※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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願い

 残された時間が少ないと分かった事で、私はすぐにでもシリカの欲を満たさなけらば行けないと思う様になった。だけど自己顕示欲も養護欲も満たそうとして満たせる物じゃない。殆どそうだけど、やはりシリカが『満たされた』と感じない以上は意味が無い。自分がお姉さんの様に見られたいと言う思いと、守りたいと言う思い。時間が少ない今となっては支配欲等よりも面倒かも知れない。……と思って居た時期が私にはあった。

 

「ハクちゃんハクちゃんハクちゃんハクちゃん!」

 

 私とユイの居る部屋の外から何度も私の名前を呼ぶシリカの声が聞こえて来る。ユイはそんな声を聞いて「人気者ですね」と言うと私の近くに【小さくなって】控えた。何でも自分のプログラムを書き換える事で大きさを変化させられるとの事。別に人の姿でも良いのだけれど、私はここ数日の間。猫の姿で居る事が殆ど。その関係でユイも小さくなって居る。

 

 扉が開くと飛び込む様にしてシリカが入って来る。既にこれは繰り返されているから、驚く事も無い。そうして入って来たシリカは私に急接近すると、「今日は何処に行く!?」と楽しそうに質問をしてくる。だから私はそれに何時もの様に「……何処でも」と答えて猫の姿になれば、シリカは私を抱き上げて頭の上へ。肩には遅れて来たピナが乗り、もう片方の肩にはユイが腰掛ける。他人から見れば人と竜と猫に群がられている少女で凄い目を引くだろうけれど、シリカはこの状況に幸せを感じるらしい。そして守って居る気にもなって居るらしく、その証拠に

 

【綾野 珪子『シリカ』 自己顕示欲 98/100・親和欲 MAX・養護欲 82/100】

 

 後少しでシリカの欲を満たすことが出来る。だけどもう既に数日経ってしまった今、出来る限り早く済ませるべき。どうやらこれ以上新しい欲が出て来る事は無さそうだから、その点は安心出来る。

 

 シリカは私とユイを連れ、ピナと共に街の中を案内してくれたりして居た。シリカはやっぱり人気者で、偶にシリカをパーティーに誘おうとして来る人達が居る。だけどその全てを断り、無理に寄って来る相手はピナが追い払って居る様子。今の今まで『ビーストテイマー』と呼ばれていた事から、私もまたテイム。使い魔にしたと周りには認識されているらしい。ユイに関しては自動人形(ドール)と呼ばれるからくりの1つだと思われている様子。

 

「あたし、ハクちゃんとユイちゃんが来てから楽しくて仕方が無いよ!」

 

『3人と、楽しい!』

 

 この世界は余りにも怖い。だけどそんな世界でも片手に食べ物を持って笑いながら歩く少女の姿があれば、それだけで一気にここが本当に怖い世界なのかと疑ってしまう。見て居るだけで、少しばかりは余裕が出来る。だからこそ、そんな笑顔を見せるシリカは人気なのかも知れない。その笑顔に救われるのかも知れない。そして私はその事に。シリカと居るこの時間が少しばかり……辛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は何時かこの世界から出て行かなければいけない。自分の世界に帰るためなら、仕方の無い事。だけどそれはこの世界に居る存在達と別れる事を意味する。『帰らない』・『諦める』と言う選択肢は最初から存在して居ない。でも私はその事実が徐々に間近に迫って来たことで、辛いと感じる様になって居た。だからこそ、私は感じない様にする。全ては満たすために。全ては帰るために。

 

「どうしたんですか?」

 

 ユイが私の顔を覗き込む様にして話しかけて来る。シリカの町案内が終わった後、私達は日課の様に圏外へと出て居た。宿屋に泊まるにはお金が必要であり、魔物を狩る必要がある。シリカはピナの件で強くなったけれど、それでもここで戦いを続けて居る様子。危険な場所に行かないで強いまま格下の相手を狩る。臆病者と思う人間は確かに居るけれど、確実に生き残る手段では一番。

 

 どうやら私は考え込んで居たために呼ばれても応答しなかった様で、シリカが「調子悪いの?」と聞いて来る。私のその質問に首を横に振って平気である事を示すと、シリカの頭から降りる。戦闘が始まってしまえば、私の存在は恐らく邪魔になるだろう。頭に乗せたまま戦えるのは後にも先にもアスナだけ……だと思う。だから私は降りるとそのままシリカの後ろをついて行く様にする。シリカは乗ってても良いと何時も言う。けれど邪魔になるのは私自身が嫌なため、この状態は私からのお願いでもある。

 

 過去に見たあのゴリラの様な魔物が姿を現すと、シリカは瞬時に短剣を用意して構える。ピナもシリカの背後に控え、戦闘が始まる……が、それは本当に一瞬で終了した。レベルが過去と違うせいか、ピンチになる方が難しいらしい。受けるダメージが余りにも違うようで、レベルの差が圧倒的な差を生むと言って居たキリトの言葉は本当のなのだと実感させられる。と、私の足元が突然暗くなる。見上げればそこには先程まで戦って居たのと同種の魔物。既に棍棒を振り上げて居て、シリカが私の名前を叫んでいた。でも心配は要らない。

 

 風が唸るような音と共に出たのは私の翼。人でも猫でも翼が生えて居る私には、どちらの状態でもこれが扱えるらしい。そして最近使える様になったのが、羽根を使った攻撃方法。棍棒を翼が防ぎ、後ろへと下がる。そして翼をはためかせて浮遊。魔物の身体の上半身辺りまで自分の身体を上げれば、翼を一気にその身体目がけて羽ばたかせる。すると私の翼から無数の羽根が相手へと雨の様に降り始める。だけどそれは雨なんかとは違い、先に触れた場所は切れる様になっている。そんな物を浴びれば当然結果は……細切れ。血が出ない事、ゲームの世界であった事が幸いしたと思う。もしもこれが生身の人間などであったなら、悍ましい光景になって居た事だろう。

 

『ハク! 今の凄い! やりたい!』

 

『……多分、無理』

 

「良いな~。ピナはハクちゃんと話が出来て」

 

 普通、ピナと話が出来る私を羨む。だけど今この形態になって居る間、私はピナとしか会話と言う会話は出来ない。そしてその事をシリカは羨ましがっている居るらしい。私との会話なんていつでも出来るのに、何で羨む必要があるのか……分からない。

 

 それから少しの間、魔物を倒し続けたシリカ。過去私が人の姿でここに戦いに来た際は湧く様に魔物が現れたが、今日はそんな事も起こらず、やがて魔物を数体倒し続けたシリカは私達を連れて無事に宿屋へ帰還。そうして今日もまた1日が終わろうとして居た。

 

 この調子でいけば勝手にシリカの欲は満たすことが出来るだろう。今日が終われば残りの日は10を切る。ここに留まりたいと思う様になってしまう前に全てを終わらせ、次の場所に行こう。きっと最初だからこう感じてしまう。これから続くかもしれない欲を満たす【世界巡り】。慣れてしまえばきっと何とかなる……筈。

 

「……ねぇ、2人共。お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」

 

「?」

 

 宿屋に戻った後、シリカの部屋に入るまでは猫のままで。入ってからは人の姿に戻って話をして居た。話と言ってもシリカとユイが話して居るのを聞いて居たりするだけだったりするけど。そうして寝る時間になり、私はユイと共に部屋から出ようとして居た時。突然シリカが私に話しかけてきた。私はノブを握った状態で振り返ると、そこには何処か赤い表情で言いにくそうにして居るシリカ。と、ユイが「偶には3人で寝ませんか?」と提案してくる。

 

 部屋を借りて居る以上、使った方が良い筈。だけど別に無理に使う必要も無いため、それを断る理由は特に無い。私がそれに頷くと、シリカは一気に笑顔になって「ならもっと話そうよ!」と言ってくる。私は再びシリカの近くに行くと、シリカは座って居たベッドから少しだけずれて開けた隣を叩く。ここは1人部屋でベッドも1つしかない。だけど、私達が小さいためかベッドを横に使い、足を少し外に出せば3人で寝る事が可能。シリカは頭の方に。私は真ん中に。ユイは下の方に腰掛けて、左右反転した川の字の様な形で一斉に横になる。

 

「2人は……何時か居なくなっちゃうの?」

 

「シリカさん……」

 

「……」

 

「あたし、嫌だよ……2人が居なくなるなんて、嫌」

 

 そう言うとシリカは私の胸に顔を埋めて来る。ベッドで横になって居るから身長差関係なく同じ様な位置に頭があって、埋めて来る前に涙を流して居る姿が私には見えた。何時ものお姉さん振るシリカばかりを見て居たために、少し驚いてしまう。だけど傍に居た人が居なくなる寂しさは少し分かる気がして、私はシリカの頭を抱え込む様にすると撫でる事にした。するとシリカが前から、ユイが後ろから私の身体を抱きしめて来る。そしてこの状況が、私の中にあった別れたくないと言う思いを強くする。だから私は自分にも言い聞かせる様に、そうであってほしいと言う願いも込めて……答える。

 

「……一緒には……居られない。でも……シリカが……ユイが……覚えて居れば、私は……そこに居る」

 

「!」

 

「……忘れないで」

 

 私も絶対に忘れない。シリカの事を。ユイの事を。この場には居ないけれど、アスナもリズもキリトも皆。もう会えないとしても、私の事を覚えて居てくれるならきっとそれだけで……私はそこに生きて居る。寂しさを感じるより、そこに居る嬉しさを感じたよう。その方がきっと幸せだと思える筈だから。

 

「うん、うん! 忘れない! 絶対にハクちゃんの事は忘れない!」

 

「私もです。絶対に、ハクさんの事は忘れません。例え消えるとしても、絶対に……」

 

 強く、私を抱きしめる手に力を籠めて言う2人。私達はそうして3人で抱き合い、何時の間にかに寝入ってしまうその時までお互いの事を思い続けた。そうして私はまた1つ、前へと進む。全てを終える日はそう遠くない。

 

【綾野 珪子『シリカ』 自己顕示欲 MAX・親和欲 MAX・養護欲 MAX】

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