私は人が死ぬ姿を間近で見た事が無かった。人だった時から両親も、親戚も、友人も、皆健在していて誰1人居なくなった事が無い。だからこそ、あの日起きた光景を……あの出来事を私は一生忘れることが無いだろう。人が呆気なく消え、死んでいく光景を。
あの日から数日が経った。最初に現れた集団はキリトの知り合いであるクラインと言う男性とそんな彼が率いていたギルドの一員。険悪なムードなどになるどころか気さくな性格をして居たクラインはキリトとの再会を喜んでいた。でも出会い頭にキリトに向かって『両手に花』発言をした時には少しばかり恐怖を感じた。……言った本人も戸惑っていたが、『何か女性が2人居た気がしたんだよな』と言った彼の直感は私に取って危険かも知れない。でも結局気のせいで終わったから大丈夫。
問題はその後だった。その後に来た集団が1層をテリトリーにして居るあの【軍】の人々で、マッピングデータと言う物をキリトに要求した。それは非常に大事な物らしく、怒るクラインをキリトは制した後に『どうせ後で公表する』の一言で渡した。そしてそれを受け取って奥へと行ってしまった軍。だけどリーダー以外全員が疲れて居る様子で、キリトはまさか『ボスには挑まないよな?』と呟いた言葉に私も含めて嫌な予感がしてしまった。結果、キリトの予感は的中してしまった。
あの恐ろしいボスに挑み、消えて逝く人たち。その光景は余りにも呆気なく、目を見開いて身体ごと全てが崩壊していくその姿は恐ろしい物だった。そしてそんな光景に耐えられなかったアスナが暴走する様に突撃してしまい、その後に始まったのは激戦。アスナとクラインが持ちこたえる中、キリトが剣を2本持つと言う本来ならば出来ない事をやってのけた事でその戦いはキリトの活躍に寄り、勝利を手に入れた。赤くなったゲージを見て力を使ってキリトを回復させたいと思ったけれど、服従の首輪の機能の1つである【封印】のせいでそれを行う事は出来ず、私は唯その光景を見て居る事しか出来なかった。
キリトが剣を2本扱えたのは【二刀流】と言う【ユニークスキル】と呼ばれる物らしく、何でも10種類しかないレアスキル何だとか。そしてそんな物を持って居るキリトは知られた途端、嫉妬や妬みを勝ってしまうと恐れて黙って居たらしい。だが、今回の件で公表せざる負えなくなってしまった。
それからは忙しく日々が過ぎて行った。キリトはアスナと共に行動をし続け、やがて【二刀流】が有名になったキリトはアスナを引き抜きに掛かって居ると言う疑惑を掛けられ、血盟騎士団の団長。ヒースクリフと言う男性と
決闘の結果はキリトの敗北。私はその時アスナに連れられて応援に言って居たけれど、2人の速度が余りにも早くて何が起こって居たのか判別するのも出来てなかった。気付いた時にはキリトが剣で突かれて居たのだから。そして決闘の決着と同時に決まった事があった。
【勝てばアスナを連れてどこにでも。負ければ血盟騎士団に入団】
そんな条件の元に開催されていた決闘だったため、キリトはこの結果によって血盟騎士団への入団が決まった。その日の内に黒とは真逆の白を基調とした制服を貰い、それを着る事になったキリト。決闘が終わった際、何か難しい顔をして居たキリト。だがその思いを語る事は無く、キリトはこの日を境に血盟騎士団に入隊することになった。
「ハクは別に良いでしょ! 戦う訳じゃ無いんだから!」
「そうは行きませんぞ、アスナ殿。もう既にその猫も我が血盟騎士団の一員同然。少しは根性をつけるべきですからな!」
私は突然抱き上げられた事に驚いてしまう。見上げればそこにはまるでサルの様な顔をした男の人が1人。
何でも今日はキリトの力量なども図るための遠征訓練をするとの事らしく、その責任者であり、私を抱き上げて居るこの男の人……ゴドフリーは私も参加させると言いだした。アスナが怒るけれど、それでも笑顔で引く気を見せないゴドフリーにアスナは少々怖い顔を見せる。そこで会話の間、様子を伺って居たキリトは「ハクは俺が守るから安心してくれ」とアスナに言った。
どうしても私から離れたくない様で、それでも怖い顔をするアスナ。だがいくら言った所でもう駄目だと分かったのだろう。怒りで立ち上がって居た身体を席に戻し、私に「気を付けて、絶対に帰ってきてね?」と言ってくるアスナ。この風景なら普段通りである優しい言葉だが、その奥に自分に私を縛り付けようと言う思いがある事を私とキリトは分かって居る。
決まった事で「それじゃあ行ってきますぞ」と言い、私をキリトに託して歩き始めるゴドフリー。キリトもアスナに「行ってくるよ」と。私もアスナに視線で『行ってくる』とだけ言ってゴドフリーについて行く。そして外に出た時、私達の目の前に現れたのはアスナを護衛して居たあのクラディールだった。私はあの件もあってこの男の人が苦手。思わず私は少しばかりキリトに身体を寄せていた。キリトも気まずそうな表情をして居て、そんな2人に気付いたゴドフリーがどちらも謝って仲直りする様に指示。クラディールは前とは様子を一変させて躊躇も無くキリトに頭を下げた。本来なら絶対に下げようとしない性格だったのに……。
キリトも謝らない訳に行かないと思ったのか同じ様に返し、それを見た後にゴドフリーは転移結晶などを渡す様に言い始めた。戦闘中などに危険になった際、最初に行うべき行動は自分の命を守る事。死んでしまえばそれまでなのだから。そしてそんな手段の1番始めに思いつくのは帰還。しかしそれを置こうなうためのアイテムを回収すると言う事は、危険になっても生きて帰る事が出来なくなってしまうと言う事。そんな事、当然納得出来る訳が無い……筈なのだが、クラディールは当たり前の様にそれを手渡した。その光景に不安そうにキリトも取り出して転移結晶を渡した。と、ゴドフリーは元気よく手を上げて「ではこれより遠征訓練を始める。出発だ!」と一言。キリトもクラディールも元気の無い声で手を上げて答えた。
「ハク。分かると思うけど、今ここにアスナは居ない。君を解放できるのは今日しか多分……無い」
「!?」
歩きだした時、キリトが言った言葉に私はハッとする。確かに今この場にアスナは居ない。キリトの背後にはクラディールが。前方にはゴドフリーが居るが、彼らを目を盗んで行動するのはそんなに難しい事では無いのかも知れない。そして……キリトの言う通り、この好機を逃せば逃げられる可能性は低い。何の問題も無く私がアスナから離れられるなど、殆ど無いのだから。
この遠征訓練ではしっかりと休憩の事も考えて居る様子。故にキリトはその時に何とか出来ないかやって見る事を提案してくれた。私はそれに頷き、キリトの頭の上に場所を移動して景色を見続ける。と、ふと背後で小さく笑い声が聞こえて私は振り返った。そこにはクラディールの姿がある物の別段変わった様子は無い。気のせい? もしかしたら少し私が浮かれて居るのかも知れない。
アスナ。彼女の存在は決して嫌いでは無い。私を拾ってくれて、優しくしてくれた最初の人は他ならぬアスナなのだから。だけど私は私がやらなければいけない事のため、そして何時か元の場所に帰るためにもずっと同じ場所に居る訳には行かない。キリトの言って居たこの世界をクリアした時の話も気になる。時間が決まって居るのなら、縛り付けられてジッとして居る訳には尚行かないのだから。
2つ程ご報告させて頂きます。
まず1つ。風邪を引いて1度止めてしまったせいか、書ける勢いが大きく下がったここ最近。今章の終わりまでは簡易ではある物の大体出来上がって居るので、前のペースで投稿出来ると思います。ですが次章になる際には投稿を大きめに開けるかも知れません。
もう1つは書いて居る物のR18なのに性的描写などが全然無いこの作品。流石に不満に思う方も居るかもと思ったので、スキルアップも兼ねてちょっとした短編集的なのを章とは関係なく書いてみようかと検討中です。別作にはせずにプロローグの上辺りにでも作ろうかと。決定した際には【ハクを襲ってほしいキャラ】のアンケート的な物を【活動報告】で取るつもりです。色々とその際には注意もありますが、それは決まり次第。以上です。