※この作品はR-18です。

「『麻帆良学園から来ました烏丸イソラです!』『仲良くしてね!』」   作:おーり

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R18版なのにエロが少ないよとお叱りを受けましたが、あれ?この章ではエロ成分少な目って言ってませんでしたっけ?
そんなふざけたことを宣う33話です


「よくわかる戦術講座。そら先生にむわぁーかせてぇっ☆(鶏冠感」

 

 「……なんでお前が居るんだ?」

 「あ、ども匙先輩。いや、なんでですかね。俺にも良くわからないです」

 

 

 夏休み、グレモリー眷属が冥界へと向かったその一方で、我らがシトリー眷属も同じように会長のご実家にお邪魔していた。

 それもこれも、俺たちのような若手悪魔を貴族のお偉いさんに紹介する目的があったためだ。

 しかし件のお披露目を先日済ませたところで、俺たちはその実力を示すために、グレモリー眷属とのレーティングゲームに興じることとなってしまっていた。

 そんなわけで、今日より勝つためのミーティングを詰めつつ修行を積もうとしていた矢先。

 ――何故か、シトリー家の貴族らしからぬこぢんまりとしたリビングに待機していたのが、今年より無駄に名を馳せつつある後輩・烏丸イソラ、その男子であった。

 

 

 「あっ! か、烏丸くんっ!? ヤバい、先輩方急いで避難を! 女子は全員体育館へっ!!」

 「落ち着け仁村! シトリー家に体育館はねぇよっ!? てか、なんでそんな過剰反応してんだ」

 「だって烏丸くんって年上の女子をいつも侍らせてて見境なしに手を出して妊娠させるって言う噂がありますっ」

 「酷い風評被害を見た」

 

 

 って、噂かよ。そういえば仁村って塔城さんとは隣のクラスだったか。

 なんでそんな兵藤みたいな悪評が蔓延ってんだ、あの後輩。

 と、こちらの会話に間隙も空かさずツッコみつつ、斜になって顔を引き攣らせる烏丸。

 なんだか背中が煤けていた。

 

 

 「え、隣のクラスではそんな噂になってんの……? アレはアーシア先輩やイリナ先輩やゼノヴィア先輩が勝手に勧誘しに来てるから起こってる対立であって、女子を妊娠させたことは流石にないっす……」

 「安心しろ、噂に振り回されてるのは多分仁村だけだ。まあお前が変な立ち位置に居ることは否定しないが」

 

 

 確か、今言った3人に聖剣とか聖十字とかを備えさせた製作者がコイツらしいんだよな。

 そうなれば未だに天使側からのオファーがあると噂もある元修道女トリプル娘を通じて、あの日会談に臨んだ天界側から間接的に未だ人間であるはずの烏丸を勧誘に来ていても可笑しくない。

 会談の後で天界側からの譲歩の証として、件のグレモリー眷属の元修道女らは聖句や教会からの種族的な抵抗感を緩和させてもらった、とかっていう話だったし。

 流石に強い光が悪魔の弱点であることは変化しないらしいが、自分たちの陣地に踏み込むことを許可される悪魔、っていうのも充分スゲェと思うんだ。

 

 

 「……ひょっとして会長から何か頼まれたのか? 次のレーティングゲームで勝機になるような何か、とか」

 

 

 思わず口をついて出た思いつきだが、案外コイツが呼ばれた理由としては有り得そうな気もしてくる。

 何故かコイツなら次元の狭間を突破して冥界へ来ることなんて単独でも出来そうな感触が微妙に漂うけど、流石に勝手に乗り込んで来られるほどシトリー家のセキュリティは甘くない。

 ……無いよな?

 

 話を戻すが、さっきも言ったが聖剣なんかを製作したのがそもそもコイツだ。

 レーティングゲームの相手に聖剣使いが2人も居る時点で悪魔としては無理ゲーなのに、前回の【グレモリー眷属vsフェニックス3男眷属】で見たゲームバランス崩壊させる塔城さんが先陣切って突貫してくる恐怖仕様がまだ控えてる。

 【駒王学園校舎】っていう入り組んだフィールドで縦横無尽に動いたあのトリッキーな高機動戦術美少女が居る限り、俺たちシトリー眷属には勝てる見込みが今のところ微塵も無いのである。

 そんなわけで、せめてもの勝率上昇になれば、と淡い期待を込めて烏丸を見遣る。

 

 

 「……次のレーティングゲーム?」

 「って、何も聞いてないのかよ。お前ホント何しに来たんだ」

 「いや、無理やり連れてこられたので何とも……」

 

 

 あ、やっぱり自分の足で来たのとは違うのか。

 小首を傾げる烏丸に、わずかとはいえ期待していたので脱力せざるを得ない。

 仕草が無駄に可愛いのがなぁ……、コイツたっぱもあって雄臭いのに、そう言う処が無駄に後輩らしいんだよなぁ……。

 つか、コイツをこの場に連れて来られるのって、会長以外だとひょっとしたら……。

 

 

 「ひょっとして、お前を連れて来たのってセラフォルー様か……?」

 「誰それ」

 

 

 またしても、間を置かずに答えが出る……っておい。

 

 

 「この前の会談にお前も出てたよな!? なんでわからねえんだよ!?」

 「というか、俺としてはどう見ても異世界な此処に生徒会の先輩方がいらっしゃる時点で普通に困惑してるんですが……はっ、まさかひょっとして、皆さんも悪魔関連の……っ!?」

 「なんでそこまで情報遅いんだお前は!?」

 

 

 戦慄の表情で口元を押さえる、実に今更な反応を見せる烏丸に呆れを通り越して驚愕する。

 ちょっとー!? グレモリー先輩若しくは兵藤ー!? コイツにもうちょっと事情の説明とかしてあげてー!!

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 「マジかよ、生徒会長まで悪魔かよ。もう終わったな駒王学園。失望しました支取先輩のファン辞めて風紀委員長の雲仙ちゃんを応援します」

 「あっちの鉄球少女も風紀のナニを守ってるのかって感じだけどな。あと其処まで終わってねーよ駒王学園」

 

 

 一通りの説明を終えると、烏丸のそんな科白で感想が吐かれる。

 科白とは裏腹に其処まで辟易した様子は無いが、小声で「……またネタが潰された。(もう嫌だこの異世界)」って後半良く聴こえなかった何かを呟いていた。

 それと、常に鉄球で手枷足枷嵌めてる系ロリの雲仙ちゃんを応援してるって、普段も塔城さんと仲良いみたいだし、お前ロリコンなんじゃねぇのか。あ、こんなことツッコんだら塔城さんに怒られるな。自重するか。

 

 

 「というか、なんだ、烏丸って悪魔関連苦手だったのか?」

 「そんなことはないですが……よく考えてください、日本には日本の神話に連なる陣営が潜んでいるのに、異種族で経営母体を抑えられてる学園かっこしかも普通の人間の子供かっこ我が国の将来を担うであろう若者たちかっことじも通っているかっことじで果たして普通の人間をキチンと導けるものでしょうか。種族が違うと根本的な価値観も変化しません?」

 「……なんか真面目に考えてたんだな。スマン」

 「何に関する謝罪ですかねぇ……!?」

 

 

 かっこかっことじが多くて一瞬ゲシュタルト崩壊しそうになったが、意外にももっともな理由を挙げられて謝るしかない俺である。

 謝ったら謝ったで青筋立てた烏丸が居たが。

 決して、コイツふざけ半分な理由挙げて煙に巻きそうだな、とか思ったわけでは決してない。

 

 

 「確かに種族は違いますが、其処と折り合いを付けようという働きも動き出しています。融和という意思はあるはずなので、せめて侵略とは捉われないようにそちらからも譲歩していただきたいものですね」

 「いや、別に俺は一般人代表ってわけじゃないですから、意見の一つとして覚えて貰えれば……。あ、ども副会長」

 「そうだな、お前は一般人じゃないよな。むしろ逸般人だよな。あ、真羅先輩おかえりなさい」

 

 

 烏丸の科白に言っておかねばならないことを付け加えつつ、会話に参戦した真羅先輩にアイサツ。

 別に悪気はないし、その後に部屋へと入って来た会長にも早速問い質さねばな!

 

 

 「会長! コイツ俺ら生徒会のこと信用ならねぇって言ってました!」

 「話は聞いていたのでそういうことを言うのは辞めなさいサジ。彼だって無理やり連れてこられたのですから」

 「むしろ匙先輩なんで俺をいきなりdisりましたか」

 

 

 スマン、会長に近づく男子は幾らけん制しても湧いてくるものだから、つい反射的に。

 

 

 「改めまして、こうして話すのは初めてですね。駒王学園生徒会長の支取蒼那改めソーナ・シトリーです。椿姫の言った通り、普通の学生相手にも不平がないように心がけていますので、今はそれで勘弁してもらえますか?」

 「――ああ、さっきの。失望しました、ってのは冗句の一種なんでお気になさらず。様式美って奴です。ともあれ、烏丸です。『そらくんって呼んでね!』」

 

 

 ……ん、なんだろうな。最後の科白で、妙に偽悪的に嗤った気がしたんだが。

 気の所為かな。一瞬スゲェ怖気が。

 

 

 「噂に名折れぬ魔力ですね……。本日は姉が突然連れて来てすみません。私も先ほど本人から聞かせられて驚いてます」

 「あー。まあ、元々用事もあったので、後で外出さえできれば問題は無いですよ。グレモリーさんちって此処から近いんですか?」

 「リアスに用事がありましたか」

 

 

 さんち、って。

 烏丸の言い方だと、途端に冥界が日本の田舎臭くなるのだが……。

 

 

 「まあそんなとこです」

 「わかりました、後で使いを出しましょう。あと失礼ですが、――どういう様式美ですか」

 

 

 うん。俺も思った。

 

 

 「俺のいた学校では通じてましたが?」

 「突飛な様式美もあったモノですね……」

 

 

 中学校(ローカルルール)かな。

 コイツ、別に転校生、ってわけじゃなかったもんな。

 そんな一見すれば、とりあえずけん制の必要は無そうな挨拶を無難に終える2人へ、会長の後ろで珍しく大人しかったお方が読んでた空気を放り投げて出張っていた。

 

 

 「はいはーい! さっきも挨拶したけど改めて! 魔王少女のセラフォルー・レヴィアタンだよぉ☆ 『レヴィアたん♪』って呼んでね!」

 

 

 ――うん、云いたいことはわかるがこっち見んな。

 視線をきっちりこっちへ向けて、云いたいことがある、と空気を読んでいるっぽい烏丸が無言で逸れて、なんとか直ぐに向き直せられる。

 

 

 「……会談の時にもいましたね、そう言えば。えーと、魔王ってひょっとして役職なんですか?」

 「えー? なんだと思ってたのぉ?」

 「いや、実力勝負な部分がある社会なので、てっきり旗印なのかと」

 

 

 ん?

 なんか齟齬があるな、なんだろ?

 

 

 「サーゼクスさんとはどういうご関係で?」

 「んん? ……あー、あーあー! なるほど! 烏丸くんて【魔王】が4人いるってこと知らないんだね!」

 

 

 ……あ、そういうことか。

 

 

 「烏丸、今の冥界では、サーゼクス・ルシファー様、セラフォルー・レヴィアタン様、アジュカ・ベルゼブブ様、ファルビウム・アスモデウス様と4人のトップが君臨してるんだ。お前が言うのは、アレだろ? ゲーム的なラスボスが何人もいるのかとか、そういう意味での問いだろ?」

 「いや、ボス系は何人いても構いはしませんが、まあ納得しました。4大魔王で支配地を分割してるんですね」

 「違う、そうじゃない」

 

 

 どうやったらキチンと説明できるのかなぁ……!?

 

 

 「まあそっちの話はおいおいしていくとして。まずはゴメンねー、いきなり拉致っちゃって☆」

 「謝罪の意図が全く感じ取れませんが、理由をとりあえず話して欲しいです」

 

 

 一言多いけど、割と寛容だよなお前。

 こんな魔王がトップクラスでゴメン、ゴメンよ烏丸……!

 

 

 「そらくんにソーナちゃんたちを強くして欲しくて呼んだんだ! リアスちゃんのところの小猫ちゃん、あの娘を鍛えたのもキミなんでしょっ?」

 

 

 ってお前なのかよ!?

 グレモリー眷属強化の背景は、何もかもお前の仕業かよ!?

 もうこれから何かあったら『大体烏丸の所為』って覚えるぞコンニャロウ……!

 

 

 「それを俺がするメリットは?」

 「私がなんでも願いを叶えてあげちゃうぞ☆」

 

 

 魔王相手に一手に交渉噛ませる烏丸もスゲェけど、それを即呑み込むセラフォルー様もスゲェ……。

 なんか、後輩が倍速で俺ら妹様の眷属より上位に立ちそうで怖いのだが……。

 なんでも……、って言葉を噛み締めつつ、思案していた烏丸がこちらをちらりと見た。

 

 

 「――じゃあ、こういうのはどうですかね? ~~~~……」

 「ほ? ふん、ふんふん……。ん! おっけー!」

 「じゃあ、交渉成立ってことで」

 

 

 と、がっつり握手を交わす烏丸にセラフォルー様……、ってええええええええ!? ちょ、待って!?

 なんか俺らの行く末を勝手に決められた!?

 

 

 「か、烏丸ぁ!? お前ナニ承諾してんの!? あとお前セラフォルー様に何をお願いしたァ!?」

 

 

 眷属一同が思うであろう疑問を、真っ先に問えば、ニッコリ笑顔でサムズアップをする烏丸が。

 ――答えになってねぇ!?

 

 

 「じゃ、とりあえず俺レーティングゲームのルールを知らないんで、そこから話詰めていきましょうか」

 

 

 ほ、ホントに大丈夫なのか……!?

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 「――え、ギャスパー? あの子が此処にいるのですか?」

 「「「「「……。――ッ!?」」」」」

 

 

 一通りのルールと相手のメンバーを聞いて、名前が挙がったところで口を挟んできたヴァレリーに全員の視線が向き、一瞬の間の後で2度見した全員が漏れなく驚愕の表情を露わにした。

 そんなことより、レーティングゲームって男女差無しでやるのかよ。

 ブッ殺死合とかって聞いていたから暗黒武術会かと思いきや、ガチ系の裏武闘殺陣なの? ニンジャも出るのかな。ハチリュウを準備しておくか?

 

 

 「あ、ダメだ。ルールにフィールド破壊が反則になる場合があるって書いてある」

 「お前が今何を想定しかけたのかは怖いから聞かないでおくけどその前にちょっとこっちにも注目してくれるかなぁ!? 誰!? この人誰ぇ!? 今の今まで居なかったよなァ!?」

 

 

 ハハハ、そんなわけないジャマイカ。今までしっかりと俺の傍にいましたよ? 認識阻害かけて黙っていただけですわ。

 

 

 「というかヴァレリー、ヴラディと知り合いか何かなのか?」

 「ええ、幼い頃に。あの子が国を離れてからずっと会ってませんし、そらさま、あの……」

 「ん。じゃあ機会を見て会いに行くか」

 

 

 世間は狭いね。

 何かを懇願するかのような上目遣いの砂色ブロンドの美女に意図を汲んだ返事を返せば、途端に表情が明るくなる。

 うむ。やはり美人は笑った顔が一番だよね。美人の笑顔を曇らせるは紳士にあるまじきこと、と()のタキシードなロリコン様も言っていたような気がするし。

 

 

 「そっちだけで完結してないで説明してくれよ! 説明責任を果たせよぉ!」

 「匙先輩うるさい」

 「俺が悪いの!?」

 

 

 突然ひとの姿が見えるようになる、なんて世間じゃざらに在る事でしょうが。

 枯草の匂いがする神隠しの魔王様とか、俺のいたところにもそんな例の1つや2つや10や100。

 こんなんで怯えてたらウチの世界出歩けねぇよ? トガノヨミコとかに出会う確率だってサドンデス(突然死)レベルだし。

 そんな思いで色々思索を巡らせていたら、ソーナ会長から挙手。

 

 

 「しかし烏丸くん、一先ず紹介してもらえませんとこちらも困ります。あとは客室の用意とか」

 「あ、ベッドは一つで構いませんよ?」

 「え、それは……」

 

 

 ヴァレリーの続けた台詞で顔が赤くなる会長。

 ……ひょっとして悪魔とかって言ってもみんながみんな痴女ってわけじゃないのか?

 グレモリー先輩がアレだから、てっきり。

 これは益々俺の提示したお願いが欲しくなったな! よし、頑張るか!

 

 ともあれ、紹介が必要とのことなので簡単に。

 ヴァンパイアハーフを使って聖杯実験に勤しんでいた貴族(笑)らは、ヴァレリーの聖杯によって進化を果たした。

 元々自分らを強化したい、とかいう目的があったらしいので、俺の理論を挟んでの結果は上々と云えるだろう。

 彼らは、世間の煩わしい雑事にもう思惑を傾ける必要も亡く、モノを喰う必要も無く、全てのヴァンパイアの為になる最も栄誉ある生物としての上位へと変換された。

 彼らは寄り添い大樹となり、日々人の血に等しい性質を持つ実を生らせることであらゆるヴァンパイアからの感謝と称賛と栄誉を一身に受ける存在に為れたのである。

 クロザクロは言っていた、『一番上と下は同じ』と。

 至言であるね。

 

 実に世の為人の為となってくれた実験の礎として、彼らのことは大々的にツェペシュの国中へと宣伝させてもらった。

 聖杯の扱い方をヴァレリーにキチンと把握させるための、とっても『人の為になる』実験だ。称賛はあって然るべき。

 というか、根本的な科学理論という外付け知識があれば、遺伝子を弄る為に必要な部分だけの情報を取り込む、という知識の選別が可能なんだよな。

 魂のどうこう、とかって話が全体に及ぶ必要も無い。

 人間の脳はそういう取捨選択が出来ないわけじゃないのだから、読むべき部分を切り貼りできて当然だったんだよ。

 お蔭様で、聖杯もコントロールが容易くなったのでこれからもっと実験可能。

 明日はもーっと楽しくなるよねっ(ロコ●ゃん風。

 

 それより怖いのはヴァレリーだ。

 あの日、うちに侵入して来たグレイフィアさんの弟その他をぬっころしたついでに、一緒にいたヴァレリーの兄に関する処分は彼女に一任したわけだが。

 自分のことを便利な道具扱いした上で、同じようなハーフらを実験動物扱いしていたそいつを、ヴァレリーはとりあえず殺した。

 変貌した元彼女の友人らは改造のし過ぎで脳すらも原型を喪っており、2度と元に戻せないことが理由の一つ。

 元に戻すには聖杯の力を制限掛けずに起動し魂の深淵まで覗きこむ必要があるが、そんな真似をさせて折角正気に戻したのに元の木阿弥ではこちらとしてもやる瀬が無いし。

 そして最も大事なもう一つの理由が、そもそも本来の形を把握することが難しい事であることに加え、彼ら彼女らが復活を本当に望んでいるのかというと『わからない』からだ。

 命を扱うという事象は云わばエゴであり、それを呑める人物でない限りはエゴを押し付けさせるわけにもいかない。

 しかしそんなヴァレリーでも許せないことは当然あるので、いくら肉親であろうとも其処は譲れなかった。

 結果として、マリウス(王族)の命で以て犠牲となったハーフらの無辜の魂を慰撫しよう。

 そんな企画である。

 その後で口にした台詞が、はいこちら。

 

 『……どうしましょうそらさま。わたし、全然気が晴れません』

 

 復讐、という程どろりとしたモノでは無い、からりと『仕返し』をやりたいという欲求だろう。

 聖杯をしっかりと扱えるようにサポートして、こちらから命の扱い方をレクチャーしながらのマリウス殺害に及んだわけだが、折角なのでコツを掴むまで何度でも、とマリウスさんには何度か生き返って貰い命を弄る実験の礎に。

 腹を割かれて電流を脚から流されるカエルみたいな扱いで、初めの方では恨み言とか助けてくれたらなんでも支払うとか色々と口にしていた気がするが、最終的には自ら死を懇願するようになった彼は、今でもツェペシュの城にいるのです。

 最終的に手脚斬り落とした芋虫みたいな姿で眼球を焼き潰し、顎を外して咀嚼も出来ない形に固定。自殺も出来ず意志だけはあって、更に気狂いにも成れない程度に脳みそのストレス許容量も拡大してあるから、ヴァレリーみたいに正気からの脱却(現実逃避)も不可能。もう生きることも辛かろうに。

 まあどうしようもないけど。

 『それ』の取り扱いはヴァレリーの友達の中での生き残りヴァンパイアハーフに頼んであるから、ヴァレリーが見聞を広げ終えて帰省するまでは処分を留めておいてくれるはずである。

 ちなみに、これらのことを決定付けたのは大体ヴァレリーの意思。

 俺? やり方をレクチャーした程度ですわよ。

 

 

 「ツェペシュ、ということは、ヴァレリーさんは吸血鬼ですか。王族の名であったはずですが、何故烏丸くんと」

 「まあ色々ありまして」

 

 

 便利な言葉だよね。『色々』。

 さてそれはともかく、こっちとしても方針は決まったので、自己紹介をしていたヴァレリーを呼び戻す。

 

 

 「ヴァレリー、ちょっと潜って来てくれる?」

 

 

 【倉】に続く術式を開き、俺は入れないのでこの中でも適してる筈の彼女へメモを手渡す。

 ヴァレリーちゃんはじめてのおつかい、のお時間です。

 どーれみふぁーそーらーしー(ry。

 

 

 「中にいる奥さんに頼めば出してくれるはずだから」

 「はい、わかりました」

 

 

 折角だし、死蔵してるアイテム類を大盤振る舞い。

 元々【スクロール】は精神修養の意味合いが強かったが、向こうに在るはずの【倉】に直に繋がる上に、【術式】の持つ実体化性能に基づいて幾つか持ってくることも可能らしいから。

 俺は入れないのだけどね! 外で術式の維持に努めなくちゃならないからね!

 

 

 「なんかホントツッコミどころ多いんだけど……!? お前会長の実家で何遣らかす気だ!? そして奥さんってナニ!?」

 「いや、考えて見たら真っ当に自分を鍛えた塔城をなんとかしなくちゃ勝機が無いから、手っ取り早いアイテムでも備えさせようかなと。匙先輩を秘密結社張りに改造人間に仕立てようかというのも、経過実験見てる暇も無さそうですし?」

 「さらりと俺を犠牲にしようとしてた!? というかその計画を取り止めにした理由が酷すぎる!」

 

 「ただいま戻りましたー」

 

 「速っ!?」

 

 

 【倉】の中は72倍速だからねぇ。

 いくつかのアイテムを持って戻ってきたヴァレリーに確認を取り、それぞれに不具合が無いかをチェック。

 俺がグレモリー眷属にあげた聖剣とか十字架とかがヤバいというのなら、同じレベルのアイテム類を放出してやればいいじゃないの。

 とは言っても、結局のところそれを『使えて』も『使いこなせるか』という話とは別なので、その辺りは個人の裁量任せになるのだけど。

 しかし、今回のは実戦というわけでは無く飽く迄ゲームだ。

 先にチェックを掛けた方が勝てる。

 チェスのルール上最強はQueenだがKingを取られた方が負けるんだから、何が強いとか弱いとかより、結局のところ『何を犠牲にするのか』というのが勝負の分かれ目なんだよねぇ。

 

 

 「……なぁ、いい加減に教えてくれ。お前だけが策を練っていても、それに俺たちが従うっていうわけじゃ無いんだ。方針も指してくれない奴の話を聞くほど、社会ってのは気安くは無いんだぞ……?」

 

 

 何か根負けしたかのように、匙先輩が含めるようにそう言葉を紡ぐ。

 ふむ? 俺としてはこの先輩方を従わせたいわけじゃ無くて、単に報酬を得られるように取り計らってるだけなんだが。

 だがまあ、先輩の言も間違ってないので、

 

 

 「しゃーねーですな。匙先輩、俺がセラフォルーさんから貰う予定の報酬を貴方だけに教えましょう」

 「は……? いや、それはお前の取り分なんだろ? 俺が教えられたからと言って、どうなるわけでも……」

 「まあまあ、いーからいーから」

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 「――ぅおおおおおおおおおおおおおおっ!! 【禁手化(バランス・ブレイク)】ッッッ!!!」

 『Prison Dragon Balance Breaker!!!!!!!!』

 「「「「「「「「ナニぃっ!?」」」」」」」」

 

 

 匙先輩って目つきもうちょっとキリッとしたら、まんま人吉デビル会長だよね。

 髪型とか被りまくってるものね。

 俺、最初この学園に通い始めた時、某西尾漫画のif世界に迷い込んだのかと思ったくらいだもの。

 

 そんなデビル匙生徒会庶務先輩は実に男らしい雄叫びを上げ、この数週間で至った神器の超強化・【禁手化】へと変貌した。

 それもこれも、滞在初日に差し上げた『己の限界を覗ける眼鏡』が功を奏したのなら云う事は無しだ。

 

 

 「時間はねぇ。が、これなら速攻で決められる……! 此れが俺の【禁手(バランス・ブレイカー)】・『黒曜邪焔の(ブラックヒートヘイズ)龍鎧(ドラゴンメイル)』! 邪焔の力を舐めるなよ……っ!」

 

 

 あれ、やっぱりコレ暗黒武術会なのかな。

 別に三つ目が通ったわけではないが、思いがけない錯覚に二・三度目を瞬かせる。

 

 

 「くっ、匙が禁手化だと……っ!? 俺が一週間山ん中走り回っても至れなかったのに、お前どんだけ厳しい修業したんだ……!!」

 

 

 対峙していた兵藤先輩が、驚愕の声を上げた一同の中で出した第一声がそれであった。

 驚愕の意図も有りそうだが、夏休み冒頭を山籠もりで消費って、アンタ酷い青春の無駄遣いしてないか。

 というか計算が合わない気がするのだが……、気の所為かな。

 

 

 「大丈夫っ! こっちには烏丸くんの造った聖剣があるものっ! いくわよ、袖白雪っ!」

 「そうだな、天埜叢雲っ、力を示せっ!」

 

 

 と、躍りかかるは聖剣使いの2人。

 しかし、何気に責任が俺に乗ってきそうだからそういう名乗りは辞めない?

 あと技名とか剣銘叫んで強くなれるのはジャンプだけです。

 俺の剣にオサレは搭載されてません。

 

 

 「――邪王焔呪縛」

 「「っ!!?」」

 

 

 【黒い龍脈】状態だった時とは違う、陽炎のような不可視に近い性質の『ゆらぎ』が匙先輩の身体から伸びていた。

 範囲も測りづらいところが勝機に繋がったのだろう。

 自らを拘束してくるそれの実態を掴まえきれず、見る間に2人は拘束されていった。

 此処で身体をむちむちと主張するような拘束の仕方をしない辺り、匙先輩はホント紳士だと思う。

 『何故其処でもっとエロくしないっ! あの坊主はホントわかっちょらん!』『ちょっと黙ってくださいオーディン様』

 ……なんか、観客席側から聴こえたが気の所為だろう。

 

 

 「……! な……!」

 「なに、これ……! 力が、抜けてく……!?」

 

 「禁手化したことで不可視になったことに加えて、龍脈(ライン)の力は健在だ。体力や魔力を吸い取って俺の力の倍化に役立てる。――兵藤、ぼやっと見てないでかかって来いよ。同じドラゴン系神器使い同士、勝負をしようぜ」

 

 「……ぐぅぅっ!」

 

 

 兵藤先輩が自身の力を高めていることにも気づいていたのだろう。

 しかし匙先輩かっけぇ。

 やはり、此れは修行前に教えた『俺の報酬の中身』が功を奏したのかな?

 

 

 「俺はこの戦いに勝って――――なんとしても、会長の【大阪弁魚嫌いキャラ】付けをした【ネコミミ系アイドルデビュー】する姿を目に焼き付けるんだ……ッ!」

 「え、なんだそれ俺も見てぇ!」

 

 「「「「「「は!? なんですかそれ!?」」」」」」

 

 

 ――あ、其処でバラすなよ。

 初耳の会長以下眷属の皆様も、声を揃えて驚いていた。

 此れが他のメンバーのモチベーション低下に繋がらないと良いんだけど。

 ホント、匙先輩は詰めが甘いなぁ。

 

 

 




~今明かされる衝撃の真実…!
 烏丸は人の話を聞いているようで聞いてません。デフォです


~風紀委員長雲仙ちゃん
 ゴスロリ風に制服改造した駒王学園風紀委員長。手枷足枷に鉄球付きのロリっ子を見かけたら道を開けろ、という風潮
 尚、3年


~4大魔王で支配地の分割
 マジカルトラァァァァンンス!(ドンドコドコドコドンドコドコドコドンドコドコドコソイヤッソイヤッ!!ドンドコドコドコドンドコドコドコドンドコドコドコハッハッ!!


~ハチリュウ
 【ネギま】に居た頃に烏丸が造った火精霊封入型ホムンクルス。名の通り八首の竜の姿を象った炎の巨体であり、召喚すると辺り一面をマグマの海に沈めて自らのフィールドを形成。フィールドから放出される熱を吸収変換することで永久機関に近しい魔力運用を可能としており、かつて此れだけでアーウェルンクスシリーズ2~6を圧倒したとかなんとか
 現在は烏丸の所持する倉庫内にて凍結封印中(パソコンのデータ的な意味合いで)


~タキシードなロリコン様
 今で云うならば、ぷりてぃできゅあきゅあな彼女らに大学生の彼氏気取りがお助けキャラに来る、というどう見てもおっきなお友達が乱入した日朝です。ウス=異本かな(疲れ目
 最近クリスタルとかいう何らかがやってるらしいが、正直どうなの?(本気で見ていないので完全に未把握


~明日はもーっと楽しくなるよねっ
 おっ、そうだな(適当


~黒曜邪焔の龍鎧(ブラックヒートヘイズ・ドラゴンメイル)
 捏造。【自分の限界を覗ける眼鏡】で身体が壊れる寸前まで自らを鍛えた結果得ることが出来た、匙元士郎の【黒い龍脈】の禁手化。中に眠るとされる【黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)】『ヴリトラ』の分割された意志とやらを目覚めさせることも無く、飽く迄も黒い龍脈単体でのバランスブレイク
 その姿は『鎧』と呼ぶには実は歪で、コモドオオトカゲを頭から被ったようなブロンズセイントの雑魚(モブ)が着ていたような、どちらかと云えば仮面ライダーに出てくる怪人風な姿。アーマーゾーンっ。防御面が期待でき無さそうに見えるが、実は原作の赤龍帝鎧も防御より攻撃依りなので比べると生物的なフォルムをしてる分、こっちの方が衝撃吸収性には優れている


~大阪弁で魚嫌いのキャラ付けをしたネコミミ系アイドルデビュー
 中の人が同じだとか言う話を何処かで聞いた。ロックだね!(←違う。そっちじゃない



エロネタを挟む間が無いので次回に持ち越します
次こそは…!
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