※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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欲の満たし方。寂しがり屋な黒ウサギ

【残り期限・12日】

 

 私は今、どうするべきか迷って居た。耀の欲は恐らく今の様に過ごして居るだけでも問題なく満たされると思う。飛鳥は変化欲と支配欲が残って居て、前者は耀と同じ様にこの生活をして居れば私が関わらなくてもどうにかなる筈。後者は……飛鳥と居る時間を増やせば何とかなるのかも知れない。要は私と言う存在を自分だけのものに出来て居れば良いんだと思うから。

 

 問題は黒ウサギの欲。これが迷って居る事であり、承認欲・養護欲・性欲の3つが彼女の満たすべき欲。一緒に過ごして居て彼女は自分達が認められたいと思って居る事を理解出来た。そして前回の一件で大きく認められる事になる筈。つまり最初の欲は恐らく平気。養護欲はつまり養ってあげたい、お世話をしてあげたいって事。これは少し不安だけど、でも一緒に過ごして居れば飛鳥同様問題無い筈。……問題なのは最後であり、こればかりは私が行動を起こさない限りは何も変化しないのかも知れない。唯そう言う事をしたいなら何か手はあったかも知れないけど……あの時黒ウサギは間違い無く私を使って居た訳で、それはつまり【私】を求めて居るって事だと思う。

 

「……」

 

「で、私のところに相談しに来よったと。ふむ」

 

 私の目の前で白夜叉は腕を組んで考え始める。あの日、私は白夜叉に話をした。自分がここに居る理由、ここには後数日しか居られない事。強くして貰おうと頼むとき、私は自分からそれを説明した。残り少ない日数で教えて貰うためには、『長い時間を掛けての教え』よりも『短期間で身に着けられる事を少しでも』……そう思ったから。白夜叉はその時かなり驚いて居たけれど、最初から私が黒ウサギが呼んだ中に巻き込まれたのとは何か違うと思って居たらしい。だから『そう言う事だったか』と理解してくれた。

 

「押し倒してしまえ。そうすれば後は何とかなろう」

 

 そう言って笑みを浮かべる白夜叉。過程なんか考えずに求めるならきっとそれが良いかも知れないけど……流石にそれをすぐにやれる程私は獣になったつもりは無い。何だかんだで押し倒されてる事は多いと思うけど……でもそう言うのは色々と間が無いと駄目だと思う。

 

「……却下」

 

「だと思ったわ。お主は倒される側だからの」

 

 私の言葉に続けた白夜叉の言葉に私は目を細めて白夜叉を見る。私と同じ事を思ったとしても、口にされるのは余り良い気分じゃない。当の本人は扇子を広げて軽く振りながら「冗談では無いか」と悪気無さそうに答える。と、今度は少しだけ真剣そうな顔になって私を見つめて来た。何時もは軽い感じだけど、それでもしっかりして居る時はかなりの物。私は目を戻すと、白夜叉の目を見る。

 

「お主の事情は理解して居る。だがの、余りそれに囚われん事だ」

 

「?」

 

「使命を果たすために行う行為は利用と同じ。今のままでは黒ウサギの心を利用して居るのとそう変わらん。他の欲同様、一緒に居る事で。使命とは関係ない思いで進めて行く方がきっとお主にも相手にも良いのではないかの?」

 

「……使命とは……関係ない……思い」

 

 使命を果たすための行動じゃない、それとは別の思い。……今までの生活の中、私がしたいと思ったことで満たされる欲があった。白夜叉はそれと同じ様に使命だからじゃ無く、私がしたいと思って行動した結果が繋がるやり方の方が一番良いと言いたいのかも知れない。今回の場合なら私は使命を果たすためじゃ無くて、黒ウサギの為に……確かにその方が良いのかも知れない。

 

 高い音が響く。どうやら白夜叉が広げて居た扇子を閉じたらしく、それで現実に戻された私に白夜叉は「今日の修業はこれでお終いだ」と告げる。私は最初に教えて貰った師弟としての礼をした後に立ち上がる。もう期日は少ないけれど、焦って急げばきっと失敗してしまう。……何時もの様に、私がしたいようにしよう。……獣になったつもりは無いけれど、でも猫らしく気ままに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白夜叉にお礼を言ってノーネームに戻って来た私は掃除して居るレティシアにあった。実は朝早くに出て居たからまだ午前中で、掃除が始まって少し経った頃だったらしい。子供達も雑巾や箒を持って動く中、私はレティシアに近づいて自分のする場所を聞く。だけどレティシアは笑みを浮かべると首を横に振った。

 

「最近はハクも忙しそうだ。掃除は私達に任せてくれないか?」

 

「……でも」

 

「あぁ、黒ウサギが探して居たぞ。ここ数日、構ってもらえないのが寂しいらしい」

 

 レティシアの言葉に言おうとした私の言葉を遮ぎり、続けた後に苦笑するレティシア。その言葉に何となくだけど、『お猫様~!』と言って探して居る黒ウサギの姿が想像出来た。だから私はそれに頷いて返すと、掃除の手伝いを諦めて黒ウサギの元に向かう。今日は朝から子供達の姿しか見えない。多分十六夜達は皆外に出て居るんだと思う。……となると黒ウサギは一緒に外に出て居るか中に居るかだけど、レティシアの言葉から今敷地内の何処かに居る筈。とりあえず自分の部屋に戻って、それから黒ウサギの部屋に……。

 

「お猫様は朝からお出かけ……最近全然一緒に居られません。このままじゃ黒ウサギは寂しくて死んでしまいます! まぁ、本当は死なないんですけど……お猫様~!」

 

 何故か私の部屋に探して居た人物は存在して居た。私のベッドの前で肩を落とし、大きく叫んでもう一度肩を落とす。そして最後には私のベッドの上にダイブして私を呼びながらバタバタと暴れ始めた。……こんな姿、子供達に見られたら一体どうするつもりなんだろう。最近平和だし、十六夜達の問題は無い訳では無いけど落ち着いても居るみたいだからかなり気が抜けて居るのかも知れない。

 

「あ~! お猫様をこの腕に抱きしめ、モフモフモフモフとしたいです~!」

 

「……そんなに……良いの?」

 

「それはもう! あの毛並みと柔らかさは疲れた心に最高の癒し……を……お猫様!?」

 

 黒ウサギの言葉に出来る限り自然を装って聞けば、笑顔を浮かべて語り始めた黒ウサギ。でも最後には聞かれた事に気が付いて私に視線を向け、その後急激に飛び起きて驚きながら私を見つめて来る。多分何時から居たんだろう、って思って居るのかも知れない。にしても私の身体って、そんなに良いもの? あの感じから嘘つくなんてまず無いし、自分で猫の時にはそんなに触れないし触れられないから確認することも難しい。

 

「も、戻って居られたのですね、あはは……」

 

「ん……久しぶり」

 

 目を必死に泳がせてどうにか私のベットに埋もれて居た事実や先程の言葉を誤魔化そうとする黒ウサギ。別に攻める気は無いから、私は黒ウサギの言葉に頷いて返した。と、突然黒ウサギの顔が一変。眼元に涙が溜まり始め、やがて溢れると共に私に抱き着いて来た。

 

「そう、そうなんですよお猫様! もう『久しぶり』何です! 同じ建物に住んでいるのに、ここ数日殆ど交流出来なかったんです!」

 

 それぞれがギフトゲームや用事などでほぼ毎日忙しいため、食事を一緒に取ったりする事は中々無い。お風呂も入れる時に一斉にって感じだけれど、子供達を纏めるために黒ウサギは黒ウサギで。私は基本飛鳥か耀。偶にレティシアと入る事がほぼ毎回。夜になればみんな疲れて眠ってしまい、私も最近は白夜叉のところに毎朝行っては飛鳥達と何かして居たりとで黒ウサギと会う事は殆ど無かった。こうしてお互いに会話をするのは何だかんだで5日ぶりぐらいかも知れない。

 

「今日、これからお猫様は何かありますか?」

 

 涙目を拭って聞いて来る黒ウサギに私は首を横に振る。朝はいつも通りだったけれど、この後私にする事は何も無い。何時もなら掃除をして居るけれど、今回はレティシアに断られてしまった。多分あの時の会話からして黒ウサギの相手をする様に気を利かせたんだと思う。となれば彼女の思い通り、そして黒ウサギの為に今日は一緒に居よう。……欲の事は考えず、私の思いで。

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