※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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ペルセウスとの交渉。身代わりの選択肢

「何時まで待たせるき……だ」

 

 黒ウサギのお蔭で白夜叉から解放された私はようやくここに来た本題、コミュニティ【ペルセウス】との話し合いの場に連れてこられる。そこには苛立った様子の見知らぬ男と同じく苛立った様子の飛鳥。いつも通り飄々としている十六夜の姿があった。どうやら男の方が相手らしく、【ノーネーム】相手の話にも関わらず待ち続けて始まらない事に苛立って居る様子。飛鳥はそんな男に苛立って居ると言った所だろう。大方、話し合いが始まる間のこの待ち時間に男が何か言ってそれが私達を貶す様な物だった。そんな所だと思う。

 

 店員さんが襖を開ければ白夜叉と黒ウサギが入って来たことで男は苛立った声音で喋る。だけど何故か私が入った時、一瞬それが途切れた気がした。見れば目を見開いて居て、同じ様に飛鳥も私を見て驚いて居る様子。十六夜だけが「へぇ~」と楽しそうに私を見て居た。

 

「白夜叉」

 

「なんじゃ?」

 

「グッジョブ!」

 

 しばらくの静寂が支配していた中、十六夜と白夜叉の間でその様な会話が行われる。詳しくは分からないけれど、白夜叉は十六夜に取って何か良い事をしたらしい。褒められた本人は胸を張って「ふふん」と言って居る。と、ここで今まで黙って居た飛鳥が立ち上がって私の元へと歩いて来る。未だに男の人は私を見ながら口を開けたままだけれど、放って置いて良いのだろうか。

 

「驚いたわ。まさかここまでなんてね」

 

「?」

 

 何がここまでなのか分からず、私は首を傾げるしか無かった。飛鳥はそんな私の頬に手を伸ばしてきて、微笑むだけ。先程の苛々は何処へ行ったのか。と、ここでようやく男が戻って来たようで声を上げる。その第一声は「ノーネーム如きが僕を待たすなんてどうかしてるね」と言う皮肉の様な物。微笑んでいた飛鳥の表情にも少し皺が増え、白夜叉は立ち上がって居る飛鳥と私に座る様に指示をする。

 

 どうやらこの場に居る中で唯一知らない男こそ、ペルセウスのリーダー。ルイオス・ペルセウス。私達は今から彼と話をするらしい。……私が居ても殆ど何も意味を成さないとは思うけれど、一応一員として話は聞いておくべきかも知れない。ルイオスが座って居る位置に向かい合う様にして十六夜・黒ウサギ・私・飛鳥の順番で座る。そして私達の間に白夜叉が座り、話し合いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……お腹が空いて来た頃、話は終わりへと近づいて居た。長い話をして居たけれど要約すれば、私達が助けようとして居た吸血鬼は彼らに取って景品であり所有物。返して欲しいと言った所でそれは叶わない事であり、私は知らないけれどペルセウスが私達ノーネームの敷地内で無礼を働いたと黒ウサギが主張しても証言は存在しない。当然その場に居た黒ウサギと十六夜は被害者故に証言の対象にならない。また吸血鬼の石化を解いて聞けば良いと黒ウサギが主張したが、吸血鬼は元々私達が居るコミュニティの仲間故に口裏を合わせる可能性があると言う理由で却下される。その事に悔しそうにして居る黒ウサギ。つまるところ、ギフトゲームは出来ない。

 

 ルイオスは手を出せないと知った上で吸血鬼のこれからについて説明し始める。『身体は子供で愛想は良く無い。だけど可愛いくて、強気な少女を組み伏せ鳴かすマニアには売れる』……そんな怒りを感じ得ない様な内容に、黒ウサギだけでなく飛鳥も怒りに震え始めて居る。それでもしっかりと抑えて居る中、飛鳥も我慢出来なくなる様な【取引】をルイオスは進めて来た。

 

【吸血鬼をノーネームへ返す。代わりに黒ウサギが自分の元へと来て一生隷属する】

 

 要は黒ウサギに身代わりになれ、と言って居る様な物。ルイオスは分かった様な表情で黒ウサギに「月のウサギだったら本望だろ?」と言い続け、言われた本人もまた何も言わずに黙って居る様子。その事に我慢できなくなった飛鳥が立とうとした時。ルイオスは「あぁ、そうだ」と何かを思いついた様に声を上げて……私を見て来た。

 

「そこの彼女でも良い。ロリに興味なんか無かったけど、この素材は流石に放って置けないだろ? 大きくなる間、ご主人様だと教えて従順な女性に育てる。うん、悪くないね」

 

 正直に言えば、寒気を感じてしまった。もしもこの男の元に連れていかれれば最後、女として最悪な運命を辿る事になると何となく理解が出来たから。……そう考えれば吸血鬼のこれからについても感じる事が出来た。好きでも無い人の場所に連れて行かれて、好き勝手されるなんて絶対に嫌に決まってる。……何としてでも助けるべきだろう。でもその方法は私と黒ウサギのどちらかが行く事。

 

「どうする? 自分の行動であの女の未来が決まる訳だ」

 

「『黙りなさい!』」

 

 言葉を続けて居たルイオスに我慢の限界に達した飛鳥が能力を使う。使って居た口は歯と歯が噛みあい立てる音と共に塞がれ、声を発せなくなるルイオス。だけどまるで抵抗する様にルイオスは口を無理やり広げ始めた。強制的に塞いだことにかなり怒っている様で、飛鳥に向けて敵意の眼差しを向ける物のその前に飛鳥は再びルイオスに命令する。『地に頭を伏せて居なさい!』と。

 

「グッ! お、んなっ! そんなの、が、通じるのなぁ! 格下だけだ、馬鹿がぁ!」

 

 初めてだったのかもしれない。飛鳥の命令による強制力を自力で振りほどき、立ち上がったルイオスは何処からともなく武器を取り出すと飛鳥に向けて振り下ろす。飛鳥はそれに避ける事も出来ず、目を覆うしか無かった。が、それは一瞬にして目の前に現れた十六夜の【1本の指】で抑えられた。その事実はルイオスに取って【ありえない】事だったのか、驚いた表情で十六夜に「何だよお前」と呟く。それに十六夜は余裕綽々と答えて「喧嘩なら利子付けて買うぜ?」と宣言。だけどこの場を見守って居た白夜叉の声に寄り、納められる。本来私達は話合いをさせてもらって居る立場故に、強く出れないのが事実なのだ。……十六夜なら関係なさそうだけれど。

 

 始まった喧嘩は一瞬で片が付く。だけどこちらが先に【手を出した】事は事実であり、今まで黙って居た黒ウサギは侮辱された件について互いに不問とする事で終わらせる。そして続ける様に「先程の【私の】お話。少しだけお時間をください」と返答。飛鳥はその事に驚いた様子で行くことを止めようとするが、それも含めて「仲間と相談するためにも」と続けた。

 

 ルイオスは黒ウサギの言葉を了承し、一週間待つと宣言。その日は解散となり、重い空気が私達の中を支配する。十六夜は白夜叉と何かを話して居て、黒ウサギは何も喋らない。飛鳥はきつい表情で黒ウサギを見て居て……こっちにもその視線を向けて来た。確かルイオスは黒ウサギか私と言って居たから、黒ウサギの行動を止めようとしている飛鳥が私に来るのは当然かも知れない。

 

「ハク。まさかあんな男の場所に行こうとしてないわよね?」

 

「……」

 

「答えなさい!」

 

 答えられない私に大声で言う飛鳥。強制しなかったのは飛鳥なりの我慢なのかもしれない。正直なところ、私は行く気等無い。私の目的のためにも、飛鳥達から離れる訳には行かないから。だけど黒ウサギに取って吸血鬼は大事な仲間であり、そんな存在を助けられる数少ない手段が私なのならば、ここではっきりと答えるのは黒ウサギに取って良い事では無い。現に飛鳥の言葉に黒ウサギが反応し、私に視線を向けて居た。……今彼女に必要なのは冷静になる事なのかもしれない。黒ウサギは目の前の事に今現在囚われてしまって居る。だけど本当は気付かなければいけない事があるから。

 

 私は黒ウサギの元に近づくと、その手を取る。黒ウサギは驚いた様な声を上げるけれど、私は唯「帰ろう」とだけ言ってその手を引っ張る。飛鳥の声が聞こえる中、私は力を使って空高くへと黒ウサギと共に飛びあがった。

 

「お、お猫様?」

 

「……」

 

「!?」

 

 黒ウサギが声を掛けて来るけれど、私は一気に速度を上げると言葉を発する余裕は無くなってしまった様子。羽の力は持って1分の為、黒ウサギも居る今落ちる訳には行かない。故にノーネームまで全速力。その結果として、黒ウサギの悲鳴が木魂するけれどそれは……気にしない。今は何よりも彼女が気付ける環境に移動する事が先決だから。

 

「……責任は……取って。黒ウサギ」

 

「はぁ……はぁ……も、もう少しゆっくり……ってはい?」

 

 気付かなければいけない。十六夜達を呼んだのは、彼らを導くのは黒ウサギなんだと言う事を。

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