※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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白夜叉の謝罪。巨人の手の上で

「本当に済まなかった」

 

 今私の目の前では、頭を下げて謝罪して来る白夜叉の姿があった。

 

 私はペストから解放されてコミュニティの敷地内に無事戻る事が出来た。そして戻ったその日は飛鳥達によって部屋で過ごすことになり、それから数日が経ったある日の事。『サウザンドアイズ』の白夜叉から私は呼び出しを受けた。黒ウサギが少し驚いた様子で手紙を見せて来て、そこには私に来て欲しいと言う内容。何の用件があるのかは分からなかったけれど、悪い事をする存在では無いと分かって居るから私はこうして彼女の前に姿を見せて居た。そして入って早々、言われた言葉がこの謝罪だった。

 

「私は過信し、安易に封印されてしまった。結果様々な者達を危険に晒してしまい、その中でも特にお主は……謝罪だけで済まそうとは思わぬ。だが、それでも謝罪させて欲しい」

 

「……」

 

 そう言って再び白夜叉は頭を下げる。確かにあの時、白夜叉は大会が始まる際に『自分が居れば大丈夫』と大きく公言して居た。だけどその後、ギフトゲームにはペスト達のやり方で参加できなくなってしまった。その結果と言う訳では無いけれど、私は白夜叉の目の前で攫われてしまったり、様々なコミュニティの存在が辛い状況に陥ってしまったのは確か。……白夜叉はその事にかなり自分を責めてしまって居るらしい。

 

「……私は……平気」

 

「お主が平気でも私が平気では居られんのだ。黒ウサギに聞いたが、穢されて居ないと知った時は心底安心した。そしてそれと同時にお主がどれほど危険な事になって居たのか改めて理解した。私は……何も出来んかった」

 

 白夜叉は下を向いたまま自分の膝に乗せて居た手を強く握り締め始める。でもあの時何も出来なかったのはきっと私も同じ。私は羽の力があっても、その羽自体が弱点になってしまって居た。ラッテンを相手に足掻きはしたけれど、結局私はあの時負けてしまった。……このままじゃ駄目。私は前の世界もこの世界も、守られてばかりだ。きっとこれから先、他の世界に行った時に私は今のままでは負けてしまう。

 

「とにかく、お主には本当に済まないと思っておる。罪滅ぼしと言う訳では無いが、私に出来る事なら何でも言ってくれ。力になろう」

 

「……なら……お願いがある」

 

 私は強くなる必要がある。自分の事を守れる様になる必要が……飼われ、拠り所を必要としなくても済む力が。この世界に居られる日々はもうそんなに残って居ない。だから残りの時間、残った皆の欲を満たすと共に私は白夜叉にお願いする。『私を強くしてほしい』。と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白夜叉に呼ばれた日の翌日、私は飛鳥に中庭に呼び出されて外に出た。久しぶりに猫の姿になって外に出ると、何時もなら空に輝く太陽がまぶしい筈なのに今日は私の足元が何故か暗い。確か今日外を見た時、快晴だったのを覚えてる。私は疑問に思って空を見上げた。するとそこには赤い大きな巨人の姿。今の今までこんな存在はここには居なかったと思うけど、飛鳥はどうやらこれを私に見せたかったらしい。

 

「ディーンよ。私達の新しい仲間」

 

「なかま!」

 

 飛鳥の紹介に合いの手を入れるのは、その飛鳥の肩に乗って居る小さな子供のメルン。北のあの場所で飛鳥が拾ったらしい。そして目の前のディーンもまた、拾ったのかも知れない。……どう考えても拾える大きさでは無いけれど、でもあの場所で仲間になったぐらいしか思いつく場所は無い。

 

 私が見上げて居ると、飛鳥がディーンの傍に近づく。そして何かを呟けば、大きな音と共にその身体が動き出した。そして突然私に両手を伸ばしてくると、器の形にして私をその上に乗せる。何時の間にか飛鳥もディーンの肩に乗って居て、持ち上げられた私はかなり高い位置に場所を移動させられた。視界がかなり高くなった事もあって、見える風景は今まで見えなかった物ばかり。

 

「これ、子供達に人気なの。ハクはどうかしら?」

 

 そう言って笑みを浮かべる飛鳥。確かにこの光景は中々体験できない物。だけど今の言葉はどうにも子供扱いされている気がして少し不服に感じる。……でも今はすがすがしい光景が目の前に広がっているから水に流そう。もし何か言っても今の私では飛鳥に遊ばれるのが目に見えて居るから、特に。

 

 ディーンの指の上に座った私のすぐ傍に飛鳥が近寄って来る。どうやら肩から移動してきたらしく、飛鳥は私の身体を抱き上げるとディーンの両手による器の上に座り込んだ。と、今度はメルンが飛鳥から私の上に飛び乗って来て背中に潜り始めた。そして「ふかふか!」と喜んだ後、眠りに付き始めてしまう。どうやら私の背中が気に入ってしまったらしい。

 

「しばらくこのままでお願いできる?」

 

『……』

 

 飛鳥の言葉にディーンは目を一度光らせて答える。多分了承したんだと思う。普通目の前に両手を出したままの体制は辛いけど、ディーンの場合は特に問題無いらしい。そうして私はディーンの手の平の上で飛鳥に抱かれ、メルンに乗られながら時間を潰すことになる。さっきまでディーンの影に隠れて居た太陽は今私達を暖かく照らして居て、徐々に眠気が私を襲って来た。

 

「? 眠くなったの? 仕方ないわね」

 

 私が眠くなってしまった事に気付いたのか、飛鳥はメルンを起こさない様に気を付けると同時に私の眠気を覚まさない様にも気を付け乍ら体制を変える。座って居た体制から横になり、片手を私の下に入れてもう片方の手は関係の無い場所へ。枕と言うよりは胸に近い部分だけれど、その体制はさっきよりも確かに寝付きやすい。メルンは私の背中でもぞもぞと一度動くもすぐにまた深い眠りに入り、私は閉じそうな瞼を開けて飛鳥を見た。

 

「寝たいなら寝なさい。この後なら、私はもう特に予定も無いから平気よ」

 

 そう言って私の頭に手を乗せて優しく撫でて来る飛鳥。太陽と飛鳥の暖かさが最後の止めとなって、私の瞳はゆっくりと閉じて行ってしまう。……こんな日々の終わりも、近いと思うと少し寂しいかも知れない。

 

「ふふ。まるで私とハクだけの世界ね、ここは」

 

 飛鳥の小さな呟きが聞こえる。ディーンは感情があるのか分からないけれど飛鳥の物なんだろう。そしてメルンは私の毛の中に居るから飛鳥からすれば既に余り見えて居ないのかも知れない。別に何かしてくる雰囲気では無いから恐らく大丈夫の筈。私は特に警戒すること無く、飛鳥の手の中でそのまま意識を手放す事になった。

 

『久遠 飛鳥 変化欲 92/100・求知欲 MAX・支配欲 58/100』

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