---キディ---
不審人物を香津美と尾行をしている。新宿の歓楽街を対象は一人で歩いている。高級そうなビルに入っていくのを確認したので、後から追うと会員制のバーで入場は出来なかった。二人でビルの外で出てくるのを待つ。
「キディ、いいの?なんで、マノンを尾行するのよ」
香津美は尾行に反対だった。でも、私の捜査官としてのカンを理由に、パートナーとして頼んだのだ。
「アイツは怪しいと思うんだ。あの装備は確かに効果を出している。でも、素材も原理も秘密だし、ハーフの変異の原因も秘密だよ。おかしいだろう?」
「マノンも言っていたでしょ?秘密は最小限の人間が知っていればいいって」
「情報管理的にはそうだけど。あと、アイツの登録されていた住所はデタラメだった」
「ちょっと、いつ調べに行ったの?って、いうより各人の住所は署長しか知らないはずでしょ?」
たしかに。苦笑いする私。
「レビアに頼んで調べてもらった。レビアも、アイツの経歴に興味があるみたいで、独自に調べているようなんだ」
1時間くらいして、マノンはビルから出てきた。今度は小道に入り、何回か曲がったところにあるビルに入っていった。私は先程のビルと今度のビルの情報を、レビアに調べてもらうように頼んだ。
「最初に入ったビルの会員制のバーは人外協会の会員のためのものだ」
私と香津美は顔を見合わせた。マノンは人外なのか?
「全然、人外のオーラを感じないけどなぁ」
香津美は不思議がった。彼女の能力の1つで、相手が人外かハーフかを見極める能力がある。その能力をもっても、マノンは人間だった。
「2件目はたぶん、内海商会だ。マノンの使っている情報屋兼仕入先だ」
「仕入先って?」
思わず聞き返す。
「マノンの護身用の武器とか機器類だよ。私もそこで仕入れていて、たまにマノンに会っている」
レビアも利用する便利屋さんか。30分ほどで、出てきたマノンを、再尾行していく。今度は「Cafe らびりんす」という喫茶店に入った。ここって…
「由貴ちゃんのお店だよ」
香津美が指摘する。同僚の彩弧由貴が経営する喫茶店だった。仕事を定時に上がれる日は、この店をオープンしていた。私達二人も入店した。
「いらっしゃいませ。香津美さんとキディさんが来店してくださるとは。マノンさんも来てますよ」
マノンはカウンター席にいた。私と香津美はテーブル席に座った。おしぼりと水を持ってきた由貴に尋ねた。
「マノンはよく来るのか?」
「えぇ、浅煎りのグアテマラを飲みにいらしています。浅煎りを置いているお店って少ないからですって」
そういや、アイツは署内でもよく珈琲飲んでいるな。私達はブレンドを頼んだ。私達の注文はすぐにきたが、アイツの注文は、豆を挽いて、ネルドリップで淹れている。
「はい、マノンさん」
コーヒーカップを笑顔で受け取るマノン。香りを楽しんでから、一口飲み味見を楽しんでいるようだ。ゆっくり飲んで飲み終わると、席を立ち代金を払って店の外へ出るマノン。私達も追うために由貴に代金を出そうとすると、
「お二人の分もマノンさんが払われていきましたよ」
って…アイツ…店の外に出るとマノンは待っていた。
「君たち、暇だねぇ。僕なんかを尾行したって、時間の無駄だよ。ここで話し込むのはちょっとアレだな。ホテルでゆっくりと話し込もうか?朝までね」
あの舐めるような視線だ。ここは、挑発に乗るのも手かなっと
「わかった。ついて行くよ」
「ちょっと」って、香津美が私の腕を引っ張る。
「なにを考えているの?」
「朝まで尋問しようと思ってね」
香津美も仕方なくついてきた。ラブホでも行くのかと思ったら、高級ホテルだった。フロントでカードキーをもらって戻ってきた。
「ここのホテルはセキュリティが良いので、僕はここに住んでいるんだよ」
ホテル住まいだと?カードキーを使って呼び出す専用エレベーターで、マノンの住んでいる部屋のフロアに降りた。慣れた手つきでカードキーで部屋のカギを開け、中に入っていった。私達もついていく。
部屋はスィートルームだった。大きなリビングと部屋が幾つかあるタイプだ。
「おい、こんな所に住むって、給料で払えないだろう?」
疑問をぶつけた。
「スポンサーがここのオーナーなんだ。僕の身の安全を心配して、ここを貸してくれたんだよ。このホテルは魔王サタンが経営しているので、人外やハーフが襲って来ないから安心して眠れるんだ」
マノンのスポンサーは魔王サタンなのか…香津美も驚いている。
「魔王と契約をしたの?」
「していない。契約関係ではなくスポンサーだよ、香津美さん」
「ありえない」
「僕だって、普通はありえないと思うよ」
「どうやったの?」
「話を聞くと後に引けなくなるけどいい?」
香津美は思いつめた顔で、私の方を向いて、
「キディは聞かない方がいい。私だけ話を聞くわ」
「何言っているんだ?」
「貴方には普通に生きて欲しいから」
「もう普通に生きられるなんて思っていないよ。こんな身体でね」
マノンが急に私の胸を揉み始めた。感じる、身体の芯から疼いてくる感覚。身体中が火照ってきた。神経がないはずの人工の胸なのに、生身の胸のような感覚が私を襲う。
「いい…もっと…」
私の意思を置いてきぼりで身体が暴走していく。私のことを熟知している香津美が私を心配そうにみつめている。マノンが私の胸から手を放すと、脱力感だけが残った。
「あの装備の仕組みはそういう感じだよ、キディさん。密着して女性のオーガズムに至るまでの快楽エネルギーを使い動作している。オーガズムに至るとブーストアップする。ブーストアップ時には、人体側の筋肉は弛緩状態であり、前面の人工筋肉の能力がほぼ全開で動作できるようになる。なので、男性の僕が装着しても発動すらしない」
「なるほどね」
奥の部屋からレビアと二人の女性が出てきた。
「レビア、どうして、ここに?」
「さっき、マノンに呼び出されたの。装備の秘密を話すことになりそうだから、来るかってね」