※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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暇な2人。平和な時間

 今日は黒ウサギと一緒に居ようと決めた私は猫の姿になるために変化しようとする。どうやら私の猫の時の身体に癒されたい様子だから、きっとその方が良いだろう。だけど私が変わろうとした時、黒ウサギは少し焦った様に「そのままで居てください!」とお願いして来た。どうしてかは分からないけれど、このままで良いのならきっとその方が良いんだろう。私は変わる事無く、黒ウサギに視線を向ける。これから一体何をするのか、予定の無い私は黒ウサギに付いて行くだけ。

 

「実は今日、私も特に何も無いんですよ。庭の手伝い掃除の手伝い、どちらも断られてしまって」

 

 ……どうやらレティシアが気を利かせたのは私だけでは無いらしい。黒ウサギからノーネームでの仕事を奪ってしまえば、彼女に残って居るのは休息を取る事ぐらい。審判権限(ジャッジマスター)のせいでギフトゲームを行う事は通常無理だから、仕方が無いだろう。そして私も同じ様に休息を取るしか無い状態にすれば、結果的に私達はこうしてお互いに時間を潰すことになる。

 

 黒ウサギはこれからする事に悩み続ける。もしも私が1人だけなら日向で昼寝をしたリしているけれど、余り黒ウサギはそう言う事が出来ない性格だと思う。子供達が働いて居る現在、その子達を差し置いて『自分だけ眠る』と言う事に我慢出来ないだろう。となると、ノーネームの為になる事? でも思いつく事と言えばやはり掃除やギフトゲームで勝って来る事。今のところ私が知って居る事はそれぐらいしか無い。

 

「とりあえず、何処か出かけます?」

 

「……何処?」

 

「そうですね……正直思いつきませんが、ここに居ても仕方ありません。散歩に行けば何かあるかも知れませんよ?」

 

「ん」

 

 黒ウサギの提案を受け入れ、私はベッドに座っていた黒ウサギに手を伸ばす。最初不思議そうな顔をしたものの、すぐに理解した黒ウサギは私の手を取って立ち上がった。そして手を離し、一緒に部屋を出て敷地内から出るために移動する事に。途中子供達が笑顔で仕事をし乍ら私達に声を掛けて来て、その中には子供達を仕切るリリやレティシアも含まれていた。リリは笑顔で外出する私達に「行ってらっしゃい!」と。レティシアは「存分に羽を伸ばして来ると良い」と言って私達を見送る。

 

「お猫様、手を」

 

「?」

 

「街に入れば色々な方が沢山居ますから、逸れない様に。です」

 

 敷地内から出たと同時に黒ウサギは私に手を差し出す様に言ってくる。思わず首を傾げたけれど、その後に受けた説明ですぐに理解出来た。初めて箱庭に来た時、街の中は色々な存在で溢れて居た。白夜叉の居た【サウザンドアイズ】の近く等はあの時間は閉店間際で少なかったけれど、本来は大手の商業コミュニティ。普段は沢山の存在達で溢れかえって居る。で、そんな場所に私が誰かと居ればほぼ確実に波に飲まれて逸れる事は目に見えて居た。……この身体の小ささは便利だったり迷惑だったり、結構複雑。

 

 私達はお互いに手を繋ぎ、しばらく歩き続けた。やがて見えて来た街はやっぱり波が出来て居て、あの中に入るとなると少しだけ気が滅入る。……にしても街に入って何か良い事、あると良いけど。

 

「お猫様は何かしたい事、ありませんか? 普段はコミュニティの中で過ごされてますよね?」

 

 黒ウサギは見えて来た街の中を見つめた後、私に聞いて来る。確かに普段は敷地内で時間を使って居る事が大半。街に来ることなんて殆どないし、増して今日の様に遊びに行くことは初めてかもしれない。したい事と言われれば、この世界にある元の世界にもあった食べ物とかを食べたいけれど……ギフトゲームを最近沢山十六夜達がやってくれているとは言え、無駄遣いは良く無い筈。

 

「……特に……無い」

 

 私は黒ウサギの言葉に首を横に振って返す。だけど私の意思と身体はどうやら別物らしく、言葉の後に続いて私のお腹が小さく本音の音を鳴らす。まだ街の中に入る前でそんなに賑やかじゃない場所だったため、その音は黒ウサギにも聞こえてしまったらしい。私の答えとお腹の音にクスリと笑った後、「何か食べましょうか?」と提案し始める。……流石にここまで言われて断るのは悪いし、正直に言えば朝から白夜叉の修業だったからお腹が空いた。故に私は黒ウサギの提案に今度は頷いて、街の中に2人で入る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は~い、いらっしゃいませ~! 2名様ご案内で~す!」

 

 私と黒ウサギは結果的にこの世界に来て最初に入ったカフェに足を進める事になった。初めて来た際、私は猫の姿。黒ウサギはその場には居なかったので、ほぼ初めての来店として扱われているらしい。まぁ、ガルドとの一件で黒ウサギはあの猫族の女性店員と顔見知り程度にはなって居る様子。私も猫の姿になればあの時の存在と思いだされるのかも知れない。

 

 案内された席に座り、メニューを渡される。あの時はジンとの会話もあったし、途中から邪魔された事もあってあんまりここのメニューを見る事が出来なかった。そもそも唯の猫だった時点で確認することも出来なかったし、基本ノーネームの中で食べて居るから少し楽しみに感じてしまう。外食何て、北に行った数日ぐらいだと思う。それに宿の中だったからこういうお店とはかなり違う。

 

 開いたメニューには沢山の商品名が書かれていた。私の知る世界とはやはり違うせいか、見た事の無い名前の物も沢山ある。だけど中には【オムライス】・【ハンバーグ】なんて言うよく知って居る名前のメニューも存在して居た。この世界だけのも気にはなるけれど、前の世界では食べられなかった事もあって今は懐かしいのをやっぱり食べたい気分。……パスタもあるらしい。

 

「決まりましたか?」

 

 掛けられた声に顔を上げれば、微笑みながら私を見て居る黒ウサギの姿。今の私が彼女にどう映って居たのかは分からないけれど、その笑みからすると彼女に取ってきっと良いものが映って居たんだろう。私が黒ウサギの質問に頷いて答えると、声を上げて黒ウサギは店員を呼ぶ。呼ばれたのはやっぱり同じ女性店員で、黒ウサギは自分のを。私はメニューの名前を指さしてお願いする。注文を受けて良い笑顔と共に「承りました!」と去って行く女性店員。そして、注文した物が来るまでの間を私達は待ち続ける事になる。

 

「そう言えばお猫様、人の姿の時には耳とか出ないんです?」

 

「……耳……」

 

 黒ウサギの質問に思わず頭の上を触ってしまう。そう言えばこの前白夜叉も突然修業の時に『何故猫耳が無いのだ!』って膝をついてた気がする。猫から人の姿になった時、あの女性店員みたいに頭の上やお尻に耳や尻尾があるのが普通なのかもしれない。……今まで特に気にした事は無かったし、これからもそんなに重要じゃないと思うけど。

 

 会話と言うよりも黒ウサギが喋って私が返してと言う形で受け答えをし、過ぎて行った時間。やがて注文した物が来たことで私達は一度会話を止める。黒ウサギはお昼時だからか、野菜多めの定食。私はさっき見つけたパスタからカルボナーラを選んだ。バウムクーヘン以来久しぶりな内容の分かる食べ物。お互いに手を合わせた後、私達は食べ始めた。……やっぱり店によって味付けは少し違うけれど、私の知って居る味と似て居る。別の世界だけれど、それでもどこか安心できる味。

 

「美味しいですか?」

 

「ん……」

 

「ふふ。あ、口周りが汚れてます。今拭きますからジッとしててくださいね?」

 

 ソースの掛かって居るパスタ等は食べ方によって口元にソースがついてしまう。どうやら私は久しぶりだったが為に気付かなかった様で、黒ウサギは笑みを浮かべると席に用意されていたナプキンで私の口元を拭う。そんなつもりは無いと思うけど、どうも子供扱いされた気分で私はこの後気を付けて食べる事にした。そうして私達は共に昼食を終える事となる。

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