「『麻帆良学園から来ました烏丸イソラです!』『仲良くしてね!』」 作:おーり
「イッセーくん、それじゃあ僕は部活に行くね?」
「あんまり危ないことはするなよ? あ、グレモリー先輩にもよろしく言っといてくれ」
先日彼女の懐妊を知り、何しろ初めてのことなので差配を知らないイッセーは、男装の美少女である木場祐奈の行動を思わず咎める。
対外的には己の彼女だと表沙汰に出来難い彼女の名も『祐斗』と普段は呼ぶことで関係は暈されたままだが、その気遣いや『祐斗』の人間関係に対応が過剰になる時が見舞われることも多々あった。
お陰で学内では微妙に距離の近いふたりの関係も邪推され、『木場×兵藤』または『兵藤×木場』という腐海的計算式が蔓延っているので、当人としては否定も肯定もし難くなんだかなぁと諦めているのが現状だ。
そんなイッセーの心配をよそに、祐奈は平気そうに笑いながらも、そうして心配してもらえることを嬉しく思っていた。
例え、その身に身籠った子が彼の子ではない可能性の方が圧倒的であろうとも。
笑顔の裏で泥に塗れたような感情を抱いていた彼女に気づくことなく、イッセーは教室へと戻る。
帰宅部である彼は本日はひとりで帰ろうとしており、己の荷物を取りに一度戻るためだ。
本当はそのまま行くはずだったのだが、親友の松田と元浜が何かの用事なのか己の荷物を人質に見立てて捕えており、それを引き取りに向かう手筈であった。
「戻ったかイッセー。見ろ! 例のサイト、新曲と新メンバーを発表したぞ!」
「うむ、ついにロリっ子が来たな! 心なしか両脇の子もロリっぽい、最高だな!」
「いやいや、こっちの子はけっこう胸も大きいぜ? イッセー好みじゃねえのかな、それともこっちのボーイッシュな方がタイプか?」
差し出すスマホに映るのは、アイドル衣装の【ミッテルト】を中心に【レイヴェル】並びに【祐奈】で構成されたユニット。
映し出された彼女たちの正体はこれまで同様認識阻害がめっさ仕事をしており、それがたった今会っていた相手だとしても誰にも気づかれることはなかった。
何気にメンバーから外されている節が見られるギャスパー(男子)はさておいて、そんな垂涎の映像を突き出されてもイッセーは慌てずに否定する。
「わり、俺、そういうのやめたんだ」
「「っは、はぁぁああああああ!?」」
驚き過ぎだが、そうなるのも無理はなかった。
どういうことだ、お前偽物か、と問い詰められるエロの申し子とまで呼ばれた原作主人公。
そんな彼は教室内に未だ残っている、修道女トリオと呼ばれる三人組へと何の気なしに目を向ける。
元シスターとは思えないスタイル抜群の美女・ゼノヴィア。
幼馴染だが、気づけば疎遠になっていた金髪の美少女・イリナ。
年下に見間違えられがちな小柄な少女・ロッテ。
何故か胸が締め付けられる違和感を姦しいその光景に覚えつつ、尚も言われ続けるイッセーは曖昧に笑って教室を後にする。
何かから逃げるように、――追憶の残滓を思い出さないように。
▽ ▽ ▽
「……まったく、アーシアにも困ったものね」
「仕方ありませんわ。あの子はどうしたって彼を忘れられないのでしょうし」
リアスの手元には【
どちらもアーシアから【聖杯】によって取り出されて、一時的に彼女に預けられているモノだ。
本来ならばそれで死んでしまう筈の仕様は某規格外の異世界人の謎技術によって
この世界ではそれなりに貴重で重要な品々だというのに、烏丸にとっては最後まで『この世界』の価値観は通用しなかったらしい。
そんな見たことも無い世界へと足取り軽く旅立ってしまった妹分らを思い返して、仕方ないなぁと溜息を吐く。
そう、旅立ったのはアーシアだけではなく、いつの間にか麻帆良娘らを懐柔できていたのか小猫もまた同行し異世界旅行へと乗り出してしまっていた。
眷属がふたりも自分の与り知らぬ場所へ赴いてしまったために、役どころを埋めるために烏丸の眷属をヴァレリーの案で採用したのは良い提案であったが、それと立ち代るように問題がひとつ。
小猫はさておき、微妙にこの世界に影響を齎した烏丸の存在を、少なくとも表向きの世界では隠ぺいするために認識阻害を掛けた結果、とある少年にもその影響は効果を及ぼしていた。
「お待たせしました。部長、イッセー君はやっぱりアーシアちゃんのことをきちんと認識できていませんね」
「そう。まあそうでしょうね、イッセーにとっては本当に重要な記憶でしょうから」
己の心を守るかの如く、イッセーは防衛本能なのか、駒王町に掛けられた認識阻害に連れられて、烏丸のことと一緒にアーシアや悪魔に関する事柄を明白に認識でき難くなっていた。
記憶の封印は悪魔として生きたわずかな期間を霞ませて、彼の中では妄想に似た何かから抜け出せたように以前よりもずっと平穏な凪いだ心持で日々を送らせていた。
一種の燃え尽き症候群にも似たそれは、イッセーをただの悪魔以下のほぼ人間と同程度にまで貶めており、しかしそもそもが戦う意味をこの先得られるのかと云えばそういうわけでもないと予測も出来るので、彼の現状は放置されているわけである。
どちらにしろ悪魔の生は長い。
この程度の袋小路なら、迷走したとしても解消を即座に促さないのも悪魔社会としての在り方の一つである。
それは弊害と、呼ぶほどのモノでもなかった。
「というか、そらくんだって二度と来ないと云ったわけでもないのだし、アーシアも慌てて追いかけなくても良いモノだと思うけれど……」
「立場の問題もあるでしょうね。リアスや私はさておき、アーシアちゃんや小猫はまだ悪魔としては未熟もいいところでしたし、行きたい所へ向かう気持ちを抑えられるものではありませんわ」
『責任の自覚』がまだそれほど備えられているわけでもない『成り立て』の少女たちに、元来自由に欲を満たそうとすることを主義とさせる悪魔が口出しできる道理もない。
イッセーの話は終わり、と言わんばかりにふたりは話題を変えていた。
わかってはいたが、そこまであからさまにされると笑うしかない祐斗である。
「イッセー君は、結局そのまま放置なのですか?」
「ええ、そうね。記憶が戻ればグレモリーで囲うけど、戻らないのであっても祐斗が監視して頂戴。私とのことを妄想で片付けるほどアーシアのことが、悪魔としての生が衝撃だったのなら無理に手を出すつもりもないわ」
「祐斗くんには手間を掛けさせるようですけれど、よろしくお願いしますわね?」
改めて話だけでも詰めておく必要はあるので、方針の確認のためにも祐斗は問う。
結局のところ悪魔社会のことへ触れようとしないままならば、記憶を思い出したとしても、もしも思い出せないフリをしているだけだとしても、イッセーの扱いは『それ以上』になることはない。
その理由は何よりも、グレモリーの姫に手を出したという過去に由来するので、眷属である祐斗も口出しは出来ないしする気も無い。
そんなことをして自分の剣の師匠も含まれている魔王の眷属に、無駄な波風を立たせようなどというつもりもないのだから。
「幸いにも、実家の方はグレイフィアとお母様の懐妊という好事が確認されたお陰で、私の子の『父親が誰か』なんていう問題には目を瞑ってもらえているわ。お母様とグレイフィアが『こちら』へと回ってくれたこともあるのでしょうけどね」
「というか、祐斗くんはそれで平気ですの? 兵藤君は、お世辞にも女性の扱いに長けているとは言い難いかと思われるのですけど」
朱乃の問いは、恐らくは最後通牒だ。
実際は立場が上からの命令に近い行動方針であるのだが、それで祐斗が断りを入れれば仲間内での情けは深いグレモリーである、代わりの誰かを其処へ宛がってくれるだろう。
しかし、祐斗はそれにNoと答える。
「いいえ、彼は僕にとっての大事な親友です。どのような処分であれ、僕が最後まで相手をしますよ」
男子としての人生から女性へと転じ、望まない相手の子供を出産することが決定されていたとしても、祐斗はイッセーから離れることを良しとはしなかった。
ただわずかに望むのならば、この胎の子の実情を彼本人には知られることは決してありませんように、と少しばかりの希望を抱いて、木場祐斗は暗く微笑む。
トクン、と自分のモノではない心音が、其処から響く幻を聴きながら――。
▽ ▽ ▽
「えっと、兵藤一誠くんですよね。好きです! 私と付き合ってください!」
校門を出て、突然に現れた美少女にイッセーは狼狽を隠せなかった。
自分の噂は知っているし、祐奈という美少女と隠れて付き合っているとはいえ己の容姿が人並みであることも把握している。
そのうえで、自分に堂々と告白してくる
言葉の勢いのままに頭を下げた彼女は、そんな狼狽える自分に対して返事を求めている。
だが、その前に自分が先走ったことを自覚したのか、慌てたように顔を上げた。
「っあ、ああっ! じ、自己紹介が未だでしたね! わ、わたし『天野夕麻』っていいます! で、出来ればすぐにお返事をして欲しいのですけれど……!」
狼狽えた様子は見るからに可愛くて、祐奈という彼女が居なければ即OKを応えていたくらいだ。
しかし、イッセーはその名を途切れるように口にして、その容姿を改めて認識して――、
「――ぁ、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!????」
――盛大に、名状し難い頭痛に襲われてのた打ち回った。
「――あらぁ? こんなに反応してくれるなんて、思いもしなかったわぁ。よっぽど酷い目を見たみたいね、イッセーくん?」
その彼を見据えて一転、貌を歪めて嘲るように見下ろす『天野夕麻』。
そうして今一歩近づこうとした彼女を遮るように、白い翼の少女が割り込んでいた。
「アンタ、誰だ」
顔見知りの筈の少女・ミッテルトが、黒髪の少女へと詰問する。
手には神器【
最終的に結界創造を得意とするこの神滅具は、要するに空間系の上位神器である。
そのことについて把握した烏丸は霧の状態を使用者の望む形に固定して、触れることで対象を次元的に寸断・乖離することを可能とする方法を編み出し、近接・遠距離・中距離と自由に対応可能な武器として使えるようにミッテルトの手にそのまま預けたままであった。
そんな一見重要そうに見えてそうでもない
監視対象足り得るイッセーは、祐奈が見ていない間もその居場所が知覚されないわけではない。
それ以前に、彼に身体を赦している祐奈も纏めて監視できるように、空間系神器を使えるミッテルトがその立場に選抜されていたことは言うまでもない。
接触が遅れたが、明らかに見過ごせない状況に武器を構えて割り込むことは、非常時判断としては充分に合格レベルの対応である。
「天野夕麻でーっす☆ って、名乗ったわよね私。あんたこそ誰ぇ? 私、イッセーくんにご用事があるのだけれどぉ?」
「ふざっけんな! アンタがなんでその身体と名前を使ってるのかは知らないけどね、その本人はとある教会の地下でカワラーナといっしょに今も結界維持のための燃料として使い潰されている最中だっちゅーのッ! 明らかな敵が、のこのこと駒王学園まで出向いてきたんだ。どうなるかはわかってんでしょうねッ!?」
さらっとかつての仲間の現状が暴露されたが、それをどうにか出来る手段はミッテルトには無い。
確かに、空間系上級神器さらに亜種仕様可能な代物というキチガイ装備を手軽に抛られた時には『下剋上』という言葉が浮かびかけたが、それに対処を知らない相手が其処まで気楽にしていられるわけがない。
それに自分自身を烏丸以外の陣営に匿ってくれそうな身寄りなど思いも付かず、逃げたとしても逃げ切れるものでもないことは確か。
ヴァレリーに頼めば、半分潰れて自我も怪しくなっている魔力タンクの堕天使も健常体に治してくれるかもしれないが、そうなったときに言い出しそうなことを予測できてしまえばおいそれと治すことに責任なんて持てやしないのだ。
烏丸がいつ舞い戻るのかも把握できない以上、ミッテルトはある意味平和に生きていられるレイナーレやカワラーナの墓守としてこの地に留まる所存であった。
「はぁん、何回やっても完全復活が出来ないってのはそういうこと。同一人物の複製は聖書の神でもご法度、てなわけね。なるほどなるほど」
「……その言い分、【聖杯】、いや似た性能の神器でも使ったわけ? 烏丸の予測当たってんじゃん……」
【聖杯】は死んだモノを復活させられる、という正直『原典』を漁ってもどうしてそうなるのかが理解できない性能を秘めた神器だが、それでも大前提としての生命が、いや意思が存在するための
これが『GANTZ』のように生命尺度の低劣な世界ならば、物質としてのルールのみに則って同一存在の重複という完全なる
烏丸が生まれ落ち、魔女が跋扈し、多層の概念が折り重なったどこぞの【異常世界】は現状無理矢理に位相を引き上げられているお陰で下位からの干渉を遮断できるわけだが、それより下位に当たる『この世界』でも最低限度の概念主柱という壁役、要するに世界の柱たる神が跋扈しておるために地獄相当の法則は通用せず、同じ個体であっても意識が両立するような
そんなことが可能なのは、ゲームのようにステータスなどが自身に表示される本物の下位世界程度である。
まあ要するに、この『レイナーレ』は躰が同じでも中身が違う、ということなのだろう。
では、何者なのか。
「いやぁー、こっちは『イッセーくん』の情報だけなら手に入るわけで、命をやり取りしたとはいえ一度は篭絡できたらしいじゃないの、この子は。それで使わせてもらったのだけど、やっぱりただの堕天使は脆弱よねぇ。ま、それでもなんとかなるかと思うけど」
「いったい誰なのよ、アンタは……!?」
神器を充てれば一撃で葬れる。
しかし、それをやるにはまだ早い。
復活してからこちら慎重を旨とするようになったミッテルトは、充分に情報を拾ってからでも倒すのは遅くない、とそう思っていた。
しかし、その気配が穂先を惑わせる。
なにか、そう、烏丸に似た何かの気配が、彼女からひしひしと伝わってくるのだ。
それが、殺しても死なない可能性まで秘めているとなっては、討ちようにも討てやしなかった。
それを知るのか、『レイナーレ』は嗤う。
片目を歪めて吊り上げて、上弦の月のように弧を描く口元が嘲る声を張ってのけた。
「お初にお目にかかりまぁす、邪龍【ゴルィニシチェ】と言いますワ。以後、お見知りおきを♪」
それが【卑劣龍】と呼ばれる『悪』との、戦いの幕開けであったことを知る者は未だいない。
そんなわけで次回より第6章に移ります
何やら展開がどろどろと面白くなってきたぞ…!?(ハードル上げ
レイナーレさんたちの顛末はミッテルト復活の際にさらっと触れてましたが、今回改めて『どうなっているのか』を説明させてもらいました
いや、忘れていたわけじゃないっすよ?(メソラシ
あとゴルィさんはオリキャラですが、登場の下地はどっかの誰かさんが下手人です
誰なんだろうなー、次回が気になるなぁー
烏丸はあっさりと帰りましたが、彼に関する諸々のエロシーンも時折挟みます
ので、恐らくはネギま勢がこれからはもっと出て来るかも
まあでも、リアスさんなんかのエロシーンは前回書いたし大丈夫ですよね?
ではまた次回
あ、直メで展開希望とかを送っても平気ですので、こんなのが見たいとかこのキャラで書いてとかご要望あったらどーぞお送りください
ストーリーはある程度進めたことだし、恐らくは番外になるでしょうけど希望あれば書けるはず
…まあ俺みたいな文章能力低劣な奴にキャラ崩壊描いてほしくねーよ!という人の方が多そうですけどねー(自棄笑い