あれからどれくらい経ったのだろう。私は目が覚めたあの日から外に出る事が出来ず、ペストに襲われ続ける日々を過ごして居た。ペスト自身、私の存在を目的にして居た様で何か要求してくる訳では無かった。強いて言うならば、『身体を求めて来た』と言う所。自分が何処に居るのかも分からず、唯ギフトゲームが始まるその日を待つ事しか出来ない現状。私は必死にペストの攻めに耐え続けて居た。そして
「マスター、そろそろですよ」
「そう。待って居なさい、今日で貴女は完璧に私の者になる」
部屋の中に入って来たラッテンにペストは返事をすると私に視線を向けて来る。今この時も、ペストに抱きしめられてベッドの上に座らされていた私は寄りかかって居たペストが移動したことでベッドの上に仰向けのまま倒れてしまう。休みなんて本の僅かで、基本的に攻められ続けて居た身体は既に力を入れても反応すらしてくれない。羽が弱点だってずっと思って居たけど、実はこの身体全てが弱点なんじゃないかと思う様になってきた。
ペストは「待って居なさい」と言い残し、部屋を後にした。動かない身体に支配され、私は去って行く音だけを聞いて目を瞑る。私に出来る事はやっぱり待つ事だけ。十六夜達がペストの率いて居るコミュニティを倒し、私を解放してくれる事を祈るだけ。……前の世界でもそうだった、私は何故か何かに縛られて助けられて……どうしてこの様な目に会うのだろう。何かを間違えてしまって居るのか、だとするならばどうすれば良いのか。私はこれから始まるゲームの間、部屋で1人考え続ける。答えがあるのかも分からない、その考えを。
身体が動く様になり、外から閉じられてしまって居た扉に結局何も出来なかった私はベッドの上でジッと座って待ち続ける事にした。次にこの部屋に誰かが入って来た時、それがペストなら私はもうお終い。もしもそれが黒ウサギ達だったなら、私は解放される事になる。
静かに座り続けて居た私は何処かで感じた様な浮遊感に突然襲われる。身体が急激に自分の支配下を離れた様に倒れ、瞳が閉じて行く。一体何が起きたか等、1度経験した事のある私にはすぐに理解が出来た。
【問題児たちが異世界から来るそうですよ?】
【久遠 飛鳥 変化欲 78/100・求知欲 82/100・支配欲 20/100】
【春日部 耀 親和欲 MAX・求知欲 94/100】
【黒ウサギ 承認欲 78/100・養護欲 79/100・性欲 10/100】
【残り期限・20日】
目の前には入って来た時と同じ扉。その開き具合はやはり通るには狭すぎる物で、満たさない限り開く事は無いんだろう。……もし、20日以内に満たせなかったら私はどうなるのか。考えなくても何故か分かる。私はこの世界に取り残され、この生が尽きるその時までここに生きる事になるのだろう。……待って居る人が居る訳じゃ無い。でも私は元の世界に、私の世界に帰りたい。
「!」
感覚が戻り、私は身体を起こす。と同時に扉の向こうから足音が聞こえてくることに気付いた。数は分からないが、複数人である事は恐らく間違いない。ペストもラッテン・ヴェーザーと仲間が居た。だから足音が複数だからと言ってペストじゃないとは限らない。この部屋の扉を開くのはペストか、それともノーネームの誰かか……扉のノブは回された。
「……」
「! やっと……やっと見つけました!」
「……黒ウサギ」
扉を開いたのはこの場所の持ち主であるペストでは無く、ノーネームの苦労人である黒ウサギ。開かれた扉の向こう側にお互いの姿を見た時、先に反応したのは黒ウサギだった。私の存在を確認するや否や声を上げ、飛び込んで来た黒ウサギ。私よりも大きなその身体が私に圧し掛かろうと近づいて来た。が、私の近くに来た瞬間に黒ウサギは急停止する。いや、急停止させられた。
「い、痛い! 痛いです! 十六夜さん耳を引っ張らないでください!」
「ったく。あのまま飛び込んでたら今頃白猫はペチャンコだぜ? よっ、久しぶりだな」
黒ウサギの2本の耳が突然背後に現れた十六夜の右手に握られ、それを引っ張られた事で黒ウサギは強制的に其の場で急停止する事となった。良く見れば十六夜の左腕は怪我をして居る様子。恐らくギフトゲームの時に負った傷なんだろう。……十六夜が怪我をしたところ、初めて見たと思う。3人の内誰と戦ったのかは分からないけれど、かなり苦戦したらしい。
私は軽く声を掛けて来る十六夜に近づくとその怪我を治す為に力を使った。ペストに負けた後、私は命令によって力を使えなくさせられていた。だけど今ここに2人が居ると言う事は間違い無くペスト達が負けたと言う事。つまり【グリムグリモワール】は解散して、私を縛って居たペストも居なくなったと言う事。その確認も込めて発動すれば、思った通りに羽が私の背中から出現した。そして十六夜の腕に集中して力を使えば……うん、問題ない様子。
「別に気にしてなかったんだけどな。まっ、ありがとよ。あぁ、お嬢様も春日部も今頃血眼でお前を探してるぜ?」
「十六夜さん! とりあえず離してください! このままじゃ黒ウサギの素敵耳が!」
十六夜の言葉と同時に涙目で黒ウサギが声を上げる。そしてその言葉に十六夜は興味を持ったように「抜けるのか?」と聞いて再び引っ張り始めた。当然悲鳴を上げる黒ウサギだけど、私は今回はその光景を背にこの場を去る。先程の十六夜の言葉はつまり、『早く2人に会って安心させてやれ』って事だと思うから。だからこそ、私は2人に会うために移動するのだった。
ノーネームのコミュニティ内で、私は自分の部屋に久々に入って居た。だけどこの部屋に入って居るのは現在私だけじゃない。私はベッドの上に座って居て、そんな私の目の前には黒ウサギ・飛鳥・耀の姿があった。無事に帰って来る事が出来た私はすぐにここに連れて来られた。それは疲れきって居るかも知れないと言う理由らしく、それならお互いさまと思って居たのに……その裏に別の理由があったらしい。
「……戻らないの?」
「少し、聞きたいことがある」
「えぇ。ねぇハク? 誘拐されて居る間、ペストに何をされたの?」
「!」
何時までも立ち続けて居た3人に私は言う。と、それを最初に耀が答えると飛鳥が続けて私に聞いて来た。どうしてそんな事を聞くのか、一体何がしたいのか……何故か理由を察することが出来てしまう。
「ギフトゲーム中に彼女、言ったんです。『あの子の喘ぐ姿は素晴らしい』と。まるで自慢するみたいに笑みを浮かべて!」
黒ウサギはそう言って拳を握る。そしてそれをゆっくりと解くと静かに私に近づいてきて、「穢されてしまったのですか?」と聞いて来た。耀は黒ウサギの言葉に辛そうな表情を浮かべ、飛鳥は私を見つめて来る。別に処女を奪われた等と言う訳では無いけれど、彼女の好きな様に身体を弄られていたのは事実。私は3人に「平気」とだけ答えたが、私の答えが気に食わなかった様に飛鳥が表情を不機嫌そうに変化させると近づいて来た。
「貴女が例え平気でも私達は平気じゃないのよ。……と言っても正直に言う訳無いわよね。はぁ~。あんまりしたく無かったけど」
「あ、飛鳥さん。本当にするのですか? 確かにお猫様の事は心配ですが、でも」
「私は気になる。ハクは1人で抱えるから……見て居るだけは嫌。私は、ハクの力になりたい」
耀の言葉に黒ウサギは「耀さん」と小さく呟き、その姿を見て居た飛鳥が「どうするの?」と黒ウサギに質問する。今この場に私の意見は無いらしく、黒ウサギは意を決したように「私も参加します」と答えた。と同時に3人の視線が一斉に私に向けられる。恐らくこれから行われるのは欲望を吐きだす行為でもお仕置きなどと言う躾でも無い。それは私の処女を確認する言わば検査である。