※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

27 / 66
再会

「……ん……う、ん? ここ……は?」

 

「ハクさん……良かった! 目が、目が覚めたんですね!」

 

 目を開いた時、目の前に居たのは涙を流して居るユイの姿。周りを見渡せば、そこは一面花で覆われて居る光景だった。私はこの光景を見た事がある。……そう、ピナを助けるため。シリカとキリトを守ろうとして私はここに来た。花で覆われた綺麗な場所。47層のフラワーガーデン。でも、どうしてここに私は居るのだろう。

 

 私は記憶の最後を確認する。確かユイによって助けられ、匿ってもらった私は……そう。ユイを助けようとして攻撃を受けた筈。なら余計、どうして私がこんな所に倒れているのかが気になる。だから私はまず身体を起こしてからユイに聞いた。何故私がここに居るのかを。

 

「あの攻撃の時、私に蓄積されたバグは完全に消去されました。そしてその際、私への制限すら一時的にですが解除されたんです。だから私は咄嗟に強制転移プログラムを発動し、あの場からハクさんと一緒にここへ飛んだんです」

 

 私の力は私が思って居た以上に効果があったらしい。まさか制限まで解除できるとは思わなかった。でもそのお蔭もあり、機転を利かせたユイによって私はまた助けられたらしい。それに関してお礼を言えば、ユイは「ハクさんのお蔭です」と返して来た。そして私達は立ち上がる。フラワーガーデンに居る事は理解出来たけれど、この後どうするべきか……。アスナから逃げて来たのだから、アスナの場所に戻るなんて選択肢は当然無い。リズの場所も会いたいけれど、アスナと接触する可能性がある。シリカは場所が分からない。

 

 ここまで考えて私は思った。結局私がしなければいけない事は自覚したところで何も変化しない。ならやるべきことは……リズかシリカのどちらかに会う事。今満たして居る欲がどのような状態なのか、想像を始めれば私の頭の中にその情報が入って来る。

 

【ソードアート・オンライン】

 

【結城 明日菜『アスナ』 保護欲 MAX・癒欲 MAX・支配欲 MAX・独占欲 MAX】

 

【篠崎 里香『リズベット』 愛求欲 MAX・支配欲 MAX・独占欲 45/100】

 

【綾野 珪子『シリカ』 自己顕示欲 43/100・親和欲 92/100・養護欲 0/100】

 

 アスナは既に満たして居る。リズは……確か私を独占しようとして居た欲。きっとリズの欲を満たすためには再び縛られる事になるだろう。なら私が次にするべきことは、【シリカ】の欲を満たす事。

 

「恐らくカーディナルは私達を見つけ次第、消そうとするでしょう。今は妨害出来て居ますが、それもきっとまたすぐに制限されます」

 

 そう言うユイの頭に私は手を乗せる。浮いて居たから分からなかったけれど、……ユイの方が身長が高いのは少しショック。自分よりも少しだけど高い位置にあるユイの頭に乗せた手を動かせば、ユイは驚いた様な表情で私を見て来た。と同時に真っ赤な顔になって「あの」とか「その」とかしか言わなくなってしまう。子ども扱いは恥ずかしかったのかも知れない。……うん、やっぱりユイはユイだ。

 

 もしもユイがまた制限をされるのであれば、私がそれを解除しよう。絶対に私は消えないし、ユイを消させもしない。その思いをユイに言った時、赤かった表情が一気に真剣な表情に変化する。そして次に言う事を私は何となく予想出来たため、「そんなの」と言ったユイの口に人差し指を当てて言葉を遮る。目を見開いて驚くユイに私は「大丈夫」とだけ伝えると、その手を握った。

 

「何処に行くつもりなんですか?」

 

「……分からない」

 

 シリカの居場所が分からない以上、当ても無く進むしかない。ここに居ても何も出来ないなら動く他に無い。……本来ならこの姿だと【純白の天使】として知られてしまって居るため、噂が流れればすぐにアスナが来る可能性がある。だけど手を握って居る今、落ち着ける場所に行くまではこの姿で居よう。そして落ち着ける場所に行けたら色々と考えよう。少し……疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「欲……ですか?」

 

 ユイが私の言葉に首を傾げて聞き返してくる。今私達が居るのはシリカと出会った層にある2人が泊まった筈の宿屋の中の1人部屋。前回はキリトが出してくれたけど、今回はユイがシステムを弄って代金を不要にしてくれた。魔物を倒してもお金が手に入らないのは中々に不便。

 

 シリカが居るかもしれない場所で私に分かる唯一の手掛かりはここだけだった。後は地道に探していくしか無い。強くなって居れば恐らく上の層に行って居る筈だから、ここから探し始めよう。そして今現在、ユイが聞き返して来た理由は私が【この世界に居る理由】を説明したから。

 

 私がプレイヤーなどでは無い事は詳しい人なら見て分かる。だけどユイに関してはこの世界を始まった当初から全てを見て居て、私が1層の何も無い平原で突然出現した【扉】から猫の姿で出て来たのも見て居たらしい。今の今まで誤魔化して居たけれど、流石にこれは誤魔化しようが無かった。だから私はユイに関しては自分の事を包み隠さず教える事にした。

 

 本来は人間だったけれど、気が付けば猫になって居た事。頭の中に入って来る情報から特定の人物の欲を満たして行くこと。ユイは私の話を最初から信用してくれた。何でもこの世界に来た私を度々気にかけて居たらしく、来てからの事は大抵見て居たとの事。リズやアスナに襲われた時の事すら見られていたと思うと凄く恥ずかしいけれど、間接的に聞けば首を傾げられた。どうやらそこは見られて居なかった様子。

 

 私がやる事はアスナ・リズ・シリカの3人の欲を満たす事。既にアスナは終え、リズは後少しで終わる。だからまだ全然住んでいないシリカの欲を満たすためにこれから行動しなければいけない事をユイに言う。すると、

 

「シリカさん。ですね。プレイヤーの検索を掛けて見ます。恐らく場所を特定出来るかと」

 

「……本当?」

 

 まさかの答えに私は聞き返してしまう。ユイはそれに頷くと頭を手で抑えて目を瞑り始めた。見て居るだけでは分からないけれど、恐らくシステムを操作する様に何かをして居るんだと思う。そうして待つ事数十秒。ユイが目を開けて「見つかりました」と呟いた。

 

「この層に居る様です。場所は……」

 

 ゆっくりと手を上げるユイ。人差し指を突きだし、示した先は……天井。当然天井がシリカなどと言う訳では無く、ユイが言いたいのは上にシリカが居ると言う事。ここは宿屋で複数回建てだから、上の階に人が居る事は何も可笑しなことじゃない。何て言えば良いのか分からないけれど、目的の人物が私達の上に居る事は理解出来た。こんな傍に居た何て、ゲームの世界も広い様で狭いらしい。

 

 「行きましょう」と言ってユイは立ち上がり、部屋の出入り口に向かって歩き始める。どうやら私の話の内容を聞いて協力しようとしてくれている様で、見て居た私に扉を開けて「行かないのですか?」と聞いて来た。もう私達はお互いに危険な位置に居るのだから、一心同体みたいな物なのかも知れない。だから私はその言葉に頷くと座って居たベッドから立ち上がった。

 

 廊下の一番端に階段は存在している。そこまで行き、上への階段を上り始めた時。私の胸に突然小さな生き物が突撃してくる。そして私の胸にぶつかると『ハクだ!』と声を上げて見上げて来た。余りの事にユイが驚いて居る中、私はその生き物の頭を撫でながら胸から離して肩に乗せる。「誰かの使い魔……ですか?」と聞いて来るユイに頷いた時、私達の前方。階段の上からその声は聞こえて来た。

 

「ハクちゃん!? ……ハクちゃん!」

 

 見上げた先に居たのは片手を胸の前に置きながら驚いて居る私の探し人……シリカの姿。ピナは私の肩からシリカの肩へと移動して行き、シリカは突然目に涙を浮かべ始める。と、階段の上からだと言うにも関わらず私目がけて飛び込んで来た。避ける事は可能。痛みも圏内だから無いとは思うけれど、それでも受け止めてあげた方が良い気がした私はそれを受け止めようとして……止めきれずに尻餅をついてしまった。……痛い。

 

 「良かった、生きてて良かった!」と言ってくるシリカに私は頭を撫でて返した。プレイヤー同士ならフレンド登録と言う物が存在して居て、登録した相手が生きて居るかどうかを常時確認することが出来る。でも私の場合にはそんなシステムが通用しないために生存しているのか死亡しているのか会わなければ分からない。おまけにアスナの拘束によって人の姿で歩かなかったために【純白の天使】の噂も途絶えて居た筈……死んでいると思われても不思議じゃない。

 

 優しく私達を見つめるユイに少し待っててもらい、私はシリカが落ち着くまで頭を撫で続ける。そんな私の頭には飛び込んだ衝撃で肩から飛ばされたピナが乗り、しばらくの間。階段の目の前を私達は占領してしまう事になった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。