「『麻帆良学園から来ました烏丸イソラです!』『仲良くしてね!』」 作:おーり
「……ふむ。なんだろうな、こいつら」
ルーマニアの某所にある隠避国家とも称せる秘匿都市、その一角に認識阻害を伴ってふらりと紛れ込み、丁度いい隠れ家を得てはや3日。
何故ばれたのか、俺は襲撃に遭っていた。
「しかし、コレ吸血鬼か? なーんか別物って言うか、別種というか。むしろ吸血生物?」
襲撃と云うが、むしろ暗殺に近いくらい。
『吸血鬼は家の中へ家人の了承を得ずに侵入できない』という弱点というか逸話があり、ぶっちゃけるとこの世界の吸血鬼は能力的にも多様だが同時に数ある逸話からのそういう弱点も同時に引き継いでしまっているらしいのだ。
流れる水を渡れない、にんにくを嫌う、山査子の杭で心臓を衝かれればそもそも誰でも死にそうなものだが、やはりこの世界の吸血鬼は『そう』されなければ復活とかも可能なのだろうか。
あれ? でもヴラディは悪魔に転生したんだよな?
そこで死んだらそれまでっぽいのだし、むしろ弱くなってるんじゃないのかそれって?
「っと、そっちは今はどうでもいいか。さぁて、ナニガデルカナ?」
話を戻すが、そういう『弱点』があるにも拘らず、こうして室内へと侵入を果たして撃退されている以上、街中を闊歩する見た目は完全に人にしか見えないデイウォーカー共とは明らかな別種。
子供程度の体格で、実際子供なのかもしれない。皮膚は全体的に鱗に覆われて、頭髪こそあるものの貌付きは犬と人を組み合わせたような鼻と口先が突き出された異形。手は鉤爪のように伸びて捻れて指先が鋭く尖り、後ろは中途半端に毛むくじゃらな猫みたいに歩くときは踵が地に付かない造型の脚が、破れた衣服より覗けていた。
未知の土地で見たことない吸血生物の秘密に迫る。か、――オラワクワクして来たぞっ!
逸る心を落ち着かせ、
術式展開、検索開始。
彼か彼女か知らないが、少なくとも表を出歩く吸血種らと比べても人の形を保っていない『此れら』より詳細を知るべく、記憶の閲覧を勝手にさせてもらうこととした。
だってどう考えても敵対して来たし、生物的に見ても改造したような形跡が残ってるし、こう、某【テイメイの錬金術師】が人を原料にして造った
……勘の良いガキは嫌いだよ。ってことなのかね?
そして記憶を閲覧すること、数分ほど。
チュパカブラモドキの脳裡より引き出した記憶は、少々俺の食指を動かせるモノでもあった。
「……【
▽ ▽ ▽
自称【聖杯研究】の第一人者、マリウス=ツェペシュは困惑していた。
数日前より街中に突如現れた謎の魔力の持ち主、それを探るために送り出した強化した元ハーフヴァンパイアの実験体らが一向に帰還しなかった為だ。
元のヴァンパイアとしての性能を衰えさせることも無く、『他人の家に入り込めない』という隠密行動には何気に向かない自分たちの弱点を克服させた実験体だ。
見て呉れこそ変異したが、そもそもが【実験体】。
貴族らが持て余していた【家畜】との相の子であり、【聖杯】の持ち主であるヴァレリー=ツェペシュの話し相手に、という名目で彼女に触れさせた程度の存在価値も無い子供たちだ。
失っても痛手こそないが、情報が出ない事実は如何ともし難かった。
元より【神器】についての研究を預けられた身として、腹違いの妹に特殊な『其れ』が宿ったことは実に喜ばしかった。
マリウス自身も『ツェペシュ』という名を冠することから判る通り、吸血鬼の種の中では特殊な立場、明確には王族に連なる者である。だが、それよりも彼自身が気に懸けているのは、【
ヴァレリーを誘導することによって、種族的に決して認められない同じ境遇の子供たちが強くなることを望んでいることを教え込み、彼女が気付かぬうちに強化・改造するように仕向ける。
それを繰り返すことで、ようやく最近になって生物としての成功例が生まれ始めたのだ。
隠密として繰り出した実験体たちはその先駆けだが、今後の実験ではより上位に、出来れば姿も美しいヴァンパイアの容姿を損なうことなく強化する方向へ傾ける。
そのためにも、こんなところで【失敗】を弾くわけにもいかない。
特に、【聖杯】の研究には既に助言まで貰っているのだ。
そこで『私事に実験体を使い潰してしまった』などと口にすれば、自分の立場に取って代わられる恐れも覗えた。
そもそも、件の謎の魔力の持ち主こそがイレギュラーでもある。
場所こそわかっているのに、詳細を知ろうとすると何故か場所が不鮮明になってしまうという、どうにもこちらの認識を阻害しているような妙な術が仕込まれているのだ。
魔法使いらの術式の疑いがあるのだが、そもそも吸血鬼の領地へああして乗り込んで、特に何もせずに居座っている時点でこちらと交渉をしようというわけでは無いことは明確。魔法使いは基本的に研究者である以前に商売人であり、自ら身動きの取れない場所へと乗り込むような短慮もそうそう起こすはずはない人種の筈だ。
しかし、現在王城へ預かりの身となっている【神器】についての助言もしている【客】の話では、『在野の魔法使いの術式にしては隠避性に特化しすぎており、それこそ別の【神器遣い】の可能性も高い』とのこと。
で、あれば、慎重になっても警戒しすぎということにはならない。
貴族の周辺を固められる正規兵に任せることも考慮したが、そもそも正常な認識で捉えられる相手では無い。
結果として、実験の結果で種としての弱点を克服し、尚且つ異形としての知覚領域まで兼ね備えることに成功した【使い捨ての駒】を送り出す羽目に陥ったのである。
……その報告は未だ、だが。
「……いや、焦ったところで取れる策も無い、此処は一先ず、ヴァレリーに新たな実験体を造らせて……?」
気づけば、部屋の外が妙に騒がしい。
騒然とまではいかないが、小走りに駆けるような煩わしさを感じる。
気に掛かっていたところに、「失礼します」とノックの音が響いた。
「……こちらにも、いらっしゃいませんか?」
「なんですか、騒々しい」
「いえ、その……」
マリウスの了承を得て入室して来たのは、王城仕えのメイドである。
入室し第一の声が歯切れも悪く、眉根を寄せたまま先を促せば、マリウスにとって予想もしてない言葉が飛び出してきたのであった。
「……その、ヴァレリーさまの姿が、衛兵の知らぬうちにお部屋に見られなく。王城内のどこにも、気づけば姿が……」
▽ ▽ ▽
【
手元に在るこの
ざっくり説明すれば、遺伝子工学の超過発展形を伴った特殊アイテム、とその使い手であろう。
現代人の概念上、本来ならば別種に扱われて然るべき【魂】と【命】が同列になっている部分を見過ごしてはアカンと異論有るかもしれないが、そもそも俺たちの生きるこの位階が物質に依り構成されている以上、【命】と同等に【魂】もまた物質として扱われて然るべきであり、俺の知る限りではそれらを同等に扱うことに異論は無い。
というか、元より仏教伝来の考え方では魂もまた流転するマテリアルな現象の一端として扱われていた筈なのだが、どうにも復活の日とやらを信奉する宗教観が交じったお蔭か所為か、魂が個別に存在する人の芯であるとかいう信条が主流になっている気がする。
物質由来の考え方の方が、時折世間で見られる輪廻転生の観測面からも、理屈として説明できるので説得力もまたあるのだが。
話が逸れたが、生物の遺伝子を弄れる、という俺がネギま世界で齧った技術の発展型らしい。
それを、その使い手を、ちょっと城まで行って捕まえて来た。
――おう、なんだか画面の向こうから白い目で見られてるような気がする。ちゃうねん。
なんか軟禁状態だったしさー、チュパカブラモドキの記憶から見た感じでは本人は善意だったしさー、あんな異形にされて善意とかマジかと思ったけどその後ろに
あと、使い方が色々と拙いから、正確に明確に十全に万全に、俺がもっと便利に扱うべきかな、と思って。
別に、使い手がちょっと儚い系の深窓の令嬢だったから、とかそんなところに理由は無いよ?
摘まみ食いとか、そういう意図はさらさら無いよ?
ホントダヨ、そらくんウソツカナイ。
「……まぁ。此処が貴方のおうちですのね」
初めて城の外へ連れ出して貰えたらしく、年上なはずなのに妙に幼げなお嬢様ヴァレリー=ツェペシュさんは、目をきらっきらと輝かせながら庶民の一軒家を物珍しそうに見まわしていた。
いや、本当に理由は別にあるんだ。
実は初めは使い手がどんな奴かな、と城へと忍び込んだ際、こちらも見つからないように認識阻害をかけていたのだけど。
『……あの、貴方はどちらさまなのでしょう……?』
――と、俺のかけた認識阻害を意図も容易く見破って小首を傾げて見せたわけである。このブロンドヘアのお嬢様は。
俺のアレはネギま世界でもちうたんくらいのレベル相手でも結構過剰に通用するように、某青狸の『
当然、悪用されないように術式の公開なんてしてないし、そもそも術式の大元が俺独自の技術由来だから模倣も難しい。
それを『見通す』……只者じゃない、とそう思うよな?
だが俺の予測では、実態はもっと違うものなんじゃないか?と思うわけだ。
「さて、ヴァレリーさん。ちょっといいか?」
「? はい、なんでしょう、ソラさん?」
改めて、認識阻害の大元になる【スタンド】を自身の横へと出現させる。
「俺の横に、何が見える?」
気分は某ハンター世界の念使いだよ。
概念に干渉できるスタンド、【インストール・ドット】。
此れの進化型で
それというのも、此処に連れてくる間、ヴァレリーさんは俺に見えない何かと会話をしていた。
この世界が神秘受肉型の異世界であるから可能性から破棄していたのだが、其れが幽霊とかの類であった場合、この人――【スタンド遣い】としての素養を備えているんじゃね?
「……え? 何かあるのですか?」
――違った。
やだ、めがっさ恥ずい……!
▽ ▽ ▽
「まだ見つからないのですか……!」
ヴァレリーの行方が分からなくなって早2日。
仮にも王族に連なる者の行方が不明とか、絶対的に在ってはならないことであるが、それ以前に自らの研究が頓挫している現状にマリウスは苛立ち、捜索の結果報告に参入した兵士へ憤りをぶつけていた。
「申し訳ございませんマリウス殿下、こちらも必死で捜索しているのですが……」
「本気で捜索しているのですか。彼女は、ヴァレリーは我々ヴァンパイアの未来の為にも、非常に重要な存在なのです。その損失は、貴方たちのような者とは比較にならないほどなのですよ? もしも、そこいらのハーフヴァンパイアと同列に扱っているような意識なのであれば、即刻その認識を改めるべきです」
「い、いえ、我々は決してそのような……!」
マリウスは王族とはいえ、その継承権は5位と下から数えた方が早い程度だ。
しかし、彼もまた王族に連なるゆえに、貴族としての気位を備えていると自負もしている。
それが一般兵に対するこの態度に如実に現れているのだが、発揮する場面は間違いなく此処では無く、彼の意識がやはり貴族としても王族としても相応しくないことを、彼自身が物語っていた。
憤慨をぶつけられても、一般兵には口答えする権利も備わっておらず、ただただ平伏するのみ。
そんなどう見ても時間の無駄であろう状況へ、タイミングよく口を挟むモノが居た。
「おーおー、荒れてるねぇマリウスさん。聖杯のお姫様が居なくなってご機嫌斜めかニャ?」
「っ、……何の御用でしょうか、お客様?」
くすんだ銀の髪を持つ40代くらいの男性が、けらけらと嗤いながら入室していた。
彼は妙に豪奢なローブを纏い、その有り様は一国の王のようでもある。
そしてその傍らには、彼とはまた違う白銀の髪色を持った20代くらいの男性の姿と、金と黒の入り混じった髪を持つオッドアイの男性が控えるように両脇を固めていた。
くすんだ銀の男は、云う。
「いやね? あまりにも狼狽えっぷりが酷いからさぁ、ちょっと手伝ってやろうかなーって思ったんだよねぇ」
「手伝う? 捜索をですか? 申し訳ありませんが、お客様の手を煩わせるほどの問題では……」
「いやいや、俺たちも共同研究の出資者としてね? お姫様がこのまま行方知れずのままってのは、見過ごせないんだわ」
マリウスよりもずっと余裕のある態度で、彼は応える。
そんな不敵な様子に、マリウスもまた目の前の男の器を、自覚無く己と比較し、知らず奥歯を噛み締める。
その様を目撃した兵士にとっては、実に居心地の悪い空間であった。
「っ……、しかし、どうやって捜すというのです? 城内からは彼女の痕跡も何も不明のままです、既に2日も経っているというのに、今更貴方たちが出張ったところで何をできるのやら……」
「ご心配無用っ♪ ユーグリットくぅん、よろしくぅ!」
「ええ、既に居場所は判明していますよ」
傍らにいた白銀の髪の男性に声を投げ、受けた彼もまた平然と情報を明かす。
そして、その開示された情報は、マリウスや兵士の彼にとって驚愕の内容であった。
「は、判明している!? 何処です、何処にヴァレリーは!?」
「マリウス殿下もご存知の筈では? 件の『屋敷』ですよ」
その『答え』に再度驚愕を露わにしつつも、やはりか、とマリウスは苦虫を噛むような表情へと替わる。
そもそもが、怪しいモノが堂々とあるのであれば、其処と事件とが繋がることは至極当然であった為だ。
だが、
「……しかし、その根拠はあるのですか? 『あそこ』は調査も行き届かない、完全に未開の土地ですよ?」
僅か4日ほど以前に存在を感知して以来、調査不明と云う事で【未開】認定されている件の屋敷、要するに『烏丸の屋敷』を知るからこそ、彼の興奮も直ぐに収まる。
事実、どうしようもない其処が怪しい、と云われたところで、説得力は依り不鮮明になったと言っても過言では無い。
何より、怪しい場所と突如起こった事件とを結びつけたとして、其処に話を持って来た彼らの意図が絡んでいないとは限らないのである。
そんな信用に値しない『共同研究者ら』を見据えていると、白銀の彼は嘆息し懐より『とある道具』を取り出していた。
「――では、此れで如何です?」
「……!? そ、それは……――【聖杯】!?」
取り出したのは、ヴァレリーが持っている筈の小さなカップ。
金に輝く
「そ、それをどうやって……!」
マリウスにとっては、ヴァレリー本人よりもずっと欲したモノだ。
それをいずれ彼女自身から抜き取って、自らの思うままに扱いたいと、兼ねてより願っていた。
その願いの結実が、目の前にある。
「彼女の持つ【聖杯】はどうやら亜種のようでして、こうして分割した片割れを所持することが可能になっていました」
「それ、を、それを寄越しなさい! この私のモノだ! 早く!!」
「ええ、お渡ししますよ?」
「――な、に?」
思わず、口調も崩れて怒鳴っていたところに、白銀の彼、ユーグリットと呼ばれていた彼は、平然と応える。
思考が寸断されるように途切れて、相手が何を考えているのかを予測できなくなったところで、ユーグリットは更に言葉を重ねた。
「しかし、此れではまだ未完成と言いますか、【聖杯】の持つ真価を発揮するには出力不足が否めません。やはり、完全に扱うには彼女自身の中に眠るモノも総て揃えないとダメなようですね」
「……そ、そうなのですか……」
「そして、此れが元来彼女のモノである以上、分割された大元の聖杯の場所も、共鳴を促すことで判明します」
力なく応えるマリウスに重ねたユーグリットの言葉は、ようやく総てが繋がった。
つまり、
「つまり、例え認識を阻害されていたとしても、共鳴現象を辿って行けば追い込める、とそういうわけです。【未開】とされた件の屋敷であろうとね?」
話が繋がると同時に、自分たちの街に勝手に居座る不届きモノへの制裁も兼ねることが出来る。
ユーグリットの弁は、要するにそういうことであった。
その事実を理解した時、マリウスは己の口の端が、愉悦に歪むのを自覚できてはいなかったのである。
~認識阻害結界術式『
別名『王国結界』。膨大な魔力で構成し知覚する者らの意識を惑わせ知的存在の侵入を拒む。拒むのはきちんとした意識を備える人型やそれに準ずる存在のみであるが、神とか悪魔とかも拒むことが可能な辺り本気で逃げることを目的として構成された術式の由来になんだか烏丸の哀愁が漂う
大元はスタンドの概念附加が主流なので、移動用にと自らに掛けることも可能。但し、その場合自発的行動のほとんどが不可能になる移動のみの発現。此れを使っても出来ることと云ったら覗きくらいだよ残念
~テイメイの錬金術師
ニーナとアレックス、どこ行った……?でお馴染みのメガネ
人語を介するキメラを造ったとかなんとかで名を上げてあの様だよ!
初期のアニメでは死なずに最後まで出張ってたよね。フサガラヌーキズグチヲー
~フライングスタート例のお三方
原作ではイッセーが原因で活動を開始した、とか言い訳してましたが、『研究』という奴は一朝一夕で出来ることではありません。つまり、「お前らそっちの理由はどうでも良くて、研究そのものは元からやってたんじゃねーの? 活動に理屈付けて主人公の所為だって難癖つけることだけが目的でさぁ、ホントは端っから動く気満々だったんでしょ? どんだけかまってちゃんだよ。ほんと迷惑なテロリスト思考ですこと(嘆息」と言いたい。要するに原作準拠です
ところで原作の【乳神】ってパイオ・ツゥなんじゃねーの?っておっぱい好き触手幼女の登場フラグを建築してみる
ユーグリットとやらの口調がイマイチ掴めずマリウスさんと被る被る
この作品は、原作では早々に退場した方々にもスポットを当てるべく、早期の登場と活躍を主題に置いて製作されております(嘘