※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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罪を背負う意味。新しい服

 私の目の前では耀が穏やかな呼吸をして眠って居る。衰退したコミュニティと言え、設備はしっかりした物が多いらしい。血が足りなくて不味いかと思ったが、それを解決する物もしっかりと常備されていた。故に運ばれた当初は予断を許さない状態だったけれど、今ではこのまま寝かせてあげれば次第に良くなるとの事。初めてのギフトゲームで死者が出る様じゃ、これから先も含めて未来は無い。

 

「春日部さん、もう平気なの?」

 

 耀の近くに三毛猫と一緒に控えて居た時、飛鳥が入って来る。どうやら耀を心配して来たらしい。この場に居るのは三毛猫と私だけの為、先程の言葉は恐らく私に向けられた物。私は飛鳥の言葉に頷いて肯定すると、安心した様な表情をして耀の姿を見る。その姿は耀を心配して居る……とは別の何かを抱えて居る表情。やはり殺したと言う事実は重い物。当然と言えば当然だろう。

 

『姉さん、ほんまにおおきになぁ。……ここはもう大丈夫や』

 

『……分かった』

 

 飛鳥の表情を見て思いつめて居ると三毛猫も感じたのか、私にお礼を言うと耀の顔のすぐ傍まで移動して丸くなる。三毛猫なりに気を使ったのか、私なら何かを出来ると期待しているのか……どちらにしろ、放って置くつもりは無い。

 

 私は飛鳥のすぐ傍に移動すると服を傷つけない様に注意しながらその肩に上る。突然の事に驚いた表情をした飛鳥だが、すぐに微笑みながら「平気よ」と言って外へと歩き始める。長い廊下は静寂に包まれ、飛鳥の足音だけが聞こえて居た。が、それも突然止まる。飛鳥自身が歩みを止めたから。そして止まった飛鳥は目の前にあった扉のノブに手を掛けようとして……伸ばした手を見て停止した。その手は見間違える事無く【震えて】居た。

 

「……情けないわね。倒すと息巻いて置いて、いざ殺ったら自分のした行動に怯えて居る何て」

 

 静かに呟く飛鳥。だけど私はその言葉に少し納得が行かなかった。今の状態では会話をする事は出来ない。でも人の姿になれば、私は会話が出来る。故に私は周りを見た後、飛鳥の肩から横へと飛び退いた。当然ながら飛鳥は私に視線を向けて来て、私はその視線を受け乍ら迷わず人の姿になる。……裸なのは恥ずかしいけれど、それ以上に伝えたかったから。

 

「あ、貴女何して!?」

 

「……飛鳥は……情けなく無い」

 

「!」

 

 声を上げる飛鳥の言葉を無視して言えば、飛鳥は目を見開いて私を見て来る。身体では無く、まっすぐ私の目を。

 

「……生命を殺す。……それは……罪を負う事。……ガルドは沢山殺して居た」

 

「えぇ。知ってるわ。ガルドを殺した事で未来の命を救えたかも知れない事も。でも私が彼の命を奪ったことに変わりは無い」

 

「……なら尚更……違う。……飛鳥が感じる事は……そうじゃない」

 

「何が言いたいの? 私は誰かを殺しても何も感じない様になるべき、とでも言いたいのかしら?」

 

 飛鳥の瞳は今までと違い、私に敵意を向けて居た。それも尋常じゃないほどの敵意。だけど私は飛鳥に言いたいことを言えていない。だから飛鳥の言葉に私を首を横に振って否定する。私は飛鳥と違って未遂で終わったから、飛鳥程深い葛藤を感じては居ないと思う。だけど、例えそうだとしてもこれだけは伝えなければいけない。

 

「……自分を責める事……それは罪を認めたくないと言う事。……飛鳥が感じるべきは……違う」

 

「……」

 

「……その罪を背負って……その分も前に進む事。……ガルドの分も、子供の分も……前に」

 

 もしも自分のした事を情けないと、認めようとしなければそれは逃げて居る事ときっと同じ。今飛鳥がする事は、自分を責める事じゃない。ガルドを殺したと言う事実を背負って、ガルドが殺した子供達が居た事を受け止めて、自分のした事から逃げずに前を向く事。一度その道に乗ったのなら、最後まで進まなければ全ての経験となった存在に対する侮辱になってしまう。

 

 飛鳥は私の言葉を聞いて唯黙り続けて居た。だけどゆっくりと口を開き、最初に言った言葉は「そうね」と言う肯定の言葉。その後見せた飛鳥の表情は何処か憑き物が取れた様な表情をして居た。

 

「ガルドが殺した子供の分も、ガルド自身の分も私の罪で私の糧。否定しては行けない」

 

「……ん」

 

「ありがとう、ハク。少しスッキリしたわ……『猫に戻りなさい』」

 

 笑顔で答えた後、飛鳥は力を使う。飛鳥の言葉通り、私の意思関係なく猫の姿へと強制的に戻された。そして戻った私の持ち上げ、両手で抱く様にして私を抱える飛鳥。少し強めだが、「少しだけこうさせて」と小さく呟く飛鳥に私は文句を言う事は無かった。

 

 先程開こうとした扉に手を伸ばす飛鳥。その手が震えて居る様子は無く、少なくとも飛鳥の為になった事を嬉しく思う。が、再び飛鳥が扉のノブを触る前にその手は停止した。その理由は突然聞こえた轟音。どうやら外で何かが行われているらしく、私と飛鳥はお互いに顔を見合わせる。そして飛鳥は部屋に入るのを止め、音の正体を確かめるために行動を開始。私は飛鳥に連れられ、次の騒動が始まるきっかけの一幕に巻き込まれる事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サウザンドアイズ。白夜叉が居るその建物の中で、私は人の姿になって居た。目の前にはサウザンドアイズに初めて来た際に愛想の悪かった女性店員の人が居て、今現在の私の姿に何処か顔を赤くしている。と言うのも現在、私は【服を着て居た】。

 

 そもそもここに来た理由は少し前まで遡る。何でもノーネームに元居た存在がギフトゲームの景品に掛けられてしまっており、十六夜とジンはその存在を救出するつもりだったらしい。だけど突如そのギフトゲームは延期になり、最悪の場合は無くなってしまう可能性が出て来た。助け出すつもりだったらしいが、ゲームが開催されなければ当然景品を受け取る事も出来ない。

 

 景品になって居たのは【元・魔王】の吸血鬼。どうやらガルドの件でも少し噛んでいたらしく、ノーネームに私と飛鳥が話をして居た同時刻。来ていたらしい。そこで十六夜の力を見ると言う事になり、始まったのが力試し。私達が聞いた轟音はその音だった様で、その後私達が到着するとその吸血鬼が【石にされて居た】。何でも【ゴーゴンの威光】と言うギフトを使われたらしい。

 

 現在その吸血鬼を所有しているのは【ペルセウス】と言うコミュニティで、サウザンドアイズの傘下に位置するコミュニティとの事。そこでその吸血鬼を返してもらうためのギフトゲームを取り付ける交渉をしようと言う事で、私達はここに来た。因みに耀と三毛猫はお留守番。まだ目覚めて居ないし、目覚めたとしても安静にしておくべき。故にここに来たのは黒ウサギ・十六夜・飛鳥・私の4人。

 

「そろそろ良いか……の……」

 

 襖を開けて入って来た白夜叉は私の姿を見て言葉を徐々に小さくしていく。と、微かに呻く様な声を上げ乍らゆっくりと此方へ歩き始める。その姿は中々に怖く、私は一歩後ろへと下がる。女性店員は呆れた様な諦めた様な表情をしながら私に向かって手を合わせ、私はやがて壁へと追い込まれてしまった。

 

「ぬうおぉぉぉぉぉっ! 最高だぞお主! やはり真っ白な甘ロリにして正解だった! あぁ、お礼は良いぞ! その代わりその儚く可愛らしい身体に頬擦りさせて貰おう! さぁ! さぁ!」

 

「……白夜叉……落ち着っん!」

 

「な、何なんじゃこれは! こんなフワフワな生地を使わせた覚えは無いぞ! はっ! まさかお主が着たことによって材質の質が上がったのか! そうだ、そうに違いない! 最高だの~! 一生こうして居たいの~!」

 

 追い詰められた私は白夜叉を落ち着かせようとしたが、結果は失敗。私は白夜叉の腕の中で綺麗に抱きしめられ、肌や頬を頬擦りしたり擦ったりされる。白夜叉の擦る手つきは地味にいやらしく、それ以上入られると我慢できないギリギリを行き来する。狙ってやって居るのかどうなのか……とにかく私はしばらく解放されそうにない。

 

 そもそも私がこの服を着て居る理由は、最初ここに来て服が無くなってしまった事が原因。人の姿になれば裸になってしまう現状で、私は非常に背も低い。コミュニティに代えの服は子供用で沢山あったけれど、その日白夜叉が名乗りを上げたのだ。『次に来る時、お主に似合う服を用意して置こう』と。そしてその条件として、白夜叉が用意した服以外は着ないとの事になった。私に拒否権は無く、十六夜が勝手に承諾。今日この時まで私はずっと猫の姿で居るしか無かった。が、それも今日で終わり……の筈。正直この格好は少し恥ずかしい。

 

 未だに私を拘束して勝手に私の身体を堪能する白夜叉。余りの長さに様子を見に来た黒ウサギが来るまで、私はこのままだった。

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