※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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日にち感覚が1日ずれて居た様です。今日では無く、明日が投稿出来ません。


偵察

 希望を見出してから数日。アスナの元から離れられない私は何時もの様に首輪の力による拘束された毎日を送って居た。

 

 そんな私の前に再びキリトが姿を見せる。その時アスナも傍に居たため、堂々と会話をする事が出来なかった。だけどアスナとの会話の間、キリトは偶に視線を私に向けて来ては離すと言う仕草をしていた事から何かを伝えたいと言う事は分かった。そして会話を出来る時はすぐに来た。

 

 キリトが姿を見せたのはレアな食材を手に入れた物の調理をする相手が居なかったかららしい。そしてアスナを見つけ、アスナの家に来たのだ。そして食事を作り始めた時、アスナは私から離れた。外では離してくれないが、家の中なら一緒の建物に居る限りは自由の身。大体は観察されているけれど、今は料理をして居る途中。結果、私とキリトは話をする事が出来た。

 

 話の内容は簡単に説明して私の解放が可能と言う事。私の首輪を解くためのアイテムは既に手に入れて居るらしく、後はそれを使うだけ。だけど今この場で使っても見つかれば即捕まり、又キリトが犯人である事も特定されてしまう。故に今回はその報告だけと言う物だった。そして私のその報告に思わず泣きそうになるくらい嬉しくなった。喜びの余りキリトに飛びついてしまうぐらいには。それを見られてキリトがアスナに睨まれてしまったのは申し訳ないと思う。

 

 食事の後、アスナの提案で2人は数日の間共に行動をすることになった。何でも2人でパーティーを組んで最前線を進んでみよう、との事らしい。本来なら組織的に大人数で挑んだりする者なのだが、2人で行けるところまで行ってみたいとの事。そしてその日、キリトは食事を食べて帰宅。すぐにその日はやって来た。

 

 朝の待ち合わせに向かうアスナの家の前にはギルドの1人、クラディールが護衛と言う名目で待って居た。最近は何時も護衛の任故に傍に居り、アスナは私を連れて逃げ出そうとする。しかし何があっても護衛をしようとしていたクラディールはまるでストーカーの様にアスナの傍に付こうとし、結局一緒に行こうとしているキリトの存在に気付いて決闘(デュエル)を挑んだ。結果はキリトの圧勝。そんな感じで開始早々面倒な事が起こったけれど、結果的に無事2人は敵の現れる現状一番危険な場所、迷宮区に入る事になった。そして当然乍らアスナが入る=私も一緒である。

 

 戦闘中、当然ながら私と言う存在は邪魔でしかない筈。だがアスナは私を決して離さずに頭の上に載せて戦闘を行う。余りの動きに何度も落ちそうになるが、何処にそんな余裕があるのかアスナはちゃんと考えて動いて居る様子。攻撃が来た際、避けられる攻撃も私が当たる位置だったら剣で受けたりして守ってくれる。最初から連れてこなければ良いと思えばそれでお終いだが、アスナにその選択肢は無いらしい。

 

 キリトが目の前に居たトカゲの様な魔物を斬り伏せて剣を背中に納める。その姿はやはり若い青年とは思えない程の背中をして居て、【黒の剣士】と言う二つ名が付くのも納得の姿。私が言えたことでは無いけれど、キリトも若いのに苦労しているんだと何となく思う。

 

「あれは……」

 

 目の前を見続けるキリトにアスナと私も視線を向ける。その先にあったのは大きな扉。私はその扉と似た物を何度も見た事があった。始めて見たのはここに来て2日目のディアベルが率いていたボス戦の際。アスナに連れられる様になってからは偶にだが見る様になったその扉。層にはボスが1体ずつ奥で待ち構えて居るからその扉の向こうは……ボスの居る部屋。つまり攻略組が必死に探し続ける目的の1つ、ボス部屋の扉。

 

 キリトとアスナは目の前にある扉を見上げる。私もアスナの頭の上でそれを見上げて居て、アスナが少しだけ中を覗いてみる事を提案した。ボスとの戦闘になれば2人ではまず勝てないだろう。それほどの強さがあるのがボスであり、奥に入らなければ戦闘が始まる事も無い。本来なら始まっても転移結晶と言う帰るアイテムで逃げられるのだが……アスナはそれを使わない。私が居るからだ。

 

 2人が大きな扉をゆっくりと押し開けて行く。中は真っ暗で何も見えないのであろう2人。だけど私にはしっかりと見えて居た。大きな角に牛の様な顔。人間の何十倍もの大きさの身体。あれは今まで見て来た魔物なんかと比べ物にならないくらい危険だと、私は本能的に感じた。

 

「ハク?」

 

 怯えて居る私に気付いた様にアスナが手を伸ばしてくる。だけどその瞬間、部屋の中にあった沢山の灯台が一斉に青い炎を発生させる。その火は部屋の中を照らし、やがて私が見たその姿を2人にも鮮明に映し出したことだろう。巨体と顔。その2つだけでも怖いと言うのに、部屋の雰囲気や青いその身体と鼻から出る鼻息が更にその恐怖を膨らませる。

 

『……何者だ』

 

 2人には聞こえて居ないだろう。だけど私にはその低い恐ろしい声が聞こえた。ピナと会話を出来る様になってから前線に連れて行かれる様になった私は当然乍らアスナと共に居る以上、様々なボスを見て来た。そしてその全てが今の様に声を発する。通常の魔物は何も言わずに奇声を上げるだけなのだが、ボスに関しては知性がある様に言葉を言っているのだ。プレイヤーには聞こえないためか無意味なその言葉でも私には聞こえるため、そのせいで少しばかり恐怖が増えてしまう。今の様に。

 

 余りの恐怖に固まる2人。と同時に一斉に2人は来た道を戻る様に走り出した。今までと比べて明らかに強そうなボスの姿に流石に2人も駄目だと思ったのだろう。突然走り出したため、私は落ち掛ける。だけどアスナがすぐに私を腕に抱いて走り続けた。そうして2人は来た道を戻り、魔物の出てこないであろう安全地帯まで疾走することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事に逃げ延びた2人は疲れきった身体を壁に寄りかかって癒すことにして居た。

 

 落ち着きを取り戻したころ、ボスの攻略の話などをし乍ら食事を取る事にした2人。アスナは料理のスキルを極めて居る故に料理が上手く、キリトの分もしっかりと用意していた。そしてそれを喜んで受け取るキリト。そんな2人の光景は若いカップルの様にも見えて、幸せそうに見えるだろう。しかし、ここに私が居なければの話である。

 

 喜ぶキリトに笑顔で渡したアスナはキリトの感想を待たずに私にも用意した食事を出して来た。料理スキルとはそのまま料理できる物であり、食べ物であれば何でも作る事が出来るらしい。そうしてアスナが作ったのは……見た目キャットフードの食べ物。私が人の姿などを持てることを知って居るアスナは猫である私にこの様な物を出しながらもちゃんと工夫をして居た。その1つが見た目はキャットフードなのにしっかりと他の味がする事。本部などではこれが出され、家では普通の見た目のを食べさせてくれる。そんな食事が既に当たり前になって居た。

 

「今回も自信作だよ。ふふ」

 

 アスナはそう言って私に出したまま、自分の分は食べずに私を見続けて来る。これも毎回の事で、私が食べた後に「美味しい?」と聞いて来る質問に頷くまでアスナは食事を取ろうとしないのだ。これは既にアスナと食事を取った事がある人なら誰もが知って居る事であり、キリトも知って居たためアスナから貰ったサンドイッチの様な物を食べながらこちらの様子を見ていた。

 

「アスナ。今更だけどハクは俺達が初めてあった時に居た猫なんだよな?」

 

「そうだよ。あの日私はハクを拾った。今では大事な家族だよ」

 

「家族……か。でもさ、この世界から出られる様になった時、ハクはどうするんだよ?」

 

 「そもそもどうなるんだ?」とキリトは付け加える。最後の言葉は恐らく自分にも行った疑問だろう。アスナはそんな質問に私の身体を撫でながら何も言わないで居た。そして私自身、キリトの言った言葉の結果が分からないために少しばかり混乱する。

 

 確かにこの世界がクリアされた時、プレイヤーは皆現実世界に移動するだろう。もしもその時私が欲をすべて満たせて居なかったら? 私は生身でこの世界に入って居る為、この世界がもしも崩壊と言う形になるのなら私も一緒に消える事になってしまう。……私がアスナに縛られている間にも刻一刻と時間が迫って居ると言う事? 不味い。非常に不味い。

 

「大丈夫だよ。ハクは連れて帰るから」

 

「連れて? ……どうやって?」

 

「どうやっても。だよ。私は絶対にハクを連れて帰るの。だって私とハクはずっと一緒だから、ね?」

 

 そう言って同意を求めて来るアスナの目にあるのは光では無く闇。雰囲気から察したのだろう。キリトは何も言わずにアスナの行動を観察する様に食べ始め、その後また光を宿したアスナと会話をし乍ら時間を過ごす。

 

 食べ終わった後は私を腕に抱きながらキリトと食べ物の味についての会話などを始め、ソース味や醤油味等の調味料をキリトが舐めて感動。途中私にも舐めさせようとしたキリトだが、猫は基本的に調味料が駄目なのだとアスナが説明して止める。……普通の猫じゃないから何の問題も無いのだけど、アスナはキリトが私が人になれる事を知らないと思って居る筈だから仕方が無い。

 

 それからしばらくその場で休憩をして居た2人。と、私は更に戻る方向から何人かの人が来る気配を感じた。遥か遠くにだが、誰かがこちらに向かって来て居る。それも2箇所で気配があった。少しすれば、その1つ目の集団が2人の前に姿を現すだろう。……どうにも今日、まだ大変な事が起こりそうな気がしてならない。そしてそんな私の予感が当たるのはこの数分後の事だった。

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