※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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今話にてようやくハクの戦い方が……。結構人を選ぶかもですね。


求めた物。力の覚醒

 今回のギフトゲーム勝利条件はペルセウスのリーダーである男。あのルイオスを倒す事。だけど彼に挑むためにはペルセウスに所属する者達に姿を見られては行けない。もしも見られてしまえば、その時点で彼に挑む権利を失ってしまうらしい。……つまり、誰にも姿を見られる事無く最奥へと辿りつかなければその時点で私達は負けてしまうと言う事。故に囮となる組と、ルイオスを討つ組とで分かれる事となった。そして私は……飛鳥の腕に抱かれ、宮殿の中へと入って居た。

 

 ルイオスを倒す。それを出来る力を持つのはノーネームの中で恐らく十六夜のみ。ジンはリーダーであり、リーダーが失敗すればその時点で私達全員の敗北が決定してしまう。黒ウサギは【月のウサギ】故にこのギフトゲームの審判を務めて居る為、私達に協力することは不可能。結果としてジンを守りながらルイオスへと向かう本命と、その本命に気が向かない様に大暴れをする囮の2組に分かれる事になった。十六夜が見つかってもジンが負けても終了な為、2人は一緒に。十六夜だけでは危ないと言う事で耀も加わり、本命は3人。残った決定打にはなれなくとも戦える飛鳥と、戦力として期待できない私は囮と言う事になった。人の姿から猫の姿になったのは、飛鳥曰く『危ないから腕の中に居なさい』との事から。

 

 宮殿の中で別れた私達はエントランスの様な広い場所へと出る。そこには数えきれない人数、ペルセウスの兵士たちが居た。彼らは一様に入って来た飛鳥の姿に笑みを浮かべて馬鹿にした様な表情を浮かべ始める。そしてその中に居た1人が前に出ると、飛鳥に告げる。

 

「馬鹿め。我らに見られた時点でお前はルイオス様に挑む資格を無くした!」

 

「そんなの承知の上よ。確かに私は挑めないけれど……貴女達を倒す事くらい簡単よ?」

 

 飛鳥は言われた言葉に髪を片手で一度流しながら答える。ノーネームである以上、馬鹿にされる事は完全に予想して居た。飛鳥の言葉を聞いて沢山の兵士たちが一斉に笑い声を上げて居るその姿は、数日と言えど私が居た場所を馬鹿にされた気がして正直不快でしかない。前に出て居た1人も飛鳥の言葉に馬鹿にした様な笑みを浮かべて剣を取り出す。

 

「ノーネーム風情が我らを倒すだと? 馬鹿を言え。ギフトゲームの最中、猫などに現を抜かす小娘に我らが負ける筈が無い!」

 

 そう言うと同時に他の兵士たちも剣や斧を抜き放つ。何処までも私達を弱者と見下す彼らに飛鳥は自分のギフトカードを取り出すと、そこから何かを取り出す。それは小さな苗。しかしそれはすぐさま巨大な物へと成長し、飛鳥は私を抱え乍らその上に乗っていた。今まで2階などから見降ろされていた私達はすぐに見下ろす形となる。そして前に出て居た兵士は驚いた様に声を上げる。

 

「水樹だと!? そんなまさか。くっ! 掛かれ!」

 

 飛鳥が取り出したこれはこの世界に来たその日、十六夜が蛇神を倒して手に入れた恩恵の水樹。本来ノーネームは水も不足な環境だったけれど、これのお蔭で無限に水を手に入れる事が出来る様になったらしい。そのお蔭でお風呂にも入れ、そして今もまたゲームで活躍しようとして居た。……十六夜にはゲームを出来る事になった事も含め、性格に難はあれど感謝するべきなのかもしれない。

 

 兵士たちからしてみれば、蛇神を倒さなければ手に入らない水樹を衰退したコミュニティであるノーネームが持って居る事が信じられないらしい。「偽物だ!」と叫ぶ兵士たちも居る中、号令と共に兵士たちが一斉に迫り始めた。だけど飛鳥は命令できる力を利用し、水就に水を出す様に言う。飛鳥の力は意思を持つ物だけでなく、万物に効果があるらしい。言われた言葉と同時に水樹は濁流の様に水を吐きだし、兵士たちを一瞬にして流してしまう。……だけど兵士たちの数は数十で済む数じゃない。故に流されても尚、沢山の兵士たちが水樹を上って飛鳥に近づこうとし始めていた。

 

 何度も水を吐きだし、兵士たちを流していく。しかしそれでも流れずにその身体を必死に止め、飛鳥へと確実に近づいて来る者も居た。リーダーがどうであれ、彼らは彼らなりに戦ってきていたのだからそれなりの実力はあるんだろう。私は飛鳥から飛び降りると、私の名前を呼ぶ飛鳥を背後に上って来ていた兵士の頭に乗る。何も出来ないけれど、何もしない訳には行かないから。そうして乗った兵士から飛び上がれば、その反動で兵士は落ちて行く。そして次に違う兵士の元へと飛び乗り、同じ様にして落としていった。

 

「くっ! この!」

 

「! 『武器を離しなさい!』」

 

 飛鳥の言葉と共に、兵士が武器を落とす。その兵士は私を狙って居た様で、飛鳥は私を助けるためにその兵士へと力を使う。だけど飛鳥は1つにしか命令できないため、水樹への命令が取り消されてしまった。それはつまり兵士たちを止める物が無くなってしまったと言う事。そしてその結果、飛鳥のすぐ傍へと兵士が近づいて居た。……どう考えても私のせい。役に立とうとして、結局失敗した私の。

 

 さっきまでは優勢に進んでいた状況がすぐに一変してしまう。飛鳥は前回のギフトゲームで手に入れた剣を片手に水樹の上で上って来てしまった兵士の1人と戦いを始める。もう命令して居る余裕も無く、今は1人だから耐えられてもすぐに人数で押されてしまうだろう。私はまた兵士たちを足場に離れて居た飛鳥の元へ戻ろうとする。だけど……『私に一体何が出来る?』。前の世界では武器があって、でも今の世界では何も無い。相手も魔物などでは無く、人間で……私には何も出来ない。何も……!?

 

「な、なんだ!?」

 

「ハク!?」

 

 兵士たちの戸惑いの声が、飛鳥の私を呼ぶ声が聞こえる。それは突然その場が【光り始めた】からであり、私自身も困惑していた。光って居るのは私……では無く、私の目の前。突然私の目の前で光始めたそこには、一枚の透明なカードが浮かんでいた。そしてその光の中で、私は何も映さないカードに彼の姿を見る。

 

『君、名前は? どうしてこんな所に?』

 

『単刀直入に聞く。ハク、君は一体何だ?』

 

『俺もハクには何回か助けられてる。だから俺は君に出来る事をしたい。それだけだ』

 

 人の姿で初めて出会った時。私の正体が分からずに聞いて来た時。そして……そう。言うなれば、心が繋がった時の。そんな様々な私の過去に起こった出来事がそのカードの中で再生される。そしてその内容は一様に前の世界で出会った彼……キリトの物。そう理解した時、私はそのカードに無意識の内に手を伸ばしていた。やがて私の指先がそれに触れた時、映って居た映像は触れた場所を中心に波紋を起こして揺れ始める。……そして私は更に強い光に包まれた。

 

「ハク!!!」

 

 飛鳥の声と共に、私の周りに居た兵士たちがまるで何かに飛ばされる様にして一斉に弾かれる。何時の間にか人の姿へと変わって居た私の傍にカードは徐々に近づいて来ると、やがてそのまま【私の胸の中へ】消えて行ってしまう。一体それが何だったのか? 私自身、理解する前に身体が動きだして居た。【左手に浮かぶその模様】を撫で、口がその言葉を紡ぐ。

 

「……憑依召還……キリト!」

 

 何も知らない力の筈なのに、これが私のギフトカードに存在していた物の1つ。世界を超える絆(ワールドリンク・クロスオーバー)であると何故か理解出来た。そして意思とは関係なく呟いた言葉と同時に私の服装は白夜叉が用意した真っ白な甘ロリから真っ黒なコートへと変わり、私は服装のみキリトと同じ姿になる。……いや、服装だけでは無いらしい。【髪も真っ黒】だから。

 

「ハク……なの?」

 

 髪も変わり、服も変われば流石に誰だか一瞬では理解できないだろう。私でもそうだと思うから。突然人になり、白で髪も服も統一していた物が真っ黒になったその出来事に兵士たちも驚き続けていた。だけどその内の1人が私に向かって我に返ると同時に切りかかって来る。飛鳥は驚いて居てそれを止める余裕も無く、私もまた突然の事に反応できない……筈だった。まるで今までずっと戦って来たかの様に身体が動き、気付けばキリトが使っていた片手剣。エリュシデータを手にその攻撃を極最小限の移動で躱し、切り返していた。

 

「か、掛かれぇぇ!!」

 

 私の行動に他の兵士たちも我に返ると一斉に号令を聞いて突撃してくる。私は元が猫故に身体能力はそこそこ高かった。しかしそれ以上の身体能力が出る今の身体を利用し、私は兵士たちに一気に駆け出す。迫る刃がまるでスローの様な感覚の中で、私は躱すと同時に致命傷にはならない様に。だけどこのゲーム中はもう立てない様なギリギリの位置を的確に攻撃していく。確証はないけれど、この私の速度と身体能力。そして剣の扱い方は正しく【キリトがして居た物】だと思う。キリトの戦闘力は凄まじかった。それは初めて彼が二刀流を見せた時に見たから理解できる。そしてその力を使えるのならば……私は役立たずにはならない。

 

 飛鳥が水樹を動かし、私は跳躍して水を避けながらも兵士たちを確実に減らしていく。そうして戦い続ける事しばらく、突然襲って来た赤黒い光の光景を最後に今回のギフトゲームに関する記憶はそこで終了する。そして私が次に意識を取り戻した時、全てが終わって居るのだった。

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