっくりと赤茶のスカートを捲り上げると、そこには白いパンツの上からでも分かる程にクッキリと浮かび上がる卑猥な輪郭が顔を覗かせる。
しかし顔を紅潮させる橙はスカートを完全にはめくらない。
「――どうしたのかしら、ちゃんとスカートを捲らないと確認出来ないじゃないの」
「やっぱり、恥ずかしいです……」
左手でスカートの裾を捲り上げ、丸めた右手で口を抑える恥じらいのポージングを取る橙。
その愛らしさは、藍の理性を崩壊させるには十分すぎた。
「あ、ああ……ちぇーんっ!」
橙の小さな腰に手を回した藍はそのまま橙の華奢な体をガッチリとホールドする。
尊敬する藍の豹変に、橙は少々怯えたように彼女の名を口にするが、すぐにその声は熱っぽい吐息に変わる。
「あっ……ランしゃま、な、なにを?」
「橙、ごめんね。責任を持って気持ち良くさせてあげるから許してね?」
「ランしゃ――きゃっ!?」
一瞬の隙を突いてスカートの中へ顔を忍ばせた藍は、パンツの上部から頭をはみ出させる男性器に自分の火照った舌先を触れさせる。
最初のうちは一瞬だけ触れてはすぐに離すを繰り返して、その度に橙が上げる甲高く短い喘ぎ声で耳を楽しませる。
「ふふふ……いつもよりも可愛い声だね、橙?」
「か、かりゃだが、じょくじょくします……」
橙が小刻みに腰を震わせるのを感じると、藍はビクビクと暴れようとする男性器の頭を舌先でゆっくりと愛撫し始める。
「ひゃあっ?!」
すると橙は短い悲鳴を上げて、藍の頭を抱き締めるように腕を回して抱える。
それに気を良くした藍は更に愛撫する舌先に力を込める。前頭部から後頭部までを一周する様に舐め回す。
「ら、らめれしゅっれ――ひゃあっ!?」
筋っぽい箇所に舌先が触れると、橙は一層に甘い悲鳴を上げて藍の頭を強く締め付ける。
――ここが良いんだね?
橙が一番に良い反応を示した、筋っぽい箇所を重点的に舌で愛撫する。やがて塩っぽい味が舌に絡むのを藍が感じ取ると、橙の腰が大きく震え出す。
「ほんりょに、らめ、れしゅ……なにか、きちゃい、きちゃいましゅ――っ!?」
橙のその声に呼応するようにして男性器が大きく脈打つ。
「ラ、ランしゃまあぁぁ――っ?!」
次の瞬間、藍の口内に高熱を発するドロドロした液体が飛び込んでくる。
勢い余って喉の奥に絡みつくその液体の熱で喉が溶かされてしまうのではないか、と藍が案じたその時――
「うるさいわよっ! 一体何を――」
襖を開けて怒鳴り込んで来たのはこの八雲邸の主であり、式神である藍と橙の主でもある八雲紫、その人だった。
「藍、これはどう言うことなの?」
口内に残る熱い液体を急いで飲み干した藍は口に残る独特な臭気を堪えながら弁解しようとするが、腰が抜けて立てなくなった橙の姿を見下ろす紫の表情で、弁解の余地が無いことを悟る。
「私の部屋でゆっくりと話を聞こうじゃない。ランしゃま?」
――終わった。
この日を境に、橙は二度と藍に近寄らなくなったのだった。