※この作品はR-18です。

「『麻帆良学園から来ました烏丸イソラです!』『仲良くしてね!』」   作:おーり

14 / 67
インガオホー!


「巡る想いが体中にショッギョムッジョ」

 

 「そういえば、アーシアちゃんはいつからその、烏丸くんと、お付き合いを?」

 「……えっ!?」

 「えっ?」

 「お、お付き合い……してるのでしょうか……?」

 「え」

 「こ、婚約なら既に出来ている筈ですけれど……っ」

 「――えっ!?」

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 「hum……、鼻腔を擽る官能的な匂いが、またなんとも言えない快感を覚えさせるね……。マスター、この豆、高かったんじゃないのかい?」

 「いえいえ、自家製の豆でございますれば、値段など問題無いのですよ」

 「素晴らしい……! これだけの味を手軽に味わえる喫茶店など、他にないだろうねぇ……!」

 「ありがとうございます」

 

 

 ちなみに、その1杯に熾されるコーヒー豆には微量ながらの依存性が備わっており、呑み続けると次第に日に何杯も要求するようになる禁断症状が出てくるらしい。

 おお、怖い怖い。

 

 それ麻薬っつーんだよ、というツッコミはさて置き。

 なんだかグルメ漫画みたいな導入の寸前に、なにやら背筋を擽る微妙な気配を感じた気がする。

 気の所為であって欲しいけど、俺の場合こういう予感は無駄に命中率が良いからなぁ……!

 その分何処かで比率が下がっているのだというシーソーゲームが成立している筈だ、と希望的観測の元に不安は頭の隅へと押し留めて置いた。

 

 

 「からーすまくーん、3番テーブルにおまたせでございますですー」

 「はいりょうかーい――お待たせしました、亀ゼリーでございます」

 

 

 初老で老紳士なマスターとこれから常連カッコ意味深カッコトジになるやも知れぬお客様の談笑を尻目に、バイトリーダーである褐色コーヒー肌に碧い瞳のお嬢さんの指示でウェイターを勤しむ俺。

 労働とは、斯くも尊きモノである。

 

 本日現在は不審者系欠食児童型シスター2人組をホテルで美味しく戴いてから、三日くらい経っての夜半過ぎ。

 こう見えてしっかりと正規雇用に辿り着くことを目安に、とある喫茶店でのバイトに精を出す勤労学生をやっております烏丸です。

 実は色々と己の戸籍とかがなかったりするので、普通のバイトが出来ないという現状。

 そこを深く追求せずに雇ってくれるマスターマジ最高。

 今、いい韻踏んだ。

 序でに支払われるバイト代にも色を付けてくれるから、辞められない、止まらない。

 ――多分、内訳は口封、じゃなくて、口止め料の意味合いも含まれているのかも知れないけど……。

 

 基本倹約精神で日々を送っているけれど、散財するときは本当に素寒貧になる江戸っ子気質も兼ね備えているのは、普通に此処が己の居るべき世界線では無い、という前提が精神的なブレーキを踏ませていないのだろうなと推測中。

 先日も女子に10万弱使ったわけだから、マスターに支払いの良い仕事を斡旋してもらうためにも此処三日ほど顔を出しているのだ。

 ……でもアーシアに使った分と比較すれば安く済んだ方じゃないかな?

 

 

 「烏丸くん、配達を頼まれてくれるかね?」

 「はいはい、了解しましたよー」

 

 

 ほい来た。

 表沙汰に出来ない『お屋敷』なんかへの豆の配達である。

 中身は本当にコーヒー豆なのだけど、マスターが趣味で栽培しているオリジナルブレンドであるから、表通りに面しているこの喫茶店へは表立って入店出来ない方への出張サービスみたいな仕事だ。

 これがまたあぶく銭、おっとこれ以上は禁則事項。

 

 

 「からーすまくんー、今日はもう直帰でございますかー?」

 「あー、そうかも知れんすねぇ。お嬢はもう少しお仕事?」

 

 

 褐色コーヒー娘に問われて、行って帰った場合の時間を検算すると閉店過ぎとなることを把握する。

 こちらも問うてみれば、お嬢はマスターへと視線を移していた。

 

 

 「――ふむ、ライラくん、もう上がってもかまわないよ?」

 「おー、ではからーすまくんー、おくりおおかーみをおねがいございますですよー」

 「人聞き悪ぃ!? 送るだけですよー!?」

 

 

 マスターが気の利かせたことを口にすれば、時間も時間なので女子を1人歩かせることも配慮に要れる俺の意図も当然お嬢は含めておられる。

 が、イントネーションのアレさ加減からやはり外様のお嬢であった彼女の言葉は色々と店内へと残るお客様へぎょっとした反応を見せてしまうわけであり、慌てた俺が聴こえるように声を張れば、彼女の見た目からファンになっているのであろうロリコン紳士らからの殺気の籠った視線が若干ながらに緩和された。

 

 さて。

 同年代と聴いていたが150程度かつツルペッタンの彼女へ情欲を沸かすほど憂いているわけもなく、なにより同じ褐色肌を僅か以上でも危機に晒す趣味も無い。

 実は少し遠回りとなるのだが、豆を送り届けた後に彼女もしっかりと送り届けることを予定に要れて、俺は喫茶店『KOYAMA』を後とした。

 

 ――その数十分後、因果に報いられる羽目になるとは思いもしなかった。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 聖剣を持ち逃げしたとされる狂科学者、ともっぱらの噂な『バルパー・ガリレイ』とやらを捜索してはや三日。

 当初合流する予定で、且つ味方であると認めさせる予定であった2人の聖剣使いイリナ&ゼノヴィアとは既に話は済んでおり、碌な進展も無いままに日数は過ぎて行った。

 合流当初は、またひと悶着あるのだろうなぁ、と警戒していた俺たちであったが、件の2人はどうにもその辺対立することに関してはやる気は無く、戦力を確保できるというならば、と易々と味方へ引き入れて貰うことに成功してしまったのである。

 ……クソッ! 脱がし損ねたッ!

 

 ま、まあ其処は冗談として置いて(メソラシ)。

 どういう心境の変化があったのかは詳しく聞いていないが、どうにも命を懸けてまで2人だけで事態を解決へと導けることは不可能だと想定したらしい。

 というのも、ゼノヴィアの持っていた破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)が真っ二つに折れていたのを、荷物になるからと佑斗に預けてしまったのである。

 ……え? 今探索中のお相手って、エクスカリバーをぽっきり圧し折れる人なの……?

 

 俺のうちにこの危険物の熟れの果てを置いておくわけにもいかないから独り暮らし中の佑斗に預けるのは良い判断だと言わざるを得ないが、それにつけても戦力は俺たちだけでは不足している予感がぷんぷん漂う。

 やっぱり部長とか朱乃さんにも話を通しておくべきかなぁ……(葛藤)。

 

 

 「ま、今更遅いみたいだけどな……っ!」

 

 

 現実逃避にも似た回想を切り捨てて、対峙したその男と向き合い拳を構える。

 ブーステッドギアを発動させて、倍化の準備を始めれば、それを見越している様にそいつは陽気に片手を上げた。

 

 

 「ちょりーっす! 悪魔くんおっ元気ぃ? フリードさまが遊びに来てやったぜぇいっ♪」

 

 

 そいつの上げていないもう片方の手には、既に抜身の剣が握られている。

 この距離ならば遠くても判る。

 エクスカリバーと似た気配をなんとか察知することが出来た俺にも理解できる、碌でもない図式に思わず歯を食いしばってしまった。

 

 

 「聖剣……! エクスカリバーをお前が持っているってことは……!」

 「お察しの通りっ、バルパーの爺さんとは仲良しちゃんな俺様がー、新しい力を手に入れて駒王町へー、キター!ってなわけですよんっ」

 

 

 俺が悪魔になった経緯に出会った堕天使の一団に所属しており、アーシアを生贄にすることに何の躊躇いも見せなかった糞神父、フリード・セルゼンと名乗る少年がニヤニヤと淀んだ笑顔で宣言した。

 性根こそアレな狂人だけど、その実力は目を見張るものがある。

 そんな奴が再びこの町へ来た事に、最悪の予想が当たっていたことに俺は身震いする。

 

 

 「フリード・セルゼン……! 教会のブラックリストにも載っている殺人鬼だと!? 貴様、残りの聖剣は何処だ!」

 

 

 ゼノヴィアが声を張る。

 って、そういえばお前武器は!?

 手ぶらで戦える相手じゃねぇことくらい判っているよね!?

 

 

 「はぁ? 此処にしっかり4本ともあるし。つーかぁ、おたくらも聖剣使いっしょ? なんなら俺様が残りの2本を貰っちゃおうかぁ? ついでに最後の一本も見つけて俺が唯一最強の聖剣使いになればぁ、教会もおいそれと俺様の『救済活動』に口出しできねぇっしょー」

 

 

 そう云うフリードだが、どう見ても手に携えている一本しか見当たらない……?

 そこで先に理解が及んだのは、小猫ちゃんだった。

 

 

 「っ、まさか呼べば来るとか、そういう類の代物ですか……!?」

 「ぉ、ぉう、ナニソレかっけぇ仕組みだな。違うって、此処にあるって言ってんだろ?」

 

 

 違うらしい。

 え、ひょっとして小猫ちゃんの黄金鎧って呼べば来るの? マジで?

 

 予想が外れたことに「くっ」と悔しがる小猫ちゃんを尻目に、フリードは携えている剣をゆらりと翳す。

 刀身がブレて、穂先が陽炎みたいに波打ち曲がり、中ほどが透明になり、付け根には変化が無い。

 なんだ、あの奇妙な剣は……!?

 

 

 「統合、したってこと……!?」

 

 

 イリナが驚愕の表情でそれを口にしたとき、――フリードの姿が掻き消えた!?

 

 

 「――ざっつらぁぁいと♪」

 

 

 ガギィン!! と金属同士がぶつかる激しい音が背後から響く!

 慌てて振り返れば、いつの間にか背後へと回っていたフリードと佑斗が、剣を打ち合って鍔迫り合っていた!

 

 

 「おっほ、天閃(ラピッドリィ)のスピードに追い付くとか、やるにゃーイケメンくん♪」

 「キミが最初に答えを言っていたんだろ、なら、予め何処に斬りつけるかを予想していれば抑えるのも容易いよ」

 

 

 そ、そういえばフリードは最初から手元に全部のエクスカリバーがあるって口にしていたっけ。

 ということは、予め盗まれた剣のそれぞれの特性を予測しておけば対応も可能ってことか!

 イリナの持ってるのは鞭みたいに自由自在にもなれる剣だし、ゼノヴィアのは破壊特化だ(もう壊れてるけど)。

 エクスカリバーそれぞれが別個の能力を示していても、可笑しくないって証明でもあるしな!

 

 

 「そう、予測していれば簡単なんです」

 「ぃ、ぐふぅっ!?」

 

 

 鍔迫り合いの最中へと、潜り込んだ小猫ちゃんが拳を振りかぶって殴り抜いたぁ!?

 腹パンされたフリードが対応できずにバウンドして吹っ飛ばされるのが、残像のように目に焼き付いたぜ……!

 つーかそれ、小猫ちゃんも予測していたってこと!?

 さっきの察して悔しがったのはなんだったの!? フェイクだったのか畜生!

 

 

 「――ちなみに、逃がすつもりはねぇ」

 

 

 そして匙がいつの間にか神器を出現させて、フリードを捕縛していた!

 役立たず、俺だけ!!!

 

 

 「黒い龍脈(アブソープション・ライン)、捕えた相手から力を吸い取るコイツから逃れる術は、そうそうねぇ。やっちまえ、木場ぁ!」

 「はぁあああああああああっ! 魔剣創造(ソード・バース)ッ!」

 

 

 トカゲみたいな黒い手甲から舌みたいに伸びた其れがフリードへと絡まり、身動きを空中で取れなくして置いて繰り出されるのは佑斗の魔剣による連続した剣戟!

 何十本かの剣を同時に創り出し、その総てをフリードへと突き刺した!

 よ、容赦ねぇ……!

 悲鳴を上げさせることもなく、フリードを撃破しちまった……!

 

 だが、これで……。

 

 

 「とりあえず、これで聖剣を奪い返せた、よな?」

 「うん。あとはバルパーの居場所を聞き出すだけだね」

 「……え、これ死んでねぇの?」

 「かろうじて生きているんじゃないかな」

 

 

 …………………………ぉ、おぅ。

 ハイライトさん帰って来てぇ!

 佑斗くんの『優しさ』と一緒に、速く帰って来てぇ!

 間に合わなくなっても知らんぞぉーーーっ!?

 

 

 

 

 

 「――き、貴様らは先ほどから、なにをやっているんだ……?」

 

 

 

 

 

 「「「「「――え?」」」」」

 

 

 困惑する俺たちに、何故かゼノヴィアは震えた声で言葉を紡いでいた。

 何をって、コイツこそ何を言って――、

 

 

 「――くきっ、いつから此れが俺様だと錯覚していた……?」

 

 

 ――その言葉と共に、『串刺し』になっていた筈のフリードが掻き消える。

 また超スピードによる移動か!? と目を見開いたが、次の瞬間には、

 

 

 「――カフッ」

 

 

 ――匙の腹に、刃が一本突き刺さっていた。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 にゃー、夢幻(ナイトメア)で残像剣ブッパしといてよかったっちょー。

 ふむふむにゃーるほど、俺様がそうやって踏み込んだら、そうやって切り返すつもりで居たってわけねん。

 青髪の娘には何故か効かなかったっぽいけど、やっぱ予習復習は大事って話でござんすね?

 

 俺様がやったことは今言った通り、夢幻のエクスカリバーで限定的だけど夢を見せて、相手の罠を見破るという転ばぬ先のなんとやら。

 多勢に無勢なんだから大目に見てちょーよ?

 そんでもってぇ、一番厄介そうな以前には見慣れぬ少年くんをログアウトのお時間でっす!

 で、も、ざーんねん。

 ハラキリふじやまーはまた今度だにゃーん。

 青髪の娘動き素早いよー、防がれちった。浅い浅い(テヘペロ。

 会心の一撃が出なかったから、しばらく痛くて苦しいけど、頑張って死んでね名も知らぬ少年!

 

 

 「ぁっ、ぐぁぁああああああっ!?」

 「匙ぃッ!?」

 

 

 おひょぅっ!?

 イッセーくぅん、前よりは強くなってる?

 そのまま腹剣ぐりぐりしようとしたら殴り掛かって来たから思わず避けちった。

 ま、刺したのは魔剣少年の出したやつのうちの一本だし、逃げてせーいかーい。

 でもにゃー、確かアレって色んな性能があるって前言ってなかったっけ?

 

 

 「あっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!???」

 「匙くんっ、魔力で抑えてっ! それは焔魔剣だからっ、悪魔なら防御も出来るっ!」

 「フリードぉ! てめぇぇぇ!!!」

 「っ兵藤先輩! 今は匙先輩を抑えるのを手伝ってください!」

 

 

 にははっ。

 わーお阿鼻叫喚☆

 ま、この隙に逃走してー、追っかけてくるであろう聖剣持ち美少女らを返り討ちでー、とりあえず5本目と6本目を戴く算段っ!

 

 

 「そーれじゃあ、俺様はこの辺でバイナラ――、」

 

 

 

 「――随分と近所迷惑だな」

 

 

 

 ――ッッッッッッッッ!!!!!!???

 

 

 「夜中に高校生が出歩くのはまあテンション上がるんだろうけど、とりあえず騒ぐな。珍走族じゃあるまいに、ごしゃごしゃと煩わしい」

 

 

 な………………んだ、コイツ……ッ!?

 

 距離はやや遠め、俺様の後方、逃げようとした方向の開いた一角から、馬鹿みたいな魔力の塊が、染み出すようにぬるりと顔を出した。

 問題は何より、其れだけの存在がその場に現れるまで、俺様ですら何一つ感知できなかった(・・・・・・・・・・・)という事実。

 浅黒い肌の、白い髪をした男が、不機嫌な顔で闇夜から顔を覗かせている。

 ただそれだけなのに、俺様が思わず一歩後ずさった……!?

 

 

 「……? 塔城に、兵藤先輩……、と木場先ぱ、」

 

 

 息を呑む様子が覗える。

 俺様の背後の現状を認識して、思考の隙間が出来ている。

 逃げるなら今のうちの筈なのに、俺様の本能は未だに俺様を動かそうとしない……っ!

 

 

 「――おい。アレを遣ったのは、お前か」

 

 

 状況を見て、一番怪しいと見たのか、俺様へと完全に意識が向いた。

 今からあっちへ向かって蹴散らしてゆくことも可能かもしれないが、聖剣使い2人に被害を考えなければ戦力になり得る悪魔3人、分が悪いったらありゃしねぇ。

 ってことは、多少無理でもたった一人で目の前を塞ぐ、コイツを何とかするのが最善手ってことでやんすね?

 んじゃーぁ、いっちょ頑張ってみますかぁ……!

 

 

 「――は、誰だか知らねぇけど、悪魔くんのお仲間ならば容赦はしにゃ、「動いてはいけない」」

 

 

 ――ッ!?

 

 ……あ? いや、待て、今の声、誰だ(・・)……?

 目の前の男はまだ口を開いていない、そもそも、ただ近づいてきている最中で、妙に世界がゆっくりと動く。

 というか、俺の次の動きを完全に把握した上での、今の声音の様子から察するに……『忠告』に、聴こえた……?

 ただ、剣を振り上げて夢幻でもってまた幻影を見せようとした。

 俺様には相性の良くない夢幻(ナイトメア)祝福(ブレッシング)はモーションを一々振らないと出来ないから、それを遣るための第一段階を振る寸前の一声。

 ……振り上げたら終わり、っていう、そういうこと?

 そんなら、透明(トランスペアレンシー)で――「姿を消してはいけない」

 

 ッ、またかよッ!?

 

 あーあー、今度は分かったよ!

 消えるのに若干のタイムラグがあることを言ってんだろ!?

 其処の隙を突かれて、何をされるかわかったモノじゃねぇ、ってことだよな!?

 だったら超スピードの天閃(ラピッドリィ)で「素早くも動けない」

 

 な ん で だ よ !!?

 

 ~~~~っ、アレか……、こっちの一投足も見逃すはずがねぇ、っていう相手と対峙しているから、そういう『忠告』か……。

 此処まで来たら俺様でも理解できるよ……。

 さっきからの声は、俺様自身の『本能』の声だ。

 知覚領域が全力で生き残る道を模索して、走馬灯に似た体験を負わせているっていうことだ。

 聖剣とは言っても、所詮は付け焼刃。

 この『程度』じゃ、生き残り得ないって俺様の本能が、一番理解しているから押し留めていやがるんだな……。

 

 ……っくそ、なんでこんな極東でこんな規格外が平然と出歩いてるんだよ!?

 コカビエルの旦那の方がまだ可愛げがある……!

 推定魔力だけなら下手な魔王も凌駕してんぞ!?

 

 ふぅ……。

 おーけーおーけー、そんなら別の道だ。

 こう見えて聖剣が無い時からも生きてきた人喰い神父様だ、技術だけで生き残る道を探してやらぁ!

 

 いったん距離を取「引いてはいけない」

 銃「打てない」

 ~~っ、足腰のばねで跳「跳べば狙撃される」

 ……カウンター「待ち構えては対応が遅れる」

 …………足払「しゃがめば相手の膝が出る」

 どれもこれも無理ってどんだけだ!? どうすればいい!? 「どうすればいい」

 

 動くことも出来ないし、下手にモーション取ればその瞬間に攻撃が飛んでも可笑しくない……!

 かといって動かなければ死……。……?

 警告が無い……?

 

 あ。

 

 

 「――おーけい、りょうかい、わかったよわかった。俺様の取れる手段は此れだけってことだよな」

 

 

 それに気づいた時、ようやく世界は普通のスピードに追い付いて来ていた。

 漢フリード一世一代の大勝負! 解くと見ろやそこな悪魔どもッ!!

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 「――……な、マジか……!?」

 

 

 フリードの取ったその行動に、誰もが目を見開いた。

 烏丸がひょっこりと顔を出したのにも驚いたが、それと対峙したフリードの取った選択が、誰にも予測のつかない行動だったからだ。

 それは、

 

 

 「降参。もう悪いこともしないし逃げないから、命だけは許してくだしあ」

 

 

 聖剣を捨てるように放り投げ、土下座になって頭を差し出した。

 烏丸へ向けて。

 ………………え、あの外道神父が、この選択肢って……!?

 マジか、何者だよ烏丸。

 

 そうして土下座られたご本人はというと、俺たちの様子からフリードが危険人物だと最初に目にした時に理解はしていたらしく、珍しく怒っているような真面目な表情で近づいて来ていただけだったのに。

 そんなそいつは、今は困惑している様に頬をポリポリと指で掻いている。

 まあ、話は通してないから、理解が及ばないのも当然だろうけどな。

 

 

 「……あー、とりあえず先輩方、そこのお方はご無事っすか?」

 「お、おう、なんとか」

 

 

 匙を指して問う烏丸は、ひとまず、と土下座神父の方は意識的に除けて置く腹積もりらしい。

 応急処置がなんとか済んだ匙はというと、うーんもうたべられないよう等との妄言を呟きつつ意識不明の重体であるのだが此れ意外と余裕あるんじゃねーの?

 いつでも斬首体勢のフリードを横に置いたまま、どう移動したモノか等と困惑していそうな烏丸へと、小猫ちゃんがとてとてと近づいてゆく。

 いつでも彼女は平常運転だなぁ(白目)。

 

 

 「なんでまた此処にいたんですか?」

 「バイト帰り。物騒な騒ぎの声が聴こえたから、ちょっと見学に来たんだけど……」

 

 

 随分と呑気な思惑で動かれて居られる御様子です事……ッ!

 ま、まあでも、そのお蔭で助かったのも事実だし、深くは追及しないでおこうかな(メソラシ)。

 え? 他人の事言える立場じゃねぇだろって?

 はいはい、その話はヤメヤメ。

 ……ところで、そのバイトってどんなダークなサイドのお話ですか……?

 

 

 「ひとまず助かったのでお礼は云わせてもらいますけど、好奇心は猫を殺すとも言いますよ。興味本位で動くのは感心しませんね」

 「……つまり、塔城が死ぬ?」

 「なんですかその理不尽。あとバイトって、人に言えないような闇の住人相手のハンター系とかですか?」

 「それこそなんでそういう発想になるんだよ。オリ主じゃあるまいし」

 

 

 オリシュってなんぞや。

 そして小猫ちゃんも俺と似たような感想を持っていたらしい。

 現在時刻は午前2時、普通のバイトならば帰宅には遅いし、深夜枠なら帰宅には早い、そういう中途半端な時間帯なのである。

 

 それにしてもこの現状、一体どこからどう手を付ければ良いモノやら……。

 と、そこで唸りそうになっていた俺へと、横からちょいちょいと指先で突っつく感触が。

 

 

 「ね、ねえイッセー君、あの彼って、キミたちの仲間なの?」

 

 

 と、イリナが気になる様子で問いかけて来ていた。

 見れば、ゼノヴィアの方も烏丸に声を掛けようかどうか、悩んでいるようにも見える。

 ……それは何処か、恋慕を抱いているのにも似たような風体が覗えるので、根本的な『気になり方』とはまた違った意味合いが内情を揺るがす事態になって居そうな気配が覗かせられる。

 糞ッ! 烏丸ばかりが何故モテるッ!?

 ギリィ、と食い縛る俺を脇目に、乾いたように微笑う佑斗が応えてくれた。

 

 

 「仲間、とまではいかないけど、顔見知りだよ。彼に頼めば、フリードと聖剣を引き渡してくれるんじゃないかな」

 「へ、へー、そうなんだー」

 

 

 何処か上擦った様子で、イリナはそう応えを受け止めて、そわそわちらちらと烏丸を気にかけている。

 ……あーあ! 世界なんて滅びればいいのになー!

 

 

 「イッセーくん、とりあえず、彼に近づこう。話はそれからでも遅くないよ」

 「……だな。じゃあ、ちょっと匙を見ててくれるか。フリードをどうにかできないか、詳細を詰めちまおうぜ」

 

 「その話、私たちも混ぜてくれるかしら?」

 

 

 と、聴こえちゃいけない声が響いたことに、俺も佑斗も身体が思わず強張った。

 ゾ、と背筋に氷を差し込まれたかのような、そんな錯覚を感じたのである。

 その声の主は背後に居り、俺たちは其処へと、ゆっっっっくりと振り返った……。

 

 

 「「ゲェッ!? 部長ッ!」」

 「こんばんは、イッセー、佑斗。こんな時間に何をしていたのか、きっちり話してもらうわよ……?」

 

 

 ジャーンジャーンジャーン、と銅鑼の音が響く幻聴もどうでもいいくらいに良い笑顔の我らがオカルト研究部のリアス・グレモリー部長が、すぐ傍に陣取っていた。

 ――まさにホラーの如く!

 あ、あと序でに支取会長も傍にいた。

 此れ距離的にも逃げらんねぇわ(吐血)。

 

 

 「い、いやいや、先ずは話を決めちゃうのが先なので烏丸に話を聞くのが一番優先ッ」

 

 

 具体的に言うと烏丸くん助けてッ!?

 しかし、部長氏はそれをも見込んでいたらしく、静かに指を指す。

 そこへ振り返ると、烏丸の前には小猫ちゃんの他に、既に朱乃さんとアーシアの姿があった……。

 

 

 「ごめんなさいねイッセーくん、今日は烏丸くんにどうしても聞いておかなくちゃならないことが出来たから、リアスとのOHANASHIはそちらで済ませてくれるかしら?」

 「えっ?」

 「そらくん、ちょっとだけですから、時間をもらえますよね?」

 「え」

 「……なんだかよく分かりませんが、本能が付いて往けと咆哮までしているので私もいっしょに話を聞かせて貰っても良いですか?」

 「「どうぞどうぞ」」

 「俺の意見は!?」

 

 

 何故だかお2人から恐るべきオーラがじんわり澱む。

 お、俺はこういう感知能力は才能無い筈なのに、それでも感じるオーラだと……!?

 とりあえず、烏丸もなんだか逃げられない様相であることは覗えてしまい、引き摺られてゆく彼を見送ることしか出来なかったよ……。

 何の話だったのだろう……、小猫ちゃんまで付いて行っちゃったし……。

 あと朱乃さんの『お話』のイントネーション、すげぇ怖気が走ったのですがそれは。

 

 

 「……なあイリナ、アレは私たちも付いて往くべきだったのではないか?」

 「う、うーん……、確かにそういう空気にも見えたけど……」

 

 

 と、何故か聖剣使い2人組まで行こうとする始末。

 おいおい待て待てちょっと落ち着け! お前らは先に任務だろ!?

 土下座姿勢のまま置いてかれたフリードくんをどうにかするのが先決だよッ!

 っと、そうだそいつが居た!

 

 

 「ぶ、部長っ、とりあえずフリードをどうにかしましょう! それが今は一番大事!」

 

 

 頼む! 此れでなんとか命だけは……!

 どうして其処までして回避に徹してるのかというと教会の動向に悪魔が絡んではいけないって前にも云われていたにも拘らず、俺や佑斗が独断で聖剣組に協力を申し出たからっていう理由があるからなので、詳しくはググってね!

 咄嗟の危機回避選択肢に妙な電波まで混じるぜ! なんでもいいから助けて!

 

 

 「……そうね、それじゃあとりあえず、殴ってから考えましょうか」

 

 

 引き摺られてゆく烏丸を見てやや呆然としていたが、俺たちとフリードとを見比べて、そんな妙に脳筋なセリフを口にする我らが部長。

 か、勝った!? 第三部、完ッ!?

 

 ――あ、あれ? なんでこっちに近づいてくるんですか? 先に何とかするべきはフリードですよね? ははは、やだなぁ、そんな、手首のスナップを生かした素振りをする必要なんてないじゃないですかっ!? 魔力を手の平に集中するとか、全然必要ないことですよね!? 待って、止めて、お、お尻だけはッ!

 …………………………アッーーーーーーーーーー!?

 

 

 




~アーシアちゃんマジカトリック
 経験する男性は唯一夫のみ、且つ、付き合おうという話を貰わなかったので現状が不明
 しかしやはり『お相手』をしているのが烏丸なのでこれはもう婚約と同義じゃないかな(白目。と=で判断
 …ほんと、アーシアは一途で可愛いナァ!


~別の意味でブラックなバイト
 目指せ、グルメ漫画(こやま感
 コーヒー肌のお嬢は元ネタとは別枠からの友情出演。だからそうさらっと出すのは辞めようぜ、といい加減色々言われるにも拘らず出すこの作者の性根を本当に問い質したいところ
 アイドルでも無ければヒロインでもないのだから問題ないじゃないか(白目
 アレだよ、ネギ恥で言う処の典如ちゃんみたいなキャラなんだよきっと(メソラシ
 しかしprprと書いても出演は増えませんので悪しからず


~シリアスかと思ったらそんなことなかった
 うちの作品群はいつでも平常運転です(真顔


~錯綜するオリ主の夜間バイト
 ひっそり隠れてHERO業に勤しむのがテンプレらしい



どいつもこいつも因果が報いた14話
烏丸くんもそろそろ色々覚悟するべき(憤慨
次回の為に、ちょっちアンケ取ります
詳しくは活動報告にて
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。