※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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無断外出

 朝はリズに酷い目にあわされた。気付いた時には既に午後になる寸前で、私は起きるとすぐに猫の姿になってリズとの会話を一切拒否することにした。我に返ったらしいリズは猫の姿の私を見て特に変化することも無く、必死になって私に謝って来た。だけどこちらとしてはそんな簡単に許せる内容では無い。アスナが帰って来るかも知れない日に、10回以上もイかされるなんて……まだ1日の半分も終わって居ないのに疲れ切ってしまって堪った物では無い。

 

「そろそろ機嫌直しなさいって……本当に悪かったっての」

 

 武具店のカウンターに丸くなり、溜息をつきながら言うリズを完全に無視する。と、扉が開いてそこから私がほぼ毎日見て居たあの姿が見えた。疲れた様子は見せずに入って来るなり笑顔を浮かべてこちらに駆け寄って来ると、私を持ち上げてから抱きしめて来る。

 

「う~ん! やっぱりハクは私の癒しだよ~!」

 

「これが攻略の鬼なんてね。仲間が知ったらどんな顔するか」

 

 確かにリズの言う通り攻略の鬼なんて呼ばれているアスナはその通りに鬼の様に攻略をしているらしく、きっと笑顔とかはそんなに見せて居ないのかも知れない。本来猫が居ない世界で猫を抱きしめて癒されている鬼等、驚きでしか無いだろう。

 

 アスナは私を降ろすと「迷惑掛けなかった?」とリズに質問。その質問に「あ~」と答えにくそうな声を上げて私を見て来る。私はすぐに顔を背けて丸くなった。その仕草でアスナは私がリズを避けて居る事に気付いたのか、「何かあったの?」とまた質問。リズは「ちょっとね」と言うだけでまた答えなかった。事の詳細を詳しく説明できる訳が無いため、こうやって誤魔化すしか無い。

 

 目を細めて疑った様な表情で、でも深くは聞かずにアスナは質問を終えるとボスを無事に倒した事等を説明し始めた。それはつまりこの世界の解放が1歩また進んだと言う事でもあり、その内容を聞いてリズは嬉しそうな表情を浮かべる。すると突然リズは表情を変えた。

 

「ねぇ、アスナ。ハクなんだけど「駄目だよ」……最後まで言わせなさいって」

 

「ごめんね? でも、預けた時に少し思ったんだ。リズがハクの事、好きになるかもって。だけど例えリズでも駄目だよ」

 

 私の話だと言う事は分かる。だけどその内容について詳しくは分からな……いや、分かった。リズの中には支配欲と独占欲が存在し、アスナの中にも支配欲が存在している。つまりお互いがお互いの支配する物を取り合って居て、その対象は……私。

 

 リズは全てお見通しだったとは思っていなかった様で、アスナの言葉に目を丸くしながら驚いて居た。そしてそんなリズにアスナは私を抱き上げた後、「また預ける時はあると思う。だからその時はお願い」と。リズは少しばかりホッとしたような表情を浮かべて「任せなさい!」と自分の胸を叩き、肯定した。それからしばらくの間、アスナとリズは雑談を続けた後に帰宅することに。当然私はアスナについて行くこととなり、アスナの腕に乗せられて転移門まで運ばれる。

 

「帰ろっか。家に」

 

 アスナはそう言うと共にホームのある層の名前を叫び、私達は一緒に転移する。それからは真っ直ぐ家に帰り、私はいつも通りに何もしないで居る時間を。アスナは明日まで休暇を貰ったらしく、今日はもう外に出る気も無いらしいので攻略する際には何時も来ているギルドの制服から私服に一瞬で着替える。と、私を抱き上げた後に外を眺められる位置の椅子に座って膝の上に座らされる。

 

「今日ね、キリト君にあったの」

 

 キリト君……一瞬誰? と思ってしまったけれど、すぐに思い出すことが出来た。確かこの世界に来た日に出会った、1層のボス攻略の際に居たアスナとパーティーを組んだ少年だった筈。何でもあの時からずっとソロで戦い続けて居たらしく、ソロでは厳しいこの世界で生き抜いて来ていたらしい。アスナの話では会話をしては居ないけれど、かなり強かったとか。その内会えるかも知れないとの事。向こうが私を覚えて居るかどうかは分からないけど……知り合いに会えるって事で楽しみにはしておこう。

 

「……今日はもう、お風呂入ったんだね。……そっか、朝リズと入ったんだ」

 

 突然私の匂いを嗅ぎだしたアスナ。確かにお風呂に入ったのは間違い無いけれど……何故アスナの目が一瞬にして生気を無くした様な目になるんだろうか。この後、私は『1度外に出たから汚れちゃったよね?』と言う理由から強制的にお風呂場に連行され、それから1日中アスナが私を離してくれる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アスナがキリトと再会をしたと言われてからしばらくの間、私は会うことなく普段の様な生活を送って居た。攻略の際にはリズの場所に預けられ、アスナが休みの場合は殆どくっ付いたまま離して貰え無い。これを何時もの日常だと考えられる様になった辺り、私は結構適応能力が高いのだと感じる。で、何日経過したかは覚えて居ないけれどそんな日常を繰り返していたある日、アスナが攻略に出て居る事で家は空に。普段ならリズに預けられる。泊りの際には襲われる事もあるけれど、半日などの場合はいつも通りに一緒に居るだけ。けれどこの日、リズは仕事で場所を離れなくては行けなかったらしく、仕方ないと言う事で私を家に置いてアスナは攻略へと向かっていった。

 

 私は1人で部屋の中に居るのも飽きて来ていた。毎日毎日同じ光景を眺めていれば当然飽きる。そしてしばらく考えた結果、何処か好きな場所に行ってみる事にした。アスナにばれたら当然怒られてしまうが、今は攻略に出て居て手が離せないため大丈夫……な筈。何故かばれそうで怖い。

 

 私が行く場所と言えばこの家のある61層とリズの居る48層位。外に出る事は禁止されているけれど、一度は出て見たいと言うのが本音。……下層に行けば行くほど敵が弱くなる筈だから、適当に低めな場所に行けばきっと大丈夫。かと言って1層はもう魔物も刈り尽くされたりと見る者は大体終わってしまって居る筈。それにアスナが言って居たけれど、軍とか言う組織のテリトリーでもあり、余り良い環境にはなって居ないらしいし……適当に10、20ぐらい下げた場所で良いかな。と思い、私は行動に移した。

 

「……」

 

 人の姿になって転移後、すぐに猫の姿に戻ると私は真っ直ぐに街の外に向かって走り始める。一気に人の間を駆け抜け、たどり着いたのは森の様な場所。そこには小さな魔物が数体チラホラと見受けられた。周りに人の気配は無く、どうやらこの場に居るのは私だけの様子。なら丁度良い。

 

「……リズ、使う」

 

 人の姿になった後、私はリズから貰った紅蓮の剣を手に取る。本来剣なんて持たないから慣れない重さだけれど、この世界。唯飼われるだけで何もしないのは何か違う気がした。だから私は貰ってから数日、密かにアスナが居ない時には練習をする様にして居た。と言っても剣を振れる様になる事が第一の目的としての練習だったから振り回した事は無い。部屋の中で振り回したら何か壊してしまいそうで出来もしなかった。だから広い場所で振るのは今回が初めて。

 

 鞘から剣を抜いてその鞘は……持って居てもどうしようも無いため、適当に放り投げる。地面に落ちた音でゴリラの様な魔物が森の奥から姿を現した。予想では小さな魔物を予定していたのだけれど……出て来てしまったのなら仕方が無いと諦めて私は剣を持つ。柄を両手で持ち、右下に降ろして右斜め下の背後に刃を向ける。そして向かってくる魔物を下から一気に切り上げた。真っ直ぐ斜めに切れ目が入り、意外にも簡単に魔物の身体は斬れる。斬られた魔物は大声を上げて光出した後、バラバラになった。そしてそれを気に他の魔物も沢山出て来る。気付けば囲まれている様子。

 

 私は剣を再び構えなおすと目の前に広がる魔物に1歩足を踏み入れ、そのまま一気に駆け出す。それから私はしばらくの間戦い続ける事になるのだった。そして今日のこの行動が、新しい出会いを生み出すことを私はまだ知らなかった。

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