※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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盗聴

 私の手を引いて居るシリカは間違いなく欲を満たす対象者。内容は自己顕示欲と親和欲の2つ。これから増える可能性はあるが、今はこの2つを満たすことだけ考えよう。

 

 前者の自己顕示欲とは確か『こう見られたい』と思う欲だった筈。今こうして私を手を引いて居る事で徐々に上がって居る事から、自分がお姉さんの様に見られたいと思って居るのだろう。そしてそれらしき行動を取って居る為に満たされて行っている……と言う事だと思う。

 

 後者の親和欲は仲良くしたいと言う欲だった筈。つまりお姉さんの様に見られながら仲良くしてほしい? もしそうならシリカの欲望は両方、アスナよりもリズよりも分かりやすい内容。簡単に満たすことが出来そう。様は仲良くすれば良いだけなのだから。

 

 手を引かれて街のすぐ傍まで近づいた時、私は完全に姿を隠すことを諦めて居た。既に数人のプレイヤーには遠くから見えて居るだろうし、アイコンが出て居ない事からキリトみたいにゲームに詳しく無い相手は私をNPCと勘違いしてくれる可能性もある筈。何時も一瞬しか姿を見せて居なかったから、噂ではプレイヤーと言う事にはなっては居る者のその真実は謎のまま。もう開き直って何とかなると思うしかない。

 

 街の中に入ると同時に一斉に視線を感じる様になる。どうやらシリカも使い魔を持つビーストテイマーとして有名な様で、時折「シリカちゃん」と言う声が聞こえて来た。そしてそのままそんなシリカに手を繋がれている私に視線が向いて行く様子。唯でさえ目立つと言うのに余計に目立って居る。何とかならないかも知れない。余りの目立ちようにキリトも驚いて居る様子。

 

「凄い人気だな。2人とも」

 

「人気なんかじゃないですよ。唯皆、私をマスコットみたいにしたいだけ何です。ハクちゃんはあの噂の純白の天使なの?」

 

「……多分」

 

 キリトが私達に話しかけた事で視線が大きく彼に移動する。きっとその視線の意味は嫉妬等だろう。引き受けてくれたのか意図せずしてなってしまったのか、どちらにせよ今は少しばかりキリトに感謝をしよう。と、そんな私達の目の前に1人の女性が現れる。背後には2人の男性が居り、シリカは女性の存在に気付くと少しばかり嫌悪な表情を浮かべる。

 

 話を聞いて居ると、どうやら先日までシリカがパーティーを組んでいた相手らしい。が、何かがあって別れたのだろう。男性達はシリカに戻ってきて貰おうと話すが、どうやら女性の方はシリカの事を良く思って居ないらしく、何とも嫌味な言葉を投げかけて来る。そしてシリカがキリトを手ごめにして一緒に居るのかと聞いて来た。が、そこでキリトに視線を向ける最中に居た私の存在を見て驚いた後、面白そうに笑う。

 

「へぇ~。噂だと思ってたけど、あんたが純白の天使かい? ……唯の餓鬼じゃないか」

 

「なっ! ハクちゃんは貴女なんかよりもずっとずっと強いんですから!」

 

「そっちの男と言い噂の天使ちゃんと言い。どう見ても強く無さそうだけどねぇ」

 

 シリカは女性の言葉に言い返そうとするが、その行動をキリトが止める。これ以上このままここで会話をして居ても良い事など無いのだろう。それを理解したキリトは上手く纏め、シリカの事は任せて置く様に言って女性たちから離れる。そして向かった先はシリカが使って居ると言う宿屋。その目の前でシリカは私の掴んでいた手を離した。そもそも私がここまで連れてこられた理由は1人で戻るのは危ないからと言う物であり、既に圏内に居る以上一緒に居る理由など無い。故にシリカは私を離してくれたんだろう。

 

「今日は本当にありがとう。また、会える?」

 

「……分からない」

 

 この世界は中々に広い。プレイヤー同士ならフレンド登録なる物が存在して居たりするが、私の場合はそんな物が無い。だから会おうとして会えることはそうそう無い筈。根拠も無く会えると言うより、事実をそのままに言った方が良い気がして私は真っ直ぐに答えた。するとそこでキリトが私の姿を見ながら「結局バグなのか?」と呟いて居るのが聞こえた。

 

 街に戻ってくるまでの間、私達の先をずっとキリトは歩いて居た。が、時折こちらを伺う様子が見えた。それは私達を心配していると言う事もあるだろう。そしてそれと同時に私の存在について考えて居たのかも知れない。プレイヤーであるアイコンが無く、でもNPCの様にプログラムの意識で出来て居る訳では無い。受け答えが出来るだけでなく、外からここに連れて来た事が大きな証拠の1つとなって居るだろう。キリトは1層のあの日、私の事についてアスナに言って居た。

 

『……その猫、普通の猫じゃない。NPCならその場から出れないし、魔物なら圏内には入れない。何よりあの力は異常だ』

 

 その場から出られないと言う事がNPCの大きな特徴の1つであり、それが今この場で私がNPCでは無い事を証明する物でもある。力についてはばれて居ないが、猫の姿やあの力を使えば一瞬で気付かれてしまうだろう。

 

「……バイバイ」

 

「じゃあね! また会おうね!」

 

 私はキリトが何か行動を起こす前にこの場から離れる事にする。軽く手を振って別れの挨拶みたいな事をすれば、それに大きく振り返して笑顔で答えるシリカ。キリトにも小さくだが頭を下げ、私は人が居ない場所へと向かう。と、私が1人になったのを見つけて誘おうとでもして居るのか追いかけて来る人の気配。すぐに見えない位置で猫の姿になると陰で丸くなる。私を追ってきていた人達はその姿を見失い、陰に潜んでいる猫の事等気付きもしないで去って行った。

 

 かなり遅い時間。今日はアスナが帰ってこない筈のため、急がなければいけない訳では無い。が、出来る限り早く帰った方が良いだろう。攻略が上手く行って早めに帰宅、なんてこともありえない訳では無い。そうと決まれば転移門まで……また誰か来た。

 

 人の気配を感じ、私は丸まったままその場に留まる。と、私が居る場所とは本の少し離れた場所でフードを深くかぶった誰かが現れる。そしてその人物と一緒に現れたのは……あのシリカに嫌味を言い続けて居た女性だった。

 

「何でもあの餓鬼、明日レアアイテムを取りに行くらしいわ。場所などの詳細を宿屋に潜って聞いてきな。戻って来たところを殺るよ」

 

「了解した。……純白の天使がこの街に居たってのは本当か?」

 

「あぁ、そいつもあの餓鬼と一緒さ。ついでに捕まえて色々と吐かせれば面白いかも知れないね。ふふ」

 

 会話を続けた後、両者とも素早くその場から姿を消していった。私は丸くなったまま、動く事が出来ない。今の今までこの危険な世界で平和に暮らしていたが、それ故に所謂平和ボケと言う物をして居たのかもしれない。今の会話からあの女性は明日、シリカとキリトを襲う。シリカはピナを助けるために、キリトはそんなシリカを助けるために。そんな2人をあいつは……襲う。狙いは2人のアイテムとその命。そして……得体の知れない存在である私。そう考えた時、毛で覆われているにも関わらず私は寒さを感じてしょうがなかった。

 

 ……確か2人が行く場所は47層のフラワーガーデンと言う場所だった筈。そこにある【思い出の丘】と言う場所に使い魔を使役する本人が行けば、復活のアイテムを入手できるとか。シリカとあった時に2人が会話しているのを私はしっかりと聞いて居たため、場所については問題ない。だけど問題は2人にこの事をどうやって伝えるかだが……正直難しいだろう。

 

 シリカが殺られてしまえばその欲を満たすことは永遠に叶わなくなる。私だけが生き延びても、あの子が生きない限り私に未来は無いと言う訳。ならやる事は決まって居る。必ず彼女の命を守り抜く。

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